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クリスタリアへ


 世界樹で天空の守護獣ガルーダのルーラを無事仲間に加えた後、俺は屋敷に戻ってきていた。


 国際会議ウィークの間、毎晩晩餐会が開催されるからな。初日くらいホストである俺がいないと拙かろう。言っておくが、決して忘れていたわけではないからな?

 



「なあ、アイシャ、何で俺だけ席がこんなに離れてんの?」


 他の席からは十メートル以上離れており、仲間はずれみたいで悲しい。しかも一段高くなってやがるから、さらし者みたいだよ!?


「カケルさまの影響力を考えるとこれがギリギリですからね。これ以上近づくと危険です」


 アイシャが真顔でそんなことを言う。え? 俺って危険人物なの……!?


『カケルさまと話せるのは一人1分まで、お触り禁止です。さらに、女性は、魅力を遮断するという刹那さまが開発した特殊なゴーグルとマスク、そしてマント着用が義務付けられております』


 ちょっと待て、ヒルデガルドさん……なんの話かな?


「そんな話、聞いていないが?」

『はい、先ほどのお嫁さん会で賛成多数で可決しましたので』


 とうとうそんな組織ができたのか……。


「そ、そうか……他にも何か決まったのかな?」

『晩餐会へのまな板の入場禁止ですね。これに関しては、事前に身体チェックを行っておりますのでご安心ください』


 くっ、やりおるわ……たしかに近くにまな板がいたら、穏やかではいられない。


 仕方ないことだが、駄目と言われると欲しくなるのが人情というもの。


「ひ、ヒルデガルド、さすがに入場禁止はかわいそうじゃないのか? わざわざ遠くから来てもらっているんだし、料理だって食べたいだろう? クロエもそう思うだろ?」


 クロエなら、さすがは御主兄様です。私もそう思いますって言ってくれるはず。



『カケルさま……お心はわかりますが、決まりは決まりです。ちゃんとまな板専用会場を設けておりますのでご安心ください』

「御主兄様……そういうことなのです」


 むう……俺の下心が見え見えな以上、打つ手なしだな。


 でもまあ、どうせマント着用なのだから、いてもいなくても結局のところ同じことなんだよなあ。 




「どうしたんだカケルくん? そんなに浮かない顔をして?」


 ワインを片手にやってきたイケメンおやじは、クリスタリア大公クライフォートさん。言うまでもなくクラウディアのお父上だ。


「おお、義父上、ご心配なく。なあに大したことではありませんよ」


 そうは言ったものの、まな板を失った傷は思いのほか深く、上手く笑顔が作れない。


「ふうむ……どうやら深刻な様子……だが、元気をだしたまえ。いい知らせがあるんだ」


 いい知らせ……? ニヤリと口角を上げる義父上。イケメンスマイルが今の俺には眩しすぎる。



「災厄のせいで、長らく延期していた温泉テーマパークが、ようやく再開されたんだよ。そこで、混浴大臣である君にぜひ視察を兼ねて一度来てもらいたいのだが……」


『カケルさま……残念ですが、お時間―――』


――――時空魔法!!――――


 ふう……危なかった。時間切れギリギリセーフ。


「義父上、わかりました。早速明日にでも伺わせていただきます。もちろんクラウディアたちも一緒に」


「うむ、では明日また!」


 さわやかな笑顔で去ってゆく義父上。ありがとうございます。めっちゃ元気が出ましたよ。



『……カケルさまが元気になりましたね』

「ふふっ、さすがは御主兄様です。ミヅハに作ってもらった水着が活躍しそうですね」



***



 晩餐会が終わり、部屋に戻るが、頭の中は混浴大臣の仕事のことで一杯だ。


「これはいかんな……公私はちゃんと切り替えないと」


 だが、冷静に考えてみれば、俺ほど混浴大臣に向いていない男もいないのではないか?



 混浴大臣は、混浴の楽しさやマナーを国民に理解してもらう重要なポストだ。果たして煩悩の塊のような俺に務まるだろうか? 



「大丈夫ですよ。カケルさまなら。それに歴代の混浴大臣は皆煩悩の塊でした」

「……クラウディア。それにみんなも……!?」


 なぜか俺の部屋に大集合しているお嫁さんたち。そうか……皆煩悩の塊だったのか。


「私たちは旦那様の力になりたいのだ。邪神との対決の場にはついていけないかもしれないが、きっと何か役に立てるはず」


 セレスティーナ……。


「そうよ、だからその……貴方様」

「ボクたちにその煩悩をぶつけてよ!」


 シルフィ、サラ……。


「そうすれば、明日、大臣として少しは聖人のように振舞えるかもしれんぞ?」


 エヴァの言う通りだな。我慢するのではなく、すべてを吐き出せば良いんだよ。


「というわけで、御主兄様? 私は五つ子が良いです!」


 五つ子だと……!? クロエさん、そういえば沢山欲しいって言ってたね。


「お、王子様、私も、私も五つ子が良いです~!!」


 サクラも五人欲しいっていってたもんな。


「わ、私は女の子が一人欲しいです……」


 頬を赤らめるクラウディア。なんかほっとするな。 


『主さま、私は男女の双子を賜りたく』


 ちょっと油断したら、また双子のターンか!? わかったよソニア。



 こんな調子で全員分聞いていたら夜が明けてしまうな。よし。


『分裂!!』


 お嫁さんたちと同数に分裂する。



 まったく……邪神のせいで……いや、おかげで、良いきっかけになったかもしれないな。


 まあ子どもの顔が見れるのはまだまだ先のことだけどさ。最初は多分妊娠期間の短い獣人の誰かということになるだろう。


 だからこそ絶対に負けられない。この世界を次の世代に残さなければならない。



 だけど……今は煩悩を吐き出さなければならない。明日の混浴大臣を立派に果たさななければならない。


 違う意味で気合を入れなおすカケルであった。


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i566029
(作/秋の桜子さま)
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