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天空の守護者に安息を


「そうだ、イリゼ様、イソネ君の身体のことなんですけど……」


 肉体を持たない邪神とチェンジで入れ替わった場合、イソネ君は身体を持たない魂だけの存在、つまり死者となってしまうのだ。


 協力してもらう以上、そこははっきりさせておかなければならない。


『ああ、それなら大丈夫よ。彼の肉体は用意してあるから』


 ポンッっと現れた肉体は見覚えがある。


「これは……イソネ君の元の身体ですよね?」


 そうだ、ジモ村に行ったときに、イヴリースの時空魔法『ログアクセス』で見たのと同じ――――いや、違う、多少弄ってあるな。

 

『そうよ、このときの為に回収しておいたの。弄ってあるのはご褒美ね。これまでチェンジしてきた身体にいつでも変身出来るようになってるのよ! 見た目も思い出補正五割増で格好良くなってるから』


 自慢げに語るイリゼ様。誰の思い出補正かは知らんが良かったな、イソネ君。

 

『ふふふ、この身体を、ノコノコ顔を出した邪神に与えてやれば――――』


「なるほど、チェンジによって邪神は女性の身体を、イソネ君は元の身体を手に入れることになるわけですね?」


『ふふっ、そういうことよ』


 ウインクするイリゼ様に内心悶絶するが、そろそろ帰らないといけない。

 


『そういえばカケルくん、原初の魔獣の最後の1体、早く役目を終わらせてあげなさい』


 別れ際にそんなことをイリゼ様に言われる。


 

 確かにそうだよな。天空の守護者ガルーダを救いに行かなければならない。リーヴァとベステラにも頼まれていることだし。


「よし、思い立ったが吉日。このまま向かおう」



***  



「ルシア先生、ガルーダは本当にここにいるんですか?」

『ふふっ、当たり前でしょ? 私の身体なんだから間違えるわけないじゃない』


 天空の守護者ガルーダは、世界樹の天辺にいるらしい。世界樹の精であるルシア先生と一緒に天辺に向かうが、どうも様子がおかしい。


「……ルシア先生?」


『……カケルくん、私、もう我慢できないのよ。お願い……可愛い双子の女の子が欲しいの』


 ……双子大人気だな、マジで。


 でも、世界樹のルシア先生も後方支援としての重要な戦力だ。強化出来るならば断る理由など存在しない。


「わかりました。覚悟してくださいね?」


『わ、わかってるわ。世界樹を舐めないでね?』


 ただでさえ妖艶なルシア先生が、さらに怪しげな色気を発しながら蔓を巻き付けてくる。




『……カケルくん、本当に容赦なしだったわね? 足腰が立たないのだけれど?』


 ふにゃふにゃになったルシア先生を背負いながら天辺を目指す。


 双子? もちろん授かりましたとも。



『ほら、あそこよ』


 ルシア先生が指さす先には、世界樹の天辺に広がる幻想的な光景。天頂部の枝葉は、すべてが金色に輝いており、まるで金色の草原のようにも見える。


 そして、その光景の中では明らかに異質な紅白の塊がある。


 遠近感がおかしいので、一瞬思ったより小さい? と感じてしまったが、近づいてみれば高さ数キロはありそうな巨体。翼を広げたら、おそらく十数キロはありそうだ。旅客機ですら、小枝のように掴んでしまうサイズと言えば想像できるだろうか。


 リーヴァとベステラがあまりにも大きすぎたので、それでも小ぶりに感じるが、飛行タイプとしては、規格外にデカい。っていうかこんなのが本当に飛べるのか?


『もうずっとこんな感じで寝ているわ。目を覚ます前にお願いね。ガルーダがはばたけば、国が一つ消し飛ぶから』


「わかってますよ。シグレ!」 


『応、あの……主殿? その……某もパワーアップしたいのでござる』


 珍しく人型で現れるシグレ。顔は真っ赤だ。


 くっ、しかもくノ一装束だと!?


 だが、リエル、デスサイズは妊娠するのか?


『大丈夫だよ。やっちゃえカケル!』


 なるほど、大丈夫なら断る理由もない。他でもない相棒の強化だからな。


「シグレ、希望はあるのか?」

 

『……双子の男の子が良いでござる』


「そ、そうか、双子大人気だな……」 


『ふふっ、良いデスサイズが生まれるでござるな!』 


 え!? デスサイズが生まれるの? それはなんというか……シュールだな。



「よし、覚悟は良いか?」  

『ひゃ、ひゃい!?』


 初めてでもないのに、ガッチガチに緊張しているシグレ。嫌な予感がする。



――――――ザシュッ!!―――――――



『あ、主殿おおお!!?』

「……か、カハッ!! し、シグレ、早く神水を……」



『申し訳ありませんでした、主殿』


 土下座して額を地面に擦り付けるシグレ。


「気にするな。シグレのためなら、かすり傷だ」



 そのあとなんとか双子の男の子を授かることに成功。



『主殿、見てくだされ! この進化した姿を!!』


「おおう……これは……素晴らしい!!」


 極端に布面積が減り、露出が増えた艶やかな肢体。何よりも完璧なボディラインを描く見事なまでのまな板具合。


 さすがは俺の相棒。愛している。



『では主殿、そろそろまいりましょうか?』


「ああ、頼むぞ、シグレ!」


 刃物形態に戻ったシグレを握りしめると、彼女がいかに強化されたかよく分かる。


 満ち溢れる万能感、今なら星も斬れる気がする。




『16身分裂!!』



 天空の守護者ガルーダ。その圧倒的な存在感に自然と畏敬の念が湧いてくる。


 この世界の創生期から存在し、大空を守り続けてきた原初の魔獣。


 ありがとうガルーダ。お前には感謝している。そして最大級の敬意を捧げよう。




 安心してくれ、痛みなんて与えない。一瞬で終わらせる。



 集中しろ、研ぎ澄ませ、俺が断ち切るのは(ことわり)そのものだ。



 覚醒したシグレ、お前の可能性を見せろ。理を切り裂く神滅の刃よ。この哀しき天空の守護者に安息を。永遠とわに続く呪縛を斬り裂け!!




『破翼天斬・ソウルセイバー!!!』


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i566029
(作/秋の桜子さま)
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