ありすと秘めごと
ありすを抱き寄せその美しい金髪を撫でる。
「ち、ちょっと……大海原さん!? ど、どうしたんですか? だ、誰か来たらどうするんです!?」
面白いぐらい挙動不審になるありすが可愛くて仕方がない。たまらずキスをしてしまう。
「ん……んん……も、もう……大海原さんったら……」
すっかりとろんとふにゃふにゃになったありすが金色の瞳を熱っぽく揺らす。
「ありす、修行するぞ」
「ふえっ!? しゅ、修行ですか? そ、そうですよね、邪神と対決するんですよね……わ、わかりました。精一杯頑張ります!!」
ありすも邪神と対決する危険性を十分理解している。しかも、直接ではないが、邪神、女深海は、魔人族を生み出した言わば創造主のような存在だ。場合によっては、ありすの身体を狙ってくるかもしれない以上、いくら強化してもやり過ぎということはない。
「よく言ってくれた。じゃあ早速行こうか?」
「行くって……どこへです?」
「異空間だ」
「へ? 異空間って、みんなでお風呂に入ったところですよね? まさか……お風呂で修行するんですか?」
ありすが顔を赤くしてそんなことをいう。あれ? 話が噛みあってない?
「ま、まあ、行けばわかるさ」
「は、はあ……?」
ありすを連れて異空間に移動する。
「さてと、じゃあ早速修行を始めるぞ?」
「あ……着替えなくていいんですか? 私、スカートですし……」
いや、気にするなありす。むしろそのままの方がやる気が出るまである。
「大丈夫だ。まあ身体はかなりハードに動かすことになるが、その服はミヅハ製だろ? なら問題ないさ」
「ほえ~、やっぱり分かるものなんですね! さすがは兄妹ですね。ふふっ」
なんか褒められてるところ申し訳ないんだが、透けて見えるからそうかなって。
それよりも、ありすに修行のやり方を教えてやらないとな。
「ち、ちょっと……大海原さん!? ふわぁ!? あ、あの……修行するんじゃあ?」
「安心しろ、これは修行だ」
「ふえっ!? こ、これが……しゅ、修行!? わ、わわあわかりました……が、頑張ります~!!」
「お疲れさま。大丈夫かありす?」
「あ……あう……な、何とか大丈夫でしゅ……」
ハードな修行のせいで、ありすの足腰はボロボロだ。何度も止めようかと思ったが、ありす自身が止めないでと懇願するので、心を鬼にして続行した。本当によく頑張ったな……ありす。
「よし、風呂に行こう」
「あ、良いですね。汗を流したいです」
足腰の立たないありすをお姫様抱っこして、大浴場に移動する。
『お待ちしておりました。お兄様、ありすさま』
風呂では、ミヅハが準備万端で待っている。
「へ? ミヅハちゃん? どうして?」
困惑するありすに優しく微笑みかける俺の有能な妹。
『もちろんありすさまの修行をサポートするためです。痛くはしませんが、覚悟はしてくださいね?』
「へ? 修行……? もう終わったんじゃあ? 大海原さん?」
悲愴な面持ちで俺の顔を見るありす。すまん……修行はまだ始まったばかりなんだ。
「ありす……ファイト!!」
「い、いやああああああ!?」
「そ、それで……今度は何をするんですか?」
ようやく諦めがついたのか、ありすが次の試練の内容を確認してくる。うむ、さすがだな。
『はい、先ほどの修行の様子を分析させていただきまして、ありすさまの弱点を数多く発見いたしました。そこを徹底的に鍛えます』
「さっきの修行を分析……って全部見てたのっ!? はうっ……死にたい」
羞恥心で死にそうになっているありすは本当に可愛いな。ふふふ。
『それでは、早速はじめましょうか。あまり時間もないことですし』
「は、はいっ!! よろしくお願いします!!」
今度の試練は中々ハードだ。内容そのものは、先ほどまでと変わらないが、隙を見てミヅハがありすの弱点を攻めてくるのだ。果たして耐えられるのか……。
『ほら、ありすさま、隙だらけですよ?』
「うはああああああ!? だ、駄目、そこは弱いからあああああ!!」
容赦ないミヅハの攻撃に防戦一方のありす。可哀想だが、俺は俺で手を抜くわけにはいかない。
「いやあああああ!? 大海原さん、駄目ええええええ!!」
息も絶え絶えのありすに神水を飲ませて回復させる。超回復によっても、ありすは飛躍的に強くなってゆくので一石二鳥だ。
「そろそろ次の段階へ進むが、少し休憩するか?」
「だ、大丈夫でしゅ……な、なんだか気持ちよくなってきました」
さすがだな。いわゆるアスリートハイというやつか。
『お見事な覚悟です。このミヅハ、感動しました。次は内側から攻めさせていただきます』
「へ? 内側……? なんか嫌な予感が……!?」
『液状化!!』
液体となったミヅハが、ありすの体内にあっという間に侵入してゆく。
「ふえっ!? な、何これ……いやあああああ!!」
ミヅハの内部からの攻めはえぐいからな……俺も経験があるが、耐えられないタイプの攻撃だ。頑張れよありす。
「よし、それじゃあ修行再開だ」
「ち、ちょっと待って……この状態で修行なんてしたら死んじゃう……うわあああああ!?」
「お疲れさま……ありす」
疲れ切って寝息を立てるありすの頭を撫でる。
おそらくだが、今のありすに勝てる存在は、嫁たちの中にも数えるほどしかいない。本当に頑張ってくれたと思う。
『ありすさま、頑張りましたねお兄様』
「ああ、ミヅハもありがとう。液状化疲れただろ?」
ミヅハがいなければ、短期間でここまで仕上げることは出来なかった。感謝しかない。
『そんなことありません。ですが、そうですね……邪神のことも心配ですし、私にも全力で修行をつけていただけませんか?』
そうだ、邪神との対決では、ありすはミヅハに守ってもらうことになる。ミヅハの強化も必要だろう。
「全力か……死ぬかもしれないぞ?」
『ふふっ、お兄様になら殺されても構いません』
異空間には、しばらくの間、ミヅハの絶叫が響き渡るのであった。