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ほとばしるこだわりと悲哀


「お待たせしましたキリハさん!」


『デート中に私を待たせるとか……』


 頬を膨らませて怒るキリハさん。あ、やっぱりデートなんですね、これ。ああ……可愛い……撫で回したい。


『なっ!? ふざけないで!! 思うだけじゃ伝わらないのよ!!』


 伝わっているじゃないかと思いつつ、キリハさんを撫で回す。あれ? 何しに来たんだっけ?


 そうだった、侵入者たちを始末しに来たんだった。


『下着泥棒なら、騎士団の演習場にいるわよ?』


 さすがはキリハさん、凄すぎて惚れる。っていうか愛してる。


『ふぇっ!? 待っている間、暇だったからよ! 別に大したことしてないしっ!?』


 言葉にしなくても伝わるけれど、言葉じゃなくては伝わらないものだってある。


「ありがとうございます、キリハさん」 

『……デートだから特別よ?』


  

***



 帝国騎士団演習場にやってきた俺たち。


「なぜ下着泥棒はこんなところにいるんでしょうね?」 

『さあね、変態の考えることなんて知りたくもないわ』


 


『ぐふふ、下着スティール、下着スティール!!』


 目を血走らせながら、下着スティールを連発している騎士団長を発見。


「……いましたね」 

『……わかりやすく職権乱用しているわね』


 そうか……演習でたっぷり汗が染み込んだ頃合いを見計らって、女騎士の下着をスティールしているのか!? しかも、違和感に気付いて困惑している様子もしっかりセットで記憶していやがる……強いな。



『つまり……どういうことなの?』

「奴は本物だと言うことです」


『…………早く倒しなさい。私は隠れているから』

「大丈夫ですよ、奴はキリハさんの下着には価値を見出していないですから」

『……それはそれでムカつくわね……』


 そんな可愛らしく腹を立てるキリハさんのためにも、さっさと終わらせますか。



『シグレ!!』

『応!!』


 騎士団長の背後に転移して、デスサイズで一刀両断。もちろん下着泥棒の魂だけね。


『ぎぃやあああああ!?』


 許せ、お前に個人的な恨みはないが、これも仕事だ。生まれ変わったら、立派な下着職人にでもなるんだな。


『下着スティールを記憶しました』


 キタああああ!? 早速スキル発動、誤解しないで欲しい、騎士団長の懐から下着を回収しただけだ。正気に戻った後で、変態扱いされたら可哀想だからな。


 ついでに魔物化されている人も解除してしまう。すでに騎士団の大半は魔物化されていた。一体どれだけの人々が魔物にされているのだろうか。元凶を倒せば元に戻るとかだったら楽なんだけど……。


 ともあれ、残るはあと4人。



『次はのぞき魔ね。大浴場にいいるわよ!』

「大浴場……風呂でものぞいているんですかね?」

『さあ? 変態の行動原理に興味はないわ』



 居た……大浴場の壁に擬態したつもりの大臣が。明らかにバレそうなものだが……


「きゃあああああ!? のぞきよ!! 誰かああああ!!」


 やはり見つかったか……ダッシュで逃げる大臣。おそらく逃走ルートを確保しているのだろう。間一髪逃げおおせることに成功した。


『……なぜ、のぞき魔は『女性限定透視』スキルを使わないのかしら?』


 そう、それは俺も気になっていた。だが、おそらくは……


「それが奴のこだわり。奴の誇りなのでしょう……まったく、宝の持ち腐れとはこのことですね……」


 こだわりを追求する奴は嫌いじゃない。それどころか、共感すら覚えなくもない。ただ少しだけ、世界の価値観とずれてしまっているだけなんだよな……


『……早く始末するわよ』


 世知辛い……。



『シグレ!!』

『応!!』


 そしらぬ顔で執務室へ向かう大臣の背後に転移して、デスサイズで一刀両断。もちろんのぞき魔の魂だけだ。


『ぎぃやあああああ!?』


 許せ、お前に恨みはないが、これも仕事だ。生まれ変わったら、立派なバードウォッチャーか、古き良き銭湯の番台にでもなるんだな。


『女性限定透視を記憶しました』


 キタああああ!? 早速スキル発動、誤解しないで欲しい、ちゃんと機能するか確認するだけだ。うむ、素晴らしい眺めだ。キリハさん最高おおおおお!!


 ……殴られました。なぜだ!?


 ともあれ、残るはあと3人。



『次は、満員電車痴漢の常習犯ね。奴は舞踏会の会場にいるわ』


 キリハさんの口から、満員電車痴漢というワードがでると興奮してしまうな。あとでお願いしてみよう。デートだし?


『で、デートなら仕方ないわね……』


 すげえっ!? デートなら良いのか!? ありがとうございます……。



 なるほど、奴は『どこでも電車内フィールド』を人ごみの中で使うことによって、疑似的な満員電車空間を再現しているのだな。しかもイケメン皇太子かよ。実質やりたい放題じゃないか。



「キリハさん……誰も嫌がっていないんですが? むしろ喜んでいるような……?」

『……良く見なさい』


 ん? どういう意味だ……はっ!? 俺としたことが……なぜ気付かなかった?


 奴のつまらなそうな顔。若干の悲哀すら感じる。


 馬鹿が……イケメン皇太子なんかに取り付くからだ。この国では、もはやスリルを味わうことすら難しいだろうな。


 安心しろ……俺が楽にしてやる。


『シグレ!!』

『応!!』


 トイレへと向かう皇太子の背後に転移して、デスサイズで一刀両断。痴漢野郎の魂を解放する。


『ぎぃやあああああ!?』


 許せ、お前に恨みはないが、これも仕事だ。生まれ変わったら、探検家か、迷惑系動画配信者にでもなるんだな。


『どこでも電車内フィールドを記憶しました』


 キタああああ!! 早速スキル発動、だってデートだし? 早く試してみたいし? キリハさーん!!


 ……また殴られました。なぜだ!?


『全部終わってからよ……バカ』


 

 ともあれ、残るはあと2人だ。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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