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国際会議フェスティバル 前編


 カケルと別れ、厨房を出るリストルテとフランソワーズ。


 これ以上居ると、調理の邪魔になってしまうからだ。



「こんなところで何をしているんだ、フランソワーズ?」

「せ、セレスティーナお姉さま!?」


 ばったり出くわしたのは、アストレアの第二王女セレスティーナ。フランソワーズの従姉妹でもある。 


「ご、ご無沙汰しております! アスタロトの孫娘リストルテです」


 セレスティーナがアルカディアの勇者学院留学中に一度だけ面識があるリストルテも慌てて頭を下げる。


「ああ、久しいな、リストルテも一緒か。しかし珍しい組み合わせだな? ん?……二人から旦那様の匂いがする……? まさか!?」

 

 カケルの匂いならクロエ並の嗅覚を発揮するセレスティーナ。


「も、申し訳ありません!! 押しかけでお嫁さんにしてもらいましたわ!」


「ふふっ、そうか、それは目出度いな。そうだ、用事が終わったら、みんなを紹介しよう。ちょっとだけ待っていてくれ」


 あっさりと認めてくれたセレスティーナに戸惑う二人だが、セレスティーナにとっては、もはや日常茶飯事だ。いまさらどうということもない。


「わ、わかりましたわ。それで、ご用事とはなんですの?」


「ん? 頑張っている旦那様に私を差し入れするのだ。旦那様は私が大好きだからな!」


 ものすごいことを言っているのだが、その凛々しい姿で堂々と宣言されると、なんか格好良い……となる。


「そ、そうですか、きっと喜ばれると思いますわ! さすがお姉さまです!」

「ふふっ、そうだろう。では行ってくる! 旦那様あああ!」


 厨房に駆け込むセレスティーナを見送る二人。



「え、英雄さまも中々大変そうね……」


 あらためて、カケルのすごさを認識するリストルテ。


「あら? もう戻って来ましたわ!?」


 3分もしないうちに、満足そうな表情でほんのり頬を染めたセレスティーナが戻ってくる。フランソワーズは、あの男勝りだった従姉妹が、こんなにも色気を放つようになるのかと唖然としている。



「待たせたな。さあ行こうか」

「「は、はい、宜しくお願いします!!」」



***



 最初にやってきたのは、釣り掘りコーナー。


 ミヅハが生み出した巨大な生簀に、大量の魚が泳いでおり、釣り上げた魚は、その場で料理人が捌いて食べることが出来るのだ。 


「おーい、イサナ、ずいぶん賑わっているじゃないか!!」

「おお、セレスティーナさま! あれ? なんでリストルテがいるんだ?」


「それは私のセリフよ? なんで漁師の貴女がここにいるのよ?」


 王都アルカディアにおいて、漁師ギルドトップの娘であるイサナとリストルテは、会合などでそれなりに付き合いがある。


「は? そりゃあ、俺が旦那の嫁だからに決まってるだろ?」

「……旦那? 誰?」

「はあ? 旦那って言ったら、カケルさまに決まっているだろ? セレスティーナさまだって、同じように呼んでるじゃねえか!」


 確かに同じ旦那だが、全然違うと内心叫ぶ二人。


「ま、まさか……貴女までお嫁さんだったとは。さすがは英雄、懐が広い……」


 なかなかに酷いことを言うリストルテだが、イサナは大雑把な性格なので、気にもしない。


「せっかくだから釣りやってくか?」

「悪いなイサナ、これからあちこち回らなくてはならないんだ。それから、こっちが、私の従妹のフランソワーズ、二人とも新しいお嫁さん仲間になるから宜しく頼む!」


「……またか……もう覚えられないんだが!?」


 頭を抱えるイサナと別れて、こんどは様々な出店が並ぶコーナーへやってくる。



「あ、見て! 占いコーナーもありますわ!」

「……なぜ時計台の悪魔がこんなところに!?」


 小悪魔のフォルトゥナは、王都アルカディアの呪い小路に店を構える人気No.1の占い師だ。当然リストルテも何度か通ったことがある。当然のようにすごい行列となっている。


「フォルトゥナも旦那様のお嫁さんだ。ちょっと挨拶は無理そうだな……」


「あ……はい、なるほど……」



「リストルテ、ほら、魔道具屋さんがありますわ!」

「うっ!? な、何これ……並んでるの全部アーティファクトクラスばかりじゃないの……!?」


「ああ、なにせあの伝説の錬金術師刹那の店だからな!」


「あの……なぜ大昔の錬金術師がここに?」

「刹那も旦那様のお嫁さんだからだ。くっ、ここも無理そうだな……」

「「…………理由になってませんわ」」


 刹那にとっては、いらないゴミに等しいが、世間的には掘り出し物しかない。目利きが多い参加者が群がるのも無理はないだろう。



「ここは……各種ギルドのコーナーですわね」


 冒険者ギルドを始め、各種ギルドが集まっている場所だ。物を提供しているのではなく、情報交換や交流がメインの会場となっている。



「はじめまして、プリメーラ冒険者ギルド受付嬢で、クリスタリア公女のクラウディアです」

「はじめまして、プリメーラ冒険者ギルド受付嬢で英雄カケルの妹アリサです」

「はじめまして、セレスティーナ冒険者ギルド受付嬢のリースです」


 冒険者ギルドの受付嬢グループが挨拶する。


「ちょっと待って、リースは婚約者じゃないでしょう!?」


 どさくさまぎれのリースにツッコミを入れるクラウディア。


「ふふっ、時間の問題だからいいのよ!」 



「はじめまして、セレスティーナ商業ギルドマスターの、ミレイヌです」

「はじめまして、プリメーラ商業ギルド受付嬢のミネルヴァです」

「はじめまして、プリメーラ商業ギルド受付嬢のローラです~」

 

「ちょっと待って、貴女たちは婚約者じゃないでしょう!?」


 どさくさまぎれのミネルヴァとローラにツッコミを入れるミレイヌ。


「ふふっ、さっきカケルさまに聞いたら、いいよって言われたからぎりぎりセーフ!」


 いつの間に……と呆れる一同。  



「ねえ、フランソワーズ、私ちょっとめまいがしてきたんだけど?」

「まあ、偶然ね、私も同じ気持ちですわ……」



 お嫁さん紹介ツアーはまだまだ続く……。


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i566029
(作/秋の桜子さま)
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