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身体モフ検査


「……ふん、たわいもない。終わったわよ貴方様」


 シルフィがテコテコ歩いてくる。可愛いので抱きしめる。


「ふえっ!? な、なななにしてるの!! 敵の本拠地なのよ!!」


 あわあわと真っ赤になって照れるシルフィ。


 確かに、ここは人身売買組織の支部。シルフィの言う通り、イチャイチャして良い場所じゃない。いまさら恥ずかしがらなくてもと思わなくもないが、もしそうなったら、それはもう髪色の違うただのサラだ。


「ん? 今なんか失礼なこと考えたね? 白状しなよ貴方様!!」


 俺とシルフィの間に割り込んで、耳たぶを噛んでくるサラ。それそれ、シルフィは絶対そんなことしないから。同じ顔なのに不思議だな。まあミコトさんとキリハさんだってそっくりだけど性格違うしな。こっちは双子じゃないけど。


「ち、ちょっとサラ、やめなさい、変な気分になっちゃうから……」


 二人は感覚を同期しているから、サラが積極的になるとシルフィは大変だ。しかも今はゼロ距離だからな。おそらく同一人物並みに感覚共有されているはずだ。つくづく触手プレイの時にシルフィがそばにいなくてよかったと思う反面、いて欲しかったと残念に思う気持ちもある。


「うへへ、貴方様、シルフィのやつも絶対好きだからまたやろうね。触手」

「な、なななにいってるのよ、絶対やりませんからね……あ、あんな破廉恥な……」


 記憶も共有されるのは難儀だなシルフィ。


「あの……ダーリン? 妾も興味があるんじゃが……その……触手?」


 ほほう。エヴァさまも興味があると? 実は吸血する触手にもなれるんだよな俺。んふふふ。


「ご、御主兄様……わ、私はぬるぬるは嫌ですけど……お望みならばいつでも……」


 毛並みを大事にする獣人にとって、ぬるぬるの粘液は厄介なのだが、顔を赤らめるクロエをみていると逆にぬるぬるまみれにしてしまいたくなる。無論、その場合モフモフは失われるのだが、好きの対極にあるものは、やはり好きの裏返しであって、結局最高であることに変わりはない。


『カケルさま、私もあらゆるパターンで脳内シミュレーションは完了しております。遠慮などなさいませんよう』


 ヒルデガルドはいうまでもなくガチだ。俺のあらゆる妄想を把握しているからな。実に頼りになるメイドと言わざるを得ない。



「よし、行くか異空間!!」

「ち、ちょっと待って貴方様、私は……いやああああ!?」



 正直に言おう。楽しい、これはくせになる。シルフィもノリノリだったしな。



「くっ、なんでこんなやつらに負けたんだ……!?」


 犯罪組織の連中がなんか言っているけど、そうだな……たしかに不謹慎だったよ。ごめんね?


 

***



「そっちはどうだ? ヒルデガルド」


 情報収集の進捗をたずねると、無言で唇を重ねてくる専用メイド長。うん、たしかにこの方が効率が良いけど、捕虜の人たちめっちゃ怒ってるよ?


『構いません。私はカケルさまとキスしたいだけですから。あ、次はお尻でお願いしますね?』


 ヒルデガルドが優秀すぎて辛い。俺がたまにはお尻からの情報伝達もしたいなあ……なんて思ったら、すかさずこうやってフォローしてくれるんだから。変態な主ですまんな。

 


 ヒルデガルドのお尻から入手した情報をまとめると、結局、支部の連中はたいした情報を与えられていなかった。やはり実情を知っているのは、もっと上の幹部クラスになるのだろうか。


 犯罪組織の連中は、とりあえず全員俺の奴隷化したうえで、アルゴノートへと引き渡すことにする。


 また、捕まっていた千人ほどの獣人たちには、怪我人はもちろん全員に神水を使って元気になってもらった。神水は、心に受けた傷も癒すことができるからね。


 ちなみに、組織が貯め込んでいた資金は、国、被害者、俺で山分けにする。ふふふ、正直、金はいくらあっても困らないからな。 


 そして、助け出した獣人たちを送り届ける前に、俺にはやらなければならないことがある。



 身体モフ検査だ。


 獣人にとって、毛並みのチェックは、身だしなみだけではなく、健康状態や様々な病気の兆候、ストレスや悩みなど、あらゆることを把握するために必要不可欠。


 だが、おいそれと他人にチェックさせるのは家族や恋人以外では難しい。そこでアルゴノートには、モフモフ庁という政府機関があり、日々国民の健康を管理している。


 本来許されない他人へのモフモフも、モフモフ庁職員であれば、セクハラにならない。言ってみれば、警察官の職質みたいなものだからな。


 そして、俺はその政府機関の長、モフモフ大臣。つまり何が言いたいかと言えば、モフモフし放題、老若男女、全員モフモフし放題!! だってお仕事だから。仕方ないよね~ふふふっ!


「せ、先輩……わ、私……」


 不安げな様子で毛先を遊ばせる美琴。ふふっ、わかっているさ。


「どうしたんだ美琴副大臣? 時間もないし、人手も足りない。きっちり手伝ってもらうからな」

「ふ、副大臣!? あ、ありがとう先輩!!! 私、頑張るから!」



 もふもふもふももふもふももふもふももふもふもふ……一心不乱にモフる。なにせ、人数が人数だ。


「あははははははははははは!!!」

「ははははははははあははは!!!」



「二人とも楽しそうね……」

「シルフィ、これはお仕事だよ? 一応ね」

「本当にこればかりは、理解できんな……」


 呆れ顔のシルフィ、サラ、エヴァ。


「くっ、羨ましい……しかし、これは御主兄様の大切なお仕事。邪魔をするわけには……」

『刹那さまに、モフモフになれる魔道具を開発していただく必要がありそうですね……』


 一方でとても悔しそうなクロエとヒルデガルドであった。

 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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