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神狼のララ


「ここが神狼さまが直前まで住んでいた場所ですね」


 パルメの案内でやってきたのは、ララさまが最近まで住んでいた場所。


 いかにも高級住宅という感じでもなく、ごく普通の一軒家。ただし、なぜか無性に住みたくなってくるのは、この住宅に付いている神狼の加護のおかげだろう。


「なあパルメ、もしかしてララさまが住処を頻繁に変えるのって……」

「はい、神狼さまが3日住むと加護がもらえるとあって、家主からの依頼が絶えないのです。自然災害はもちろん、虫除け、さらには住む者の健康も守ってくれますから」


 すごいな神狼の加護。俺の使い道が微妙な保護とは大違いだよ。


「なるほど、でもそんなに住処が頻繁に変わったんじゃ落ち着かないだろ?」

「どうなんでしょうね。ご本人は、寝床が提供されて、食べ放題らしいので、それなりに楽しんでおられるようですが……」


 ふむ、お互いにウインウインということか。ならば気にする必要もないのかもな。別に強要されているわけでもないのだろうし。



「ルルさまどうだ? ララさまの匂い辿れそうか?」

『うむ、まだはっきりと匂いが残っているから、これなら辿れるだろう』


 体格の割に大きなモフモフの尻尾をぶんぶん振るルルさまが、嬉しそうにこたえる。



***



『うむ、ここだな。ここに母さまはいる』


 ルルさまが匂いを辿り、行き着いた先は……


「なあパルメ……ここってもしかして……」

「はい英雄さま。もしかしなくても妖精宮ですね」 

 

 骨折り損のくたびれ儲けって奴だな。あんな恥ずかしい思いしたのに。


 門番に話を聞くと、妖精王に招かれてやってきたらしい。だったらさっき会ったときに言ってくれれば良かったのにな。




「いやあ、ごめんねカケルくん。リブラおば……姉さまに殴られて記憶が飛んじゃってね?」


 ですよね。あれは見ているこちらが痛かったですよ?



『……フェリル、あの者がお前が話していた新しい英雄か?』


 小山のような巨大な白銀の狼が地鳴りのような唸り声を発する。並の者なら、気絶するほどのプレッシャーだ。これが……神狼。



『母さま、ルルです。お久しぶりです。英雄の番として里帰りしたことをお許しください』


 全面服従の意味を込めて、お腹を見せて寝転がるルルさま。人型のままなので実にシュールだ。


『ルルか……久しいな。英雄を番にするとは、見事なり。これでお前もようやく神狼となる資格を得たな』

『あ、ありがとうございます。母さま』


 神狼となる資格? 


「神狼ララさま、異世界の英雄カケルです。お会いできて光栄です」

『うむ、溢れんばかりの魔力に加えて神気まで感じる……お主、ただの英雄ではないな?』


 さすが神狼、隠せないか。ふふっ。


『我の知る限り、最悪のエロ性人よの。無数の雌の匂いがぷんぷんしおるわ』


 そっちですか、そうですか。たしかにそうですけれども。言い訳一つ出来ませんけれども。


『クククッ、良い、良いな。やはり強い雄はそうでなければ。久しぶりにたぎる……』


 ララさまは、俺を見て舌なめずりをする。豪の者でも、失禁待ったなし。捕食される未来しか見えない。


『ああ、もう我慢できぬ。ルル、掟にしたがい味見させてもらうぞ?』

『はい、母さま。どうぞ』


 ルルさま!? どうぞって言われましても……逆に味見しちゃう的な? んふふ。


『ペロペロペロペロ……ふう……美味い……ペロペロペロペロ……ふはっ、これはたまらんな』


 あの……本当に味見なんですね。ははは。


 巨大な舌に舐めまわされてべちゃべちゃになる。はっきり言って気持ち悪い。



『う……がっ!? ぐう……』

『母さま!? だ、大丈夫ですか!?』


 俺の全身を容赦なく舐めまわしていたララさまだったが、突然苦しみ始める。


 え? なんで……俺お腹壊すぐらい汚かった? 神水飲みます?



 ララさまの身体が淡く輝きを放ちながら、徐々に小さく縮んでゆく。やがてそのシルエットは、狼ではなく、人型に集束すると、輝くような銀髪の幼女がちょこんと座っていた……全裸で。


『うう……なんという神力だ。我の腹を満たすだけではなく、身体まで若返らせるとは……』


 ララさまは、その銀色の瞳でじっと俺を見つめると、その潤んだ瞳を揺らしながら思い切り噛みついてくる。甘噛みとかそんな可愛らしいものではなく、マジ噛みだ。


 俺でなければ、まちがいなく挽肉になっているであろう執拗な口撃。


 だが……全裸の幼女にマジ噛みされるのって……良いよね? なんかいけないものに目覚めそうで困る。自然と頬が緩み、口角が上がる。傍から見れば、間違いなく真性の変態だ。 



「あの……ララさま? ところで、何でかじっているんです?」 


 別に止めようと思った訳ではない。間が持たなかっただけだ。


『ん? だから言ったではないか、味見だと。噛むと旨味が染み出すのだ』

 

 スルメイカみたいだな俺。


「そんなことしなくても、こうすれば――――」


『んほおおお!? す、すごい、激しい……お、おかしくなりゅうぅぅ!!』 


 ちょっとやりすぎたようだ。全裸でピクピク痙攣しているララさまが色んな意味で危険だ。


『よ、よし……決めたぞ。英雄、お主を我の番にしてやる。喜べ』


 おもちゃを見つけた子どものように、無邪気に抱きついてくるララさま。


「嬉しいんですけど、その身体では子を産めないのでは?」


 神力を摂取し過ぎて、もはや幼女ではなく幼児だ。さすがのオールラウンダーでも限度と言うものがある。


『む、たしかにな。英雄、神力ではなく魔力を寄越すのだ!』


 言われたとおり、魔力を注入すると、ララさまの身体が魔力量に応じて成長してゆく。


 

 くっ、ここからはミリ単位のコントロールが要求される。俺にとってのベストポジションを探る必要があるからな。



『こ、こら英雄、そんなに凝視されたら恥ずかしいではないか!!』


 え? いまさら!?



*** 



「ふぅ……ようやく納得のいく仕上がりになったな」


『……ちなみになぜ成長を巻き戻したりしたのだ?』

「まな板を守るためです。そこは譲れません」


『まな板? よく分からないが、この姿がお主の好みだと言うことはわかる。では始めるとするか』

「始めるって何をです?」


『子づくりに決まっているだろう。ちょうど良い、ルルにも教えてやろう』

『ふぇっ!? わ、わかりました。英雄……よろしく頼む』


 ふふっ、仕方ない。母娘まとめて面倒みてやるぜ!!


「カケルくん……出来れば場所移してね?」 


 はい……そうですね。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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