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おでこにキスならセーフです。


 リリカと思いのほか日本の話で盛り上がってしまった。やはり同郷人は良い。


 レーニャさんが楽しそうに聞いていたのは恥ずかしかったけどな。



「それでは、図書館へ案内しますね、カケルさん」


 リリカの案内で図書館を目指す。一応王宮内の敷地内ではあるが、完全に建物は別らしい。一旦外に出ると、百メートルほど先にドーム状の建物が見える。


 なるほど……これは完全に異世界人の仕事だな。あちこちに見覚えが有り過ぎるデザインが使用されてるし、できればもう少し妖精宮の雰囲気に合わせて欲しかったなと思わざるを得ない。


「……ですよね。私も初めて見た時、うわあ……って思いましたもの」


 リリカもそう思っていたらしく、苦笑いだ。


「…………ケルトニアの初代国王は異世界人」


 レーニャさんが答え合わせをしてくれる。道理で王都レガリアだけ、やたら親近感があった訳だ。


 今では妖精好みに変化しているが、ところどころに日本式の建物が残っている。



 ようやくケルトニアの王家が勇者学院に留学する理由がわかったよ。大陸との交流がほとんど無いのにおかしいと思ってたんだよな。


 この世界の文化がやたら広範囲に共通点が多いのは、異世界人が世界構築に多大に関わっていたからだろうな。しかもおそらく全員日本人。そりゃあ似てくるはずだ。さらには、どうやらリリカたちみたいな記憶を持ったままの転生者も一定数いるみたいだし。



「ところで、カケルさんは、禁書庫になんの用事があるのですか?」


 うっ、そういえばアラフォー妖精の名前すら聞いていなかったな。


「…………リブラさまに会いに行く」

「え? リブラさまって……まさか最下層に?」


 よくわからないが、リブラというのがアラフォー妖精の名前らしいな。しかし、図書館なのに最下層とか、ダンジョンかよ!?


「ああ、パパ兄さまに様子を見て来てくれって頼まれたんだ」


「あの……カケルさん? パパ兄さまって何?」


 怪訝そうな顔をするリリカ。ですよね〜。


「…………フェリルのこと」

「は? どうしてお父さまがパパ兄さまになるんです?」


「ほら、さっき情報渡したろ? フェリスとアリエスがお嫁さんになるからさ」

「ああ……なるほど、お父さまなら言いだしそうですね。でもね、カケルさんも気を付けないと大変なことになりますよ?」


 ジト目でメガネを直すリリカ。女の子がメガネを直す仕草っていいよな。


「……軽蔑したか? ほら、俺婚約者たくさんいるし」

「いいえ、カケルさんなら仕方ないかなって思いますよ。お父さまに比べればましです。そろそろ自重した方が良いとは思いますけどね」


 ありがとうパパ兄さま。貴方のおかげでリリカに軽蔑されずにすみましたよ。比較的。


 たしかに父親のせいで苦労したであろうリリカの忠告は重い。俺も真剣に考えないとな。



「…………リリカもお嫁さん」

「へ? ち、ちょっと待ってお母さま、いつの間にそんな話になってるの!?」


 突然のレーニャさんの発言に慌てるリリカ。


「…………ん、最初から」


 どうやら、始めからリリカと俺を会わせるつもりだったみたいだな。


「ひええ……カケルさんもにやにやしてないで、何とか言ってくださいよ~」


 必死に縋りついてくるリリカは本当に可愛いな。


「ん? 俺はうれしいけどな? っていうか他の男にリリカを渡したくない」

「はうっ!? にゃ、にゃにを言ってるんですか! 私は一生本を読んで暮らすと決めているんでしゅ! 家事なんて無理ですよ?」


 なるほど、どうやらリリカは、日本のお嫁さんのイメージが強いのか。


「大丈夫、家には優秀なメイドがたくさんいるから、今までどおりで構わないぞ。図書館司書も続けてくれ」

「へ? そうなんですか? それならお嫁さんになります!! エヘヘ」


 変り身早いな!? どんだけ本が好きなんだよ。


「よろしくな、リリカ。それでさっそくなんだけど……」

「き、キスは駄目ですよ!?」


「い、いや、違うんだけど……そうかキスは駄目か」

「ふぇっ!? ま、まあ、結婚するなら、おでこならセーフです」


 おおっ……実に新鮮だ。この世界の女性は基本的にグイグイ来るからな。


「ところで、リリカに会わせたい人がいるんだ」

「え? 私にですか?」


「今、連れてくるから待っててくれ。すぐ戻る」



***



 すぐ戻ると言い残して消えてしまったカケルさん。もちろん、お母さまも一緒に。


 でも、この世界に知り合いなんて居ないし……ハッ!? もしかして、いや間違いなくご両親よね? あわわ、どうしよう。今日に限って1番ダサい恰好しているんだけど!? って戻ってきた!! 早っ!?



 ん? 見知らぬサキュバスの女の子を連れている……どう見てもカケルさんのご両親じゃない件。誰?



「駆さん、この人が?」


 チラチラこちらを伺うサキュバスの女の子。


「あの……覚えてるかな、私、碧井三葉(あおいみつは)だよ」


 その名前を聞いた瞬間、中学時代の図書室での記憶が甦る。


 忘れるものか。ずっと一緒に並んで本を読んだ友の名前を。


「覚えてる……忘れるわけないでしょう……」

「百合ちゃん……」



 まさかヨツバとリリカが親友同士とはな。記憶を覗いた時は驚いたよ。


 俺にとっての美琴や刹那みたいに、向こうでの繋がりがある人がいるのは本当に心強いからな。


「…………泣ける」


 うん、レーニャさんもめっちゃ泣いてる。背中がびしょびしょですよ?



 サキュバスと妖精。姿形は変わっても、2人の関係は変わらない。


 カケルの目には、抱き合う2人の姿が中学時代の記憶と重なって見えていた。

 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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