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最後のアーティファクト


『……こうなった以上、万に一つも貴様に勝ち目はなくなった』


 第三の眼の力だろうか? 潰したはずの双眼が再生する。


『超再生を記憶しました』


 おお、なかなか素晴らしいスキルをありがとうバロール。俺にはあまり必要ないが、眷族となった婚約者たちの安全性が高まることは間違いないからな。



「悪いなバロール、勘違いさせたなら謝るよ。俺は……お前が思っているより100万倍は強いんだぜ?」


 しまった、勢い余って言い過ぎた。さすがに100万倍はないな。俺は小学生か!?


「きゃあ!! 素敵です、英雄さま! そんな奴ボコボコにしてやってください!」


 まあでも誤差の範囲だ。王女さまの期待に応えないと英雄の名が廃る。


『……ほざけ、串刺しになって死ね!!』


 バロールの3本の角が触手のように伸び、鞭のようにしなって襲い掛かってくる。


 まるで3本の角が別々の意思を持っているかのように不規則な動きで死角から俺の体を貫かんとしてくるが……なぜだ……なぜせっかく持っているその痛そうな金棒使わないの!? 杖なの? 飾りなのそれ?


 とはいえ、威力はとんでもない。直撃すれば、竜種であっても無事ではすまないだろう。当たればの話だが。


『くっ、なぜ当たらないのだ……』


 かすりもしない現状にうめくバロールだが、はっきり言おう、遅いんだよ。ちまちま遠距離攻撃なんてしてないで、金棒使え、金棒を。3本の角による攻撃をかわしながら接近し、3本の角を手刀で根元から断ち切る。カモン金棒。


『ぎゃあああああああああああ!? つ、角がああああ!?』


 激高したバロールの前に相対する。これで金棒を使わざるを得まい。


 だが、奴はあろうことか金棒を投げ捨て殴りかかってくるので、投げ捨てた金棒の落ちている場所に蹴り飛ばす。気づけバロール、お前の最強武器を思い出すんだ!!


 バロールは、金棒を拾い上げると、棒高跳びの要領で金棒を使って高く跳躍、蹴りを放ってくる。くっ……この野郎、金棒は意地でも使わないつもりか!?


 神速で金棒を拾うと、バロールをバチコーンと打ち返す。うわあ……えぐいなコレ。めっちゃ痛そう。


『ぐ、グフッ!? 金棒を使うとは卑怯なり……』


 え……これ使っちゃいけなかったの? よくわからないけどごめんね。

 

『だ、だが、なぜだ……なぜ貴様の攻撃が通じる!?』

「……だから、攻撃じゃないって言ってるだろ?」

 

 たぶんバロールには何が起きているかわからないだろうな。


 スキルが支配するこの世界では、効果範囲がきちんと決められているんだよ。攻撃っていうのはな、物理攻撃の場合、最大威力の10%未満は攻撃判定されない。じゃないと、肩もみとかマッサージもできないだろ? 例えば、熊はじゃれているつもりが致命傷的な? 


 魔法の場合は、攻撃系統じゃない魔法はもちろん、最下級攻撃魔法の消費魔力3以下の魔法、例えば生活魔法なんかは、殺傷力があっても攻撃扱いされないんだよ。


 例えば、こんなふうに、『点火』


 種火を生み出す消費魔力1の魔法『点火』が、バロールを業火で焼き尽くす。死なない程度に手加減はしているから安心しろ。


『ぎゃあああああああ!? 馬鹿な馬鹿な馬鹿な……』


 正直、最大威力の10%どころか、1%でもオーバーキルもいいところなんだよな。たぶんデコピンしたら、上半身爆散して、バロール即死すると思う。しないけど。



「まあ、お前も被害者みたいだからな。助けてやるさ……なあシグレ?」


『はい、主殿。拙者にお任せを』


 俺の美しき相棒、デスサイズシグレがバロールに巣くう邪神の因子を切り裂く。


 しかし、よくもまあこれだけの因子に憑りつかれて意識を保っていられたな。さすがは邪王。



***



『……我を殺さないのか? 英雄』


 憑き物が落ちたかのように優しい顔つきになったバロール。


「死にたいなら手伝ってやるが、そのつもりはないぞ」

『……我はどうすればいい……もはや償えないほどの大罪を犯してしまったのだ』


「償いきれないなら、償えるところまで償えばいいさ。やり直すことに遅すぎることなんてないんだからな? とりあえず、ギガン島の連中をまとめてくれ、一応俺の領地になっているらしいんだ」

『わかった、巨人族は英雄に忠誠を誓う。できることなら何でもする。遠慮なく言ってくれ』


 これで、とりあえず巨人族の方は大丈夫だろう。あと残る問題は――――



「それで、結局最後のアーティファクトは何だったんだ? エリック」

「ああ、それはですね、どんな力を持っているかよくわかっていないのですが、古い本のようなものです。古代異世界文字で書かれていて、封印を解けば災厄が世界中に広がると云われている恐ろしいものです」    

 ……古代異世界文字……胡散臭さ100%だな。


『おおっ、それなら我が持っているぞ。これがそうだ』


 バロールが取り出したのは、1冊の大学ノート。よく燃えなかったな。


「どれどれ……こ、これは……!?」



 間違いなく深海のクロレキシノートです。ありがとうございます。


 ご丁寧に、読んだら死ぬまで呪ってやると書いてある。自分で極秘とか書いて恥ずかしくないのだろうか? いや、だからこその黒歴史か。恐ろしいな。っていうか、何冊あるんだよ、奴のクロレキシノート。弱点ぐらい処分しておけよな……割とマジで。


 これは俺が持っていた方がいいだろう。あとで妖精王に交渉しないとな。


「大丈夫よ、どうせバレないから、そのまま英雄さまにお渡しするわ」


 まあフェリスがそう言うならそうしようか。ケルトニアにとって、リスクばかりで他に使い道もないものだしな。

 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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