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南の島のひととき

 無事テティスとの縁談も成功し、シェーラとは、彼女が成人する一年後までは婚約という形をとることとなった。

 

 そして、それとともにアビスとエメロードラグーンの国交再開が決定した。今回のことをきっかけに、両国の歴史があらためて見直され、結果として友好という形になったのは、とても嬉しい。

 

 結界の維持強化のための第一歩として、今夜はエメロードラグーンの王宮に両国の王族が集まり晩餐会を行うことになっている。


 あわせて、両国参加のお見合いパーティも開催される予定で、当然俺も参加……しようと思ったら、全員に止められた。半分冗談だったのに、そんな必死になられたら傷付くよ? え? 半分は本気じゃないかって? 揚げ足取りは止めるんだ。 




「ふう……水の中で呼吸できるとはいっても、やっぱり外は気持ちいいな」


 照りつける太陽と、南国特有の湿気を含んだ風を浴びながら、つい、そんなことを言ってしまう。



「私たちは、逆に水が無いと少し不安ですけどね」


 残念ながら、テティアやアクアたち魚人族にとっては、快適とまでは言えないようだ。まあ、慣れの問題もあるだろうけどね。



 とりあえず、晩餐会までは自由時間ということになった。日はまだ高い。


「先輩、南国バカンスだね」

「そうだな、たまにはゆっくりするのも悪くない」


「ねえ、先輩、二人でいちゃいちゃしても良いんだけど、せっかくだからみんなも呼ぼうか?」 

「……水着回ってやつだな、美琴?」

「……御意」


 というわけで、来れる婚約者大集合。即席で作ったプライベートビーチに豪華な海の家を開設。


 たちまち水着美女があふれる素晴らしい桃源郷が現出することとなる。


 だが、待って欲しい。女性にとって日焼けは大敵。ミヅハ印の日焼け止めウォータージェルの出番だ。全身塗り残しがないように、丹念に仕上げる必要がある。


 水着の下も塗らなければならないとなれば、さすがに一人では大変なので、助手に美琴を指名する。


 ちなみに、水着は完全UVカットなので、ウォータージェルを塗る必要はなかったのだが、ミヅハのファインプレーにより、俺がその事実を知ったのは、全てが終わったあとだったという忖度。



「……素晴らしい。これも先輩の人徳の賜物ですな?」

「ふふふ、褒めてもトロピカルジュースしか出ないぞ?」



 全員分のウォータージェルを塗り終えた俺と美琴は、心地の良い疲労感と高揚感に酔いしれていた。


「……楽しかったな」

「……楽しかったね」

「またやろうな」

「そやな」


 そして、渇いたのどにはキンキンに冷やしたジュースが染みる。


「わーい! うわっ!? これ美味っ!! しかもめっちゃ冷えてるし、幸せ~」


 特製トロピカルジュースに夢中の美琴。エメロードラグーンの果物、めちゃくちゃ美味しいんだよな。



「大海原さん、トロピカルサンデー二つください」

「はいよ!」


 アリスとひめかにソフトクリームをミックスしたトロピカルサンデーを作って渡す。ふたりともフリルが付いたワンピースの水着が良く似合う。


 ちなみに、俺はビキニよりワンピース派だ。微乳にはやはりワンピースが至高。ただし、ゆるゆるのビキニアーマーときつきつのビキニアーマーは別腹だと明言しておく必要があるだろう。



「申し訳ございません、私にも同じものを……」

「いつもありがとうなアイシャ。はいどうぞ」


 アイシャは申し訳なさそうだが、休んでもらうのが目的なんだから遠慮はいらないぞ! 彼女の水着は、メイド服をアレンジしたデザインで、ひたすらエロ可愛い。普段からこの格好で働いてくれないかな? なんて思うほど素晴らしい。


 そんなことになれば、当然仕事が手に付かなくなるだろうが、なあに、俺には平行動作がある。



「あ、あの……地上では、みなさんこんな露出が多いものなのでしょうか?」


 テティスたちアビス組が着慣れない水着に恥ずかしそうにしている。初々しくてたまらないな。


「いや、これは特別だから心配しなくていい。みんなとても似合ってるよ」

「えへへへ……そうですか? 嬉しいです」


 おい……誰だ? 未成年のシェーラにこんな際どい水着を着させた天才は? 先生怒らないから手を挙げなさい。


(……私です、お兄様先生!)

(やはりか……さすがミヅハと言っておこうか。後で一緒に補習するから体育館の裏に来るように)


 そんなミヅハの水着は特別製で、俺の力をもってしても、中々透視できなくてもどかしい。


 くっ、やるじゃないか……障害が多いほど燃えるのが男心。やってやるぜミヅハ! お前のすべてを必ず覗いてやる。うん、格好つけても言ってることは完全に変態の所業だな。まあやるけどね。


(お兄様、この水着は、繊細な神気コントロールがないと見えませんからね?)  


 悪戯っぽい笑みを浮かべて挑発するミヅハ。なるほど、訓練にもなるし有り難い。


(これはご褒美が必要だなミヅハ)

(ちなみに、日焼け止めウォータージェルは美味しく食べられます)

(……お前は神か?)

(はい、お兄様だけの精霊神ですから!)



 え? 俺は休まなくていいのかって? 今更な質問だけど、俺はみんなの笑顔と水布製の水着に癒されているから良いんだよ。



「なあ、頼むよ駆くん、俺にも桃源郷、少しは味合わせてくださいよ」


 皿洗いをしている雑用係のベルトナーくんが、バックヤードでなにやらうるさいので、仕方なく許可を出す。


「ただし、このサングラスをかけることが条件だからな?」

「やった、ありがとう……って全然見えないじゃないか!? 真っ暗だよ!?」

「そんなはずはない。心の目が真っ黒に曇っているんじゃないのか? それは心を映すサングラスだから、聖人のような心になればクリアに見えるぞ。まあ性人のベルトナーくんでは難しいかもしれないが」


「そ、そんなあああああ!?」


 魂の叫びを聞き流しながら、俺はみんなのデザートをせっせと作り続けるのだった。

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(作/秋の桜子さま)
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