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やりたい放題なのに無料?


 身体が綺麗になった後は、いよいよ入浴タイムだ。


「湯船に入る時は、湯衣を脱いでからお願いしますね」 


 そうだろう、そうだろう。やはり風呂は全裸が基本。母の胎内にいた頃に立ち戻り、魂を解き放つことで癒やしを得ることこそ至高なのだから。



「旦那様、すまないが脱がせてくれないか? 幼い頃から、自分で着替えたことがないので出来ないんだ」


 セレスティーナはお姫様だから仕方ないよな。よしよし、俺がじっくり丁寧に脱がせてあげよう。


「あ、旦那様……そんなじっくり脱がさないでくれ……くっ、指が当たってるから、んんん〜」


(くっ、セレスティーナ、騎士団長になってからは毎日自分で着替えてたじゃないですか! 意外に甘え上手なんですから……) 


 クロエが先を越されて内心歯噛みする。だが、落ち込んでいる暇など無い。


『カケルさま、私も他人を着替えさせることは得意ですが、自分の着替えは出来ないのです。主のお手を煩わせる駄目なメイドをお許しください』


(ここまで堂々とウソをつくとは敵ながら天晴ですね……さすがはヒルデガルド)


「まったく悪いメイドだ。少しお仕置きが必要かもしれないな」


『くっ、はあああ!? か、カケルさま、お許しください、あ、ああああああ!?』


(よし、今度こそ私が――――)


「カケルさま……猫獣人は水に弱いにゃん。脱がせて欲しいのにゃ!」


(おのれミレイヌ、いつも普通にお風呂に入っているじゃないですか!)


「そうだよな、気付かなくて悪かった、おいでミレイヌ」

「にゃにゃ!? 脱がせ方がやらしいにゃあ!? ふぇっ、どさくさに紛れてモフったら駄目ニャアあああ!?」


(うぬぬ……またこのパターンですか……)


「大丈夫だよクロエ、私が脱がせてあげるから、ぐふふ」


 後ろから両胸をがっしり掴んでくる美少女大好き勇者。


「い、嫌あああ!? 御主兄様、美琴さまが私を脱がそうとして……」


 涙目で抱きついてくるクロエと、変態美琴。うん、美しい光景だ。記憶フォルダにしっかり収める。


「二人とも俺が脱がせてやるから安心しろ」


「ご、御主人様? ちょっと待って……きゃうん」

「うはっ、先輩、そんなことしたらクロエと色んな所が触れて……イヤあああ! 最高」


 二人まとめて脱がせたら、触れて擦れて大変なことに。俺と美琴大歓喜。



「……駆さん、早くお風呂入りませんか?」


 浮かれる俺たちを、ジト目で見つめるヨツバ。ごめんなさい。って、ヨツバもまだ脱いでないじゃないか!?


「だって皆んなの前で脱ぐなんて無理!」

「ヨツバ……俺たちはもう家族なんだから、何も恥ずかしいことなんてないんだぞ?」

「か、家族……たしかにそれなら大丈夫かも……」


 早速、ヨツバの湯衣を脱がせるが――――

 

「ひっ!? ふ、触れちゃ駄目、スキルで敏感になってるから!」


 ヨツバのスキル『運命の赤い糸』は、運命の相手と少しでもエッチな気分で触れ合うと感度100倍になる素敵スキルだ。ごめんなさい。触れないように脱がしますからね。



***



「うはあ……これは気持ちいいな……」

「これってまるでジャグジーだよね。テンション上がる!」


 美琴も大喜びだが、実際これは素晴らしい。是非、我が屋敷でも採用しようと思う。


 キメの細かいミクロの泡が、勢いよく噴射されて、全身がシュワシュワ気持ち良い。


 そういえば、雨水を蓄えて浄化するこの浮島全体のシステムもすごいよな。きっと天才な可愛い錬金術師の仕事に違いない。


 だが、この泡風呂には致命的な欠点があるのも事実。


(くっ、せっかくの裸身が泡で見えないじゃないか……)


 あちらを立てれば、こちらが立たないというやつだな。やはりヒルデガルドの透視が欲しい。


『……カケルさま、私が欲しいのでしたら、いつでもおっしゃってくださいね? 準備は万端ですから』


 くっ、ヒルデガルドのやつ、泡で見えないのをいいことに、どこを握っているんだ。あとでお仕置きが必要だな。


(はっ、そうか……見えないからこその良さもあるんだな……)


 俺は本質を見誤っていたようだ。許してほしいジャグジー=セントーよ。


(そんなお兄様に、ミヅハから提案があります)

(聞かせてもらおうか……ミヅハ)


 ミヅハの言うことに間違いはない。それはこの世界で数少ない真理といってもいい。一見間違っているように感じたとしても、それは最終的に俺の為になるのだと分かっているから、疑問など抱く余地はないのだ。


(……ありがとうございます、お兄様。よろしければ泡になりませんか?)

(泡になる? どういう意味だ、ミヅハ?)

(私を媒介として、一時的にこのセントーの湯と一体化するのです。つまり、お兄様は、湯そのものになるのです)

(な……なんだって!? それじゃあ、やりたい放題じゃないか?)

(はい、やりたい放題です。しかもそれだけやれて、今なら無料です)

(なんと……無料(ただ)!? 契約しよう。今すぐに)


 

 結論から言おう。これはヤバい。新世界だった。ミヅハとほぼ完全に一体化したことによる、えもいわれぬ多幸感。


 精霊の感覚の一端が分かった気がするよ。


 そして、なるほどなとも思う。こんな感覚を常に持っている精霊が、些細なことに関心を持つはずがないなとね。


「だ、大丈夫ですか? 公爵さま?」


 そして、俺は湯あたりして倒れている。ちょっとやり過ぎたんだ。後悔はしていない。



 明日またやろうと思えるくらいには前向きだよ。




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i566029
(作/秋の桜子さま)
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