いずれ神になる男
(くっ、予想はしていたけど、アトランティアを甘く見ていたとしか言いようがないな)
リリアとサキュバス軍団との連戦を終えると、すぐに晩餐会だ。
きっとおいしく食べられるだろうな。今日一日めちゃくちゃ運動したし。
「みんな、ただいま~!」
ギリギリでヨツバも間に合った。どうやら無事お店を辞めることが出来たらしい。
それどころか、すごく喜んでくれて、お祝いまでしてくれたんだってヨツバが感激していたよ。マスター良い人だよな。行かないけどね。
「さて、ヨツバ、これに着替えてくれ」
彼女のために作った晩餐会用ドレスだ。彼女の若葉色の髪色に合わせたグリーン系のドレスを手際よく着替えさせるメイドさんたち。
「ええっ!? 私も晩餐会出るの? ダンスとかマナーとか全然わかんないよ?」
「大丈夫。ヨツバは美味しいものを食べていれば良いよ。社交系は、俺とリリスたちに任せておけばいいから」
「そ、そう? それならいいけど……うわっ、何このドレスめっちゃ高そうだよね?」
ドレスを見てビビるヨツバ。
「そうね。カケルのオーダーメイドだから、白金貨10枚はくだらないでしょうね」
「……白金貨10枚? 無理……怖くて着れない」
可哀想に、ガタガタ震えるヨツバ。リリス、脅しすぎ。
「俺が作ったドレスなんだから、大丈夫だ。防汚、防水、防臭、防刃、防毒、防魔法の機能が付いているし、万一破れてもすぐ直せるから」
「本当なんだよね? 弁償とか出来ないからね?」
中々信じないので、美琴のドレスを破ってから直して見せると安心してくれた。
「先輩……なんで私のドレス破いたのよ?」
ふくれっ面の美琴は可愛いな。
「ごめんな? 美琴のラッキースケベが見たかったんだ」
「ぷっ、何それ? 仕方ないから許してあげる」
助かるよ美琴。他の子でやったら泣かれそうだったからな。
「カケルさん、私までよろしいんですか?」
カミラさんのドレスは大人っぽい色気のある紫色。
「すごく似合ってますよカミラさん」
「ふふっ、ありがとう。せっかくだから楽しませてもらうわね」
「……カケルさま」
ジト目でリノがにらんでいる。どうやら着替えが終わったようだな。
「おおっ、似合ってるぞリノ」
「本当に……可愛いわリノ」
「カケルさま、リリスさま、嬉しいです……ってなるわけないでしょうが! 何ですかコレ? 絶対ドレスじゃないですよね? なんか茶色いし、モフモフしてるし、間違いなく獣ですよね?」
「そうだな……それはモグタンの着ぐるみだ。ちなみにモグラの着ぐるみだぞ?」
「うえっ!? やっぱりドレスじゃないじゃないですか! 意味わかんないです」
ぷんぷん怒っているリノが可愛い。
「そっか……せっかく似合うと思ったんだがな。大精霊の着ぐるみなんて世界の誰も着たことがない超レアな衣装なんだけど。そうか、リノが着ないなら俺が着ようかな」
「ふえっ!? そ、そんなに? わ、わかりました。着ます、着させてください、お願いします!」
「うわあ……リノさん可愛い!」
嬉しそうに抱き着くアリサたちに満更でもない様子のリノ。
しまった……やはり俺が着るべきだったか……後悔先に立たずだな。
結局、晩餐会では、リノの着ぐるみが大好評となり、それからというもの、アトランティアの晩餐会は、着ぐるみを着て参加することが伝統になってゆくのだが、この時のカケルたちは、まだそのことを知らない。
***
晩餐会が無事に終了し、俺はリリアに呼び止められる。
『……カケルくん、ちょっと神界にきてくれるかな?』
「イリゼ様、何かあったんですか?」
とりあえずリリアを連れて部屋に入ると、そこはいつもの白い世界。神界の景色だった。
そこに佇むイリゼ様の美しさと可愛さに衝撃を受けるしかない。美人は3日で飽きるなんていう言葉は、本物の美の化身を前にすれば何の説得力も持たないのだ。
『うふっ、私の紹介嬉しいわ。とりあえず……』
妖艶な笑みを浮かべながら、ロープを脱ぐと、ビキニアーマー姿が現れる。
くっ、なんていうプレッシャーだ。ここが神界でなければ、何回死んでいたか分からない。
『ねぇカケルくん、私の防御力……ゼロにしたくない?』
したいです、イリゼ先生!
だが――――
外れない……だと!?
『ふふっ、女神の防御力を舐めない方がいいわ、諦めるなら今よ?』
嫌だ、諦めるなんて出来ない。目の前にお宝があるのに引き下がる怪盗がいるかよ。
うう……あと少し、あと少しで何か掴めそうなんだ……
(カケルくん……なんていう執念と集中力なのかしら……ゾクゾクしちゃうわ……)
考えるな、感じるんだ、余計なものを全て捨てろ! 魂を燃やすんだ!
『神級スキル、超集中、取得しました』
『神級スキル、超理解、取得しました』
『神級スキル、超洞察、取得しました』
『神級スキル、超器用、取得しました』
『神級スキル、超認識、取得しました』
『神級スキル、超忍耐、取得しました』
『神級スキル、超天才、取得しました』
うおおおおっ!? 行ける! 今の俺なら……
『な!? ち、ちょっとウソでしょ? い、イヤああん!』
やった……遂に……な!? 嘘だろ……
『ふふっ、残念だったわね? まさかビキニアーマーを外されるとは思わなかったけど』
ビキニアーマーの下にはヒモアーマーというさらなる強敵の姿が。
ビキニアーマーを倒す為に、全ての力を使い果たした俺の頭に絶望の2文字がよぎる。
だが――――
顔を赤く染め、呼吸の荒いイリゼ先生。
そうだ、相手だって同じようにキツイんだ。下を向き膝をついている場合じゃない。
俺は――――
いずれ神になる男だ。
(!? これは神気? まさか……こんな早く?)
うおおおおおおおお! 行っけええええええ!!
『ウソッ!? イヤ、イヤああああああ!? 防御力ゼロになっちゃううううぅぅ!?』
ハァ、ハァ……どうですか、イリゼ先生?
『……私の負けね。さぁ、ご褒美よ、好きにして!』
嬉しそうなイリゼ様にダイレクトアタックだ。
むにゅ 柔らかい感触が……あれ? なんか違う?
『次は私……頑張って外してね、カケル』
ミコトさん……マジですか!?
『うええええええっ!? 酷いよミコちん、私はどうなるの?』
『そのまま待ってれば? 痴女先生?』
はははっ、やってやろうじゃないか! 俺の真の戦いはこれからだ!
ちなみに最終回じゃないですよ? え? 知ってる? そうですか。