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敏腕大臣秘書官ソルテ


(ふう……さすがに少し疲れたかな)


 この日最後の100人目のサキュバスちゃんを送り出し、公務を終えた俺は部屋を出る。



 疲れたといっても体力的な話ではなくて、ちゃんと一人一人と向き合って、話をした訳で、やはり精神的なものが大きい。


 最初に特命大臣の仕事内容を聞いた時は、そんな馬鹿なと思ったけれど、サキュバスの感覚では全く問題ないらしい。今回100人と話したけれど、みんなすごく前向きだったし、むしろ泣いて喜んでくれた娘も多かった。


 子どもに関しては、妊娠を望む場合だけ繁殖スキルを使用するつもりだったけど、意外なことに、結局全員が希望したから正直驚いた。みんなが種族を存続させたいって思ってるんだなってちょっと感動してしまったよ。俺の力で役に立てるなら、大臣になって本当に良かったと思っている。


 問題は、婚約者たちより先に子どもを作っていいのかという点だったが、サキュバスが生まれるまでの期間は3年と長い。後からでも先に出産できるということもあって、婚約者全員、快諾してくれたのだ。ちなみに、リリスとは公務に入る前にじっくりたっぷり時間をかけて子作りしたので問題ないと言っておく。


 きっと3年後、可愛い双子が生まれてくることだろう。待ちきれないよ。ちなみにサキュバスは卵生だから、卵が孵るまでの期間が3年だよ。


 だけど、今後、定期的に大臣としての職務をこなすとなると、今後はむしろ少子化よりも、俺の子が多すぎることの方が問題になるのではと思っている。まあ、今はサキュバスという種族を残す方が先決だから、先のことを考えても仕方ないと問題先送り、未来へ丸投げさせてもらうことにする。




「お疲れさまでした、大臣さま」

「ありがとう、ソルテさんもお疲れさま」


 案内係をしてくれた俺専属の大臣秘書官ソルテさんの頭を撫でる。仕方ないんだ。だってして欲しそうにしていたから。


「あの……もし……もし、まだ可能でしたら、私も……」


 そう言って頬を染めるソルテさんが可愛い。サキュバスには珍しいサラサラの銀髪がしっとり汗で濡れている。可哀想に完全に魔力酔いしているな。こんな状態で頑張ってくれていたのか。


「もちろんですよ。こう見えて、魔力と体力には自信があるんです。それにね……頑張ってくれたソルテさんのための時間ならいくらでも作りますよ」

「……大臣さま……では3分だけお願いします」


 銀色の瞳を潤ませて悪戯っぽく微笑むソルテさん。ほほう、3倍おねだりとは、中々やりますな。さすがは秘書官。エロいです。 


「……どうでもいいけど、あと3分待っていればいいのかな?」


 ちょっと拗ねているヨツバが可愛い。


「よろしければご一緒しませんか? ヨツバさん?」

「ふえっ!?」

 

 さすがは敏腕秘書官、エロすぎ有能すぎですね。


「そうだな、ただ待っているのも辛いだろうし、主に妄想的に?」

「な、ななな何を言って……ま、まあ、そこまで言われたら参加しないわけにはいかないか……婚約者の端くれとして」

 

 ヨツバもやる気になったようだ。さすが小説家。エロい。


「……あくまで取材なんだからね!」


 わかってますよ。可愛い小説家サキュバスの頭を撫でながら、仕事部屋に向かう。


 っていうか、この仕事部屋ってキリハさんと一緒に邪神と戦った部屋なんだよな。なんかすでに自分の部屋のような気がしてきたよ。 



「ああああああああ!? すごいです! 仕事忘れちゃううううううう!?」

「駄目……頭真っ白で何も考えられない……取材なのにいいいいいいいい!?」



***



「――――というわけで、彼女が涼宮四葉(すずみや よつば)だ。みんなよろしく頼むよ」


 ヨツバをみんなに紹介する。


「すごいよ先輩、私も読んでたんだよね、『サキュバス無双ハーレム』まさか作者と会えるなんて」


 そうか、やはり読んでいたか、心の友よ。


「あの……駆さん? この方、不知火美琴さんですよね?」

「え? ああそうだ。世界一のアイドル、不知火美琴で間違いない」


 俺のアイドルランキング一位は、美琴で不動だからな。


「えへへへへ~、先輩ったら、そんなに褒めたら駄目ですってばあ。もうっ、婚約者口説いて何するつもりなんです?」


 真っ赤になってふにゃる美琴が可愛い。何ってそりゃあねえ?


「……ああ、余計なことを聞いた私が馬鹿でしたね」


 ちょっとだけ拗ねるヨツバも可愛いな。


「何言ってるんだ。俺の中で世界一の小説家はヨツバだぞ」 

 

「えへへへへ~、駆さんったら、そんなに褒めたら駄目ですってばあ。もうっ、婚約者口説いて何するつもりなんです?」


 うむ、やはり似てるな。さすがラノベ界の不知火美琴と呼ばれていただけのことはある。



「……もしや、貴女が謎の人気作家『スズミヤ』なのか?」


 セレスティーナが、興奮しながらたずねる。


「……はい、私がスズミヤです」

「やはり! いやあ、お会いできて光栄です。出版しているものは全巻所有しているんですよ」


 どうやらセレスティーナも熱烈なファンらしい。やはり名作は世界を超えて愛されるものなんだな。


「え!? ぜ、全巻? あの、この方は一体?」

「セレスティーナは、アストレアの王女で、世界一の姫騎士だぞ」


「えへへへへ~、旦那様ったら、そんなに褒めたら駄目ですってばあ。もうっ、婚約者口説いて何するつもりなんです?」


 ああ、もう可愛いなセレスティーナ。抱きしめたいが、夜までぐっとこらえよう。


「あ、アストレアってあの大国アストレア? 駆さん、もしかして、この国以外でも王女さまを婚約者にしてるとか?」

「……ま、まあな、たいていの国の王女が揃ってるのは事実だ」 

 

「…………」


 やめて、ヨツバさん。そんな王女コレクターめ、みたいな目で見ないで!? 決して集めたわけじゃないからね? 



***



「本当に大丈夫か? もし大変そうなら、俺も一緒に行ってやるけど」


 ヨツバは、いま働いているお店を辞めてくるらしい。お店に迷惑かけてしまうだろうから、俺も一緒に行こうかって言ったんだけど、何故か止めたほうがいいと言われた。


「うちのマスター、男好きなんだよね。駆さんを会せるのは危険」

「……頑張ってな。何かあれば、リリスとリリアがいるから相談しろよ」



 ふう、危なかった。店の半径500メートル以内には近寄らないようにしようと決定する。話によるととても良い人みたいだから、仲良くしたいけど、リスク管理は重要だからね!

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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