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03 異世界の森

作品あらすじを少し手直ししました。短くわかりやすくを心がけたんですがはたして。


あと、評価&ブックマークしていただきありがとうございます。とても嬉しいです。

 

 意識がゆっくりと浮上してゆく。


 草の香りが鼻腔をつき鳥のさえずりが耳をくすぐる。重い瞼を上げると木々の隙間から日光が差し込んでいる。


 どうやら大の字で仰向けに寝ていたようだ。体を起こし、異常がないか確認する。問題なさそうだ。


 涙は乾いていない。意識を失っていたのは恐らく一瞬だったのだろう。涙を拭い頬を叩く。感傷に浸っている余裕は今の俺には無い。


 すばやく周囲を確認する。森だ。全く異世界感のない普通の森だ。やはり異世界に飛ばされると必ず森の中なのはテンプレなんだろうか? どうせなら、町の近くに飛ばして欲しかったが、ミコトさんに文句は言えない。海や砂漠のど真ん中とかじゃなくて良かったと前向きに考えよう。


 まずは現状把握と安全確保が最優先。考えるのは後だ。


 森は鬱蒼としたジャングルではなく、欧州のおとぎ話に出てきそうなタイプの森。下草も少なく、見通しも悪くない。今のところは特に危険な感じはしないけれど、いつ魔物に出くわさないとも限らない。


 とりあえず、ミコトさんから貰ったリュックから解体用ナイフを取り出し、腰に下げる。手持ちの武器は、今のところこれしかない。


 ところで、何を隠そう、このリュック、実はミコトさんの手作りだったりする。今着ている服もミコトさんとお揃いの死神の仕事着だ。この漆黒のローブはミコトさんのお下がりで、かっこいいし、良い香りがして、常にミコトさんに包まれてるみたいで幸せな気分になる。


 ……さてと、次は……能力の確認だ。


 まずは、ステータスオープン!


 おおっ! 本当にステータスが見える。ありきたりだけど、ゲームみたいだ。


【名 前】 カケル=ワタノハラ(男)

【種 族】 人族

【年 齢】 17

【身 分】 自由民

【職 業】 流浪人

【状 態】 良好


【レベル】 0

【体 力】 50

【魔 力】 500

【攻撃力】 50

【耐久力】 50

【素早さ】 50

【知 力】 500

【幸 運】 90


【スキル】 瞬間記憶 スケッチブック<1> デスサイズ<1> 

【加 護】 死神の加護 


 うーん、強いのか弱いのか全くわからない。あとスキルなにこれ?瞬間記憶ってもともと持ってる能力だし、スケッチブックって何?


 とにかく詳細をみてみよう。デスサイズとか何か強そうだし。



  ◆スキル『 瞬間記憶 』


  ユニーク級スキル。五感で感じたものを瞬時に記憶し、自分の物にすることが出来る。常時発動。


  ◆スキル『 スケッチブック 』


  ユニーク級スキル。倒した魔物をスケッチブックに描き、名を付けることで、召喚し、使役することができる。任意発動。


  ◆スキル『 デスサイズ 』


  ユニーク級スキル。死神の持つ大鎌を召喚し使役することが出来る。物理、魔法および霊体等にも有効。倒した生物の魂を切り裂くことで吸収し糧とする。任意発動。


 

 おおっ、念願の武器に攻撃スキル。ミコトさんへの愛がスキルとなったのだろう。スケッチブックもすごそうだけど、今は使えなさそうだ。瞬間記憶はいまいちよくわからないな。記憶するのと自分の物にするのと何か違うのか?まあ、常時発動しているらしいし、そのうち分かるだろ。


 さっそく使ってみよう。『デスサイズ』!


 中空に魔法陣が出現し、魔法陣から2メートルほどの長さの大鎌が出てくる。確かにミコトさんが使っていた大鎌とそっくりだ。


 ……アレ。届かないぞ。


 デスサイズは空中に浮いたまま落ちて来ない。ふむ、そういえば、説明に使役って書いてあった。命令すればいいのか?


「デスサイズ来い」 


 命令するとデスサイズが落ちて来る。これはかっこいい! 落ちて来たデスサイズを両手でキャッチ!

 するが――あまりの重量に体が悲鳴を上げる。


「グッグウウウ、お、重い、重すぎ」


 何とか受け止めたが、ヤバかった。格好付けて片手でキャッチしてたら、手首折れてたな。


 そういえば、デスサイズって無茶苦茶重いんだった。前に持たせてもらったら、まともに持てなくて、ミコトさんに生暖かい目で見られたんだっけ。2メートルの柄と、2メートルの刃渡り併せて4メートルの金属の塊なんだからそりゃ重いはずだ。


 こんな重いの使いこなせるかな……ん? 何だこれ。メモみたいのが貼ってある。


『カケルへ。スキル気に入ってくれた? 帰って来たら当分死神として働いてもらうから、しっかり使いこなせるようになって。追伸、魔力を流すと切れ味が良くなる』


 み、ミコトさん……俺の為に……。よしっ! 絶対に使いこなしてミコトさんに褒めてもらうぞ。メモは大切にしまっておく。


 でも魔力を流すって言っても、やり方がわからん。とりあえず、何か適当に切ってみるか。


 太さ3センチ位の枝を切ってみる。枝は見事に二つになった。切れたというよりも千切れただけだが。やはり魔力を流さないと駄目か。


 とにかく体を慣らさないと始まらない。力任せに振ってはだめだ。デスサイズの重さを利用する動きを意識しないと。もともと運動神経は悪くない。30分程の練習で、大分コツがつかめてきた。


 魔力については、いくらやってもうまくいかない。とりあえず保留だ。今出来ることに集中しないと。


 倒木に腰を下ろし汗を拭う。過ごしやすい気候で、野宿もできそうだが、夜の森で野宿は避けたい。せめて、明るいうちに雨露を凌げる場所を見つけないと命に関わる。もちろん人里へ出られれば言うことはないが。


 あらためて周囲を見るが、どちらを見ても変わり映えのしない森が続いている。このままじっとしていても始まらないので、なるべく木が少ないほうへすすむ。万一戦闘になった場合、木が少ないほうがデスサイズが使いやすい。


 数キロ程歩いただろうか。百メートルほど先の茂みから、鶏っぽい鳥が羽を散らしながら飛び出してきたが、茂みの枝葉は大きく揺れ続けている――――この先に何かがいる。


 咄嗟に茂みに隠れて様子を窺う。身を隠すのと同時に、茂みから三つの影が飛び出してきた。


 人か?いや違う……深い緑色の肌にこげ茶の剛毛が生えている。サイズは人間の子供くらい。頭髪はなく、額に小さな角のような突起がある。目は異様なほど大きく、黄色く濁った眼をぎょろぎょろ動かし何かを探している。落ちている羽を指さして騒いでいるので、さっき逃げた鳥を探しているのだろう。


「ぎゃっ、ぎゃっ、ぎゃっ、…… くそっ、あのうまそうな鳥どこ行った?」


『ゴブリン語を記憶しました』


 脳内にアナウンスが聞こえ、それまで意味不明の鳴き声だった魔物の言葉が理解できるようになった。

こいつら、やっぱりゴブリンだったか。


 これは多分、瞬間記憶スキルの力のおかげなのだろう。ひょっとして、思ったよりすごいスキルじゃないか?これ。


 さて、ゴブリンといえば、最弱の魔物のはず。こいつ等なら今の俺でも倒せるかもしれない。群れならともかく、3匹なら、最初の一撃で数を減らせば何とかなるだろう……。


 デスサイズをしっかり握り直し、タイミングをうかがう。確実に1匹以上倒さなければならない。


 1匹が前の2匹と少し離れている。絶好のチャンスだ。飛び出そうとしたその瞬間――――

 

(くそっ、新手が来やがった)


 新たにゴブリンが3匹姿を現す。


 危なかった。俺は小さく息を吐く。これでゴブリンは6匹。勝てるかもしれないが、怪我をするかもしれない。


 今の俺は、薬も持ってないし、治癒魔法も使えない。ちょっとした怪我でも負うリスクは避けたい。


「オイ、人間を捕まえたぞ! 運ぶのを手伝え」 

「本当かよ! ならここで食っちまおうゼ」

「ダメだ。人間はボスのところに連れてかネェと殺されちまうゾ」

「黙っていレばバレねェって」

「人間の臭いでばれルだろ。少しは考えろ!」

「ちっ、ボスは人間を生きたまま食うのが大好きだからナ」


 ゴブリンたちの話によると、人間が捕まっているみたいだ。上手く助けられれば、人里に出られるかもしれない。


 ゴブリンたちが来た道を戻って行くので、少し距離を取って後を追う。ん? 1匹足りない。


 見れば、ゴブリンが1匹、隠れて捕まえた鳥を夢中で食べている。思わず口角が上がる。


 ゴブリンの頭が、千切れて地面に落ちる。背後からのデスサイズの一撃だ。ひとたまりもない。


 ゴブリンの死体からシャボン玉のようなものが出て行く。これが魂か。デスサイズで斬りつけると、魂は吸い込まれるように消えた。


『レベルが上がりました』


 脳内アナウンスを聞きながら、ゴブリンの集団を追う。


 レベルが上がったせいか、気持ちデスサイズが軽くなった気がする。足取りも軽い。


 ゴブリンの集団は百メートル程移動したところで、別の集団と合流した。これで総数は7匹。あまり数が多くなくて助かった。


 捕まっている人間は、恐らく1人。ぐったりして動かないが、本当に生きているのか心配になる。


 ゴブリンたちは人間の獲物に大興奮だ。意識が集まっている今が好機!


 獲物を覗き込んでいるゴブリン3匹に背後から斬りつける。腐った柿が潰れるような気持ち悪い手応えがして、3匹が倒れる。1匹倒し切れなかったが、致命傷だ。


『レベルが上がりました』


 返す刃で、驚き振り返ったゴブリン2匹を強引に切り飛ばす――残り2匹。


『レベルが上がりました』


「お前は仲間を呼んで来い!」 


 集団のリーダーらしきゴブリンが命令して、1匹が離脱する。くそっ、仲間が来る前に、ここから離れないと。


 残ったゴブリンリーダーと対峙する。他のゴブリンより、やや体が大きく、棍棒を持っている。


 ゴブリンリーダーが棍棒を振り上げ襲い掛かって来る。


『棒術を記憶しました』 


 瞬間記憶スキルは、相手のスキルも記憶出来るのかと驚きながら、デスサイズを振り下ろす。ゴブリンリーダーの体は、防ごうとした棍棒ごと二つに分かれて息絶える。


『レベルが上がりました』 


 息のあるゴブリンにとどめを刺し、デスサイズで魂を吸収して回る。


『レベルが上がりました』


 どうやら敵を倒した経験値と魂を吸収することによる経験値は別枠だな。


 ということは、俺は他の人より効率よく成長出来るということになる。ありがとうミコトさん。愛してます。


 さてと、増援が来ない内に、急いでここを離れないと。


 無事生きていると良いんだが……。俺はこの世界で初めて出会う人間の元へ歩き出した。



***


 3話終了時点でのステータス


【名 前】 カケル=ワタノハラ(男)

【種 族】 人族

【年 齢】 17

【身 分】 自由民

【職 業】 流浪人

【状 態】 良好


【レベル】 5

【体 力】 89

【魔 力】 805

【攻撃力】 89

【耐久力】 89

【素早さ】 89

【知 力】 805

【幸 運】 90


【スキル】 瞬間記憶 スケッチブック<1> デスサイズ<1> 棒術<1> ゴブリン語

【加 護】 死神の加護 

 






 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
[一言] ミコトさんのお下がり!! 彼女のニオイ付いてて女除け……にはならんか(;'∀') でもって人間も会えるようで良かったぜ。 たった一人ずっと森の中じゃ孤独でどうにかなるかもしれないのです。
[良い点] かなりレベルが上がりましたいい感じですね。
[良い点] 面白かったです [気になる点] なし [一言] つゞけて頑張って下さい!
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