表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

297/508

刃物取り扱い注意


 時は少し遡る。



「……先輩、これなんかヤバくない?」

「ああ……これはヤバいな」


 浮島の近くまで来た俺たちだったが、未だ入国していなかった。


 浮島全体を守る結界に禍々しい気配を感じたのだ。元々ある結界に巧妙にコーティングしてあるので、普通は気付かない程度のものだが。



「どうしたの、カケル?」

「どうも様子がおかしい。アトランティアに何か起きているのかもしれない」


 それに、この禍々しい気配には嫌ってほど覚えがある。油断は出来ない。ならば――――



『死神召喚』 


『やっほー、可愛いキリハたんですよ!』


 どうしたんだろう? 何時になくテンションがおかしい。頭でも打ったのだろうか?


『失礼ね!? 打ってないわよ。で、何かしら? も、もしかしてプロポーズとか?』


 やはりおかしい。いや……元からの可能性もあるか?


『……なんでいじめるの? 泣くわよ?』

「すいませんキリハさん、あんまり可愛いのでつい……」

『それじゃあ仕方ないわね。で、用件は何かしら? 私も結構忙しいんだけど』


 ジト目でにらむキリハさんが可愛い。思わず抱きしめてしまう。


『ふえっ!? お、お触り禁止だってば!? ……もう、やっぱりプロポーズ?』

「違います。この結界を見て欲しいんですが……」

『……は? 結界? んんん? あ……これヤバいやつじゃない。深海の使ってたやつ』


 げっ!? やっぱりそうなのか……念のためキリハさんを呼んで良かった。


「なんでここにそんなヤバいやつが……何とかなりますか?」

『この程度なら何てことないわ。ちょっと、どいて……ほいっ!』


 デスサイズを一閃して結界を切り裂くキリハさん。相変わらず早え……


「あ……禍々しい感じがしなくなりましたね」

『ふふん、当然よ。でも、気をつけなさい。本体は中にいるわよ』


 げっ!? 何だよ本体って……ヤバくない?


「あの……キリハさん」

『なあに?』


 にこにこしているキリハさんは死ぬほど可愛いんだよな。反則だよ。


「俺、勝てますかね。その本体とやらに」

『ふふっ、心配なら付いて行ってあげようか?』


 おおっ、キリハさんが来てくれるなら心強い。


『んふふ……ただし、条件があるわ』


 悪戯っぽく広角を上げる美しき死神。


「な、何でしょうか?」

『……私にプロポーズしなさい』

「……は?」

『だから、私を嫁にしなさいって言ってるの! なに? 嫌なの? 私、見た目通り一番人気なのよ、他の人に取られてもいいの?』


「……それは嫌ですね。俺、キリハさんのこと大好きですし」

『ふえっ!? そそそ、そう? だったら……ほら……早く……』


 いやまあ俺の中では、もうそのつもりだったんだけど、いまいち伝わってなかったみたいだな。


『……ばっちり伝わったわよ……』


 しまった、心を読まれた。


「キリハさん、俺のお嫁さんになってください。絶対に幸せにしますから」

『……うん。嘘ついたら許さないんだから……ありがとう』


 抱きついてきたキリハさんの身体はやっぱり華奢で、それでもすごく頼もしくて。


 

「……おめでとうってミコトさんが言ってるよ」

『へ? うわあああああん。ありがとうございます! ミコト先輩!』


 美琴の言葉に号泣するキリハさんと、温かい目で見守る婚約者たち。だが――――



「カケル……婚約者の実家の前でプロポーズとかいい度胸ね?」 


 やべええ!? リリスがお怒りだ。どうしよう。

 

「ふふっ、なんてね? 冗談よ。でも……後でたっぷり愛してね?」


 クスクス笑いながら、俺の首筋を軽く噛むリリス。


 強力な助っ人も加わったことだし、行くか、アトランティアへ!



***

 


 入国口では屈強な衛兵たちが、厳重に出入りを監視している。



「おおっ、これはリリス殿下、お待ちしておりました」


 100年以上振りの帰国にも関わらず、衛兵たちはすぐにリリスのことを認識してくれた。なぜなら――――



「……お勤めご苦労さま、デジレ、ジャン、ニコラ」


 アンタたち、まだ衛兵やってたんだな!? 


 っていうか、他に衛兵いないの!?


 でも、リリスに名を呼ばれた衛兵たちは、以前のように感激して顔を赤くすることもなく、ただ無表情に立っているだけだ。


「…………デスサイズ」

『御意』


 衛兵たちを鑑定すると、マインドコントロール下にある。これは思ったより深刻な状態かもしれない。


 美しい女侍が衛兵たちを一刀のもとに斬り捨てる。


『……安心するが良い、峰打ちでござる』


 あの……どちら様? いや、知っているけどさ……


「ありがとうデスサイズ。お前って、こんな美少女だったんだな!」


 艷やかな漆黒の黒髪をポニーテールで束ねた和風美少女。椿のような赤い瞳が恥ずかしそうに揺れている。


『ふぇっ!? そそそ、そんなことないでござるよ……えへへ』


 おいおい……俺のデスサイズがこんなに可愛いなんて聞いてないぞ?


 たまらずデスサイズを抱きしめる。相棒だから普通のコミニュケーションだ。


 ザシュッッ!?


「痛えええぇっ!?」

『す、すまない主殿、拙者……色事に疎いゆえ……つい』


 さすがデスサイズ。物理無効をものともせずに、俺の身体を切り裂いた。


「き、気にするな……ゴフッ……少しずつ……カハッ……慣れていけば良いんだ……ゴハァ!?」

『あ、主殿おおぉ!?』


 ふぅ……死ぬかと思ったぜ。神水マジ感謝!


「先輩……刃物も嫁にするつもり!?」

『アンタ……馬鹿でしょ?』


 呆れる美琴とキリハさん。


 失礼な! デスサイズは刃物なんかじゃない、だってほら、こんなに柔らか――


 ザシュッッ!


『あ、主殿おおぉ!?』


 うん……やっぱり刃物だったよ……良い子のみんな、刃物を使う時は注意して、必ず大人と一緒にね!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ