サクラ=オルレアン
ソニアとのドッキドキ眷族化計画が終わり、彼女は部屋を出て行った。
時空魔法100倍を使用していたので、実際には3分ほどしか経過していないのが有り難い。早速仕事を再開しようと立ち上がると、コンコンとドアを叩く音がする。
「どうぞ。入って」
声をかけると、巫女服を着たサクラが入ってくる。当然ミヅハ印の水布製だ。ありがたくて嬉しくて涙が出そうですよ?
彼女は巫女服が超絶似合う。俺はひそかにサクラのことを巫女服の化身と崇めているほどだ。もし、サクラが神殿にいたら、破産するまでお賽銭を投資する羽目になっていただろう。あるいは神殿ごと買い取っていたかもしれない。
「王子様、ごめんなさい……お忙しかったですよね?」
申し訳なさそうにしているサクラが可愛い。とにかく可愛い。もともと可愛いが巫女服効果で10倍可愛い。何回可愛い言うのって思うが、可愛いんだから仕方ない。
「いや、可愛いなサクラ」
「ふえっ!? いや、あのお忙しいんじゃないかって……」
いかん……そうだった。あまりにも可愛いからバカになっていた。
「大丈夫だ。あまりにも暇で、どうやって時間を潰そうか悩んでいたくらいだよ?」
「ふふっ、王子様は本当にうそが下手ですね……ありがとうございます」
サクラがちょこんと隣に座る。巫女服越しに彼女の体温がかすかに伝わってくる。これはあれだな。巫女服を着たサクラを、これからは感謝を込めてサクラたんと呼ぼう。ありがとうサクラたん。
「……聞かないんですか?」
サクラが上目遣いで俺の顔を覗き込んでくる。くっ、可愛い。直視できない。さりげなく俺の指を弄ぶのはやめて欲しい。
「ん? 何をだ?」
「どうして部屋に来たかって……ん……」
我慢できず、思わずサクラの口をふさいでしまった。やはり俺は性人だと自覚してしまうが、今更だな。
「もう……王子様ったら、そんなにサクラが欲しいんですか?」
口調は怒っているが、頬は桜色に上気して、瞳は期待に揺れている。
「ああ、サクラ、お前が欲しい。今すぐに俺のものにしたいんだ」
「ふふっ、わかりました。どうか私のすべてをもらってください」
そういって巫女服を脱ごうとするサクラの肩を抱き、素早く動きを封じる。
「王子様?」
キョトンとした様子で俺を見つめるサクラ。わかってくれ……巫女服は脱いだらダメなんだ。
「サクラ……巫女服は眷族化する際にとても重要な役割を果たしているんだ。今はまだ脱がないでくれ」
断じて嘘ではない。俺にとっては最重要といっても過言ではない。
「そ、そうなのですか? す、すいません、初めてなので緊張してしまいました。すべて王子様にお任せしますね」
お任せコースキタあああああ!? これで巫女服フルコースルート確定。サクラが満開だな。
「ああ、髪の毛一本まで全部眷族化してやる任せてくれ」
「ああ……お願い……早く……眷族化……して」
「あ、ああ……も、もう無理です……王子様」
「サクラ……よく頑張ったな。お前も立派な眷族になったんだ」
一生懸命頑張ったサクラを優しく労う。俺もいつも以上に頑張ってしまった。ごめんな。
「嬉しいです……私、やっと……」
サクラの目からぽろぽろと零れ落ちる涙が桜の花びらに変わる。床に落ちる前に両掌でそっと受け止めた。
「王子様、これって……」
「ああ、桜の花びらだ。知ってるか? 桜の花びらを地面に落ちる前にキャッチできると願い事が叶って幸せになれるんだ。俺たちの世界のおまじないだよ」
「素敵ですね……ねえ王子様、なんてお願いしたんですか?」
そんなの決まっているじゃないか……
「俺とサクラが幸せになれますように。ずっと一緒にいられますようにってお願いしたんだ」
「ふふっ、そうなんですか? でも、せっかくのお願いなのに、ちょっと勿体ない気がしますけどね~」
嬉しそうに抱き着いてくるサクラ。
「……勿体ないってどうしてだ?」
俺にはそれ以上の願い事なんて思い付かなかったけどな?
「だって……私はもう幸せですし、嫌だって言われてもずっと一緒にいるつもりですからね? ほら、もう叶っちゃってることを願ってもしかたないでしょ?」
それもそうだな。俺以上に幸せな人間は居ないというのに、これ以上幸せを望むとか強欲すぎるかもしれない。ここは世界平和を願っておくことにしよう。
「……ところで王子様?」
「ん?」
「私、眷族化したことで元気になってしまったみたいなんですが……」
え? 俺のサクラたんってこんなにエロかったっけ?
「……それはまずい。眷族化が不安定になっているのかもしれないな。追加眷族するか?」
黙って頷くサクラたん。可愛すぎて限界突破しそうだ。
「ああああああああ!? 追加眷族幸せすぎて死んじゃううううう!?」
ふう……ようやくサクラの眷族化が安定したようで安心したよ。
「……王子様、私、これから普段もこの巫女服を着ようかな? とっても可愛いし、動きやすいから」
「サクラ、それが良い。ぜひそうしてくれ」
(うえっ!? どうしよう……冗談でいったつもりなのに、王子様の真剣な眼差しと嬉しそうな笑顔を見たらそんなこと絶対言えない……)
「はい、わかりました。これからはこの巫女服で頑張りますね!」
早速おまじない効果が発動したか……幸せすぎて辛い。サクラたんが眩しすぎてマジ女神。
「そうだ、このユグドラシルの屋敷にも桜を植えたいんだ。後で一緒に来て手伝ってくれないか?」
「もちろんです。でも……その代わり……」
恥ずかしそうに耳打ちしてくる。
『やっぱり眷族化が不安定みたいで……こんな私……嫌いですか?』
いいえ、大大大好きです。眷族化3期決定です。
お父さん、お母さん、日本の桜と違って、異世界のサクラはなかなか散らないんだよ? 最高だよね。