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王太子の帰還


「おおっ、シルフィ、サラ、綺麗になって……会いたかったぞ!」


 高層から戻ってくると、シルフィたちが待っていてくれた。もちろんずっと待っていたわけではなく、眷属通信で到着を知らせたんだけどな。 


 3年ぶりの再会に感激して駆け寄るブレイヴ義兄上を紙一重でするりとかわす双子の姉妹。


「な、なぜかわすんだ妹よ!?」

「……なんか兄上の手がいやらしい感じでしたので……」

「……なんか兄さまのすべてがいやらしいから……」


「な!? 馬鹿な、お前たちは妹じゃないか、そんな目で見たことはないぞ」


 心外だとアピールするブレイヴ義兄上。


「ふーん、どうかしら? 妹をそういう目でみる兄もいるから」

「ふーん、どうだろうね? 妹を食べちゃうケダモノもいるから」


 ……ちょっと待て、なんで俺を見るんだ二人とも!? ほら、クロエとミヅハは妹だけど厳密には違うだろ? アリサも体は完全に他人だし? そもそも手を出してないぞ?


(……お兄様、ミヅハは悲しいです。私は厳密には妹ではなかったのですね?)


 ち、違う、そういう意味じゃなくてだな……くっ、わかった、認めよう。俺は妹大好き野郎だ。そもそも性人だしな。



 結局触れさせてもらえず意気消沈するブレイヴ義兄上。


 よし、恩返しするならここだ。


「シルフィ、サラ、ブレイヴ義兄上は、3年間このガーランドのために体を張って世界樹を守り支えていたんだぞ? それなのにあまりにも冷たすぎないか?」


 確かに高層に向かった動機は最低だけど、結果として世界樹を支えたのは事実。誇るべきことなんだ。


「え? そうだったの? ま、まあ貴方様がそういうなら……」

「うん、わかった。たしかに貴方様の言う通りだよね……」


 渋々ハグに応じる二人。歓喜する兄。良かったですね、ブレイヴ義兄上。



 連れて来た廃エルフたちは、ブレイヴ義兄上が責任を持って面倒を見てくれるそうだが、すでに帰る家もなく、身寄りの無い者もいる。


 そこで、そういった者の中から、希望者にはワタノハラ家で働いてもらうことにした。俺も人手を必要としていたので丁度良かったのだ。


 特に男のエルフは有り難い。全般的に知性が高く、良い意味で草食系だ。美少女、美女だらけのワタノハラ家にはうってつけの得難い人材と言える。


 結果、男女合わせて3百名ほど雇うことになった。女性が入っているのは、配偶者や家族だからね?


 彼らには、当面の間、ユグドラシルの屋敷でリハビリと訓練を兼ねて生活してもらうつもりだ。後で改装工事しないとな。


 


「実はリーリエも婚約者になったんだ。みんなよろしく頼む」


「貴方様と一緒に出発した時点で既定路線だわ。まったく……お父様の差し金ね」

「至近距離で致死量の貴方様を摂取したんだから仕方ないね」


 シルフィとサラは当然といった反応。どうやら一向に結婚しようとしないリーリエのために、心配した義父上が一計を案じたらしい。


「……御主兄様から、知らない女性の匂いが複数します」


 うっ、さすがはクロエ。絶対に浮気は出来ない。とはいえもはや浮気の定義がわからないけどね!?


「ああ、実は、世界樹とガーランド建国の女王とモグタンを嫁にした」


「……王子様? お二方はなんとなく分かるのでが、モグタンとは一体……? この短時間で婚約者を増やしまくったことは今更ですけど」


 サクラの言うとおりだな。本来ならば土の大精霊と言うべきだった。だが、どうしてもモグタンって言いたかったんだ、言いたかっただけなんだ。どうか許して欲しい。


「モグタンは土の大精霊モグタンだサクラ。モグタンは語尾にモグって付けるんだモグタンの奴」

「……何回モグタン言うんですか……そうですか、土の大精霊さまですか。是非ともお会いしたいですね」


 くっ、やはり駄目か……サクラは土の大精霊の方に喰いついてしまう。異世界の壁は厚くて高いよ美琴。早く異世界組とこの感動を共有したい。


『ふふっ、主様、私はモグタンって響き、可愛くて好きです。つい口に出したくなりますよね?』


 思わずソニアを抱きしめる。俺の世界一可愛い諜報員が輝いて見える。


「ソニア……愛してる。このまま二人で世界の果てを目指そう!」

『ふぇっ!? 意味が分かりませんが、嬉しいです主様』


『カケルさま、モグタンは語尾に本当にモグと付けるのですか? 私、ぜひとも聞いてみたいです、モグタンのモグを!!』 


 ハハハッ、ヒルデガルド、お前は最高の専用メイド長だな。


「ヒルデガルド……髪の毛一本から、爪先まで愛してる。お前は最高の専用メイド長だよ……」

『カケルさま……嬉しいです……』



(くっ、やはり魔人は汚い。でも負けるわけにはいかないのよ!)


 サクラは懸命に思考を巡らせる。アストレアの知恵を動員するのだ。


「王子様、ウチもモグタンに興味が出て来たっちゃ!」


 アストレアには方言萌えという知恵が伝わっている。使えるものが限られるオルレアン家の伝家の宝刀をサクラは抜いたのだ。


「いやあああ! サクラ可愛すぎ!」


 美琴がサクラを抱きしめる。違う……お前じゃない。


「美琴、そんなに抱きしめたら痛いとっとよ?」

「サクラああああああ!」


 よし釣れた……カケルに抱きしめられながら、内心ガッツポーズをとるサクラであった。


 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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