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みんな違ってみんな可愛い


 クロドラの背に乗って飛行すること20分。


 はるか彼方に巨大な大樹が見えてくる。っていうか、遠近感がおかしくなるほどのサイズ感にビビる。


 高さはおそらく10キロ以上はありそうだ。この世界の大気構造が地球と同じまたは極めて似ていると考えれば、おそらく世界樹は対流圏の上限まで伸びているのだろう。


 入道雲のように天辺が平らになってかなとこ状に広がっているところからもそのように推測出来る。


 それにしても、上層部は相当大気も薄く、気温もかなり低そうだけど、一体どうなっているんだろうか。まあ世界樹だし、何とかしているのだろうけど。



「あれが世界樹……一度見てみたかったのよね。ありがとう私の騎士」


 リーゼロッテのプラチナブロンドが日差しを反射してきらきらと輝き、勝気なエメラルドグリーンの瞳が少女のように興奮している。


 ツンデレだった彼女も、婚約者となってからは、デレ成分が増えて大分可愛らしく貴族令嬢然するようになってきた。


 美琴という親友が出来たことで、本来の彼女の本質が表面に出始めているのだとすれば、嬉しい変化だと思う。たまにはツンデレが欲しい気もするけどね。


 ちなみに、リーゼロッテと美琴には、約束通りに超頑丈な人形をプレゼントした。モデルはうちの屋敷の住人達で、すでに百種類以上になっている。肖像権とかないから楽だよね。


 最初は二人で人形遊びしていたみたいだけど、だんだん噂が広まって、屋敷内でおままごと遊びが流行しているらしい。おかげで、人形の追加オーダーが大量に来ていて意外と大変だったりするけど、作るのは楽しいから正直苦にはならない。無駄に細部にこだわってしまうのは俺の悪い癖だけど。



「……でも、最近全然構ってくれないのはどういうことなのよ? 私、怒ってるんだからね!」

 

 後ろから力いっぱい羽交い絞めにしてくるリーゼロッテ。怪力スキル持ちの彼女の絞めは、ガチでヤバい。俺だから柔らかい感触を楽しむ余裕があるけれど、普通はトマトだからね!?


 リヴァイアサン討伐のおかげで、彼女自身のレベルもめちゃくちゃ上がっているし、正式に眷族となった日には、どれほどのパワーになるか想像もできない。頼もしいけれどね。



「ごめんなリーゼロッテ。今のゴタゴタが終わったら、たっぷりイチャイチャしような?」


 実際のところ、彼女の言うとおり、一緒にカケルノにも行けていないし、バドルに貰った二人の屋敷にも足を運べていない。怒るのも無理ないよな。


「へ? べ、別にイチャイチャしたいなんて言ってないけど……貴方がしたいなら……してあげてもいいわよ……」


 ……本当に可愛いリーゼロッテ。


 人形のように整った色白の顔を真っ赤に染めて、わたわた言い訳をするのがたまらなく愛おしい。


「え……ちょ、ちょっと恥ずかしいわよ……」


 照れる彼女を膝の上に乗せて、今だけは思う存分イチャイチャしてあげよう。


『主様……私のこともお忘れなく』


 ソニアも珍しく主張してきた。いつもは忍者みたいに控えていることが多いのに。それだけ構って欲しかったのだろうな。


「ソニアもおいで。ただしリーゼロッテに潰されないように気をつけろよ」

『もちろん承知しております』


 嬉しそうにソニアも飛び込んでくる。


「……二人とも酷くない? 大丈夫よソニア、なるべく優しくしてあげる」

『……なぜニヤついているのです? 怖いんですが!?』


 実は、リーゼロッテには力の上限を抑える指輪を渡しているから大丈夫なんだけどね。


 怯えるソニアが可愛いから、もう少し黙っていようかな。


 

 でも残念ながら時間切れか。そろそろ王都に到着してしまう。


 時空魔法の出番かと思ったが、クロドラが気を利かせて、速度を落としながら大きく旋回飛行を始めている。


(さすがはクロドラだな。ありがとう、助かったよ)


 良かった……クロドラが空気読めるドラゴン娘で……KYはフリューゲルでお腹いっぱいですよ。


(ふふふ、我は同じミスを二度は繰り返さない。暗黒竜の誇りにかけてな!!)


 自慢げな可愛いクロドラも含めて3人まとめてイチャイチャしよう。


 だが、そんな俺たちを黙って見ている婚約者たちではない。


「カケル殿! それではあまりにも不公平と言うもの。イチャイチャするならみんな一緒でないといけませんよ?」


 はい……おっしゃる通りなんですが、ベルファティーナさまは婚約者では……え!? な、泣かないでください!? わかりました! 一緒にイチャイチャしますから。




「……ねえ、サラ、クロドラがなかなか降りてきませんね?」

「……うん、多分、貴方様がイチャイチャしているんだと思うよ?」

「……そうね。何だかそんな気がしてきたわね……」


 地上で呆れるシルフィとサラ。


「あれ? カケルくんたちはまだ到着していないのか?」


 久しぶりの再会に、待ち切れずに様子を見に来たシルフィたちの兄ノーラッド。

 

「あはは……ちょっと呼んできます、兄上」

「ボクも行くよシルフィ」


「へ? 呼びに行くって、どうやって? ってもう居ない!?」 


 眷族転移でカケルの元へ飛び込むシルフィとサラ。当然、風の大精霊ナギと炎の大精霊ホムラも一緒だ。


「貴方様〜、もう、遅いですよ!」

「貴方様〜、ボクもイチャイチャする!」


「うおっ!? 悪い悪い、待たせたな二人とも。ナギとホムラもな」


『ふふっ、貴方様、私も私も!』 

『貴方様の熱くたぎるものが欲しいぞ!』


 ふふっ、ヤレヤレ……これは時空魔法の出番のようだな。


 最近多用し過ぎているけど気にしない。だって可愛い婚約者たちが待っているんだ。使うなら……今でしょ?





「……遅いな、カケルくんたち……」


 一方、地上で待つノーラッド兄上は、空を見上げてそうつぶやくのだった。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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