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サウスパーク


『帝よ、待っていたぞ』 


 転移でコーナン王国へ移動してきた俺たちを出迎えるツバサ。


「ありがとうツバサ、いつも苦労かけるな」


 実際、俺たちが各国を転移で移動したり、こんな遠くまで瞬時にやってこれるのは、ツバサを始めとしたハーピィたちのおかげだ。


『こんなこと苦労にも入らん。だが、気にしてくれるというのなら、そろそろ帝の子が欲しいのだが……』


 珍しく顔を赤らめるツバサ。そうか……子どもか。ハーピィとの間に出来た子の種族はどうなるのかな?


『新しい種族になるね』


 これまた珍しくリエルが親切に教えてくれる。なるほど新種族ね。


「分かった。でももう少し待ってくれ。今ツバサたちが動けなくなるのは困るからな」

『もちろんいつまでも待てるとも。ふふっ楽しみだな』


 今は上機嫌で抱き着いてくる彼女をたっぷり愛でてあげよう。


「問題はここが本当にコーナン王国かどうかだが、街に行って聞いてみるしかないか……」 


 遠くに見える城壁は俺たちが住んでいる場所とはまた違う建築様式で、異国情緒があって素晴らしい。


「新しい街ってなんかワクワクするね先輩!」

「それな。どうしてもゲーム感覚になっちゃうよな」


「私は駆と一緒ならいつもワクワクしてるから!」


 意味もなく美琴に張り合う刹那が可愛くて死ねる。


「刹那……俺もだ。愛してるぞ」

「ふぇっ!? あ、あああ愛してる? わ、私も……よ?」


「……よくもまあ私たちの前で見せつけてくれるわね」

「何を言ってるんだ? ソフィアも愛してるぞ?」

「へ? そ、そそそんな、とって付けたように言われたって嬉しくない……えへへへ」


「イヴリース、貴女も行かなくて良いの?」

『ええ、あんまり近づくと魔力酔いしちゃうのよ……はぁ……私もイチャイチャしたいのよ、クロエ』

『イヴリース、そんなお困りの貴女には眷族化がおすすめ。魔力酔いもしなくなるし、より美しく若返るという効果もある。今なら無料でお試し出来ますよ?』


 ヒルデガルド……通販じゃないんだぞ!?


『け、眷族化……私も是非なりたい!』

『ふふっ、でも気を付けて……腰が抜けるほど気持ち良いから……』


 ヒルデガルドに耳打ちされて真っ赤になるイヴリース。あんなことした仲なんだから今更恥ずかしがらなくても……え? それとこれは別? ソウデスネ。



「姉貴は行かなくて良いのかよ?」


 A級冒険者パーティウサギの耳サブリーダーのアーロンがカタリナの背中を押す。


「うぇっ!? で、でも……どうして良いか分からないわ……」

「……ったく、カケルのこととなると、姉貴もまるで乙女だな? 良いか、男なんて下半身で考える生き物だからな、がっちり掴んで来いって!」

「か、下半身を掴むのね? わ、分かったわ」


 ふらふらとカケルに近づくカタリナ。


「カタリナさん? どうかしましたか?」 

「か、カケルくん……えいっ!!」


 カケルの大事な部分を鷲掴みするカタリナ。


「か、カハッ!? ち、ちょっと……離して」

「嫌っ!! 絶対に離さないわ!」


 テンパって全力で力を込めるカタリナ。

 

「グッほおおあああ!?」


 絶叫するカケル。絶句する一同。


「…………姉貴、本当に掴んでどうする。比喩だってばよ!?」



***



「アーロン……覚悟は良いかしら?」

「ち、ちょっと待て! どう考えても勘違いした姉貴が悪いだろ!?」

「問答無用!」

「ぎゃあああ!?」


(……しかし、あんな姉貴に加えて、あの母さんまで嫁にするとは……前々から思っていたが、恐ろしい豪の者だぜ……カケル) 


 アーロンは薄れゆく意識の中で、カケルへの畏敬の念を深めるのだった。



***



 色々あったが、そろそろ街へ行かないといけないな。


 ちなみに俺の腫れあがった大事な部分は、ミヅハが、お兄様お可哀そうにって、冷たい手で直接冷やしてくれたから万全だ。ありがとうカタリナさん。え? 神水使えって? そんな気軽に使う訳にはいかないんだよ。奇跡の力は時として人間を駄目にする劇薬になるからな。


 

「美琴、馬車を出してくれ」

「はいはーい、アイテムボックス~!」


 美琴がお腹のポケットに偽装したアイテムボックスから馬車を2台取り出す。なぜお腹のポケットかって? さあな?


 2台の馬車に分かれて乗り込み、一路街へ向かう。歩いて行ってもいいんだが、やっぱり旅と言えば馬車だからな。気分が違うのだよ気分が。


『帝よ、とりあえずこの辺りで一番大きな街だったからここにしたんだが、大丈夫だったか?』


 美しい人間の娘に変身したツバサが不安そうに聞いてくるので頭を撫でる。


「ああ、最高の判断だ。大きな街なら情報も多いからな。でも街中でさすがに帝呼びはまずいな。人前では旦那さまとでも呼んでくれツバサ」

『ふえっ!? だ、だだ旦那さま!? わ、わかった……旦那さま』



 2台の馬車は、整備された街道をすすみ街へ到着する。


 どうやら比較的平和な国なのだろう。少なくともこの辺りは。魔物の気配もほとんどないし、道行く人々の表情も穏やかなような気がする。こらこらミヤビ、そんなつまらなそうな顔しない。



「ようこそ、サウスパークの街へ。代表者の身分証だけ確認させてもらいますね」


 一応全員分偽造した身分証を持っていたのだが、拍子抜けするほどチェックは緩かった。


 

 サウスパークの街は、プリメーラよりも少し規模は小さいものの、かなり大きな街だった。おそらくコーナン王国の中核都市の一つだろうと推測する。


 街は綺麗に石畳が敷き詰められており、たくさんの出店が軒を連ねて活況を呈している。


 ぱっと見だが、やや獣人の割合が多いように感じる。


「……良い街だな」


 そんな言葉が自然に口をついて出てくる。



「「「「…………獣人が多いからですよね?」」」」



「……まあ、そういう言い方もできるかもしれないな」



 まずは、情報収集だ。手分けして各種ギルドや神殿をまわる。出来ればこの国の地図が手に入ると良いんだけどな。 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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