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エヴァンジェリン=トラシルヴァニア


 王都からプリメーラの屋敷に戻ると、イサナたち初見組が大騒ぎになる。


「ち、ちょっと待て、これ全部旦那の屋敷なのか? 広すぎて端が見えないんだけど!?」


 イサナが目を回しそうになっている。見えないのは夜だからだよ? 昼間ならぎりぎり見えるから。


『……広さも広さだけど、このメイドの数は一体なんなのよ? カケルさん?』


 すまんなイヴリース。メイドの件は俺が決めたわけじゃないんだ。忖度(そんたく)はあったけど。


『ふふふふ、もしかして私もう働かなくてもいいんじゃ?』


 たしかにな。もうイヴリースは助けたんだから、自由にして良いんだぞ? フォルトゥナ。



 今夜は、新メンバーの歓迎会を兼ねて、俺が料理を作ってパーティを開く予定になっている。 


 キトラ、ナディア、フローネの3人は、先行しているシードラと合流して、エメロードラグーンに向かっているので今夜は屋敷に来ていない。また別の日に歓迎会をすることになるだろう。


 もしかして……姫様も加わることになるのだろうか? と控えめに予想してみる。


 でも、冗談抜きで毎日新メンバー歓迎会をしているような気がする。あながち気のせいじゃないのが恐ろしいけれど。



***



 歓迎パーティーも終わり、夜、自室に戻る。


 多くは語らないが、風呂は良かったね。新メンバーも大喜びだったし、裸の付き合いでお互いの距離も一気に縮まるからな。もちろんミヅハは大活躍だったよ?


 さて、明日からの動きだが、スキル保持者を探しにコーナン王国へ向かったツバサたちから、そろそろ連絡が入ってもおかしくない頃だ。


 シードラたちがエメロードラグーンへ到着するまでには、少なくともあと数日かかりそうだから、当面はコーナン王国方面の情報を待ちながら、国際条約締結のために、ガーランド、トラシルヴァニアそしてアトランティアの3カ国を回るつもりでいる。


 いつもなら、クロエがやってきて寝間着へ着替えさせてくれる時間だが、今夜やってきたのは、白髪赤眼の吸血姫エヴァンジェリン=トラシルヴァニアだった。



***



「ちょっと待っててね、あなた。今着替えさせてあげるから」


 二人きりになると、幼妻モードになるエヴァ。今夜はいつもより薄着で、身体のラインも丸わかりだ。思わず凝視してしまう。


「も、もう……恥ずかしいからあんまり見ないで」  


 エヴァさん……そんな風に恥ずかしがられると、かえって見てしまうんですが。


 あれ? なんかエヴァのナイトドレスがさっきより透けてるような……ま、まさか!?


「エヴァ、そのナイトドレスってミヅハが作ったやつか?」 

「そうだけど……似合わないかしら?」


「すごく似合ってる。最高だエヴァ!」 

「そ、そんなに気に入ってくれるなんて……ミヅハの言うとおりね……ふふっ」


 嬉しそうにするエヴァにちょっと罪悪感。



 だがグッジョブだミヅハ。まさか、すでに実用化されていたとは……魔力で透けて見える夢の素材水布。


(気に入っていただけて光栄です。お兄様)


(良くやってくれた! ありがとう、ありがとう!)


(ふふっ、お兄様ったら。超精霊に進化したおかげです。ちなみに……ミヅハの服も水布製ですから、いつでも好きなだけ見て良いんですよ?)


 何ということだ……有能な妹の透け透けな姿をいつでもどこでも見放題。


 夢とロマンと好きしか存在しない理想郷がそこにはある。


 うむ、この秘密は墓場まで持ってゆくと今誓おう。

 

 

 ミヅハに感謝を告げて、意識をエヴァに集中する。


 この世界には魔法や魔術が存在し、初級から聖級まで分かれているが、同じ初級魔法でも術者によってその威力や効果は全く違う。


 一般的には熟練度だと思われているが、実は違う。魔力操作力の差だ。


 ちなみに俺の魔力操作は神級。初級魔法のファイヤーボールだと普通は木を焦がす程度なのに対し、街を吹き飛ばすことも理論上可能なのだ。


 そして、そんな俺の魔力操作ならば、コンマ単位で透け具合を調整出来るのだよ! ふふふ。


 これでエヴァを丸裸に……って脱いでる!? もう脱いじゃってるじゃないか!?


 なんてこった……楽しみ過ぎてチャンスを逃すとは……魔力操作の解説している場合じゃなかったよ。さすがにもう一度着てくれとは言えないしな。


 駄目だ、落胆を表に出すんじゃない。エヴァが不審に思うだろうが!! 楽しみが先に延びたと考えたるんだ。



「あなた……正直言うとちょっとだけ怖いの……」 


 あの強気の塊のようなエヴァが震えている。


 俺は最低の馬鹿野郎だ。


 エヴァはまだ15歳で初めての経験なんだ。ドレス透けてる〜とか言ってる場合じゃないだろうが!!


 震えが収まるまでエヴァを抱きしめる。


 言い訳させてもらえば、エヴァとは、毎日吸血をしているので、初めてという感じがしなかったという事情もある。


 吸血行為は、吸血鬼にとっての性行為だからな。


「エヴァ、大丈夫か?」

「うん、もう大丈夫。吸血しながらだと凄いって聞いてたからちょっと怖かっただけよ?」


 あ……そっちの怖いね……でも確かにヤバそうだ。俺も吸血の快感を知っているから、その気持ちは分かる。


 エヴァの話だと、失神する吸血鬼もいるらしい。なにそれ怖いんですけど!?


「な、なあエヴァ、吸血しながらはやめたほうが……」


「……駄目。失神するまで愛して下さい……あ、な、た」


 ぐはぁ!? そんなこと言われたんじゃ止まれないよ? 


「エヴァ……いや、エヴァンジェリン。覚悟は良いか?」 

「もちろんよ……カプッ」


 お互いに吸血を始める。これだけでも意識が飛びそうなくらい気持ち良いのだ。


「エヴァンジェリン……」  

「あなた……来て……ああああああ!?」




 結論から言えば、ヤバ過ぎてノーコメント。神水があって本当に良かった。

 

 もちろん封印することに決定しましたとさ。



 エヴァが早めにダウンしたおかげで、ミコトさんは喜んでいたけどね。


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i566029
(作/秋の桜子さま)
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