レジェンドスレイヤー
「キリハさん、お願いします」
『任せなさい! 神級障壁展開!! 空間隔離!!』
周囲に被害が出ないようにこのエリア一帯の空間を隔離、さらにクラウディアたちを守るために障壁を展開してもらう。
キリハさんにリヴァイアサンを倒してもらえば一瞬で終わるのだが、それでは経験値が入らないからね。
「ミヅハ、頼む!」
『はい、お兄様!』
水の大精霊の力で空間内の海水が消え、海底がむき出しになる。
「な、何だ……これは……」
誰とも無く漏れた呻き声。
海水が無くなったことにより露わとなったリヴァイアサンの巨体。島として海上に露出していたのは、とぐろを巻いたリヴァイアサンの一部に過ぎなかったのだ。
伝説では長さ1500キロある海蛇だと伝えられているが、これではあながち誇張とも言えない。
『なに? ビビっちゃった?』
キリハさんに声をかけられ我に返る。
「いいえ、ちょっとワクワクしただけですよ。ヒルデガルド、頼む!」
『かしこまりました、透視!!』
ヒルデガルドの透視によって、リヴァイアサンのコアの位置が判明する。
いかなる魔物も、コアを破壊すれば倒せるからな。
「フリューゲル、ユスティティア行くぞ」
「了解!」
『ちょっと待て!!』
突然現れた全身黒ずくめの美女。角が生えた黒髪に、燃え盛る業火のような瞳。
「どうしたんだクロドラ? ずいぶん綺麗になったな」
『ふぇっ!? そ、そうか? って違うわ!! なぜ我を呼ばないのだ?』
「そうか……淋しかったんだな。おいでクロドラ」
『そうそう……我は淋しかった……って違うわ!? 暗黒竜たる我が淋しいなど……孤独と闇に生き、深淵に身をおく誇りある種族を舐めるな!!』
そう言いながらも頭を撫でられ尻尾をぶんぶん振るクロドラが可愛い。
『ふん……仕方ない。我の背に乗るが良い』
うーむ、たしかに暗黒竜に騎乗するのってめちゃくちゃ格好良いな。暗黒竜騎士カケル……ふふふ悪くない。
……クロドラさん、早く竜形態になってもらえませんかね? 美女におんぶされてるみたいでめちゃくちゃ格好悪いんですが!?
ユスティティアを乗せたフリューゲルと共に遥か上空まで上がる。
『ステータス倍化』『剛力』『剛腕』『身体強化最大』『加速』……… 強化系のスキルをすべて同時発動。空間が歪むほどの力だ。
『か、カハッ!?』
「大丈夫かクロドラ?」
『……問題ないわ!! 少々驚いただけだ!』
すまないな……すぐ終わらせるから。
『デスサイズ来い!!』
魔法陣からデスサイズを取り出す。
「ごめんな、ちょっと硬い物を斬るけど頼りにしてる」
デスサイズの刃を優しく撫でるようになぞる。
『気にするな……拙者に斬れぬ物など無い』
「お、おわぁッ!? デスサイズが喋った!?」
『目の前のことに集中しろ……リヴァイアサンが覚醒しかかっているぞ』
う、たしかに……リヴァイアサンの雰囲気が変わった。急がないとヤバい。
「ユステティア!! 目一杯頼むぞ」
「任せなさい! 頑張ってね旦那さま……」
『重力操作……最大!!』
ユステティアの重力操作によって、超加速でリヴァイアサンに突っ込む。
だがリヴァイアサンの身体から、無数の蛇のような魔物が襲いかかってくる。
『リヴァイアサンの防衛本能だ。あ奴等は我に任せよ、暗黒ブレス!!』
クロドラのブレスが蛇の魔物を焼き払う。
「デスサイズ!!!」
『応、十倍化!!』
デスサイズが巨大化するが、重量は変わらない。
『グルルルルルアアアアアア!!!!!!!!!』
リヴァイアサンが千年ぶりに覚醒する。
だが――――一瞬だけ遅かったな。
『ギャアアアアアアアアアアアアア!!!?!?』
巨大化したデスサイズによってコアを真っ二つに両断されたリヴァイアサンが、断末魔の叫びを上げて動かなくなる。
「……やったか?」
『やめい……それはフラグだ』
ごめんなさい。言ってみたかったんです。
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『ああ、面倒くさい! レベルが上がりました×999 はい、以上!』
あの……脳内アナウンスさん?
『……その馬鹿っぽい名前止めてくんない?』
……では何と呼べば?
『僕は天使のリエル。君の異世界生活をサポートしているんだ。よろしくね』
聞けば、ミコトさんに命令されて俺のサポートをしてくれていたらしい。ありがとうミコトさん。
でも、何で今更出てきたんだろう?
『へ? ま、まあその……ずっと君を見ていたら我慢出来なくなったというか……なあ、デスサイズ?』
『は? き、急に拙者に話を振るな! 拙者は色事に興味など……』
『へえー? あ、いい忘れてたけど、デスサイズのレベルも上がったから、人化出来るようになったよ?』
『な、何!? 本当か!?』
『…………やっぱり嬉しそうじゃないか』
『ち、違う。拙者はプリンが食べられるのが嬉しいだけでござる』
『…………ござるって何だよ? 素直じゃないんだから……』
『くっ、リエルこそ、必死に実体化するための方法を探しているではないか!』
『だって……毎晩あんなすごいのを見せつけられたらおかしくなっちゃうよ?』
なんだって……俺はずっとリエルに見られていたというのか?
せっかくリヴァイアサンに勝利したというのに、恥ずかしくて死にたい……。