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ちょっと海賊団を潰しに


「ところで旦那、どうやって海賊のところへ行くつもりだ? 港は今封鎖されているから、船は出せないぞ?」


 ……旦那。同じ旦那でもセレスティーナたちの旦那様とは一味違うな……しかし美女に言われると何でも良く聞こえる不思議。


「大丈夫だ。俺には空を飛べる召喚獣がいるからな。まあ、自分でも飛べるけど」


「召喚獣!? あんた召喚士なのか? しかも飛べるって……呆れるね」


 驚きながらも、すぐに受け入れてしまう柔軟さが素晴らしい。


 

 とりあえず、グリフォンのフリューゲルを召喚する。


 最近、俺が転移ばかりで活躍出来ないとぼやいていたからな。



『ふふふ、ようやく我の力が必要となったようだな、主よ』

 


「……えーと、誰?」


 白髪に鷲のような鋭い眼光の美女が現われた。


 髪に鳥の羽を差し、長いライオンのような尻尾。獣人だろうか?


『……へ? ど、どうしたのだ主? わ、我を忘れてしまったのか? フリューゲルだ!』


 おろおろと涙目になるフリューゲル。


「は? フリューゲル? もしかして……お前メスだったのか?」


 衝撃の事実に言葉を失う。ずっとオスだと思ってたよ。


『メスじゃなくて女だ……もしかして、主は我のことを男だと思っていたのか?』


 これ以上ないほどのジト目で睨むフリューゲル。すまんな、鑑定で魔物の性別は出ないんだよ。


 そういえばラビはオスなのかメスなのか……気になってきたんだが?



「それにしても、フリューゲル、お前どうして人型になってるんだ?」


『どうやら主の眷族になったことで神獣となり、人型になったようだ』  


 自慢げにポーズを決めるフリューゲルだが、今回必要なのは乗り物だ。


「人型なら帰っていいぞ。悪いな」


「ち、ちょっと待て主、なれる、なれるから!? 元の姿にもなれるから!?」


 必死にアピールするフリューゲルが可愛い。


 まさか、フリューゲルを可愛いと思う日が来るとは……見た目って大事なんだね。



「旦那……色々疑問だらけだけど、とりあえず、その女は誰なんだ?」


 おお、イサナを置き去りにしてしまったな。


「ごめんな、イサナ。こいつはフリューゲル。俺の召喚獣だ」


「こ、この女が召喚獣だと!? 旦那は見た目と違って中々エグいことをするんだな……」


「は? 何を言って――――」


「こんな細い女に2人で乗るんだろ? なんか虐めてるみたいで気分悪いぜ」


 なるほど、たしかにその絵面は中々エグいな。


「フリューゲル、魔物形態になってくれ」


『承知した、主よ』


 フリューゲルの身体がみるみる大きくなって、20メートル超えのグリフォンが姿を現す。


 さすがのイサナも腰を抜かして座り込み、港は逃げ惑う人々で阿鼻叫喚の地獄絵図。


「ち、ちょっと待て、デカすぎるだろ?」


『す、すまぬ、初めてで加減が分からなかったのだ』



 当然、騒ぎを聞きつけた騎士団が駆けつけてくる。


「グリフォンだと? 何でこんなところに……」「どうする? 俺たちじゃ手に負えない、本部に連絡を……」

「ちょっと待て、あれは……」


 隊長らしき騎士が俺に気付いて走って来た。


「失礼、ワタノハラ公爵閣下とお見受けいたしますが?」


「ご苦労、たしかに俺がワタノハラ公爵のカケルだ。このグリフォンは俺の召喚獣だから心配無い。騒がせて悪かったな」


「やはりそうでしたか! グリフォンが従魔の首飾りをしていたので」


 へえ……この隊長、冷静だし、さすが王都の騎士団員だな。


「ちょうど良かった。ちょっと海賊を潰してくるから、代表団に付いていった騎士団員のことを教えてくれないか?」


「……ちょっと潰してくるって……本当に噂通りの方なんですね」


 キラキラした瞳がくすぐったいです。


 隊長のカイルに説明を聞いてから、フリューゲルに乗って出発する。



 あっという間に港が見えなくなってゆく超スピードだが、風魔法のおかげで髪の毛一本揺れないほど快適だ。



「旦那は公爵さまだったんだな!」


「ああ、今日なったばかりの素人公爵だけどな。方向はこっちで間違いないか?」


「大丈夫だ。しかし速えな……」


 時速500キロくらい出てるからな。


「おっ? フリューゲル、先に行ってくれ。良い獲物がいたんだ」


 召喚獣にちょうど良い海の魔物を発見した。


「へ? ち、ちょっと旦那?」

「大丈夫、すぐ戻るから」


 海に向かって弾丸のように飛び込む。


『水流操作を記憶したよ』

『ウォーターブレスを記憶したね』

『水中呼吸を記憶したってば』


『グルルルァァアアア!?』


『レベルアップしましたね』 


 そうだった……先日から脳内アナウンスがおかしいんだった……


 とりあえず、倒したシードラゴンを召喚獣に加えて、フリューゲルのところへ転移する。



「ただいま、イサナ!」


「うおっ!? びっくりさせんなよ!! どこ行ってたのさ?」


「ちょっと召喚獣を捕まえてきた。カッコイイから後で見せてやるよ」


「そ、そうか……まあ楽しみにしておく」



『主、到着したみたいだぞ』 


 速度を落とし、旋回し始めるフリューゲル。


「これはこれは……」


 眼下には要塞化された島と無数の海賊船がひしめき合っている。


「なっ? あいつら戦争でもおっぱじめるつもりかい……」


 驚くイサナだが、あながち間違っていないかも知れない。


 これだけの船団を集めているのだから、どこかへ攻め込むつもりなのは間違いないだろう。


 まあ、どこへ行くかなんて関係ないけどな。今ここで潰すし。



「どうだ? 代表団の船はあるか?」


「ああ、あそこの船首が人魚の船がそうさ……」


 やはり代表団は、海賊団に捕まっているようだ。


 心配そうなイサナの横顔を見て思う。


 気丈に振る舞っていても、家族や仲間たちが捕まっているんだ。しかも無事でいる保証なんてどこにもない。不安で仕方ないだろう。



「安心しろ、イサナ。すぐにみんなを助けてやるからな」 


「…………ああ、任せたぜ。頼むよ旦那……」


「おう、任された!」


『認識阻害』『透明化』


 勢いよくフリューゲルから飛び降りる。



 さっさと終わらせる。イサナの涙が乾く前に。



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i566029
(作/秋の桜子さま)
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