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異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収拾つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~  作者: ひだまりのねこ
第十二章 王都からの使者と聖女

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聖女アリエス

 女神教はこの世界において、ほとんどの国と地域で信仰されている最大の宗教団体。


 実際に聖女や勇者、異世界人といった神の御業が存在する世界であるから、これだけ熱心に信仰されているのも納得できる話だと思う。


 

 おまけに創造神イリゼ様は、めっちゃ可愛いし、優しいし、美人だし、お茶目で最高の女神様だからね。信仰しない選択肢なんてないよ?




『や、やめて……それ以上本当のことを言わないでカケルくん。万能な創造神といえども、これ以上貴方を好きになることは出来ないの……』


 カケルの心の声に悶えるイリゼ。


『おい……イリゼ様、なんかくねくねしていて変じゃね?』

『馬鹿野郎! イリゼ様が変なのはいつもだろうが! 今日は特に変……いや、気持ちが悪い?』



『……聞こえてるわよ』


『『ぎゃあああああああ!?』』


 自業自得な職員たちがイリゼに瞬殺されるが、神界において神は死ぬことはない。


 ただしバッチリ痛みは感じるけれども。




 神殿本庁は、イリゼスの中央にそびえる山の上にある。


 実際は街の中に山があるのではなく、神殿がある聖なる山を中心に街が広がっていったのだが。


 神殿には万を超える高位の神官たちが暮らしており、さながらひとつの街、いやひとつの国家として機能している。


 どの国家にも属さないが、その影響力は大国アストレアすら敵わない絶対的な権威の象徴なのだ。




(高野山とバチカンを混ぜて2で割ったような場所だな……)


 カケルがそう思ったのも無理は無い。イリゼの和洋折衷趣味はいつものことだ。


「王子様と聖地巡礼なんてロマンチックです~」

「なんか修学旅行みたいだね先輩!」


 サクラと美琴は各々この場所を楽しんでいるようだ。


 ……俺も楽しまないと損だな。


 長い階段を登りきると、目の前には沢山の屋台が並んでいる。


「おーい、2人とも、こっちの屋台も美味しそうだぞ!」


「「やったー! もちろん全部食べますよー」」


 今度はみんなで来ようと思いながら、屋台巡りを始める3人だった。



***



「聖女様、次はこちらをお願いします!」


 私の前には大量の依頼書が積み上がっている。


 聖女になって100年ほど経つが、これほど忙しかったのはちょっと記憶にない。


(世界中が大変なことになったのだから仕方が無いことですね……)



 小国の継承順位が低い王女アリエスとして生まれた私は、聖女のスキルを持っていたために、一転して世界中から頼られる存在になりました。


 そして、さすがにもう引退しようと決意を固めていたのが半年ほど前。


 昔から頼まれると断れない性格が災いして、ずるずるここまで聖女を続けてきましたが、もう限界だったのです。


 だって100年も世界のために働いたのですから、もう十分だと思うのですよ。


 幸い次の聖女候補は見つかっているとのことでしたし。


 ところが、もう引退しますと教皇に伝えに行こうとした矢先に災厄が起こりました。


 引退どころか、世界の危機です。


 この街も魔物の大群に呑み込まれるかと思われましたが、さすがは女神様に愛された街です。


 勇者様が現われて颯爽と街を救って下さったのです。


 そのこと自体は素晴らしく、女神様には感謝しかないのですが、なぜ、なぜ勇者様が女性なのでしょうか?


 聖女は引退するまで生涯独身が求められますが、例外として勇者を始めとした異世界人との結婚は認められています。


 聖女になって100年、私がどれほど異世界からの王子様を待ちわびたことか。


 この永遠に続く苦行から救い出してくれるまだ見ぬ旦那様。


 勇者が現われたと聞いた時、私の胸は少女のように期待に膨らみましたが、女性とわかった瞬間、失意のどん底へ叩き落とされました。

  

 上げてから落とす。正に鬼畜の所業と言ったら女神様に怒られてしまいますね。

  

 わかっています。聖女として特別な力を授かった以上、人並みの幸せを望むのは間違っていると。


 ですが、私もひとりの女性として夢を見るぐらい許されるのではないでしょうか?



 残念ながら、勇者が女性だった以上、聖女として幸せになる道はほぼ途絶えました。異世界人が同時期に複数現れることは歴史上でも滅多に無いのですから。


 ならば、私に残された道は1日も早く引退して幸せになることしかありません。


 でも――――


「聖女様お願いします!!」


 そう言われると断れないのです。


 救いを待っている人々が世界中にいる以上、もう少しだけ頑張らなくてはいけませんね。





 私は今日の仕事を終え、ぐったりと倒れこむように椅子に腰をおろしました。


 聖女の神聖魔法は、死んだ直後であれば蘇生も可能なほど強力ですが、高い集中力を求められますし、魔力が枯渇することはないのですが、やはり心理的な疲労はどうしても溜まります。


(湯あみでもしてゆっくりと休みましょう……)


 そう考えていた時です。



『アリエス、もうすぐ私の加護を受けた英雄が貴女のところへ行くから協力してあげてね』


 いきなりの女神様からの神託です。


 正直驚きました。だって100年聖女をやっていて、ここまで具体的な神託は初めてでしたから。 


 これは只事ではありません。


 私は慌てて気持ちを引き締め直すと、神託を伝えるために立ち上がりました。


 あれほど鉛のように重かった身体が、翼が生えたように軽く感じます。


 湯あみをして身体を清め、侍女に身なりを整えてもらいましょう。


 聖衣はどれが良いでしょうか……恥ずかしいですが、やはり殿方は露出が多めの方が……


 女神様は英雄と仰られました。


 であれば間違いなく殿方ですよね?


 女神様、ありがとうございます。私のために英雄さまを送って下さるなんて。


 そういえば、もうすぐっていつでしょうか? 今日? 明日? それとも……


 ふふっ、どんなお願いをされてしまうのかドキドキしてしまいます。


 求婚されてしまうのでしょうか? それともエッチなお願いでしょうか?


 一応聖女ですから、あまり過激なことは……でも女神様の神託ですから仕方がないですよね。覚悟を決めて応えようと思います。



 しばし妄想の世界にひたっていたアリエスだったが、はっと思い出したように、お気に入りの下着を探し始めるのであった。



  

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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