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便利すぎるのも困ったものです

「それで、そちらの女性が伝説の錬金術師セツナ=シラサキってことなの? カケル」


 バドルに戻り、冒険者ギルドでみんなに刹那の紹介をしたが、リリスを始めみんな生きている伝説の存在に驚きを隠せない。そりゃそうだ。



「白崎刹那。駆とは3歳からずっと一緒。よろしく」


 刹那さん!? いや嘘ではないけど言い方……


「くっ、やりますね……しかし私にはモフモフがあります!」


 クロエも無理に張り合わないで良いからね!?


「負けた……私は5歳……」


 美琴も落ち込まない!


「ふふっ、ですが刹那殿! お姫様抱っこの良さは知らぬはず! これは姫のみに許された特権ゆえ」


 セレスティーナ……そんな特権無いから。


「お、お姫様抱っこ!? 何その魅惑的な響きは……」


 慄く刹那と勝ち誇るセレスティーナ。


「先輩! 私も! 私もお姫様抱っこ!」


「ふふっ、美琴様は勇者であって、姫ではないでしょう?」 


「ふふふ、セレスティーナ、私も向こうの世界では姫と呼ばれて崇拝されていたのよ!!」


「な、何っ? 本当か、旦那様?」


「あ、ああ……まあそうだな」


 嘘ではない。特に熱狂的な一部のファンはすごかった。


「わ、私だってロボット工学界の姫と呼ばれてた。ちなみに世界的な科学論文誌ワイルドで5年連続プリンセス賞を受賞してたし……」


「な、何っ? 本当か、旦那様?」


「あ、ああ……事実だな」


 世界中の科学者の間での刹那の人気は凄まじかったからな。プリンセス賞だって刹那の為にわざわざ新設された賞だし。


「くっ、ならば仕方がない……」


 落ち込むセレスティーナ。そんな素直な君が大好きだよ。


「立ちなさいセレスティーナ。それでも貴女はあのジェラルド=アストレアの子孫なのですか?」


 刹那の言葉にハッとするセレスティーナ。


「ユスティティア、ジェラルドって誰?」


「初代様の孫にあたるアストレア三代目国王です、旦那さま」


 耳打ちすると見せかけて耳たぶを甘がみするユスティティア。止めて、変な声でちゃうから!? そうか……明日人の孫か。



「すまない刹那殿、私も偉大なジェラルド様の血を受け継ぐもの。目が覚めました」


 スッと立ち上がり背すじをピンと伸ばした凛とした立ち姿はすっかりいつもの彼女だった。


 その瞳に先ほどまでのわだかまりは残っていない。晴れ渡る秋の空のような清々しさだ。


 よく分からないが良かったな。


「うん、それでこそジェラルドの子孫だ。あの何度断り続けてもしつこく求婚してきたあのジェラルドのね!」


 刹那さん……せっかく綺麗にまとまりそうだったのになんか台無しだよ!?

 


***



 あの後、刹那が全員に俺の十分の1スケールのぬいぐるみ型ロボットをプレゼントしたものだから、すっかり人気者になっていた。


 しかも、それぞれの要望を取り入れてカスタマイズするほどのサービスぶりだ。


 あの刹那がそんな事するなんて、きっと異世界で苦労したんだな……不意に涙が。


 

 でも仲良くなって良かったけど、だからってぬいぐるみ売る計画たてるのはやめような!? 皆さん?



***



「それで、このあと一度イリゼスに行こうと思う。避難してきた各国の首脳陣が集まっているんだろ? 美琴」


 全員の視線が美琴に集まる。


「うん、アストレア、クリスタリア、アルゴノート、自由都市連合諸国の首脳陣と軍の主力が集まってる」


「それは本当か!? ち、父上たちは無事なのか?」

「みんなが生きているかもしれない……早くクラウディアにも教えてあげないと……」


 美琴の言葉を聞いてセレスティーナやクロエたちが色めき立つ。


「もっと早く伝えたかったんだけど、スタンピードとかあってバタバタしていたからな。周辺の安全は確認してあるから安心してくれ」


「気にしないでくれ旦那様。皆分かっている。それで美琴様、イリゼスはどういう状況ですか?」


「えっと、明日クリスタルパレス奪還作戦が行われる予定。一応置き手紙で状況は伝わっているはずだよ」


「置き手紙? 美琴……まさか手紙だけ置いてイリゼスを出てきたのか?」


「うぇっ!? そ、そうだけど……何かマズかった?」


やたら出発の準備が早いと思ってたが、そういうことか。



「美琴、これに何か簡単な文章を書いてみな」


 美琴にスケッチブックを手渡す。


「……はい、これで良い?」


「ああ、これで良い。じゃあ、みんなこれ読めるかな?」


 美琴の書いた文章をみんなに見せる。



「何これ……なんて書いてあるの?」


「あ、これ知ってるぞ旦那様。異世界文字だな。アストレアの王族なら簡単な文字なら読めるぞ」


 ユスティティアとセレスティーナは多少読めるようだが、それ以外のメンバーは全く読めなかった。



「え? どういうこと?」


 美琴は意味がわかっていないようだな。


「美琴、お前がこの世界の文字や言葉が日本語として聞こえ、見えているのはスキルが自動翻訳してくれているからなんだぞ」


「へ? そうなの? でも先輩や刹那さんは普通に読み書きしてるじゃない!」



「俺には瞬間記憶があるしな?」


「私は天才だから」



「げっ!? じゃあ私の置き手紙は……」


「ああ、まったく伝わっていないだろうな。多分今頃大騒ぎになっていると思うぞ?」


「先輩……私、イリゼスに行かなくても――――」



「「「「駄目に決まってるでしょ!!!!」」」」



「ですよねー、はぁ~気が重いわぁ……」 


 

 嘆く美琴には悪いが、早速出発だ。まずはプリメーラに戻ってクラウディアを連れて行かないとな。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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