表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

185/508

スタンピードの後に

「ば、馬鹿な……この俺が50体しか倒せなかっただと……」


 愕然とする守護者ジャミール。とはいえ金貨50枚は500万円相当となり、常人の年収以上なのだから十分と言えば十分かもしれないが、500はいけると思っていただけに落胆は大きい。


「ジャミール、俺なんか30体だぞ? マジで自信なくすわ……」


 ウサミミのサブリーダー、アーロンがぼやく。


「情けないわね、私なんか3000体よ? ふふふ、これがS級とA級の差なんじゃないの?」


「ソフィア、お前のは全部アンデッドだろ? 神聖魔法は反則だ!!」


「しかし、カケル殿と勇者様は別格として、他のメンバーも化物ぞろいだからな。ジャミールじゃないが、自信無くしそうだよ。まあたっぷり稼がせてもらったけどね」


 守護者のリーダーでS級冒険者のヴァレンティノも苦笑いしている。



「先輩、終わったね」


「ああ、終わったな」


 胸に飛び込んでくる美琴を受け止め抱きしめる。こんな細い体であんなすごい戦いが出来るんだもんな……あ、それは俺も一緒か。


「ねえ先輩、みんなが来る前にキスして欲しいな」


 そんな可愛いおねだり、断れるだろうか? 否!!!


「美琴……」


「先輩……」


『カケル……』


 キスの直前に美琴と入れ替わるミコト。


(み、ミコトさん!? 戻ってたんですか? あれ? あああああ私のキスが……)


(ん? あれ? この感触はミコトさん?)


「ミコトさん! 心配したんですよ? 急に消えちゃうから」 


「先輩……今は美琴だよ! それよりも早くもう1回!」


 ずいぶん忙しいな。よしもう一度――――



「旦那様~」

「御主兄様~」

「貴方様~」

「ダーリン」


「残念、時間切れだな美琴」

「ええええええぇぇ!? そんなああああ!?」 


 美琴の絶叫がむなしく響き渡る。



「みんなお疲れ様、思ったより早く終わったな」


「貴方様のせいで緊張感無かったわよ?」

「そこはせめておかげって言わないと、シルフィ」


 サラが呆れたように苦笑いする。 


「でも私の騎士のおかげで、バドルの街は救われたんだからね。これは歴史に残る偉業よ」


「ふふっ、旦那様と一緒にいると感覚がおかしくなってくるぞ」


「さすがは御主兄様です」


「さすがはお兄様です」


 俺はなによりみんなが無事で良かったよ。



『黒影殿……ダンジョンから誰か来るぞ』


 談笑しているとカイがいち早く察知して耳打ちしてくる。


「大丈夫だ、カイ。どうやら知り合いみたいだから」




「やあやあ、ミスターカケル! お見事だったね。こんなに早くスタンピードを抑え込むとは正直驚いたよ」


 やってきたのはここのダンジョンのダンジョンマスターの増太郎さん。


 彼の正確な情報提供がなければ、ここまで簡単には行かなかっただろうから、偶然彼と出会えた幸運に感謝しかない。


「こんにちは、増太郎さん。おかげで街も守れましたし、こちらも仲間を強化出来ましたからね」


「うんうん、これでダンジョンもすっかり綺麗になったし、当分の間は心配ないね。お互いにお疲れ様だよ」


 増太郎さんも嬉しそうに笑う。少しは溜まったストレスが解消できているといいけど。


「増太郎さんはこれから街へ?」


「ノー、ミスターカケルを呼びに来たのですよ」


「俺を?」


「ミスターカケル。申し訳ないのですが、一緒にダンジョンに来てください。ただしひとりで。同行は認めません」



「ねえねえ、この劣化先輩って誰?」


 美琴が失礼なことをおっしゃる。え? 劣化先輩ってなんだよ、全然似てないよね? 


「御主兄様、この偽御主兄様は何者ですか? 生き物の匂いがしないのですが」


 クロエ……目が腐ってるのか? 男っていう共通点しかないと思うんだが。


「お、お姉さま、気を抜くとどちらが本物の旦那様かわからなくなるんだが……」

「セレスティーナ、髪よ! 髪の色が違うわ」


 2人とも本気で凹むんだけど!? わざとだよね!? わざとだって言ってくれ!?


『ふふっ、皆さまそれでも婚約者を名乗れるのですか? ね、主様?』

  

 ソニア……それ増田郎さんだぞ。


「ダーリン、大丈夫じゃ、妾は血の匂いで判別できるからの!」


 逆に匂い以外じゃ判別出来ないのかよエヴァ!?


 シルフィとサラに助けを求めたら視線を逸らされた!?



 え……ひょっとして俺の目がおかしい可能性が?


 もう一度、増田郎さんをじっくり見てみる。

 

 駄目だ……目と鼻の穴が2つ、口が1つあるぐらいしか共通点が無いよ!?


「ま、増田郎さん、俺たちそんなに似てますかね?」


 藁にもすがる思いで増太郎さんにたずねる。


「私とミスターカケルが似ている? ああ、それは私に搭載されている認識調整機能のせいだね」


「認識調整機能?」


「私の姿が、見た人間の理想像に見えるようにする機能だよ。好感度と第一印象が段違いに良くなるからね! 正体を隠す目的もあるけれど」


 へ? てことは……



「ははははは♪ じゃあみんな、ちょっとダンジョンに行ってくるから後はよろしく!」



「「「「「「なぜ急にご機嫌!?」」」」」」 


(ふふっ、可愛いですお兄様)

   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ