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魔法少女


「ちょっと、お母さん! こんな所で何やってんのよ!?」



「「「「「えええぇっ!? お母さん!?」」」」」



「あら? カタリナじゃない! やっほー、元気してた?」


 あっけらかんとした様子でカタリナに手を振るクラリス。


「……質問に答えて! 何しに来たの?」


 迫るカタリナを面白そうに見つめるクラリス。


「何ってメイドに応募しに来たに決まってるじゃない」


 カタリナはこれ以上ないほどの深いため息をついた。


「メイドって、お母さん掃除、洗濯、料理、家事全般ダメダメじゃないの!」


「大丈夫よ! そんなの魔法のステッキで――――」


 どこからともなく取り出したステッキを構える。


「キャー! 魔法のステッキ! やっぱり本物の魔法少女だ」


「ち、ちょっとアリサ、あれは……」


 ただのコスプレだと言いたかったが、少女の夢を壊すことを躊躇う程度にはカタリナは心優しき女性だった。


「と、とにかく必要なのは魔法少女じゃなくてメイドなの! 家事全般修行し直して来て」


「えええぇっ!? 駄目だよカタリナ。魔法少女雇おうよ! ね!」



(アリサ……43歳の魔法少女は無理がありますよ?)


 鑑定で本当の歳を知っているクラウディアは苦笑いする。


(でも、ちゃんと応募の時は実年齢が書いてあるから問題ないわね)



(な、なぜ師匠がここへ? しかもカタリナの母親だったなんて知らなかったわよ!?)


 驚愕の事実に震えるソフィア。見つからないように隠れようとするが……


「あれ? ソフィアまでいるじゃない!! 良かった、これでやっとメンバーが揃ったわ」


「揃ったって……クラリスさん、まさか……」


 期待に目を輝かせるアリサ。


「そうよ。これでマジカル戦隊復活よ!!」


「はわわわわ、クラリスさん、お願いします! 私もマジカル戦隊に入れてください」


 クラリスに懇願するアリサ。


 魔法少女になるという幼い頃からの夢が叶うかもしれないのだ、なりふり構っていられない。



「私の一存では決められないわね、どうする? ピンク、イエロー、ヴァイオレット?」


 名指しされたピンクことセシリア、イエローことソフィア、ヴァイオレットカタリナは激しく動揺する。


 みなクラリスとマジカル戦隊ごっこをしていたという他人には言えない黒い過去があるからだ。


「す、すごい! みんな正体を隠しながら悪と戦っていたんだね!」


「「「あ、あああ……それは黒歴史で……」」」


 がたがた震える3人。



 反対などできるはずもなく、結局アリサも戦隊に入ることが出来た。



「アリサ、貴女は髪が焦げ茶だから……ショコラ、マジカルショコラよ!」

 

 クラリスに命名されて大喜びのアリサと失意のカタリナたち。


 埋もれている宝石のような人材を探していたのに、居たのはとんでもない爆弾だった。


(だからカケルくんに紹介したくなかったのよ……せめてマジカル戦隊のことだけは隠し通さないと!) 


 決意するカタリナだったが、時すでに遅し。


(全員分の衣装とステッキ。お兄ちゃんに作ってもらわないと……)


 アリサによってマジカル戦隊はより本格的になってゆくことを、彼女たちはまだ知らない。




「あのー、メイドの面接は?」


「「「「「「そうだった!?」」」」」」


 ミレイヌの指摘でようやく本来の面接を再開する一同。


 クラリスの他にも面白そうな人材を数名発掘することが出来た。



 続いて経験者の面接。


 こちらは史上稀に見る激戦となった。


 とにかく応募者のレベルが高い、高すぎる。


(これはすごいわね、なんかメイドの世界大会みたいになっている件!?) 


 

「アイシャ殿、これは落とすのは勿体ないレベルですな。いっそのこと、全員雇ってみては?」


 セバスに言われて悩むアイシャ。


 プリメーラの屋敷は広いが、メイド300人はやはり多過ぎる。


 だが、セレスティーナや、カケルノの屋敷にもメイドは必要だし、今後、カケルの屋敷が増えないとも限らない。


 今を逃したら、こんな高度な人材は手に入らないかもしれないのだ。



 アイシャは敬愛する屋敷の主を思い浮かべる。


 あの捨てられた仔犬のような淋しげな顔を。幸せそうにモフる顔を。


 そして目の前のモフモフメイドたちをもう一度眺めて決断する。




「全員合格!」



「「「「「えええぇっ!?」」」」」



「ただし、あくまで仮採用です。勤務地などは今後の働き次第で変わると思ってくださいね」


 アイシャの言葉にメイドたちは戦慄する。つまりこの屋敷に残れるかは今後の働き次第ということ。


 場合によっては僻地に飛ばされる可能性もあるということだ。


 採用されたのはあくまでもスタートライン。


 だが彼女たちの士気は天を突き破るほどに高い。もともと一流の人材ばかりなのだから当然だ。



「結局モフモフだらけになってしまいました……」


 落ち込むクロエ。


「大丈夫よクロエ、貴女はその中の頂点なんだから、使える武器が増えたと思わないと」


 シルフィの言葉に生気が甦るクロエ。


「そうですね! ものは考えよう。さすがです、シルフィ」


「ふふふ、それほどでもあるかしら」


「まあ、ボクは貴方様が喜ぶ顔が見られればそれで幸せだけどね」


「!!!!?? はっ、その通りですねサラ。私が間違っておりました……御主兄様のことではなく、自分のことばかり考えて……」


 再びはげしく落ち込むクロエ。



 そんな様子を眺めながら笑みを浮かべるクラリス。


(カタリナの様子が気になって来てみたけれど、ここ、本気で面白そうだわ。早くカケルくんとやらに逢いたくなっちゃった) 


 

 一方、念話でカケルに結果報告するアイシャ。


『カケルさま、例のメイドの件、上手くいきました。多数のモフメイドを採用しております』


『なにっ!? そうか御苦労だったなアイシャ。ふふふ。これで夢の計画へ大きく前進だ!』

 

『カケルさま……御褒美の方もどうかお忘れなく』


『無論だアイシャよ。期待しているが良い。ワハハハッ』


 なぜか悪だくみのノリで遊ぶ2人。


 ともあれ、ワタノハラ家のメイドは無事確保出来たのだった。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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