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魔人の聖地 始まりの場所

 魔人帝国には、始まりの場所という聖地があるのだという。


 歴代の皇帝は、ひとりでその聖地に向かい、始祖であるゲン=シンカイに皇帝就任を報告するのが伝統となっている。


 

 本来であれば部外者である俺が近づける場所ではないのだが、邪神の因子の件もあり、調査を兼ねて聖地を見せてもらうことになった。



 とはいえ、万一そこが邪神に繋がる場所であった場合、今の俺では対処できないから、今回は離れた場所から聖地を確認するだけに留める。




『カケル、あそこが聖地、始まりの場所である』


 皇帝ギャラクティカの案内でやってきたその場所は、とても異世界とは思えない場所だった。


(これは……まるで研究所だな)


 魔人たちが、始まりの場所と呼ぶその建造物は、未来的ともいえるデザインの研究棟のように見える。


 魔人たちも中には入れないようで、入口の前にあるおそらく認証システムが組み込まれているゲートを祭壇として使用しているそうだ。



『どうだ、カケル。何か分かったかな?』


「…………はい、ここがとてもヤバい場所だということが分かりました。ここはまるで、邪神の因子の巣です」


 俺の目には聖地を徘徊する邪神の因子がはっきりと見える。


 おそらく歴代の皇帝が、ここから因子を持ち出していたのだろう。


 ギャラクティカが因子に冒されていなかったのは、強さ、あるいは素質の伸びしろが基準に達していなかったからだろうか?


 とにかくこの場所に手を出すのはやはり危険だ。


 なにしろ危険か安全かも分からないのだから。


 今度イリゼ様に聞いてから行動した方が良いだろうと結論づける。

 


「とりあえず、この聖地には誰も入らないようにしないといけませんね……」


 さて、どうしたものか。


 困った時は――――





『…………それで私を呼んだの?』


 氷点下のジト目で俺を睨みつける死神キリハさん。


「はい、困った時の神頼みって言いますし、キリハさん以上に頼りになる存在はいないですから」


『そ、そう? ならしょうがないわね! ほら早くプリンプリーズ』


 さっそくプリンを要求するキリハさん。


『それで……ん、美味しい♡ 私に何を……んんん♡最高! して欲しいって?』


「あの聖地に入れないように結界を張って欲しいんですけど……」


『え? それは嫌。だって死神の仕事じゃないし』


 あっさり断わられてしまった。


 でも出来ないとは言わなかったよな。


「わかりました。本当はあまり使いたくなかったんですが……」


『デスサイズ!!』


 死神の鎌を召喚する。


『は? な、なんで死神でもないあんたがデスサイズ持ってるのよ!? しかもそれ超レアな限定ミコトモデルじゃないのよ!!!!!』


 大興奮のキリハさん。


 なにその限定ミコトモデルって?


 すごく気になるけど、とりあえず死神通信でイリゼ様に連絡する。


『プルルル……プルルル……はい、もしもし? あ、カケルくん? うん……大丈夫。ちょうど話したかったの。嬉しいわ』


『ち、ちょっと、誰と話してるのよ!? まさかの通信機能付き? なによ……私のより高性能じゃない』 


『……そう。分かったわ。カケルくん、そこにいるキリハに代わってくれる?』


「キリハさん、イリゼ様が話があるって……」


 デスサイズ型ケータイを渡す。


『へ? い、い、いいいイリゼ様!?!? えっ? な、なんでよ』


『は、はい、キリハです……え? でも……いえ、な、何でもありませんっ!! わ、わかりました!!! やります、やらせて下さい!』


 涙目でデスサイズを返してくるキリハさん。


『あ、カケルくん? キリハったら、喜んでやらせて下さいだって。可愛いところあるじゃない。それでね……』


 

 何なのよこの男は……やっぱりイリゼ様の恋人なんじゃないの? イリゼ様普段と声色が全然違うし……


『うん、うん、じゃあまたね、待ってるから。大好きよカケルくん。ばいばい』


 間違いないじゃん、絶対イリゼ様好きじゃん!? 大好きよって聞いてるこっちが恥ずかしいじゃない……


「すいませんキリハさん、お待たせしちゃって」


『べ、別に良いわよ。あんた……イリゼ様と仲が良いのね……』


「どうなんですかね? イリゼ様って誰にでもあんな感じじゃないんですか?」 


『そんなわけないでしょっっ!? 普段のイリゼ様めっちゃ怖いのよ!!!』


「あ……すいません、まだ通信切れてませんでした」


『すいませんすいませんすいませんすいません!!』


 速攻で土下座するキリハさん。


 あちゃ〜、ちょっと冗談が過ぎたかな?



***



「あのーすいませんキリハさん……怒ってます?」 


『…………プリンプリーズ』


「はい、どうぞ!」


『…………食べさせなさいよ』


「えっと、スプーンですか? それとも口移し?」


『ば、馬鹿なのっ!? スプーンに決まってるじゃない!!』


 真っ赤になって慌てるキリハさん。


 すいません、日常的にやっているので感覚がおかしいんですよ俺。


「はい……キリハさんあ~ん」


『あ、あ~ん……お、美味しいわね』


 照れながらも口いっぱいにプリンを頬張るキリハさんが可愛い。


「あ、キリハさん! カラメルが付いてますよ」


 口の周りに付いたカラメルソースを舐めて取ってあげる。


『な、なななな、何してるのよ!?』


 しまった!? つい、いつものクセで…… 


「すいません、キリハさん、あまりに可愛いかったので、つい」


 うわあっ、キリハさんめっちゃ睨んでるんですけど!? なんか近い、近い……ってあれ?


 なんかめっちゃキスされた。


『……か、カラメル付いてたわよ?』


 キリハさんのキスは、ほろ苦いカラメルソースの味がした。


『ば、ばかっ!? 変な事考えないでっっ!!!』


 おや、筒抜けでしたか。それなら――――


『キリハ×ミコト 桃色妄想!!!』


 新たな神級スキルを発動する。


『や、止めなさい!? ミコト先輩……そ、そんな駄目です〜って何考えてんのよっっ!!』


 ちなみにそんなスキル無いですからね?



『まったく……じゃあ始めるわよ』



 そうか、いよいよ結界を張るのか……


 実は忘れかけていたとは言えないけど、絶対バレてるよな。すいません。


 キリハさんの表情が一段と引き締まり、その横顔が一瞬ミコトさんと重なって見えたような気がした。ああ……いまキリハさんを抱きしめたら怒られるんだろうな――――


『あああもう! 少し黙ってなさいよ!? 心の声がだだ漏れじゃないの! まったく……別に怒らないからちょっとだけ無心で待ってなさい』


 おお……キリハさんが女神様に見える。可愛いツンデレ女神様……


『…………無心は?』


 はい、ごめんなさい。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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