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ジークリンデの焦り

 いかん……アリーセ殿下の右腕として、諜報活動を取り仕切ってきたこの私が、全く状況について行けていない。


 最前線にいるはずのゼロたちがここにいるだけでも理解不能なのに、敵のはずのナンバーズたちが味方になっているし、何より高潔なアリーセ殿下があの醜態を晒すとは……


 だが、1番の問題はあの黒髪の男だ。


 ナンバーズたちを従え、ゼロたちを、お、お嫁さんにしてしまい、あのアリーセ殿下が一目見て結婚を即決してしまった。


 もはや異次元。怪しい力で操っているとしか思えない。もしやあの男伝説の魔王なのか?


 だが、どう見ても悪い人間とは思えないし、私の命の恩人でもある。


 わ、私も……お嫁さんになった方が良いのだろうか?


 冷静に考えて、同じ方に嫁げばメリットは大きい。警護面もそうだが、アリーセ殿下やゼロたちとずっと一緒にいられるのだ。


 良く見れば顔も好みだし、なんだろう? 胸がドキドキして来るのだ。もうコレ絶対に好きだよね!? 


 ち、チョロい、我ながら引くほどにチョロい。これでキ、キスとかされたら秒で落ちる自信がある。


『ジークリンデ!!!』   


『う、うわああ!?』


 突然声をかけられ、叫び声を上げるジークリンデ。


『んふふ〜、どうしたのです? そんなに黒影さまに見惚れちゃって』


『え、エルゼ!? み、見惚れてなど……』


『ふーん、そんなに顔を赤くして説得力ゼロですよ? そうだ! ねえソニア!』


 良い事を思いついたとソニアを呼ぶエルゼ。


『なんでしょう、エルゼ?』


『ジークリンデが黒影さまに一目惚れしちゃったんだけど、きっかけが無くて困ってるらしいのです』


『え、エルゼ!? ち、違――――』


『違うの?』


『う……違わない……かもしれない』


『だって! ソニア、何か良いアイデアない?』


 エルゼ、そのニマニマした笑顔止めてくれないか!?


『うーん、主様は基本的に来るもの拒まずだから、普通に好き〜って言いながら抱きついてキスすれば良いと思いますよ?』


『そんなこと出来るか〜っ!?』


 はっ、思わず全力でツッコミを入れてしまった。



『どうしたの? さっきから騒がしいですよ?』


『あ、アリーセ殿下! 実は――――』



『まぁ……素敵じゃない! ジークリンデなら大歓迎です』


『で、殿下……ありがとうございます!』


『じゃあ早速死んだフリしてみましょうか』


『へ?』


『目覚めない姫を王子様のキスで起こすのは定番ですから! さあ、早く寝て!!』


 アリーセに言われ、渋々寝たフリをするジークリンデ。



『準備はいいわね!』


『『『『任せて下さい!!』』』』



『た、大変です! ジークリンデが目覚めないの!! 助けて大海原さんっ!』


『主サマ、コレハ、マジンビョウカモシレマセン』


 …………ありすはともかく、ソニアは相変わらず棒読みダネ。


『タスケルニハ、オウジサマノキスガヒツヨウデス』


 ゼロ……カタコト過ぎてロボットみたいになってるぞ?


『アー、ドコカニステキナオウジサマイナイカナー?』


 エルゼ……どいつもこいつも大根揃いだなおい! 魔人の演技力ゼロは種族特性なのか!?


 どうしよう……ジークリンデさん、さっきまで普通に話してたじゃん。っていうか寝たフリするって聞こえてたんですけどおおおっ!?


 くっ、ここまでされてキスしない選択肢はもはやない!!


 ジークリンデさんすごい美人だし……役得、なのかな? 仕方が無い、乗ってあげるか。



「な、なんだって!? アリーセ、大丈夫だ、俺も王子様と呼ばれている男だ。必ずジークリンデさんを助けてみせるっ!!」


『あ、ありがとうございます、大海原さん』


 涙ぐむありす。うん……迫真の演技だね。



 さて、ジークリンデさんにキスを…………


 うっ、何で薄目開けてるんです!? すごくやり辛いんですけど!?


 めっちゃ顔赤いし、呼吸も荒くなってるし。


 何か痙攣し始めたけど大丈夫かな……キスしたら死ぬんじゃ!?


 しょうがないな――――えいっ、


 ジークリンデさんのおでこにキスをする。


『ふぇっ!?』


 あ、目が覚めた。あ、また目をつぶった!?


 今度こそ唇にキスを…………





 ち、ちょっと待って。何で大海原くんが目の前にいるのかな!?


 びっくりして思わず目をつぶっちゃったよ。


 あ、思い出した! 私、ジークリンデで、キスされそうになってるんだった!?


『ち、ちょっと待っ――――ん、んむんむ〜!?』


 あ、私、大海原くんとキスしちゃってる……ヤバい、身も心もとろけちゃうよ〜!?


『はぁはぁ……気持ち良かったよ、大海原くん』


「へ? まさか……松野か?」


 静かに頷くとアリーセに微笑みかける。


『……会いたかったよ、ありす』


『え……嘘……ひめかちゃん?』


『……うん。ひめかジークリンデだよ、なんちゃって』


『び、びべがぢゃん〜うわあああああん!!!』


『よしよし、って、びべがぢゃんって誰よ!? ふふっ、もう離さないんだからね〜可愛いありすアリーセちゃん』 


 

 探しものは常にすぐそばにあるとは良く言ったものだけど、まさか最初から隣にいたとはね。


 良かったな……ありす、松野。



『あ、大海原くん、あんな情熱的なキスされたらもうお嫁さんになるしかないからね?』



 あ、はい。宜しくお願いいたします。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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