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異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収拾つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~  作者: ひだまりのねこ
第十章 魔人帝国編

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アリーセの憂鬱 後編

『行きます! 転生させて下さい!』



『……分かった。何か希望はある? 全く考慮はしないけど一応聞いておくわ』


『ひめかちゃんとまた逢えるなら何でも構いません!』


『ふふっ、その心意気や良し。そうね……あなた達の友情に免じて1つアドバイスしてあげる』


『は、はい』


『魔人の侵攻を止めなさい。1分1秒でも遅らせなさい。さもなくば……』

 

『さ、さもなくば?』


『貴女の大切な親友は死ぬわ。そして二度と会う事もない』


『わ、わかりました!』 


 魔人? 侵攻? 正直さっぱり分からないけど、やるしかないのだろう。



『良い返事ね。貴女みたいな子、嫌いじゃないわ。私の名は創造神イリゼ。貴女の新しい人生に幸多からんことを……行ってらっしゃい』



 女神様の言葉が終わるやいなや、私の意識は暗転する。



 目を覚ますと、そこは見たこともない景色、見たこともない場所だった。


 

 慌てて自分を確認する。


 記憶はそのまま残っている。


 これってきっと特別なことだと思う。ありがとうございますイリゼ様。


 そして、問題は私の姿。


 どうやら子供の身体? そしてサラサラの金髪!! すごく高そうな豪華な衣装。状況から判断して貴族の令嬢かお姫様でしょうか?



『アリーセ殿下! 良かった、こんな所にいらしたんですね』


 誰だろう? 金髪金眼の美女が私を呼んでいる。


『うっ!?』


 次の瞬間、膨大な記憶と知識が脳に流れ込んでくる。この身体の本来の主アリーセのものだ。


 そうか……アリーセは本来ここで死んでいたのね。


 気位が高く残酷な典型的な魔人の皇族。


 機嫌を損ねたものは次々と処刑してしまう姿に人々は無慈悲の皇女と畏怖していた。


 家族を殺された恨みからアリーセは毒殺されたが、中身は私に入れ替わっている。


 女神様の力なのか、毒はすっかり消えていて、身体は健康そのもの。



『心配してくれてありがとう、ジークリンデ』


『で、殿下が私に御礼を…………』


 驚き過ぎてジークリンデが固まっている。


 どんだけ酷ければこんな反応になるのやら。深いため息をつく。


 

 アリーセの記憶を得て分かったことがある。


 魔人の侵攻作戦は国家プロジェクトだ。


 数十年前から計画は進行しており、残された時間は多くない。


 これを止める? 出来る訳がない。でもやらなければひめかちゃんは死ぬのだ。


 早くも萎れそうな心を奮い立たせ、告げる。



『ねえジークリンデ、これから忙しくなりそうよ?』




 あれから7年。


 私の腹心ゼロ、エルゼ、ソニア。


 彼女たちはアリーセが処刑した家の遺児を私が引き取り育てた妹のような存在。


 本来恨まれこそすれ、感謝されるいわれはない。


 でも彼女たちは、私の為に命がけで尽くしてくれた。


 彼女たちの暗躍のおかげで、侵攻作戦そのものを止めることは出来なかったが、遅らせることは出来た。


 そして今回の大規模侵攻作戦も、先遣隊のみの派遣に留めることに成功したのだ。


 有り難い。本当に有り難い。でも私は……彼女たちの想いに報いることが出来るだろうか。





『ジークリンデ……貴女だけでも逃げなさい』 


 嫌な気配を感じてジークリンデを逃がす。


 そういえば、ここは7年前初めて貴女に会った場所ね。


 そしてアリーセが毒殺された場所。


 何の因果か分からないけれど――――



『悪いが殿下にはしばらく消えていただく……』


 いつの間にか、暗殺者たちに囲まれていた。



『お止めなさい。私の力を知っているでしょう?』


『もちろん知っておりますよ。ですからほら……』



『も、申し訳ございません。アリーセ殿下……』


 捕らえられたジークリンデが悔しそうに俯く。


(先にジークリンデを逃したのは失敗だったわね……でも!)


『キャンセル!!』


 私のユニークスキル『キャンセル』は相手の行動の結果をキャンセル出来る。


『あ、アリーセ殿下!』


 捕らえられたジークリンデがキャンセルによって開放される。


『くっ、厄介な……だが想定内ですよ』



『あああああっ!?』


 ジークリンデの生命核に爆裂の魔刻印が浮かび上がる。


『クククッ、いくら殿下のスキルでも当事者が

現場に居なければどうしようもないですな』


 キャンセルのスキルの有効時間は10秒。それ以前の結果はキャンセル出来ない。


 魔刻印の解除は術者本人にしか出来ないのだ。


 最悪術者を殺すことで発動を止めることは出来るが、如何せん候補者が多すぎる。


 完全に違法行為だが、それだけ敵が追い詰められているということ。




『…………分かりました。大人しく捕まりますからジークリンデの安全を保証しなさい』


『で、殿下、駄目です! こうなった以上、私はもう助からないでしょう。どうかお見捨て下さい!!』


 

 必死に訴えるジークリンデが正しいのは分かっている。ここで私が従ったところで敵が約束を守る保証など無いのだから。


 

 でもね……ジークリンデ。貴女を見捨ててひめかちゃんと再会出来たとしても、私はきっと笑えない。


 この世界でひとりだった私を、7年間ずっと側で支えてくれた貴女のことも同じぐらい大切なのよ。 


 ごめんね、ひめかちゃん……ごめんね、ゼロ、エルゼ、ソニア。



『へっ、そうそう、大人しくしてれば約束は守るから安心し――――ぐべぁあぁ!?』


 突然暗殺者のひとりが吹き飛んで意識を失う。



『控えろ下郎!! アリーセ殿下が穢れるではありませんか』


『え…………そ、ソニア?』 


『それ以上の狼藉は私たちが許しませんよ』


『げっ、テンスとイレブン!? 何でナンバーズがここに?』


 暗殺者たちが動揺する。


 突然現れたソニアには驚きましたが、テンスとイレブンは先遣隊の指揮官でむしろ敵方ですよね。意味が分かりません。



『よし、これで全員捕まえたな。そっちはどうだエルゼ!』


『はい、こちらもバッチリですゼロ様』


 ゼロ? エルゼまで? 


『み、みんな……でもジークリンデが――――』


『大丈夫ですよアリーセ殿下、犯人は俺がぶっ殺しましたから』


『あ、貴方は、フォース!? 何故貴方が?』


『『『我らが主、黒影さまの命令ゆえに』』』


 く、黒影さま!? 何者でしょうか?



『主様はアリーセ殿下の伴侶になるお方です』


『そ、ソニア? 何を勝手なことを……』 


 私が好きなのは生涯大海原さんだけ。


『黒影さまは素晴らしい方です。我らも命を救われました』


 ゼロとエルゼまで……


『命の恩人ですから、出来る限りの御礼はしますが、私は生涯誰とも結婚するつもりはありません!!!』


『『『アリーセ殿下…………』』』


 そこへジークリンデを治療したカケルこと黒影さまがやってくる。


『あ、主様』

『黒影殿』

『黒影さま』


「はじめまして、アリーセ殿下。俺はカケル。異世界人です。すいませんね、勝手なことを。気にしないで――――」


『結婚しましょう!』


「へ?」

『『『へ?』』』


 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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