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異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収拾つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~  作者: ひだまりのねこ
第十章 魔人帝国編

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アリーセの憂鬱 前編

〜 魔人帝国 帝城〜



『ジークリンデ、あの娘たちは上手くやってくれているでしょうか?』


『アリーセ殿下、ご心配なさらずとも、あのゼロがついているのです。きっと良い成果を持ち帰るはずです』


『そう……ですね。ゼロなら大丈夫ですよね。でも……彼女にはこれ以上力を使って欲しくないのです』


『アリーセ殿下……ゼロは全て納得した上で力を使っているのです。1日も早く悲願を達成することが彼女の想いに応える唯一の道だと私は愚考いたしますよ』


 優しく微笑む頼りになる私の右腕。


『ありがとうジークリンデ。貴女の言うとおりだわ』



 私の悲願を達成するために可愛いあの子たちを危険な任務に送り出さなければならなかった。


 私はどうすれば良かったのだろうか。もっと上手く出来なかったのか。


 私はいつも自問自答している。


 そう、7年前のあの日、この世界にやって来たその日からずっと――――

 



「ありす〜、一緒に帰ろう!」


「ひめかちゃん、うん、一緒に帰ろう」


 私は前の世界では鏡原ありすという女子高生だった。地味で読書と手芸が趣味の夢見がちなごく普通の女の子。


 名前がアレなので、名前負けしているとからかわれることも多く、同じく名前負け組のひめかちゃんとはいつの間にか親友になっていた。



「ありすってば、またストーキングしに行くの?」


「ひ、人聞きの悪いこと言わないで!? 後をつけて遠くから鑑賞するだけよ」


「んふふ〜、ねえ、私も見に行って良い? ありすの王子さま」


「え、えええぇっ!? と、取らないって約束するなら良いけど……」


「取るも何も、貴女のじゃないでしょうが……ふふっ分かったわ、取らないから私も行く〜」


 呆れながらも付いてくると譲らない親友を連れていつもの場所へ向かう。



「…………なんかライバル多くない?」


「そうなのよ、彼、密かに人気があるの」


 彼の下校途中に偶然遭遇しても違和感がないその場所には、すでに近隣の女子高生が10人ほど集まって熾烈なポジション争いが展開されていた。


「ありす……みんなピリピリしていて怖いんだけど……」 


「大丈夫、みんな奥手で話しかけることも出来ない子たちばかりだし、情報交換もしている同志だから」


「そ、そうなんだ、すごいけど安心は出来ない」


 若干引き気味のひめかと話していると、場に緊張が走る。


「「「き、来たわ!!」」」



 遠くから歩いてくるひとりの男子高校生の姿に全員慌てて配置につく。


「ひめか、私たちはこの道を歩いてきて偶然同じタイミングで駅に向かう設定よ。角を曲がるタイミングが重要になるの。早すぎても遅すぎても駄目だからね!!」


「わ、分かった」


 思わず息を呑むひめか。


 私は彼の歩幅と歩くペースを熟知している。


 彼の横顔を眺めながら自然に背後に回り込める一瞬を逃すことなど無いのだ。


「3、2、1、今!!」


 ひめかと一緒に歩き出す。


 そして――――



「あれ? 松野じゃないか! 久しぶりだな」


「へ? 大海原(わたのはら)くん? ひ、久しぶり〜」


 は? な、なんでひめかが王子さまと話しているの? え? 知り合い? 何これなんてラブコメ!?


 混乱してテンパっている私を置いて2人は昔話で盛り上がっている。どうやら中学校まで同じ学校だったらしい。


 ライバルたちの視線が痛いが、私にとっては千載一遇のチャンス到来!! 共通の知人を通して仲良くなるのはお約束っ!!!


大海原(わたのはら)くん、私の親友のありす、鏡原ありすだよ」


 ナイス! さすが親友。アイコンタクトすら必要ないね。


「は、はじめまして、鏡原ありすです」


 だ、駄目、恥ずかしくてまともに顔を見れない。せっかくのチャンスなのに……


「こんにちは、大海原駆(わたのはらかける)です。鏡原さんは憶えていないかもしれないけど、昔一度あってるよね。下校途中に見かけるから声をかけようか迷ってたんだけど」


 お、憶えてますとも!!! 私が王子さまに一目惚れしたあの時のことを、親の顔を忘れても忘れることなどありやしないのです!!!


「いえ、もちろん憶えています。でもあんな昔のことを大海原さんが憶えているとは思わなくて……」


「ああ、それな! 変な意味じゃなくて絶対に忘れられないんだよ、俺」


 へ? それってどういう……もしかして私に一目惚れ?


「そういえば大海原くん記憶力抜群に良かったもんね!」


 あ、そっちですか。そうですか。


「2人とも時間あるなら駅前の喫茶店行かないか? 久しぶりに松野の話も聞きたいし、鏡原さんのことも知りたいしな」


 王子さま……それ完全に口説いてますけど自覚ありますか? 行きますけどね! 万が一に備えてスケジュールは空けてありますけどね。


「やった〜! もちろん大海原くんの奢りだよね?」


「えええぇっ!? マジか。分かったよ、俺が誘ったんだから今日は奢ってやる。でもケーキはセットにしろよ? 単品だと高いからな」


「んふふ〜、飲み物だけのつもりだったんだけどラッキー! ね、ありす?」


「う、うん。ありがとうございます、大海原さん」


 

 王子さまとの時間は夢のようで、楽しくてあっという間に時間が過ぎてゆく。


 どんな話題でもちゃんと答えてくれる。この人は、一体どれだけ博識なんだろう。


 何度も頬をつねったせいで少し腫れているけど、これはきっと幸せの痛みだ。




「いやぁ、まさかありすの王子さまが、大海原くんだったとはね〜」


 翌日の学校でひめかが面白そうに笑う。


「ひめかのおかげで昨日は楽しかった。ありがとう」


「んふふ、私も楽しかったわ〜。でも大海原くんはガチでモテるからありすも私も大変だね」


「やっぱりそうだよね。って、ひめかも狙ってるんじゃない!? 取らないって言ってたのに〜」


「いや、それは相手が大海原くんだって知らなかったから。私も昔からずっと好きだったのよ。あ、そういえばありすと大海原くん、昔会ったことがあるって言ってたけど……」


「うん、実はね――――」



 私が大海原さんと初めて会ったのは小学校に入ったばかりのころ。


 当時出来たばかりの巨大迷宮の中で私は思いきり迷子になってしまった。


 周りが全て同じ景色に見えて――――迷宮だから当たり前なんだけど――――泣きそうになっていたら、ひとりの男の子が声をかけてくれた。



「へえー、その男の子が大海原くんで、出口まで連れていってくれたのね?」


「ううん、そうじゃないの」




「大丈夫か?」


「うぇっ……道が分からないの……」


「じゃあ俺が一緒にいてやるよ」


「え? 出口を教えてくれるんじゃないの?」


「そんなことしたらせっかくの大迷宮がたのしめないだろ? 大丈夫。俺は出口を知っているし、いざとなれば緊急脱出口もある」


 そう言って笑う男の子が頼もしくて、不安も吹き飛んだ私は再び大迷宮に挑んで行ったの。



「それで見事ゴール出来たんだね」


「それが……私、筋金入りの方向音痴みたいで……」




「ごめんなさい、もう限界……」


 すでに足は限界を迎えていた。


「お前……面白い奴だな。頑張り過ぎだろ」


 文句も言わずにずっと付き合ってくれているから頑張っただけなんだけどな……


「よく頑張ったな。後は任せろ、ほら乗りな」


 男の子は歩けなくなった私を背負って出口まで連れていってくれた。


 恥ずかしいやら嬉しいやらで結局名前も聞けず仕舞いだったけどね。







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i566029
(作/秋の桜子さま)
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