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異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収拾つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~  作者: ひだまりのねこ
第九章 決戦の前に 束の間の日常

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もふてんこもり

「うわっ!?」


 転移した先は、新ラビ部屋。


 着地した先のラビの腹肉が軟らか過ぎて倒れこんでしまう。


「あ、あの……カケルさま?」


 結果的にミレイヌを押し倒すような形になってしまい、真っ赤になってあわてるミレイヌ。


「ご、ごめん! わざとじゃないんだ」


 もちろん本気になれば避けることは出来るが、オンオフは大事。


「いえ……私なら構いません……よ?」


 上目遣いで瞳を潤ませるミレイヌ。


 くっ、可愛い……だが時間が無い。なんなの? この異世界生殺し設定でもされているのだろうか?


「ミレイヌ……みんなを待たせるわけにはいかないよ。でも、これは受け取って欲しい」


 ミレイヌをイメージしたオニキスブラックの指輪を差しだす。 


「ふえっ……わ、私の指輪……良いんですか?」

「もちろん。ミレイヌを想って作った指輪だから」


「……嵌めてもらってもいいですか、指輪」

「ああ、これからもよろしく。ずっと一緒に生きて欲しい」


 そっとミレイヌの指に指輪を嵌めた。


「カケルさま……キス……してください。それぐらいの時間はあるはずでしょ?」

「そうだな……」


 暖かいラビの腹の上で静かに唇を重ねる。


 ちなみに猫獣人の舌は、人族に比べてややザラザラしている。


 なんで急に舌の話になったのかって? さあ? 何でだろうね。


 

『…………お兄様…………皆さまお待ちですが…………」


 なにやら急激にあたりが寒くなったような……どうやらお迎えが来たようだ……



***



 屋敷の広間には、100人ほどの猫獣人たちが集まっていた。


 別にミレイヌが猫獣人をひいきしたわけではなく、それだけ猫獣人の境遇が厳しいものだったということだ。


 実際、この100人の中に五体満足なものはひとりもいない。



「モモお姉ちゃん、この街にこんなに猫獣人がいたなんて知らなかった」

「そうね。私も初めて見る人が結構いるもの……」


「……猫獣人はあまり表に出てこれないからな。それに人見知りで警戒心も強いし」


 ソラの言うとおり、猫獣人は長きに渡って迫害された歴史を持ち、種族的にも警戒心が強いので、この平和なプリメーラにおいても隠れ住むものが多い。


 これだけ多くの猫獣人が集まったということは、それだけミレイヌが彼らの信頼を集めていることを証明していた。


 

 そして、集まったすべての猫獣人たちの興味と関心は、当然その仕事内容と雇い主についてだ。


 みな不安と期待に揺れながら、雇い主が現われるのを今かと待ちわびていた。



『皆さま、大変お待たせいたしました。雇い主である兄と、商業ギルドのミレイヌ様が到着いたしました』


 涼やかな声が広間全体に響き渡ると、少し遅れて2人が部屋に入ってきた。


 猫獣人たちがざわめく。


『黒目黒髪って……まさか噂の異世界人の英雄様じゃないの?』

『モモお姉ちゃん、なんか優しそうな人だね』


 カケルが異世界人らしいと分かると、広間の雰囲気は一気に好意的な空気に包まれる。


 しかし――――


 再び猫獣人たちがざわめく。


『あれ? 英雄様出て行っちゃったよ?』

『まさか……私たちを見てがっかりされたのかしら……』 



(や、やべえ……色とりどりのもふてんこもりじゃないか……は、鼻血でそう……)


 カケルは極度の興奮に耐えきれず部屋の外で悶えていた。


「カケルさま? どうしたんです、急に出て行くからみんな不安がってますよ?」

「悪い、ミレイヌ、ちょっと興奮しすぎちゃって……もう大丈夫だ」


「? 大丈夫ならいいですけど」



「はじめまして、今回募集を出したカケルといいます。見ての通り異世界人です。みなさんには、異世界のデザート、えっとデザートと言うのは甘い食べ物です。それを作って販売する仕事をお願いしたいのです。経験も一切不要です。やる気さえあれば誰にでも出来るように最後まで教えますので、どうか安心して下さい」



『あ、あの……おれは片方の手がないけど、大丈夫なのか?』


 質問したのは青毛の猫獣人ソラ。


 他の猫獣人たちも不安そうに頷いている。



「もちろん大丈夫ですよ。ソラ、ちょっと来てくれるかな」


 ソラとソラの後ろにくっついた妹のルナがカケルのもとへやってくる。


「ソラ、ルナ。2人ともこれを飲んでご覧。異世界の霊薬で怪我や病気が治るんだよ。苦くないし、とても美味しいから安心して」


 そう言って自分とミレイヌが目の前で実際に飲んで見せた。


「う、うん、飲んでみるよ。ルナは兄ちゃんが飲んでから――――ってもう飲んでる!?」


 驚いたことに、ルナはカケルからもらった霊薬をすでに飲んでしまっていた。


「…………!?」 


 すると、ルナの身体が淡く輝き、失ったはずの耳と尻尾が生えてきた。そして――――


「……ありがとう、カケルさま」

「ルナの身体が治った!? それに喋った!?」


 兄のソラにさえ話すことが無かったルナがはっきりと言葉を発したのだ。


「……ルナは心因性の失語症だったんだ。可哀想によほど怖い目に遭ったんだな……」


 ルナを優しく抱きしめ頭を撫でる。


「……お、おれがちゃんとルナを守れなかったから……ごめんな……」


「ソラ、それは違う。お前が命懸けで守ったから今があるんだ。ソラは立派な兄ちゃんだよ……ほら、早く飲んでルナを安心させてあげないと」

「う、うん」


 神水を飲んだソラの片腕もすっかり元通りになる。


「あ、ああ……手が……うわーん」


 声をあげて泣き出すソラ。


(今まで辛かっただろうに……よく頑張ったな……)  


 2人を抱きしめ頭を撫でるくらいしか出来ないが、カケルは泣き止むまでずっとそうしていた。


 その後は早かった。全員が神水を飲んで元気いっぱいになった。


 神水は身体だけでなく、心の傷も癒すから。


 モモの足も、ココの皮膚病も綺麗に治り、本来の桃色ふわふわな毛が生え揃っている。



「良がっだ〜ほんどによがっだ……」


 さっきから泣きっぱなしのミレイヌ。


(みんなが助かったのは、お前が頑張って命を繋いだからだよ……ありがとうミレイヌ)


 カケルは泣きじゃくるミレイヌを優しく抱きしめるのだった。

 


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i566029
(作/秋の桜子さま)
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