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異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収拾つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~  作者: ひだまりのねこ
第九章 決戦の前に 束の間の日常

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可愛い子猫ちゃん

「……ねえ、モモお姉ちゃん。本当に大丈夫かな?」


「大丈夫よ、ココ。あのミレイヌさんが嘘つくわけないでしょう?」


 猫獣人の姉妹モモとココは、商業ギルドの前でギュッと手をつなぎ、目の前の行列を眺めていた。



 ミレイヌは普段から街にいる身寄りのない猫獣人たちのことを気にかけており、商業ギルドの仕事を回したりしていた。


 今回甘味販売の話が出てからは、良い仕事があると声をかけて回っていたのだ。


 猫獣人の女性や子どもが出来るまともな仕事などほとんどない中で、ミレイヌが持ってきた話は耳を疑うほどの好条件だった。紹介したのがミレイヌでなければ、人身売買などの犯罪を疑うほどに。

  


「朝方は混むと思うから、出来れば午後に来てね」


 そうミレイヌに言われていたのに、ジッとしていられずに商業ギルドに来てしまった。


「……混んでるね、モモお姉ちゃん……」

「……やっぱり出直した方がいいね」


 2人が帰ろうと歩き出すと、後ろから声がかかる。


「モモ、ココ、お前たちも来たのか?」


 振り返ると、珍しい青毛の猫獣人兄妹のソラとルナが立っていた。


「ソラ、あなたたちもミレイヌさんに聞いたの?」

「ああ、こんな良い話、滅多にないからな……」

「…………」


 ソラとルナの兄妹は、毛色が珍しかったため、人身売買組織に攫われた。


 売られる直前に災厄に遭い何とか逃げ出すことができたが、兄ソラは片手を怪我で失っており、同じく妹のルナも片耳と尻尾を失っている。


 犯罪に巻き込まれたショックで、妹のルナは極度の人間不信となり、兄ソラ以外に懐くことは決して無い。今も兄の後ろに隠れて出てこない。


 実際、猫獣人に限らず、身寄りのない子どもたちは、かなりの割合で何らかの怪我や病気を持っている。


 衛生状態も悪く、住む場所や、満足に食べるものすらない状況の中、そのまま亡くなってしまうケースも珍しくない。


 モモも幼いころの無理がたたって、片方の足がうまく動かせないし、ココは全身ひどい皮ふ病に冒されていた。


 当然こんな状態の猫獣人を好んで雇うところなど無く、商業ギルドの雑用などを手伝うことで、かろうじて命を繋いできたのだが――――

  

 今回の募集は【年齢・経験不問、怪我や病気があっても大丈夫】という破格の条件だった。


 カケルは、募集にあたって、なるべく厳しい状況にある人を優先して欲しいとミレイヌに一任したので、怪我や病気で働けない人が最優先で声をかけられたのだ。


 ギルドまで来れない場合には、代表者が代理で説明を受けにくることになっている。



「でも……すごく混んでたよ」

「そうだな……それに俺たちみたいのが入ったら嫌がられそうだしな」


 本来、猫獣人は綺麗好きなのだが、彼らはもう何か月も風呂に入っていない。毛もごわごわで、もとの毛色が分からないぐらい薄汚れてしまっている。匂いも酷いし、入っていったらミレイヌさんに迷惑をかけてしまうかもしれない。



『貴方達、商業ギルドに来たのでしょう?』 


 突然、澄んだ楽器のような声色が響く。


「うわあ……綺麗な人……」


 アクアブルーの髪にアクアブルーの瞳。天上の女神ですら嫉妬するのではないかと思うほどの美しい少女がいつの間にか目の前に立っていた。


 猫獣人の気配察知はすべての人種の中でもトップクラス。にも関わらず、誰にも気付かれることなく、まるで最初からそこにいたかのように少女は微笑んでいた。 



『私はミヅハ。今回募集をかけた雇い主の妹よ。宜しくね、ソラ、ルナ、モモ、ココ』


 ミヅハの指輪には、鑑定のスキルも付与されている。


 突然名前を呼ばれた4人は唖然として顔を見合わせるばかりだ。



『お兄様はしばらく戻って来れないから、私と一緒に待ちましょうね――――聖なる洗浄(ホーリーウォッシュ)


 優しい青い光が4人を包み込むと、汚れがすっかり落ちて綺麗になってゆく。


『はい、これで綺麗になりましたよ。怪我は後でお兄様に治してもらえますからね』


 ミヅハでも治せないことはないが、やはり雇い主が治してあげた方が印象は良いだろう。



「「「「…………」」」」


 状況に付いて行けずポカーンとしている4人。


『ごめんなさい、私は他の人たちも案内しないといけないから、後はこの子について行ってね――――シズク!』


『はーい、ミヅハ様、シズク参上!』


「うわぁ!? また急に現れた……」


『シズク、この子たちを屋敷まで案内してあげて。マルコスさんたちには話が通ってるから、連れて行くだけで良いです』


『了解! おいで、可愛い仔猫ちゃんたち』 


 水の精霊(ウンディーネ)のシズクに黙ってついて行く4人。



 商業ギルドは今日1日混むだろうと聞いていたので、カケルはあらかじめカルロスさんの屋敷を説明会のために借りていた。


 ちなみに、カルロスさんの好意で敷地内に場所を無償で借り、プリンを作る工場と寮はすでにカケルの手で完成している。



「……モモお姉ちゃん、すごく大きなお家……」


『はははっ、あれは門番たちが使う休憩所。お屋敷はもっとデッカイから!』


 シズクが愉快そうに笑う。


10分後、巨大な屋敷が見えて来ると、4人はこれ以上無いくらい目を見開いてあんぐり口を開く。


『とりあえず、おじさまが来るまでは、屋敷でお菓子でも食べてなよ。お昼ごはんも出るから、お菓子食べ過ぎないようにな!』



「モモお姉ちゃん、お菓子って甘いお菓子かな?」 

「た、多分ね、私もあまり食べたことないから……」


「良かったなルナ、お菓子が食べられるってさ!」

「…………」


 無言でこくこく頷くルナ。目が輝いているので、お菓子が楽しみなのだろう。


 お菓子とご飯と聞いてすっかり緊張がほぐれた4人だったが、その後、執事とメイドたちに出迎えられて、再び借りてきた猫状態になるのであった。


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i566029
(作/秋の桜子さま)
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