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異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収拾つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~  作者: ひだまりのねこ
第八章 セントレアを奪還せよ

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セントレア

 大国アストレアの王都セントレア。


 人口百万人を誇る大陸最大の都市であり、文化の中心地でもある。


 悪夢のような災厄が襲いかかったのは半年前。


 突然、街の中心に現れた魔人の猛攻に人々はなすすべもなく蹂躙された。


 

 セントレアはその千年に及ぶ歴史上、一度も侵略を許したことがなく、人々に油断があったことは確かに否めないが、王都の真下から攻撃されることを想定できるかと言われれば、それは難しいだろう。



 ましてや攻撃が始まったのは、ほとんどの人が寝静まる真夜中だ。


 寝込みを襲われる形の一斉攻撃で多くの戦力は無力化され、かろうじて生き残った騎士団および警備兵、ギルドの冒険者たちが抵抗を始めた頃には、すでに大方の勝負がついていた。


 また、主要な王族が王都を離れており、それに伴って、七聖剣をはじめとした戦力の不在で王都が手薄になっていたことも早期に敗北した要因となった。



 百万人といわれた王都の人口も、現在は激減している。


 半数は災厄の時に殺され、生き残った人々も、子どもと若い女性は奴隷や家畜用として次々に帝国に連行されていき、老人や男たちは魔物のエサとして消費されてゆく。


 現在の人口はもはや10万人に満たない。もちろん街から出ることは出来ず、連行もしくはエサとして消費される順番を待つだけの日々を過ごすだけとなっていた。


 人々にとって幸いだったのは、帝国側も少数精鋭のため人手が足りないこともあり、出口を封鎖するだけの比較的緩い監視状態だということだ。


 したがって、街の中であれば比較的自由に行動はできるが、かといってとても希望が持てる状態ではない。



 だが、人々は生き残ることを諦めてはいなかった。


 セントレアは古い街の上に新しい街を重ねて来たために極めて複雑な構造をしており、入り組んだ地下空間に逃げ込んだ人々も多い。


 また、全国各地にある避難用シェルターも当然セントレアに複数存在し、そんなシェルターのひとつでは、現状を打開するための話し合いが行われていた。



「どうすんだ、ギルドマスタ-? このまま手をこまねいているつもりかよ?」


 苛立ちを押さえながら声を発したのは、腰まである燃えるような赤髪が特徴の若者。このセントレアの冒険者ギルドのA級冒険者ジャミール。半年前の災厄を運良く生き残った男だ。


「落ち着けジャミール。気持ちは分かるが、今動いたところで状況は悪化するだけだ。俺もこんな状態だし、まともに戦える戦力が揃うまでチャンスを待つんだ」


 そう言ってジャミールをなだめる元S級冒険者のギルドマスターオスカルも、片脚と片目を失っており、まともに戦える状態ではなかった。



「くそっ、せめて兄貴たちのどちらかが健在なら、奴らの好きにさせないのに……」


 ジャミールはシェルターの奥で横たわる男女を見て、悔しそうに歯噛みする。


 災厄当時、セントレアに滞在していた2人のS級冒険者、ヴァレンティノとソフィア。


 ヴァレンティノはジャミールの実の兄で、ソフィアは、ジャミールの幼馴染みのS級魔導師だ。


 運の悪いことに、寝ていた宿屋に攻撃が直撃し、2人とも未だ意識不明の状態が続いている。


 ジャミールは、たまたま友人宅に泊まっていたため、無事だったのだ。



「……2人とも生きているのが不思議なくらいの重症だ。戦力にはならないだろうな……」


 ポーションで傷は治るが、部位欠損や重症は治せない。


 高位の回復魔法ならば可能だが、この世界で回復魔法を使える人材は希少だ。


 神官やシスターなど戦う力を持たない者が多く、大半は殺されたか、すでに連行されているだろう。少なくともこのシェルターにはいなかった。


「じゃあ七聖剣のエストレジャは? 奴は王都にいるんだろ?」


「エストレジャは王宮の結界を守る最後の盾だ。結界が維持されている以上、生きてはいるだろうが動けないだろう」


 王宮の結界は七聖剣が交代で守ることになっている。七聖剣がひとりしかいない現状では、動くことが出来ないのだ。


「……結局、外からの助けを待つか、奇跡が起こるのを待つかしかねえのか……」



 もしかしたら、ジャミール1人なら脱出出来るかもしれないが、怪我人や戦えない子どもたちを置いて逃げるような真似が出来る性格ではない。


 オスカルはそんなジャミールを好ましく思っているからこそあえて言う。


「ジャミール、ギルドマスターとしてお前に依頼をしたい。セントレアを脱出しろ」


「なっ!? 馬鹿言ってんじゃねえぞ! みんなを置いて脱出なんて出来るかよ!」


「勘違いするな、このままでは結局手詰まりなのはわかってるだろ? 何とか外部と連絡をとって、状況を打開するんだ。そして、それが出来るのは現状ではお前しかいない」


 オスカルは真剣な表情でジャミールに訴えかける。


「で、でもよ、どこに行けば良いんだよ?」


「アルカリーゼだ。あそこなら四聖剣とセレスティーナ殿下がおられる。逆に言えば、アルカリーゼが駄目だったら、この大陸は終わりだろうな……」


 この大陸でアストレアに次ぐ戦力を持つ隣国アルカリーゼに最後の希望を託す。


「…………わかった、俺に任せてくれ。絶対に助けに戻って――――」



「その必要は無いです」


 ジャミールの決意を込めた言葉が途中で遮られた。


 驚いた2人が振り向くと、そこには不吉なローブを纏った黒目黒髪の青年が立っていた。



(ば、馬鹿な……ジャミールはともかく、俺にまで全く気配を掴ませないだと……)



「て、てめぇ! 何者だ?」


 ジャミールもこの若さでA級になった逸材であり、将来は間違いなくS級に到達できるだけの潜在能力を持っている。


 対峙しただけで分かってしまったのだ。



 この男には勝てない、と。



 もし敵だったら終了だ。


 冷や汗が止まらない。


 ふと、黒髪の青年が口を開く、




「俺は冒険者のカケル。助けに来ました」




 



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(作/秋の桜子さま)
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