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異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収拾つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~  作者: ひだまりのねこ
第八章 セントレアを奪還せよ

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守れない約束

「あと、お試し仮契約っていうのがあるんだけど――――」


 スケッチブックのもう一つの新しい能力【お試し仮契約】。


 スケッチブックにサインすることで、遠距離でも念話が出来るようになるが、お気軽な名称とは裏腹に一度契約すると解約出来ないのが難点だ。


 にも関わらず、女性陣は全員契約してしまった。何度も念押ししたんだけど――――


「メリットしかありません!!」


 だってさ……嬉しいけどね。


 

 ちなみに男性陣は契約しなかった。俺もしないほうが良いって念押ししたから――――


「メリットが感じられません!!」


 だってさ。ほっと一安心。




 簡単な打ち合わせを済ませ、シルフィたちをガーランド防衛の要、リースへと連れて行く。


 リースは王都防衛のために作られた城塞都市でアルカリーゼにおけるプリメーラに近い立ち位置の街だ。


 普段は外国からの玄関口および中継拠点として交易が盛んなこの街も、今はすっかり戦時体制で魔物の侵入を阻止し続けている状態だ。


 このリースを落とされると、王都が危険に晒されてしまうため、何とかここで食い止めておきたい。





 その日の夜遅く、俺はリース郊外に監視および、転移用の留守番要員を除いた召喚獣たちを全員集めていた。


 ハーピィたちはもちろん、地竜、サイクロプス、コカトリス、グリフォン、オークキングその他多種多様の魔物たちの軍団だ。


 今の俺のレベルは372、ここには同じレベルの200近い召喚獣たちがいる。その気になれば、世界を滅ぼせるかもしれない。やばい……発想が魔王だね。




「みんな、明日は総力戦になる。そしてお前たちが命令を断れないことは分かっているから、あえて命令ではなくお願いをするよ」



「俺の仲間たちを守って欲しい」


「ガーランドを守って欲しい」


「魔人帝国の連中はもちろん殲滅して欲しい」



「そして最後に……これは命令だ」



「お前たちも俺の大切な仲間だ、絶対に無理をするな、死ぬことは許さない。いいな!」


 召喚獣たち全員が静かに頷く。



「……ワガママな主ですまない。でもお前たちは俺の、いずれ世界最強になる俺の召喚獣なんだ。それぐらい余裕でこなしてくれると信じている」



 召喚獣たちが一斉に吠える。


 空を突きぬけるほど士気は高い。


 空気が一気に熱を帯びてゆく。



「ツバサ、後は任せる」


『ふふふ、その信頼が心地よいな! よかろう、ハーピィクイーンの名にかけて、その願い全て叶えてみせよう。王は安心してセントレアを奪還してくれば良い』


ツバサの虹色の髪は夜闇にあっても美しく輝いていて、思わず目を奪われてしまいそうになる。


「ああ、頼りにしている」


 

「それからヴァロノス、アラン、お前たちはソニアのサポートだ。頼んだぞ」


『御意、お任せ下さい』  


 2人の魔人たちには、今回ソニアの部下として働いてもらう。




 その後、指示を出し終えたカケルは、セントレアに連れてゆく召喚獣をスケッチブックに戻し転移していった。




『王様……行ってしまわれましたね』 


『そうだな……我らはすべきことを成すのみだ。だがスズカゼ、私は命令を守れそうにないな……』


『ツバサ様!?』


『もし、愛しの王に危険があれば、私は無理をするし、命だって投げ出すだろうからな。お前だってそうだろう、スズカゼ?』


『……ふふっ、もちろんです!』


 

 微笑みあう2人の指には、月明かりに淡く優しい虹色と、ターコイズブルーの指輪が輝いていた。




***




『まだヴァルスから報告が届かないのか? まったく少しは使えると思っていたが、所詮は田舎男爵か……』


 セントレアの執務室で、ゴミス伯爵は荒れていた。エスペランサに残してきたヴァルス男爵から一向にその後の報告が届かないからだ。


『……恐れながら、勢いに乗ってプリメーラまで攻め落としているのではないでしょうか?』


『む……確かに野心の塊のようなあの男ならあり得るな。だが報告を疎かにしていい理由にはならん!』



 もっとも、魔人帝国は結果さえ出せば許される国柄ゆえ、ヴァルスが結果を出してしまえば罰を受けることはまずない。むしろ上官であるゴミスにとっては手柄になる。


 ゴミスが焦っているのは違う理由からだ。



『ヴァルスのことはまあいい、それよりも、サウスレアがまだ落ちていないのはどういうことだ?』



 そう、ゴミスが焦っているのは、いまだサウスレアを落とせていないということ。


 手勢の大半を集中して攻めているのだが、陥落の報せはいまだ届かない。


『サウスウエストレアのダメオ男爵にはサウスレアに増援を送るように使者を送っています。直に吉報が届くと思いますが……』


『……それでは遅いのだ。先ほどの会議で、我々の部隊がガーランド攻略から外された。本来ならば、サウスレアを落とした我々が真っ先に攻め入る権利を持っていたにも関わらずだ!!』


 

 ゴミスは怒りに任せてテーブルを破壊する。


(まずい……このままでは、昇進どころか無能の烙印が押されてしまう)


 

 そこへ執務室に使いの魔人が入ってくる。


『ゴミス伯爵、テンス様がお呼びです。至急参上するように』


『く、か、かしこまりました。すぐに参ります』



***



『やあ、ゴミス。いや、無能のゴミスくん。まだサウスレア落とせていないんだってね?』


『は、はい、申し訳ございません』


『あのさ、お前だけなんだよね、主要都市落とせていないの! 死ねよ! って言いたいけど、お前も一応伯爵だからね。勝手に処刑できないし。目障りだから消えてくんない?』


『は、そ、それはどういう……?』


『ちっ、頭まで使えないの? 荷物まとめて帰れって言ってるんだよ! 何も出来ずに無様さらして帝国に帰れっていってんの。わかった?』


『はっ、か、かしこまりました……』



 指揮官であるテンスの命令は絶対だ。


 逆らうどころか、意見することすら許されない。


(くそっ、覚えていろよ。いつか必ずお前の寝首をかいてやるからな!!)



 その日のうちに、ゴミスは失意のまま、荷物をまとめて帝国への帰途についた。


 だが、ゴミスはまだ知らない。そのすぐ後に全ての失敗が明らかになることを。


 サウスレアの攻略組が全滅で失敗、サウスウエストレアも奪還され全滅、エスペランサも奪還され全滅。


 歴史的な失態の責を取らされ、その後、ゴミスは伯爵位剥奪の上、処刑されることになる。 



 そして、処刑の命を出した先遣隊指揮官テンスの命運がどうなるのかはいまだ神のみぞ知る。



『……と、今日のレポートはこんな感じで良いかしら? さあ盛り上がってきたわね!』


 イリゼは執務室の机にペンを置き、ひとりつぶやくのだった。 






 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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