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葵奈姉妹の飛び込み純愛組曲、第二組曲、求愛

作者: 西山友洋

帰ってきた24歳の中等部一年生

◇◇◇(第一組曲、出会からの続き)◇◇◇

「助けて下さい!助けて下さい!助けて下さい!」

女性は衰弱しきった声で四人に訴えるように寄りかかる。三矢悠斗(みつや ゆうと)は女性に話しかけた。

「どうしたのですか?一体、何があったのですか?」

「助けて下さい!助けて下さい!」

女性は一向に同じ言動を繰り返すばかりであった。女性の出で立ちは柿色のTシャツにエンジ色のジャージパンツで両足は裸足で靴の類いはおろか靴下も履いていない。髪型はボサボサに伸びきった黒髪だが長い間、風呂に入ってない為なのであろうかフケ多くが混じり臭気を臭わせている。顔色は長い間、閉じ込められていたような色白で体格は非常に痩せ細っていて虐待されていたような弱々しい印象を受ける。咄嗟の判断をしたのか葵奈洋美(あおいな ひろみ)は悠斗と二人の妹、愛美(まなみ)幸美(ゆきみ)の三人に命じるように大声をかけた。

「悠斗さん!愛美!幸美!とにかく、この人、車に乗せよう」

四人は助けを願い訴える女性をレンタカーの後部座席の真ん中に乗せて座らせて乗車した。運転席に悠斗、助手席に洋美、後部座席の右側で運転席の後ろに愛美、後部座席の左側で助手席の後ろに幸美が座る形で車は発信すべく悠斗はエンジンを始動させた。反転すべく悠斗がハンドルを回そうとした時、女性が歩いて来た方向から1人の男らしき人物が憤怒の形相でこちらに走って来るのが見えた。おそらく助けを求めてきた女性と何かあると判断したのか洋美は何か直感を察したかのように急いで発車するように声高らかに悠斗を促した。

「悠斗さん!急いで発進して!」

悠斗は憤怒の形相でせまる人物を間一髪で振り切り車の速度を上げ走り出した。車はやがて、広めの一般道路に出た。後方を映すルームミラーとサイドミラーに憤怒の形相の人物は、はるか後方の彼方へと消え姿は見えなくなった。

完全に姿が見えなくなったのを確認すると洋美は再び女性に声をかけた。

「あの、何があったのですか?詳しく話して頂けませんか?」

「わ、わた、私、さっ、さっきの、おっ、男に、なっ、長い間、閉じ込められて」

女性は、弱々しい口調で話す。洋美は悠斗に進言する。

洋美:「悠斗さん、この女性、何かありそうだわ。どうする?」

悠斗:「何かあると言っても間違いは無い。警察に保護と身元確認を要請しよう」

愛美:「この人、さっきの男に誘拐された上、長い間、監禁されてたんじゃないかと思うよ」

幸美:「幸美も何か気になる。何か有りそう、とにかく警察か交番へGoよ!」

悠斗は近くに警察署がないか探すべく車を走らせるた。やがて前方に交番とおぼしき建物が見えてきた。側にはパトカーと警察官らしき人物が二人いるのも見えた。悠斗はハザードランプを点滅させて交番の前に停車させた。そして車窓を開けた洋美が二人の警察官に声をかけた。

「すみません、誘拐され監禁されていたと思われる女性を助けたんです。大至急身元確認を、お願いします」

洋美が声をかけた二人の警察官は1人が中年の男性警察官で、もう1人が若い女性の婦人警察官だった。悠斗と洋美は下車して警察官により事情を告げた。男性警察官が悠斗と洋美に話しかける。

男性警察官:「女性って誰かね?」

悠斗:「車の後部座席の真ん中に座っています」

洋美:「両側にいるのは私の妹、二人です」

愛美と幸美が車から降り婦人警察官が女性に話しかける。女性は弱々しい声で訴える口調で話す。

「帰りたい、家に帰りたい。首女中に、首女中に通い」

弱々しい女性の状況を見た婦人警察官が悠斗と葵奈三姉妹に告げた。

「これは相当衰弱しているので病院へ搬送する必要があるわ」

女性の『首女中に、首女中に通い』の言葉に洋美、愛美、幸美は怪訝そうな表情を隠せなくった。首女中とは洋美、愛美、幸美が通う首都女子大学付属女子中学校の事である。

(この女性は一体、何かある、どうして『首女中に』なのかしら?私達が通う学校の名前が出てくるのはなぜかしら?)

洋美が頭をひねっていると救急車と警察の本所からの応援パトカーがサイレンを鳴らしてやって来た。女性は救急車で病院へと搬送されて行き、悠斗と葵奈三姉妹は本所からやって来た警察官から女性を助けた時の状況の事情聴取を受ける。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、洋美、愛美、幸美の姉、葵奈友美(あおおな ともみ)は愛美と幸美のクラスメイトの小湊佳那子(こみなと かなこ)と一緒に、友美のクラスメイト井之上真美奈(いのうえ まみな)の自宅に泊まりに来ていた。真美奈の自宅は資産家、井之上家の御屋敷である。真美奈の部屋の側には、やや小さめの飛び込みプールがある。真美奈が目を覚まし、友美と佳那子を起こすべく声をかける。

「友美、佳那子ちゃん、朝ですよ」

真美奈の声で、友美と佳那子は目を覚ました。

「おはよう、真美奈、佳那子」

「おはようございます、友美姉ちゃん、真美奈姉ちゃん」

「友美、佳那子ちゃん、よく眠れた?」

「はい、真美奈姉ちゃんのベッド大きくて快適です。毎朝、泊まりたいぐらいです。友美姉ちゃんと真美奈姉ちゃんに挟まれての睡眠は格別です」

「私だって真美奈と佳那子の三人で同じベッドで寝るのは初めて、快適よ」

「そうなんだ。ねぇ、朝の飛び込みをしましょうよ。水着に着替えて」

三人は着替え始める。佳那子の着替えを見て友美が口を開く。

「前から気になっていたんだけど、佳那子ってノーブラ派なんだね。私の妹、愛美、幸美もノーブラ派なのよ」

「はい、ブラジャーは着けないので持って無いんです。胸大きくないので」

「私と洋美はブラジャー着ける方よ。愛美と幸美には着けろ、と言う事あるけど全く聞かないのよ、強情で」

「着けないのなら、それでも良いと思うわ。愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃんの三人はノーブラ三姉妹と命名したくなりそうですわ」

「あはははっ、それも、そうかも」

三人は水着に着替え終えると真美奈の部屋のベランダから出る。ベランダには飛び込み台がある。

「佳那子ちゃん、まずは私が飛び込むわ」

真美奈は飛び込み台から逆飛び込みでプールに飛び込んだ。

(真美奈姉ちゃん、ピアノ演奏も飛び込みも上手)

佳那子が見とれていると友美が促す。

「次は佳那子の番よ、飛び込んで」

「は、はい」

佳那子は飛び込み台から逆飛び込みで飛び込む。たちまち冷たい感触に体が包まれた。佳那子はプールから上がると体を震わせた。そして友美も飛び込んだ。友美がプールから上がると佳那子に真美奈が声をかける。

真美奈:「佳那子ちゃん寒い?」

佳那子:「さっ、寒くて冷たいです。真美奈姉ちゃん、友美姉ちゃんは」

真美奈:「私は慣れてるから平気よ。毎朝、飛び込んでるから」

友美:「私も平気。洋美、愛美、幸美も平気よ」

真美奈:「さっ、早く服に着替えて朝食にしましょうよ」

真美奈、友美、佳那子の三人は着替え終わると食堂へ移動し食事を取る。食後の、お茶を楽しんでいると真美奈が口を開く。

「これからなんだけど、どうする?友美は?佳那子ちゃんは?」

「特に考えてないから佳那子の意見で決めたいと思うわ」

「私は真美奈姉ちゃんの部屋にある真空管アンプが気になるんです。赤々と光る真空管には温もりを感じます。聞くところによると最近はLEDを使用した真空管もどきみたいのがありそうですね。寒中飛び込みの後で赤々と光る真空管を見ると体が温もりますわ」

「私も佳那子ちゃんと同じよ」

「真美奈と佳那子、趣味が会いそうな所あるわね」

「そうかしら?お茶を飲み終わったら私の部屋に戻りましょう」

三人は真美奈の部屋に戻るべく廊下を歩きだす。真美奈の自宅である御屋敷の廊下は広くて長い。友美と佳那子はキョロキョロして見回す。

「真美奈の家の廊下、私の家の廊下よりも広くて長いわ」

「そうですね、まるでホテルのように扉が幾つも並んでますね」

「この家には私と私の両親以外に使用人が数人住み込みで働いているんですよ」

やがて三人は真美奈の部屋に戻りついた。真美奈は真空管アンプの電源スイッチをONにしてCDを演奏させた。赤々と光る真空管に佳那子は食い入るように見入る。

真美奈:「佳那子ちゃん、すっかり気に入ったようね」

佳那子:「はい、クラシック、バロック等を演奏させながら見ると気持ちが、うとうとしそうです」

友美:「愛美と幸美だったら退屈するかも、あいつら飛び込みプールで飛び込んで泳ぐのが好きだから、三度の食事よりも」

しばらくCDの演奏を三人は聞いていた。CDの演奏が終わると佳那子は友美に話しかけた。

佳那子:「友美姉ちゃん、次のグラドル撮影は、いつ頃でしょうか?6月頃でしょうか?気になります」

友美:「そぉねぇ、今の所はまだ決まってないと思うわ。それに二週間前に撮影した分の写真集がまだ出てないから、次の撮影は出てからになると思うわ」

佳那子:「そうですか、編集作業もあるからでしょうね。どんな形で載るのか楽しみです」

友美:「佳那子、もし次もあるとしたら、やってみたい?」

佳那子:「やりたいです。前回やったスタント撮影みたいなのがあれば楽しくなりそうです」

友美:「スタント撮影か、前回のスタントでは佳那子、私と洋美に平手打ちで張り倒されて泣くシーンの撮影だったよね。もしあったら次はどんなのに挑戦したい?」

佳那子:「そうですね、私と洋美姉ちゃん、愛美、幸美が友美姉ちゃんに横一列に並ばされて鉄拳と平手打ちで張り倒されて泣きぐずれるシーンの撮影だったら、どうかなと思うんです。実は昨晩寝ていた時、夢の中で出てきたんですけど」

友美:「あははは、私が洋美、愛美、幸美、佳那子を張り倒して泣かすシーンの撮影ね、私にとってはストレス発散が出来る撮影かも知れないけど、洋美、愛美、幸美は嫌がるかもね」

佳那子:「それか、愛美と幸美が平手打ちで叩き合うシーンの撮影があっても良いと思うんです。それも夢の中に出て来ました」

友美:「さすがに、それは愛美と幸美、嫌がると思うよ。まっ実際に言ってみないと解らないけどね」

真美奈:「佳那子ちゃん、すっかりグラドル気分だね。グラドル撮影での出来事、聞かせて欲しいですわ」

友美と佳那子は真美奈にグラドル撮影の出来事を話した。

真美奈:「そぉだったんですね、佳那子ちゃん楽しかったのも解るわ。その様子みてみたかったですわ」

佳那子:「真美奈姉ちゃんの家でグラドル葵奈姉妹の合宿が出来れば良いなぁと思ってしまいそうです。私、葵奈姉妹での名前は、葵奈かな子、なんです」

真美奈:「葵奈かな子、ね。面白いかも。いかにも佳那子ちゃん、葵奈姉妹みたいだわ」

佳那子:「なんだか私、誰の妹になったら良いのか解らなくなりそうです。水泳部飛び込み競技部門の妹になるべきか、葵奈姉妹の妹になるべきか、いっそのこと水泳部の上級生、全員をお姉ちゃんにしてしまいたいです。友美姉ちゃん、真美奈姉ちゃん、洋美姉ちゃんだけでなく美幸姉ちゃん、香織姉ちゃん、美千代姉ちゃん、礼子姉ちゃん、それに高等部の御姉ちゃんも誰もかもみ〜んな」

真美奈:「あはははっ、あはははっ、もう佳那子ちゃんたら」

友美:「あはははっ、あはははっ、傑作だわ」

友美と真美奈は腹を抱えて笑い転げる。更に佳那子は続けた。

佳那子:「言いにくいですけど真美奈姉ちゃんの御屋敷、水泳部の合宿には狭すぎるかも知れませんが葵奈姉妹の合宿にはどうかなと思ってしまいそうです」

真美奈:「確かに水泳部の合宿に私の家は狭いけど葵奈姉妹の合宿だったら、どうだろうかなと感じそうだわ」

友美:「それもそうかもね、前回の撮影は、とある廃校になった中学校でやったわ。次回の撮影現場は何処なのかまだ不明なのよね」

佳那子:「詳しい詳細が決まれば連絡が来るんでしょうね」

真美奈:「その廃校になった中学校は普通の公立中だったんですよね」

友美:「そうみたい、25㍍プールが一番老朽化、酷かったわ。浄化装置は壊れていたみたいだし、プールサイドやプールの内壁はひび割れがあってそこから雑草が生えていたから」

真美奈:「それだと御世辞にも立派とは言えないわ」

佳那子:「次のグラドル撮影はプールに飛び込む所を撮影して欲しいものですよ、是非とも」

友美:「ところで話変えて悪いけど、あと新入部員、何人ほど確保するのが理想かな?出来れば、一年生は、あと最低でも二、三人いたら良いなぁと思うんだけど」

真美奈:「愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃんに依存する訳にはいかないし、部員が増えすぎると部室が狭くなるわ」

佳那子:「そうなったら一年生は閉め出されて教室等で着替えを余儀なくされそうですわ」

友美:「だとしたら増え過ぎにも気をつけないと駄目よね」

佳那子:「そう言えば公立中学に通っている私の小学校時代の同級生で体育系の部活に入っている子の話では基本的に部室の中は三年生しか入れないそうです。一、二年生は各々の教室で着替えるらしいです」

真美奈:「部員が多いと、そうなのね」

佳那子:「夏休みで三年生が高校受験の為に引退すると二年生が部室で着替えるようになるらしいです」

友美:「私達の学校は、ほぼ中高一貫に近いから引退するのは高等部三年だけみたいだね。来年になると私と真美奈、美幸、香織は高等部一年に上がるし、洋美、工藤、津軽は三年生。愛美、幸美、佳那子は二年生のお姉ちゃんになるわ」

佳那子:「来年、新入部員が来たら私、佳那子姉ちゃん、と呼ばれるかも」

友美:「あはははっ、愛美だったら、愛美姉ちゃん。幸美だったら、幸美姉ちゃんと呼ばれるかもね」

真美奈:「何だか想像しただけでも笑えるわ」

佳那子:「真美奈姉ちゃん、私トイレに行きたいんです」

友美:「私も行くわ」

真美奈:「トイレは廊下に出たらありますわ。私の部屋にもシャワールームと一緒になっているのもあるわよ」

佳那子:「私は廊下にある方へ行きます」

友美:「私は真美奈の部屋にあるのを使わせてもらうわ」

佳那子は真美奈の部屋を出ると廊下を見回す。トイレの表示がある扉を開けて中に入ると洋式の個室が2つあり、そのうちの一つに入って用を足す。便所の個室には外の景色を眺める窓があり、そこから覗くと森林が広がっていた。森林公園も点在しているのも見てとれる。用便を終えた佳那子は真美奈の部屋へ戻った。

「佳那子ちゃん、トイレ解った?」

「はい、トイレからの森林の景色、格別です。私のマンションのベランダからの景色よりも」

「そうなの、友美、佳那子ちゃん、周辺の森林道と森林公園で散歩しながら森林浴してみない?」

「気分転換で、たまには良いかも」

「良いですね、私好きな色は森林、植物、光合成の緑です。次に好きな色は紺色です」

三人は真美奈の自宅である井之上家の御屋敷を出る。井之上家の使用人である庭師が三人に声をかける。

「真美奈お嬢様、友美お嬢様、佳那子お嬢様、御気を付けて」

三人は道路を河さんで御屋敷の向かいにある森林道の出入口から森林道に入り歩きだした。真美奈が佳那子に話し掛ける。

「佳那子ちゃんは緑色が好きなんですね、私も緑色は好きな方ですよ」

「そうなんですか、森林に囲まれての生活だと好きになるんでしょうか」

「そうかも知れませんわね」

「佳那子、好きな色一番は緑色で二番目は紺色どうして?」

「友美姉ちゃんに奨めていただいたグラドル用に適した紺のスク水と紺ブルの影響なんです。今、好きな色は緑と紺の2つですね。こういう緑の自然に囲まれた所で緑色のセーラー服を着てグラドルの撮影に挑戦できたら良いなぁと思います。それか緑色のブレザーかセーラーブレザーでも良いですし」

「佳那子がグラドルでソロデビューするなら良いかもね。それにしても、私の家の近くでは、このような森林地帯は皆無に等しいわ。児童公園はあるけど」

やがて森林道は大きい森林公園に出た。森林公園を見回すとベンチが幾つも並んでいるのが見てとれた。便所らしき建物もある。三人は一つのベンチに座る。真ん中に佳那子、その左隣に友美、右隣に真美奈が座る形になった。

「私の部屋で話すのもいいけど森林公園のベンチでも良いよね」

「そうですね、真美奈姉ちゃんと友美姉ちゃんに挟まれての会話、楽しいです。嬉しくて涙が出そうです」

「そうそう、佳那子ちゃんの趣味は何かしら?私気になってきたのよ」

「私の趣味ですか?植物観賞と水玉模様の下着パンツのコレクションですね。小学校時代から続けているんです。今日履いていくのはどれにしようか、水泳部の部活後の替えはどれにしようか、考えたり迷ったりします」

「そうなの、ねぇ佳那子ちゃん、明日からの部活で水着に着替える時、私にスカートの中のパンツ見せて欲しいですわ。占いに活用してみようかと思っているんですの」

「真美奈って占いもやってるの?」

「そういうわけではないけど佳那子ちゃんのパンツの模様を予想して当たるか、外れるか、試させて頂きたいんですわ」

「そうですか、私が持っているのは、白にピンクの水玉、白に赤の水玉、白に青の水玉、白に緑の水玉、黄色に赤の水玉、ピンクに赤の水玉、ピンクに白の水玉、ピンクに黄色の水玉、赤に白の水玉、赤に黄色の水玉、赤にオレンジの水玉、水色に白の水玉、水色に青の水玉ですね」

「佳那子ちゃん、沢山持っているんですね。予想のやりがいがありそうですわ」

「今、言ったのは覚えている物なんです。首女中の購買部には無地しかないようですね」

「そういえば、そうよね。購買部にある下着パンツは白、パステルピンク、パステルブルー、パステルイエロー、パステルグリーン、パステルバイオレット、ベージュ、黒、紺色だわ。どれも速乾性に長けているからスイミングサポーターとして使用可能なのね」

「水泳部にとって下着パンツはファッション性よりも速乾性が大事ですよね」

三人は森林公園で話ていると時間は昼前になった。真美奈が友美と佳那子に声をかける。

「そろそろ昼食が近いでしょうから自宅へ戻りましょう」

三人は井之上家の御屋敷へと戻るべく歩きだす。御屋敷に戻るとメイドらしき使用人が三人に声をかける。

「お帰りなさいませ、真美奈お嬢様、友美お嬢様、佳那子お嬢様、昼食の準備が整いました」

三人は食堂にて昼食を取る。食後の紅茶を飲み終えた時、真美奈が口を開く。

「ねぇ、これからどうします?」

「私は真美奈姉ちゃんの部屋でくつろがせて欲しいです」

「それだったら昨夜、佳那子が見た夢もっと詳しく聞かせて欲しいわ」

「じゃあ、私の部屋へ移動しましょう」

三人は真美奈の部屋へ移動し会話を再開する。

友美:「ねぇ佳那子、昨夜みた夢もう一度詳しく教えて欲しいのよ。その時、私は何と言ってたの?」

真美奈:「私も気になりますわ」

佳那子:「どんな夢だったかと言いますと、私と洋美姉ちゃん、愛美、幸美がとある学校のグランドで友美姉ちゃんから、部活の練習でしごかれていたんです」

友美:「部活で私が洋美、愛美、幸美、佳那子をしごいていたのね」

佳那子:「服装は五人とも皆、紺ブルの体操着だったんです。それで友美姉ちゃんが『こらぁ、お前ら、たるんでいるぞ!横一列に並べ!気を付け!歯を食いしばれ!』と言って洋美姉ちゃん、愛美、幸美、そして私に平手打ちを食らわしていく、といった様子だったんです」

友美:「え〜っ!本当にみたの?信じられないわ」

佳那子:「私は正夢になってもかまわないですけど、洋美姉ちゃん、愛美、幸美は、なって欲しくないと思うんでしょうね」

真美奈:「そぉよねぇ何と言ったら良いのかしら。私は出て来なかったですよね。何か一昔のスポ根ドラマにだったら、あってもおかしくはないね」

佳那子:「はい。その後、愛美と幸美が制服のブレザー姿で平手打ちで顔を叩き合う様子を見てしまいました」

友美:「不思議だわ。どうして、そんな夢を佳那子が見たのかしら?」

真美奈:「何か強烈な印象が佳那子ちゃんに有るんじゃないかと思うわ」

佳那子:「私が初めて友美姉ちゃんを見た時は愛美と幸美に平手打ちを食らわした時でした。あれは非常に強烈で、怒ると平手打ちが飛ぶぐらい怖い先輩という印象を受けました。その時、私も平手打ちを食らわされるべきだと思わずにはいられなくなりました。怖かったです」

友美:「え〜っ、そぉなの?」

佳那子:「はい、それで常に友美姉ちゃんから平手打ちをされる私自身をイメージする癖がついてしまって、どうしようもないんです」

真美奈:「あらあら、問題事にならなきゃ良いのだけど」

友美:「やだわ、これじゃ私、なんて言えば」

佳那子:「私は友美姉ちゃんからの平手打ち、嫌だとは思っていません。嬉しく有り難く感じてます。愛情百点満点ですから」

友美:「良かったわ、さすがは私の理想の可愛い妹、佳那子だわ」

真美奈:「そう言ってもらえるなんて、うらやましく思ってしまいそうですわ」

佳那子:「本当は私、平手打ちされるよりも友美姉ちゃんや真美奈姉ちゃんと抱き合っている方が嬉しいです」

真美奈:「友美にとって佳那子ちゃんは愛美ちゃんと幸美ちゃんよりも可愛い妹なのね。私も佳那子ちゃんを抱いている時が何よりも落ち着きやすいわ」

友美と真美奈は挟み合う形で佳那子を抱擁するのだった。そのうち佳那子はうたた寝を始めて寝てしまう。友美と真美奈は佳那子をベッドにあお向けに寝かせて佳那子の胸を、もみもみともむ。佳那子は気持ち良さそうに寝言で声を上げる。

「あ〜ん、お姉ちゃ〜ん」

友美と真美奈はお互いに顔を合わせ頷き合う。

☆☆☆☆☆☆☆☆

悠斗と洋美、愛美、幸美の四人は長い事情聴取受けた。聴取後、ワゴン車タイプの警察車両に乗せられ女性を助けた現場で状況見聞の時も事情聴取を受けた。その時、警察の記者クラブからも搬送された女性を保護した時の様子、誘拐し監禁していたと思われる男の事など色々聞かれた。洋美、愛美、幸美は長い時間、事情聴取を受けた為、疲れ切っていた。だが実際に疲れ切っていたのは三人の女子中学生と会っていたという事でも聞かれた悠斗の方だったかも知れない。運が悪ければ児童買春の疑いをかけられかねないのだった。何はともあれ聴取が終わった時は午後四時を回っていた。悠斗は警察官にたずねた。

悠斗:「あれから搬送された女性の身元はどうなのでしょうか?」

警察官:「まだ意識がもうろうとしているらしくて満足な会話は難しい。今、先ほど女性の氏名が判明して身元確認が急ピッチで進んでいるようだよ」

洋美:「そうなんですか、私と二人の妹が通っている学校の名前を口にしていてのが気になります。どうしても」

愛美:「愛美、気になる」

幸美:「幸美もだけど、洋美姉ちゃん、心当たりある?」

洋美:「そう言えば友美姉ちゃんと井之上先輩の担任の菊池先生の中学生時代の同級生で十二、三年前から行方不明になっている人がいると言うのを聞いた事あるわ。ひょっとしたらその可能性が・・・」

その時、別の警察官が伝言を伝えてきた。それを聞いた警察官が口を開く。

警察官:「今、身元確認が終わったらしい。搬送された女性は今から十二年ぼど前に行方不明になった当時十二才の少女だったんだ」

悠斗と葵奈三姉妹:「えっ!そぉなんですか?」

警察官:「親族と警視庁から二百万の懸賞金がかけられているんだ」

二百万、の言葉に悠斗、洋美、愛美、幸美は驚愕の表情をあらわにした。

(にっ二百万も!?マジで?)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

その頃、友美と真美奈の担任の教師である菊池由利(きくいけ ゆり)は行方不明になっている中学時代の同級生で友人、牟田内悠真(むたうち ゆま)の自宅を訪れていた。その自宅で菊池は悠真の両親と話をしていたのである。菊池が体育の教師になったのは悠真が生きて戻ってきたら首女中、首女高で学ばせてあげたいと考えているのだった。度々、悠真の自宅を訪ねていたのだった。悠真の両親を元気付ける為に。

悠真の父:「由利ちゃん、いつもよく来て下さってありがとう。お陰で希望を捨てずに頑張れるよ」

悠真の母:「由利ちゃん、いつも来てくれてありがとう。お仕事はいかがですか?やりがい有りますか?」

菊池:「はい、お陰様で、悠真ちゃん見つかると良いですね」

悠真の母:「見つかって欲しいわ、悠真は二女で第二子、第一子である悠真の姉は悠真が産まれる前に死んでしまったからね」

菊池:「悠真に姉がいたのですか?」

悠真の母:「ええ、お腹に悠真がいた頃に交通事故にあってね。実は悠真には知らせてないのよ。知らせない事にしているのよ」

悲嘆に暮れた表情で悠真の母は菊池に話す。悠真の姉、牟田内悠華(むたうち ゆか)は悠真が産まれる4ヶ月前に交通事故に会い三年足らずの生涯を終えたのであった。悲しみに沈んだ気分で産んだ悠真を母は片時たりとも心配せずにはいられなかった。そこへ牟田内家の固定電話が鳴り響き、母が電話に出で対応する。やがて電話での会話を終えた母が父と菊池に驚きの表情で報告した。

「今、警察から電話があって、悠真が見つかったようだわ」

「母さん、それは本当か!?」

「本当ですか!?」

「ええ、それで衰弱しているらしくて病院に搬送されて治療を受けているとの事だわ」

母の声に菊池は安堵の表情を浮かべる。

「悠真、生きていたんだ」

「母さん、悠真が搬送されている病院へ行こう」

悠真の父が母を促すと菊池も同行を申し出た。

「お父さん、お母さん、私も同行させて頂けませんか?」

「良いですよ、喜んで」

悠真の父が運転する車で母と菊池の三人は悠真が搬送された病院へと急いだ。どれだけ速く走っても、この時ばかりは遅く感じたかも知れない。やがて病院に到着すると駐車場に車を停めて三人は下車して病院の中へ急ぐ。受付のカウンターで状況を確認する。三人は悠真が治療を受けている診察室へ急いだ。診察室の外の廊下には警察官がいた。警察官が三人に声をかける。

「牟田内さんでいらっしゃいますか?お嬢さん、今、点滴治療を受けてますので、しばらくお待ち頂けませんか」

廊下の窓から診察室の中をのぞくと悠真とおぼしき女性が診察室のベッドで横になり点滴治療を受けているのだった。側には医師の他に看護婦も二人いる。三人がのぞいていると看護婦の一人が診察室から出て来て声をかけてきた。

「牟田内さんでいらっしゃいますね?お嬢さん、もう少しで点滴治療が終りますので、もうしばらくお待ち頂けませんか?」

悠真の母親が問いかける。

「悠真はどうなるのでしょうか?回復しますか?」

「命に別状はございません。意識が回復するのに多少時間がかかるといったところです」

時間が一時間ほど経過すると点滴治療は終わり三人は診察室の中に通された。気を失ったのか悠真はベッドで眠りについていた。菊池が悠真に声をかける。

菊池:「悠真、悠真、大丈夫?由利よ」

父:「悠真!」

母:「悠真!」

悠真は目を開ける。

悠真:「ここは、どこ?どうしてここに?」

菊池:「あんた、誘拐され監禁されてたのよ」

悠真:「もしかして、由利?」

父:「悠真、大丈夫か!?」

母:「悠真、十二年も監禁されていたのよ」

悠真:「もしかして、由利?」

菊池:「そうよ!私よ、由利よ!菊池由利よ」

悠真:「ゆっ、由利!!」

菊池:「悠真!!」

菊池と悠真は抱き合って号泣する。父も母も涙を流す。菊池は涙声で悠真に問いかける。

菊池:「ねぇ悠真、何かしたい事ある?食べたい物ある?行きたい所ある?」

悠真:「由利と一緒に首女中に通いたい。首女中の制服を着たい。十二年間その思い一筋だったの」

菊池:「でも言いにくいけど私、悠真が監禁されている間に卒業してしまったのよ。他の同級生やクラスメートも」

悠真:「そんな〜!私、どうしても由利と一緒に首女中で勉強したい!」

悠真は半狂乱で絶叫してしまう。菊池は困惑顔になってしまう。

菊池:「悠真、今は私、首女中と首女高で体育の教師をやっているのよ」

悠真:「ねぇ、私の制服ある?通えなくても通いたい。首女中に」

父:「とにかく今は体を回復させる方が先決だ」

母:「制服は残してあるわよ。でも入るか否か気になるけど」

悠真:「入らなくても着たい」

母:「わかったわ、一旦、家に帰って制服をとって来るわ」

父:「少し入院は必要みたいだし着替えも必要だ」

菊池:「明日、仕事有るので私も一旦帰るわ。また来るわ。悠真、しばらく休んだら良いわよ」

三人は悠真に別れを告げ一旦帰宅していく。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

警察からの事情聴取の全て終えた悠斗は洋美、愛美、幸美を乗せ帰路につくべく車を走らせていた。時計は午後五時前を指していた。まだ暗くないとはいえ、早く帰さなければならない。車を借りたレンタカー店の近くでガソリンを満タンにしてレンタカー店で車を返却した。その後、悠斗は葵奈三姉妹と別れるべくモノレールの駅の改札口の近くに移動した。悠斗は葵奈三姉妹に別れの言葉をのべた。

悠斗:「洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん、今日はどうもありがとう」

洋美:「いえ、こちらこそ、今日は御馳走様でした。愛美と幸美も満足ですわ。女性の救出、御苦労様でした。」

愛美:「悠斗さん、今日は御馳走様でした」

幸美:「幸美も満足、もっと美味しいバイキングのお店あったら連れてって御馳走してね」

洋美:「こらぁ、幸美!悠斗さんをメッシー扱いするな!」

悠斗:「もし、次会う事を許してくれるのなら、テニスか室内プールはどうかと思うんだけど」

愛美:「愛美はプールなら飛び込みプールがある所でないと嫌。市営の室内プールは、みんな飛び込み禁止ばっかしだから詰まらないし面白くも楽しくもないわ」

幸美:「幸美も同じよ。プールは飛び込みプールが一番、スライダーよりもね」

洋美:「ねぇ悠斗さん、もう少し話す時間欲しいの、良い?」

悠斗:「良いけど」

洋美:「悠斗さん、テニス好きなんですね。それってテニスウェアのスカートの中が目当てなの?」

悠斗:「そっ、そぉ、なるよ」

洋美:「んもぅ!エッチ!悠斗さんのエッチ!」

愛美:「駄目よ、洋美姉ちゃん!まずいよ」

幸美:「公共の交通機関の駅だから埋め込み式の防犯カメラに写ってしまうよ。やめて!」

洋美:「解ったわよ。愛美、幸美、日程決めようよ」

悠斗:「またメールもしくはTELして良い?」

洋美:「良いですよ。私と愛美、幸美の方からするかも知れませんので良いですか?」

悠斗:「良いよ。大歓迎だよ」

洋美:「それじゃあ今日はこの辺で、おひらきにしましょ。またね悠斗さん」

愛美:「悠斗さん、また会おうね」

幸美:「また御馳走してね」

悠斗:「うん、気を付けて、寄り道しないようにね」

葵奈三姉妹はモノレールに乗り帰宅していく。その後ろ姿が見えなくなると悠斗は自宅への帰路についた。

(今日も充実した日だった。それにしても助け出した、あの女性は、どんないきさつで誘拐、監禁されたのかなあ?それと懸賞金の成り行きは?)

思案にくれながら誘拐は帰路に着く。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

井之上家の真美奈の部屋では完全に寝てしまった佳那子に友美と真美奈が胸を揉むマッサージを施していた。佳那子は相変わらず寝言で、なやましい声をあげている。

真美奈:「佳那子ちゃん、気持ち良さそうに、あえいでいるわ」

友美:「本当に気持ち良いのなら幸せ満点かも知れないわ」

佳那子:「あ〜ん、あ〜ん」

友美:「あっ、目を覚ましたわ。佳那子、気持ち良い?」

佳那子:「あっ、はっ、はい・・・友美姉ちゃんと真美奈姉ちゃんの胸のマッサージ、気持ち良いです。出来れば学校の部活でもやって欲しいです」

真美奈:「佳那子ちゃん、部活時は友美の平手打ちで我慢しなさい。出来れば私も認めて許して欲しいものですわ」

友美:「真美奈、佳那子に何を認めて許してもらうつもりなのよ?」

真美奈:「私が佳那子ちゃんに平手打ちを食らわす事ですわ。でも無理矢理に強がらせる訳にもいかないからね」

佳那子:「真美奈姉ちゃんも私に平手打ちをやりたいんですか?良いですよ、飛び込み競技部門の御姉ちゃん達の愛情、一人占めしたいです。愛美と幸美に取られたくありませんので」

真美奈:「友美、洋美ちゃんと私だけでなく美幸、香織、美千代ちゃん、礼子ちゃんに佳那子ちゃんを叩かせてやるべきかしら?」

友美:「その事は、また部活時にみんなに聞いてみたら良いかもね」

真美奈:「平手打ちの場合、愛情と体罰は紙一重かもね」

佳那子:「平手打ちの体罰の問題は『望まない者から、望まないモノ』と言ったケースだと言うべきでしょうね」

友美:「佳那子にとっては愛情が心の糧かもね」

佳那子:「自宅にプールが有るのは真美奈姉ちゃんの家だけでしょうか」

真美奈:「美幸の家も有りますわ」

佳那子:「えっ!そぉなんですか?見て見たくなりそうです。真美奈姉ちゃんの家と美幸姉ちゃんの家と比べたら、どうなのか気になります」

友美:「美幸の家も大きいよ。もちろんプールもね。私、洋美、愛美、幸美と一緒に泊まって飛び込んで泳いだ事あるのよ」

佳那子:「そぉなんですか?美幸姉ちゃんに頼んでみたくなりそうです」

あれこれ話し合っているうちに時計は午後五時を過ぎていた。友美と佳那子は帰宅する準備を整え井之上家の使用人達にお礼の挨拶を交わし真美奈と一緒に送りの車に乗り込んだ。その車中で佳那子は真美奈に改めて礼を言う。

佳那子:「真美奈姉ちゃん、昨日と今日と二日間、ありがとうございました。お邪魔いたしました」

真美奈:「私だって佳那子ちゃんと一緒に寝る事出来て良かったですわ」

友美:「明日からも部活、頑張ろうね、佳那子」

佳那子:「はい、友美姉ちゃん、真美奈姉ちゃん」

真美奈:「私も佳那子ちゃんをしごかせて下さいね」

車は友美の自宅へと向かう。

☆☆☆☆☆☆☆☆

悠斗と別れモノレールの車内で洋美、愛美、幸美の三姉妹は今日の出来事を振り返るように会話を楽しんでいた。

幸美:「今日は、とっても楽しかった。美味しい物、沢山食べれたし女性の救出劇に遭遇したし」

愛美:「女性の救出の出来事、警察の記者クラブ来てたよね」

洋美:「今回の救出、新聞に載るのはいつかしら?明日の朝刊は載らなくても明日の夕刊か明後日の朝刊だったら載るかも」

幸美:「それより犯人が捕まるかどうかだけどね」

洋美:「とにかく今日の出来事は私と愛美、幸美だけのトップシークレットよ。友美姉ちゃん、佳那子には内緒よ、他の部員にもね」

やがてモノレールは葵奈家の最寄り駅に到着し三姉妹は下車して改札口を通り家へと歩く。自宅に差し掛かった所で真美奈の送迎車に出会い、車から友美が降りてきた。友美が下車すると佳那子を送るべく走り去って行く。

友美:「洋美、愛美、幸美、帰って来たんだね」

洋美:「そぉなのよ、佳那子と井之上先輩の家での宿泊、どうだった?佳那子、楽しんでた?」

友美:「楽しんでたわ」

愛美:「それは良かったわ」

幸美:「昨夜は佳那子、良い夢見れたかな?」

友美:「何と言ったら良いのか私には楽しくて、洋美、愛美、幸美にとっては苦々しい内容だったよ。さぁ家に入ろう」

友美は三人の妹を促し家に入る。

一方、友美が下車した後、井之上家の車の中では佳那子が真美奈と会話を楽しんでいた。

真美奈:「佳那子ちゃん、小学校時代の友達に会う事ある?」

佳那子:「たまに有ります。会った時はお互いの通っている中学校の事で話題に花が咲きます。ほとんどが公立の中学校に通っている人ばかりで、首女中に通っているのは私だけです」

真美奈:「そぉなの」

佳那子:「はい、所属している水泳部飛び込み競技の事話したら、驚く人多いです」

やがて車は佳那子のマンションに到着した。佳那子は真美奈と運転手に礼を言い下車する。井之上家の車を見送って、佳那子は帰宅すべくマンションの中に入ろうとした時、三人の中学生に声をかけられる。かけてきたのは佳那子の小学校時代の同級生であった。

中学生A:「佳那子、今、佳那子の家に行って来たよ。いないと言われたから帰ろうかと思っていた所なのよ」

中学生B:「佳那子の母さんが昨日から学校の部活の先輩の家に泊まりに行っていると言ってたから」

中学生C:「部活って何をしているの?」

佳那子:「水泳部」

中学生A:「水泳部?」

中学生B:「佳那子が水泳部!?以外だわ」

中学生C:「種目は何?」

佳那子:「飛び込み競技、体育の授業に飛び込み競技あるのよ」

中学生A:「え〜っ!怖くないの?」

佳那子:「怖いよ、でも先輩は理想の御姉ちゃんのような人ばかり」

中学生B:「だとしたら優しい人ばかりだね」

佳那子:「でも怒ると平手打ちが飛ぶくらい怖いよ。私、何回も叩かれたよ」

中学生C:「大丈夫?」

佳那子:「大丈夫よ。愛情たっぷりの平手打ちだから有り難く喜んでいるわよ。皆は部活どうしているの?」

中学生A:「私は吹奏楽部」

中学生B:「美術部」

中学生C:「私は帰宅部」

佳那子:「同じ学校なら水泳部飛び込み競技部門に誘ってしまうかも」

佳那子は一通り会話を楽しんだあと同級生達と別れ帰宅する。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

その日の夜、四姉妹の部屋で洋美、愛美、幸美は友美から佳那子が見た夢の内容を聞こうとしていた。

洋美:「友美姉ちゃん、佳那子が見た夢、どんな内容だったの?」

友美:「気になるのか?」

愛美:「気になる」

幸美:「幸美も気になる」

友美は佳那子が見た夢をありのまま話した。

洋美:「え〜っ!私が愛美、幸美、佳那子と一緒に友美姉ちゃんから平手打ちにされていたの!?」

愛美:「本当に見たの?」

幸美:「どうして、見てしまったのかな?」

友美:「だって佳那子、私に平手打ちされる光景ばかりイメージする癖ついていたみたいなの」

愛美:「愛美が幸美と平手打ちで顔を叩き合いしてた夢もなんか変」

幸美:「佳那子、変な夢を見てしまったみたい」

そして消灯後の就寝中、愛美と幸美は目を覚ました。トイレに行きたくなった為だ。愛美が幸美に問いかける。

愛美:「幸美、愛美トイレに行く」

幸美:「幸美も。一緒に行こう」

二人はトイレで用を済ませる。幸美が愛美の手をつかみ話しかける。

幸美:「ねぇ愛美、ちょっと話さない?」

愛美:「そうね、ベッドじゃ友美姉ちゃんに怒られるからね、何?」

二人は見つめ合い抱き合って会話を始める。

幸美:「幸美が愛美を呼ぶ時、『愛美』か『愛美お姉ちゃん』と、どっちが良い?」

愛美:「そぉよね、呼び方で気分が変わるわ。今まで通り『愛美』だと御姉ちゃんが四人いる気分に浸れるよ。『愛美お姉ちゃん』だったとしたら幸美が最愛の妹のように感じてしまうよ。どうしてそんな事、聞くの?」

幸美:「幸美にとって愛美は同い年で心を許せる唯一無二の御姉ちゃんだから、愛美の気持ち確かめておきたいの。佳那子が真美奈姉ちゃんの家に泊まった時に見た夢を聞いたから気になって聞いたのよ」

愛美:「見た夢って愛美が幸美と平手打ちで叩き合っていた夢だよね。わかったよ幸美、良いよ好きな方を選ばせてあげる」

幸美:「ありがとう、じゃあこれから『愛美お姉ちゃん』と呼ばせてくれる?」

愛美:「良いよ、愛美の大好きな最愛の妹、幸美」

幸美:「ありがとう、幸美の大好きな愛美お姉ちゃん」

幸美の目から涙が流れ落ちた。愛美の目からも涙が流れる。二人が抱き合っていると部屋から洋美が出て来て声をかけてきた。

洋美:「愛美、幸美、二人仲良く抱き合って何話してた?」

愛美:「佳那子が見た夢の事で気になっていたから」

幸美:「何か眠れないから」

洋美:「早く寝ろ、友美姉ちゃんに平手打ちされるぞ。私トイレに行くから」

すると今度は友美が出て来て三人に問いかける。

友美:「洋美、愛美、幸美、お前ら何話している?早くベッドへ戻って寝ろ」

愛美と幸美はベッドへ戻り、友美と洋美は用便を済ませ、四人は再び就寝する。そして翌日、4月28日月曜日の朝、一番最初に友美が目を覚ましす。ベッドを見回すと洋美、愛美、幸美はまだ眠っている。最初に友美は洋美の寝顔に平手打ちを食らわした。

パチーン!

洋美は眠そうな顔で左頬の痛みをこらえながら起きる。次に友美は愛美と幸美に平手打ちを食らわして叩き起こす。

パチーン!パチーン!

「起きろ!全く寝起き悪いんだから!」

愛美と幸美は泣きじゃくる。

「うぇ〜ん、いだ〜い」

「友美姉ちゃんの平手打ち、幸美いだ〜い!」

「いい加減に目を覚ませ!」

四人は朝食を取り、歯磨き等を済ませ登校の準備を急ぐ。友美は洋美、愛美、幸美に声を出す。

「準備は出来たか?出発するぞ」

「行って来ます」

母、葵奈育美(あおいな いくみ)も挨拶して見送る。

「行ってらっしゃい。気を付けて」

四姉妹は最寄りのモノレール駅へと歩き出す。一番先頭を友美、二番目を洋美、最後尾を愛美と幸美が横に並んで歩く。そこへ四姉妹が歩いている道路の脇の横道から二人の女子中学生が現れ愛美と幸美に声をかける。二人は葵奈家の長女、葵奈歩美(あおいな あゆみ)が通っていた市立中学校の生徒で愛美と洋美の小学校時代の同級生である。

女子中学生甲:「愛美、幸美、おはよう。久しぶり」

女子中学生乙:「朝、早いんだ」

愛美:「モノレールで通っているからよ」

幸美:「お姉ちゃん達と同じ学校に入ったから」

女子中学生甲:「部活は何にした?」

女子中学生乙:「私達、二人はバスケ部、朝練で早いのよ」

愛美:「愛美達は水泳部」

女子中学生甲:「得意種目はなあに?」

幸美:「高飛込よ」

女子中学生乙:「もしかして10㍍の高い台から飛び込む競技!?」

愛美:「そおよ。体育の授業で飛び込み競技があるからね」

女子中学生甲:「えっ〜!マジ!?」

女子中学生乙:「私達の学校は屋外25㍍プールだけよ」

その時、友美から指図をうけた洋美がやってきて愛美と幸美に平手打ちを食らわし叱責する。

「愛美!幸美!お前らいつまで話してるんだ!?乗り遅れるだろ!!」

「ごめんね、行くわ。またね」

愛美と幸美は泣きながら二人の同級生に別れを告げ友美と洋美に続き歩いて行く。その後ろ姿を見送ると二人の同級生は歩き出す。

女子中学生甲:「ねぇ、今の見た?」

女子中学生乙:「見たわよ。愛美と幸美の御姉ちゃん、怖いわ」

女子中学生甲:「愛美と幸美、平手打ちされたよね」

女子中学生乙:「毎日されているのかしら?可哀想だわ」

女子中学生甲:「あんな怖い御姉ちゃんが上級生だったら背筋が寒くなるわ」

☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、佳那子はモノレールに乗ると葵奈四姉妹を見つけて挨拶する。

佳那子:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、おはようございます。愛美、幸美、おはよう」

友美:「おはよう佳那子。今日も練習頑張ろうね」

洋美:「おはよう、佳那子」

佳那子:「はい!友美姉ちゃん、真美奈姉ちゃん、洋美姉ちゃんからの特訓、楽しみです。あれ、愛美、幸美、泣いてますが」

友美:「あいつら、今朝起きれなかったから平手打ちで叩き起こしたのよ」

洋美:「私も平手打ちされたのよ」

佳那子:「そぉなんですか、だったら私も友美姉ちゃんに平手打ちで起こされたいぐらいです。実は私も寝起きは良くない方なので」

友美:「あはははっ、佳那子ったら朝から楽しませてくれる。私の可愛い妹だわ」

佳那子は友美、洋美との会話を楽しんだ。中等部一年A組の教室で佳那子は愛美と幸美に問いかける。

佳那子:「愛美、幸美、朝から泣いてたじゃん。どうして?」

愛美:「今朝、起きれなかったから友美姉ちゃんに平手打ちで叩き起こされたのよ」

幸美:「幸美も平手打ちで叩き起こされた、うぇ〜ん」

佳那子:「うらやましいわ、私もそれで叩き起こされたかったわ、出来る事なら愛美と幸美から友美姉ちゃんを奪い取りたい程だわ」

愛美:「ねぇ佳那子、それだったら友美姉ちゃん、佳那子の御姉ちゃんにもらう事出来ない?」

佳那子:「気持ちは、もっともだけど泣いてばかりじゃどうしようもないじゃん、元気出して」

そして授業開始時、友美と真美奈の中等部三年A組のホームルームでは担任の菊池が嬉しき表情を浮かべていた。友美は、にわかに疑問を感じていた。

(菊池先生、何かやけに嬉しそう、どうしてかしら?何か会ったのかな?)

そして昼休み、佳那子は友美、洋美、真美奈と会話を楽しんでいた。

真美奈:「佳那子ちゃん、頑張って10㍍からの飛込み、出来るように頑張ってね。グラドルでも花が咲くと思いますわ」

佳那子:「はい、頑張ります」

洋美:「私にとって佳那子はシンクロ飛込みでのペアだし理想の妹でもあるからね」

真美奈:「それにしても今朝の菊池先生、嬉しそうな顔つきだったけど何か有ったのかしら?気になりますわ」

友美:「そぉよね、いつもの時と全く違うわね」

洋美は体から汗が吹き出る感触を我慢した。三矢悠斗との付き合いがバレないかヒヤヒヤしていたのだった。その頃、愛美と幸美は校舎の廊下で愛美のスマホで昨日の救出劇がニュースに載っているか否か確かめていた。

幸美:「愛美姉ちゃん、昨日の事、載ってないかな?」

愛美:「載っていたら、凄いよね、ん?」

幸美:「あっ、これじゃない?」

愛美:「どれどれ、これかな、十二年間行方不明で監禁されていた当時十二才の少女の女性発見、と記事に載っているわ」

幸美:「幸美達が救助した時の事も載っている。幸美達の名前は載ってないけど」

愛美:「かけられていた懸賞金の支払いは検討中だって」

幸美:「二百万円と聞いていたから気になるのよね」

愛美:「犯人については、逮捕の記事が無いわ。まだ捕まってないみたい」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、三矢悠斗も昼休み、職場の休憩場でスマホで昨日の救出劇の記事を見ていた。休憩場のベンチでは他の従業員達が悠斗と葵奈三姉妹が関わった救出劇の事で話題になっていた。悠斗が関わった事は知られていない。

(知られてない方が良い。懸賞金が二百万円と言ってたけど支払いの成り行きはいかに?)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

放課後、首女中水泳部の部室では友美、真美奈、美幸、香織の三年生が佳那子を囲んでいた。真美奈が佳那子に問いかける。

真美奈:「佳那子ちゃん、今日の下着パンツ、私は黄色にピンクの水玉模様だと思いますけど正解でしょうか?」

佳那子:「それじゃあ、スカートをめくり上げて良いですよ」

友美:「あぁっ、紺ブルじゃん」

佳那子:「最近は、制服の下に体操着を着込むのが癖になっているんです。友美姉ちゃんに、すすめられた紺ブルの体操着が病み付きになっているんです」

美幸:「佳那子ちゃん、まるで友美の虜みたいだね」

香織:「本当、友美には過ぎた妹ちゃんだわ。私だって佳那子ちゃんを妹にしたいわ」

真美奈:「佳那子ちゃん、制服を脱いで体操着になってちょうだい」

佳那子:「はい、脱ぎます」

佳那子は制服のセーラー服とスカートを脱ぎ、体操着になる。それから上靴と靴下を脱いで裸足になった。

美幸:「裸足で体操着姿、なかなかセクシーですわ、佳那子ちゃん」

佳那子:「やだぁ、恥ずかしい。でも、この恥ずかしい気分も快感に変わりそうです」

真美奈:「それじゃあブルマを脱いでパンツ見せてちょうだい。それから体操着の上も脱いでね」

佳那子は赤面させながら体操着を脱ぎパンツ一枚になった。

真美奈:「あらぁ、はずれたわ、白に赤の水玉なのね。仕方ないわ、佳那子ちゃん、その上に水着を着てちょうだい。パンツは脱がずにね」

佳那子:「はい、購買部で売っている下着パンツも良いと思いますけど私はお気に入りの水玉パンツの上に着る方が好きです」

佳那子は下着パンツの上に紺の水着を着用する。

香織:「佳那子ちゃんの水着姿、セクシーで似合うわ、お尻からさりげなくパンツをはみ出しているのもセクシーだわ。惚れ惚れして見とれそうだわ」

佳那子:「そおですね、実は私、水着やブルマからパンツをはみ出させるのが好きなんです」

友美:「佳那子のこだわりみたいだわ。そろそろ私達も着替えようよ」

真美奈:「そぉよね。佳那子ちゃん、どうやら私達の着替えにも見入っているみたい」

美幸:「どうしたの?佳那子ちゃん、見入っちゃって」

香織:「私達の着替えが見たいの?」

佳那子:「はい、見たいです。お姉ちゃん達の着替える仕草、セクシーです」

着替え終えると部員達はプールサイドに出て準備運動に入る。真美奈が佳那子に声をかけ注意する。

真美奈:「佳那子ちゃん、ぼーとしてたらダメよ。すぐそれだから」

佳那子:「ごめんなさい、見とれてしまう癖が直らなくて」

友美:「佳那子、私達に叩かれたいの?」

佳那子:「セクシーな、お姉ちゃん達の姿に見とれていられるのなら何万発でも何億発でもOKです。もう死んでも構いません。未練はありません」

プールサイドはたちまち水泳部員達の大爆笑に包まれた。中等部三年B組の遠藤美幸(えんどう みゆき)も美幸のクラスメイトの宇都香織(うとう かおり)もお腹を抱え、かか大笑する。

美幸:「あはははっ、佳那子ちゃん、完全に私達の虜ね」

香織:「私だって、佳那子ちゃんか洋美ちゃんを妹にしたいわ、母と二人暮らしで兄弟姉妹がいないのよ」

二年生部員の津軽礼子(つがる れいこ)も腹を抱えながら口を開く。

「私だって佳那子ちゃんを妹にして実家がある青森に一緒に里帰りしてみたい。毎日、校舎の最上階の個人寮で生活しているから、一度でも良いから佳那子ちゃんと二人きりで生活してみたいわ」

同じ二年生部員の工藤美千代(くどう みちよ)も口を開いた。

「私は両親と兄が二人の五人家族だから佳那子ちゃんを妹にしたいわ」

高等部の部員達も笑っていたが、すぐ真顔になり促す。

「さぁ練習を始めましょ」

部員達は飛び込みの練習を始める。愛美は幸美と、美千代は礼子と、美幸は香織と、それぞれペアを組んでシンクロダイブの練習に励んだ。友美は真美奈、洋美と佳那子の特訓を始める。

友美:「佳那子、10㍍からの飛び込み、怖い?」

佳那子:「7.5㍍はようやく出来るようになったんですけど、まだ・・・」

友美:「佳那子なら出来るわよ。ここまで来れたなら飛び込むしかないじゃん」

真美奈:「佳那子ちゃん、10㍍から飛び込んでちょうだい」

洋美:「頑張って飛び込むのよ」

佳那子:「私、飛び込んでみます」

佳那子は10㍍の飛び込み台へと上がり気持ちを整え飛び込んだ。

(飛び込む前は怖いけど飛び込んだ後は気持ちいいわ)

佳那子はプールの奥深くへ潜り潜水で泳いでから水面上に顔を出した。

真美奈:「佳那子ちゃん、出来たじゃない」

愛美:「愛美、嬉しい」

幸美:「幸美も嬉しい」

洋美:「佳那子、今度は一緒に飛び込まない?」

佳那子:「はい、洋美姉ちゃん」

友美:「洋美、佳那子、しっかり飛び込んで!」

洋美と佳那子は10㍍の飛び込み台から101Aで飛び込んだ。水面上に顔をだすと洋美と佳那子はお互いに顔を合わせた。そして部活の練習が終わり部員達は水着から下校の為、制服へと着替える。着替えが終わると部員達は下校の準備を整える。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

菊池は首女中での授業を終えた後、悠真が入院治療を受けている病院を訪れた。病室では悠真のベッドの側に悠真の両親がいる。菊池が病室に入ると悠真の母が菊池を迎えた。

悠真の母:「由利ちゃん、今日も来てくれてありがとう」

悠真の父:「悠真も大喜びです。明日退院でその直後に現場にて聞き取りをしたいと警察の方から申し出がありました」

菊池:「いえ、どういたしまして。悠真、気分はどう?」

悠真:「今日、ママに首女中の制服、持って来てもらったのよ」

菊池:「着てみてどうだった?久しぶりの首女中の制服」

悠真:「何かメチャメチャ小さくなったみたい。腕は通りにくいし、スカートも短く感じて履きづらい。新しいのを新調しないと駄目かも」

悠真の母:「首女中は諦めて特別支援学校か夜間中学校の方が良いじゃない」

悠真:「嫌!首女中でないと絶対嫌」

菊池:「私、校長先生、教頭先生と話してみますわ。現役生徒との勉強になるか特別教室での勉強になるかも知れないけど」

悠真の父:「由利ちゃん、お願いします」

菊池:「かしこまりました。悠真、聞いてみるけど、どうしても首女中でないと嫌なの?」

悠真:「どうしても、首女中でないと嫌」

悠真の母:「悠真を助け出した人達はどんな方だったのかしら?」

悠真の父:「ワシも気になって警察に問い合わせてみたのだか、個人情報保護法の関係上もあり、まだ未解決なので、ご要望に添えない、という事だったよ」

菊池:「そぉですね、犯人が特定されてないからでしょうね」

☆☆☆☆☆☆☆☆

翌日の4月29日火曜日は祝日であった。その日は悠真が警察に付き添われ救出された時の実況見聞が現場で行われた。現場の上空ではテレビ局や新聞社のヘリコプターが数機飛んでいる。悠斗も、洋美も、愛美も、幸美も再度、立ち会いを求められ現場に赴き証言する。その時、悠真の両親と菊池も付き添いやや離れた所で待機する。婦人警官が悠真に監禁されていた住宅の場所をたずねている。そして、それを元に数人の警官が監禁されていた住宅へ向かう。周辺の近隣住宅へも数人の警察関係者が聞き込み調査に奔走する。悠真の両親と菊池はその様子を見守っていたが、しばらくして婦人警官に付き添われて悠真が戻ってきた。それと同時に婦人警官が両親と菊池に報告してきた。

「牟田内さん、お嬢さんを救出された方が見えられてます。ご面会なされますか?」

「はい、お願いします」

悠真の父が快諾する。婦人警官は手招きする。菊池は悠真を救出した四人の人物を見て我が目を疑った。

「え〜っ!まさか、信じられない!」

悠真の目前に現れたのは三矢悠斗と菊池が顧問をしている水泳部飛び込み競技部門の生徒で担任を受け持っている葵奈友美の三人の妹、洋美、愛美、幸美だった。

菊池:「洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん、あんた達だったの?悠真を救出したのは」

悠斗:「そうです、僕達が救出しました」

洋美:「救出した女性が菊池先生の同級生だったなんて信じられないです」

愛美:「今の愛美と同じ年で誘拐されて今まで監禁されてたのだからビックリ」

幸美:「幸美もビックリ。これからが問題かも」

悠真の母:「悠真を救出して頂きありがとうございます」

悠真の父:「今回の御恩は忘れられません」

悠斗、洋美、愛美、幸美は悠真の両親と菊池に悠真を助け出した時の状況を一から話した。悠真は菊池に寄り添う形で会話を聞き入っている。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、友美は小学五年生の弟、葵奈勝幸(あおいな かつゆき)を連れて佳那子のマンションを尋ねた。佳那子がマンションから出てくると友美は佳那子に勝幸を紹介する。

友美:「おはよう、佳那子、今日は私の弟を紹介するわ」

佳那子:「おはようございます、友美姉ちゃん。今日は弟さんを連れてきたんですね」

友美:「私の弟、勝幸よ。勝幸、挨拶しろ」

勝幸:「葵奈勝幸です。よろしくお願いいたします」

佳那子:「私は小湊佳那子、よろしくね、勝幸君、お姉ちゃんにそっくりね」

勝幸:「似ていますか?」

佳那子:「似ているわ、特に目元がよく似ているわ、お姉ちゃん優しい?」

勝幸:「怖いです。怒るとすぐ平手打ちが飛ぶので怖いです。佳那子さん、友美姉ちゃん怖いと思いますか?」

佳那子:「怖いよ。私、何回も平手打ちで顔を叩かれたわよ」

勝幸:「やはり佳那子さんも叩かれた事あるんですね」

友美:「勝幸、佳那子はどう思う?良かったら結婚したらどう?」

勝幸:「やだぁ、友美姉ちゃん。僕は、まだそういう年じゃないよ」

佳那子:「私も、そういう年じゃないですよ。私はお兄ちゃんタイプが」

友美:「でも、そういう年頃になると好みが変わったりして」

佳那子:「ところで、洋美姉ちゃん、愛美、幸美はどうしたのでしょうか?見えてませんが」

友美:「小学校時代の友達と用事があると言うので」

佳那子:「とりあえず、私の自宅に上がり

ません?」

佳那子に促され友美と勝幸はエレベーターで佳那子の自宅へ上がる。佳那子の自宅では佳那子の両親と二人の弟が友美と勝幸を迎えキッチンルームへ通す。

佳那子の母:「あら友美ちゃん、いらっしゃい。今日は弟さんと一緒ね」

友美:「はい、私の弟、勝幸です。小五です。今日はお邪魔させて頂きます」

佳那子の父:「友美ちゃん、しっかりしたお姉ちゃんだね」

友美:「いえ、そんなしっかりはしてないですよ。妹が三人いてますので」

佳那子の父:「妹さんが三人も!友美ちゃんは佳那子と同じ長女なんだ」

友美:「いえ、私は二女で二つ年上の姉がいるんです」

佳那子:「友美姉ちゃんに、お姉ちゃんがいるんですか?ビックリです」

佳那子の母:「と言う事は、お姉ちゃん高校生よね」

友美:「はい、でも首女高ではないです。許嫁と同棲しているので別居しています。しかも子供もいて、お腹に二人目がいるんです」

佳那子の母:「へぇ!そおなの?」

友美:「そうですから私、姪がいて、お腹にいるのも二人目の姪になりそうです」

佳那子の母:「産婦人科の超音波診断で判明したのね、4ヶ月以上ね、少なくても」

佳那子の父:「そおなんだ」

友美:「私の母は、玄孫の懐妊を見届けるまで長生きする、と言っているんです」

佳那子の母:「友美ちゃんのお母さんの夢だね」

友美:「それで、私の母と姉は、それぞれ15歳回目の誕生日にママになり、姉と姪を産んだんです」

佳那子:「友美姉ちゃんのお母さん、15歳でママ、30歳でおばあちゃんですね」

友美:「そぉなのよ。私は中一、洋美は小六、愛美と幸美は小五で叔母さんなのよ」

佳那子:「それで憂鬱になる事あるんですよね」

佳那子の母:「友美ちゃん、気苦労する事ばかりだね」

友美:「姉が許嫁ど同棲するまでは、私と三人の妹、弟の勝幸の面倒見てました」

佳那子の父:「同棲後は友美ちゃんが面倒を強いられるようになったんだ」

友美:「そうです。弟の勝幸は母が面倒をサポートしてくるんですけど、三人の妹は同じ学校の部活でから、という事で面倒に四苦八苦です。父は姪にうつつをぬかす事もしばしばです」

佳那子の父:「友美ちゃんのお父さんにとって、友美ちゃんの姪は初孫だから無理もないよ。二人目のお孫さんも後半年足らずで生まれてくるからだろうね」

佳那子の母:「今日の昼はピザにしましょう、宅配で注文の電話するわ」

佳那子の父:「ああ、そう言えば今朝の朝刊と一緒にピザのチラシ、入っていたね、それで?」

佳那子の母:「ええ、そうよ。割引チケット付きだから」

佳那子の母がピザ屋に宅配注文の電話をかける。

佳那子の父:「到着に時間がかかるから、それまで友美ちゃんの弟さんと、うちの息子二人遊ばせてはどうかな?」

友美:「実は私、前からそれを思っていたんです」

佳那子の父:「紹介しよう、長男の勇神、二男の龍神です」

勇神:「小湊勇神(こみなと ゆうじ)、小学四年生です」

龍神:「小湊龍神(こみなと りゅうじ)、小学一年生です」

勝幸:「葵奈勝幸、小学五年生です」

友美:「勝幸、勇神君と龍神君の相手してあげて。二人のお兄ちゃんになったつもりで」

佳那子:「勇神、龍神、勝幸君と仲良くね」

勝幸、勇神、龍神の三人は子供部屋に行き、キッチンルームには佳那子の両親、佳那子、友美の四人になった。

佳那子の母:「友美ちゃんは飛び込み競技とグラドルをやっているよね。佳那子から聞いていますが」

友美:「はい、飛び込み競技は中学一年生からで、グラドルは三才の時から始めているんです」

佳那子の母:「私は最初、危険だから反対したんですけど、佳那子は強情で聞こうとしないんですよ。」

佳那子の父:「グラドルってグラビアアイドルだよね、きっかけは何かな?」

友美:「三才の時、母、姉、三人の妹と一緒にある公園で散歩していた時にカメラマンの人達に声をかけられスカウトされたのがきっかけだったんです」

佳那子の父:「そおなんだ」

友美:「それで色んなモデル雑誌やスポーツ雑誌、制服販売会社からモデルの依頼が続出して写真集を一年に五、六回出すほどになったんです」

佳那子の母:「2ヶ月に一回の割合で!?」

友美:「はい、撮影場所は、その時よりけりです。公園や海岸、廃校になった小中学校で撮影するのがほとんどです。たまに遠い所へ行って撮影する事があります。一昨年は長崎のハウステンボスで、去年は京都の嵐山で撮影しました。遠い所では」

佳那子:「えっ!嵐山で撮影したの?良いなあ、行きたかったです」

佳那子の母:「嵐山はパワースポットと言われているからね、渡月橋の辺りは土産物店が多いから外国人が多数訪れているみたいよね」

佳那子:「聞くところによるとオルゴールのお店が在るらしいから気になるのよ」

佳那子の父:「友美ちゃん、人気あるんだ。人気があって稼いでいるのなら佳那子も入れてあげて稼がせてほしわ」

友美:「それでしたら話は早いですわ。じつは私、佳那子ちゃんを私のグラドルグループ、葵奈姉妹の一員として活動してもらいたいと思っているんです。私にとって理想の妹みたいなのがありますから。どうか佳那子ちゃんをグラドルとしての活動、承諾して頂きたいのです」

佳那子の父:「それなら佳那子をグラドルとして活躍させ我が家を助けて欲しいわ」

友美:「出来るかどうかまだ不透明要素はあるかも知れませんが頑張ってみます」

やがて、佳那子の母が注文したピザが到着し昼食タイムとなった。子供部屋から勝幸、勇神、龍神が戻ってきて会食となる。

佳那子:「勇神、龍神、勝幸君と仲良くしてもらってる?」

勇神:「うん、勝幸兄ちゃんにしてもらっている」

龍神:「僕だって勝幸兄ちゃんに優しくしてもらっている」

友美:「良かった」

佳那子の父:「もし遠い所で撮影を行うとしたら筑波サーキットか鈴鹿サーキットか富士スピードウェイではどうかと思うんだけどね」

友美:「それってF1と自動車のレース場ですよね」

佳那子の父:「勇神と龍神が車好きだから思いついたんだ。海外だとモナコGP、コート・ダジュール、ニュルブルクリンク、デイトナになるだろうね」

友美:「そうなんですか、車って色んな種類がありますね、ウチは八人乗りの車です」

佳那子の母:「家族が多いからね」

友美と勝幸は小湊家で有意義に過ごした。

☆☆☆☆☆☆☆

実況見聞も終わり後は犯人逮捕を残すのみとなり悠真の救出騒動は、ほぼクライマックスを迎える頃になった。懸賞金の支払いは悠斗が振り込み、洋美、愛美、幸美が後日、首女中にて受け取りと決定したのだった。

見聞終了後、警察車両で悠斗は自宅近くへ、洋美、愛美、幸美は自宅からの最寄りのモノレール駅まで送られた。悠真と両親、菊池は悠真の父が運転する自家用車で帰宅の徒につく。

悠真の父:「これでようやく事件の完全解決は犯人逮捕を残すのみだな」

悠真の母:「由利ちゃんと一緒に監禁現場を見た時は言葉を失ってしまったわ。十二年も監禁されていたのだから。由利ちゃん、明日、首女中に出勤したら悠真の事聞いてきて欲しいわ」

菊池:「承知しました」

悠真:「私も明日から首女中に通いたい」

菊池:「じゃあ、明日の午前8時15分頃に首女中の校門で待ち合わせしよう」

悠真の父:「わしが悠真を校門まで車で送る事にする」

悠真の母:「制服はどうしようかしら?」

悠真:「とにかく着て行く」

菊池:「悠真、首女中の中へは私と一緒に入ろう」

菊池と悠真は明日からの通学の打ち合わせを済ませた。

☆☆☆☆☆☆☆☆

翌日の水曜日は入学月の最終日、4月30日であった。その日の朝、菊池は悠真との待ち合わせのため、校門の外で悠真を待っていた。登校してくる生徒達が菊池に挨拶をしていく。やがて悠真を乗せたと思われる車がやって来て菊池が立っている側に停車した。車から悠真が下車し菊池が支える。悠真の出で立ちはピチピチの状態の青いブレザー制服で腕を曲げるのが難しい状況だった。菊池は悠真に問いかける。

菊池:「悠真、ピチピチだけど大丈夫?」

悠真:「やっぱりサイズ小さい。大きめの制服が着たい」

菊池:「とにかく、中に入ろう」

悠真は菊池に支えられながら校門をくぐり抜け首女中の校内へと入って行く。悠真が乗ってきた車は父が運転していたらしく職場へと向かうべく走り去っていた。菊池と悠真が歩いているのを見て首女中と首女高の生徒達は首をかしげる顔つきであった。その光景は葵奈姉妹、佳那子、香織、美千代達の目にも入っていた。

菊池:「悠真、十二年ぶりの首女中への登校の気分はどう?」

悠真:「早く教室へ入りたい。クラスメートが待つ教室へ」

菊池:「はやる気持ちはもっともだけど先ずは校長室で校長先生に報告しよう」

悠真は菊池に支えられ校長室へ向かう。校長室に差し掛かった時、他の教職員が声をかけてきた。

「菊池先生、どうしたのですか?その生徒、普段見かけませんが」

「この生徒、私の同級生で十二年ぶりの登校なんですよ」

「えっ!十二年ぶりって、どうして?」

「新聞やテレビのニュースで報道されていた事件ですよ」

「もしかして!?」

菊池は校長室を、ノックして校長室の中へ悠真を連れて入る。

校長:「菊池先生、どうかしたの?この生徒は?」

菊池:「私の同級生で十二年前に行方不明になっていた生徒です。最近見つかり帰って来ました」

校長:「行方不明になってから見つかるまで一体何があったの?」

菊池:「誘拐されたうえ監禁されていたんです」

校長:「そうなの!?」

悠真:「校長先生、牟田内です。ただいま帰って来ました」

校長:「おかえりなさい」

悠真:「十二年ぶりの首女中、感無量です。早く教室で授業を受けたいです」

そこへ噂を聞き付けた他の教職員達が次々と校長室に入ってきた。その中に愛美と幸美、佳那子の担任、池澤瑠美菜(いけざわ るみな)、洋美、礼子、美千代の担任、大水咲(おおみず さき)、美幸と香織の担任、高畠美代(たかはた みよ)の姿もあった。高畠と池澤は大水と菊池より一年上であり、高畠と池澤が中学二年生の時、菊池と大水、悠真は中学一年生であった。

池澤:「菊池先生、十二年ぶりに帰って来た生徒が登校してきたの?」

菊池:「池澤先生、そうなんです。同級生の悠真が十二年ぶりに帰って来たので一緒に登校したんです」

大水:「悠真、帰って来たんだね、おかえり。十二年間の監禁生活は辛かったよね?」

悠真:「その間は『咲、由利と一緒に首女中に通いたい、同級生と一緒に首女高に進学したい』それ一筋だったのよ。何としてでも必ず絶対に!」

校長:「気持ちは最もだけど菊池先生と大水先生を始めとする同級生は皆、先に卒業したのよ」

悠真:「そっ、そんなぁ〜!一緒でないとイヤ〜ァ!」

菊池:「校長先生、どうすれば」

池澤:「校長先生、菊池先生、私の担任である中学一年A組で勉強させてはどうでしょうか?」

菊池:「池澤先生、いや池澤先輩、お願いいたします。私の同級生の悠真の担任を是非とも。悠真の救出に加担した葵奈愛美、幸美姉妹が在籍していますので」

池澤:「解ったわ由利ちゃん、任せてちょうだい。校長先生、ご理解願います」

校長:「良いでしょう、池澤先生、任せましたよ」

菊池:「ありがとうございます校長先生。悠真、学校生活再開よ、制服、大きめのを用意してあげる」

悠真:「由利、あっ、ありがと・・・う」

菊池と池澤は涙を浮かべる悠真涙を別室へと案内した。そこには中古の制服が数着ほどバンカーにかけられている。

菊池:「悠真、好きな制服を選んで着たらいいわ」

悠真:「私、これを着るわ」

悠真が選んだ制服は12年前に着ていたのと同じ型の大きいサイズの青色のブレザータイプの制服である。

☆☆☆☆☆☆☆

愛美、幸美、佳那子が在籍の一年A組ではいつもより担任の池澤が、まだ来ない事に生徒達が疑問を抱いていた。

生徒A:「ねぇ、池澤先生、遅いなぁ」

生徒B:「何があったのかしら?」

佳那子:「解らない」

愛美と幸美は目と目で頷き合うのだった。やがて池澤が悠真を連れて一年A組の教室に入って来た。一年A組の生徒達の大半は悠真の事を知らない。他の学校からの転入生と思ったのだろうか。池澤は生徒達に着席を促す。

池澤:「みんな静かに!今日から、この学級で一緒に勉強をしていく事になった牟田内悠真さんよ。牟田内さん、黒板にフルネーム書いてあげて」

悠真:「は、はい」

池澤に指図され悠真は自分自身の名前をチョークで黒板に書く。名前を書き終えると悠真は生徒の席へ向く。池澤は悠真に自己紹介を促し、悠真は自己紹介する。

悠真:「牟田内悠真です。十二年ぶりの登校で緊張しています。よろ、しく」

池澤:「牟田内さんは今から十二年前に、この学校に入学しましたが誘拐事件によって今までの十二年間、監禁生活を余儀なくされていました。どうか皆さん優しく見守ってあげて下さいね。気配りと気遣い、ゆめゆめ忘れずに」

教室内に驚きの空気が漂う。佳那子を始めとする生徒達は驚きの表情を隠せない。愛美と幸美は悠真の救出に加担したので驚いてないのだが同じ学級の同じ教室で勉強する事になるとは思ってもいなかったのだった。

「牟田内さんは一番後ろの席と言いたいけど、机と椅子が・・・」

そこへ校長先生と教頭先生が机と椅子を届けに来ていた。机と椅子を受け取ると教室の一番後ろに配置しそこへ座るように促す。悠真はそこへ着席し一時間目の授業に移行する。一時間目の授業の終了後の休憩時間になると悠真は教室の後にある制服、体操服、水着のカタログを手に取ろうと立ち上がり歩こうとするが動作はぎこちなかった。それを見た愛美と幸美は悠真に声をかける。

愛美:「悠真さん、どうしたの?」

悠真:「カタログを見たいの」

幸美:「じゃあ取ってあげるわ。はい、悠真さん」

悠真:「ありがとう」

その光景を見ていた生徒達は眉をひそめるように喋り出す。

生徒A:「十二年も前に誘拐されたときは中等部一年生だったのかしら?その時、私達は生まれて間もなかったわね」

生徒B:「十二年間の監禁生活ってどんな生活だったのかしら?」

佳那子(最初は生徒Cで呼称):「監禁となると刑務所や拘置所の独房や警察の留置場みたいなイメージがあるわ。そういう生活だったかも」

生徒D:「みだりに尋ねない方が良いかも」

生徒E:「年齢はいくつかしら?精神年齢は私達と同い年なのは間違いないわ」

生徒F:「間違っても聞くべきではないよね」

カタログに食い入っている悠真に愛美と幸美は話しかける。

愛美:「悠真さん、良いなあと思うの有りますか?」

悠真:「私が入学した時に比べたら種類が多くなっているみたい」

幸美:「学校の様子は十二年前と比べてどうですか?」

悠真:「プールが変わっているような気がする。首女中のプールは、まだ一度も泳いだ事ないの」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

友美と真美奈の三年A組でもホームルームは遅めに始まった。教室に入ってきた菊池は嬉しそうな表情を浮かべている。

(菊池先生、嬉しそうだわ、とくに最近、どうしてかしら?)

友美は菊池の嬉しそうな表情を疑問視していた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

四時間目の授業が終わり昼休みに入った時一年A組の教室に菊池と大水が入って来て悠真に声をかけた。

菊池:「悠真、一緒に食堂に行かない?」

大水:「私も悠真と一緒に食堂で昼食を取りたいのよ」

悠真:「うん、行こう」

菊池と大水は悠真を連れ食堂へと歩き出す。その後ろ姿を他の生徒達は怪訝そうな顔つきで見送るのだった。悠真の歩き方を菊池は気になり声をかける。

菊池:「悠真、歩ける?まだまだ体力回復が足りないかしら?」

悠真:「何とかいける」

大水:「現役生徒と上手くやっていける?」

悠真:「まだ始まったばかりだから何とも言えないけど教室にいたら私と由利の同級生やクラスメートに会えそうな気がする」

やがて食堂の食券の自動販売機の前に到着すると菊池は再び悠真に声をかける。

菊池:「悠真、昼は何を食べる?今日は私が出してあげるから」

悠真:「ありがとう、じゃ、ピラフの並盛で」

菊池:「大盛にはしないのね」

悠真:「監禁生活で胃袋縮んだみたいだから」

大水:「そのうちに膨らんで大盛、特盛も食べられるようになると思うよ」

三人は食券を購入して食事を楽しんだ。

悠真:「首女中の食堂での食事、久しぶりだわ」

菊池:「十二年ぶりだよね」

悠真:「何だか、ここで、たらふく食べたい気持ちが湧いてきそう」

大水:「回復の兆しが感じられるわ」

食事を終えると三人は一年A組の教室へと歩き出したが、悠真は購買部に寄りたいと菊池と大水に申し出る。

悠真:「由利、咲、購買部に寄ってみたい」

菊池:「悠真、何か買いたい物あるの?」

悠真:「久しぶりの購買部だから」

大水:「そぉよね、この際、体操服、水着、下着パンツも揃えた方が良いかも」

悠真:「筆記用具、学用品の品揃えも良いし、最初は学用品から揃えたい。体育の授業は、当分の間は見学でいきたい」

菊池:「運動能力の回復が出来てないみたいだからね」

大水:「成績に影響が出なければいいけど」

悠真:「出たら留年してでも首女中で学び続けたい。永遠の中等部一年でいたいぐらいなの」

大水:「とりあえず、学用品だけ買い揃えよう。今回は私が出してあげる」

悠真:「ありがとう、咲」

学用品の購入を済ませ三人は一年A組へと戻るべく歩き出す。教室へ戻ると悠真は菊池と大水に礼を言った。

「由利、咲、ありがとう」

五時間目の授業の終了後、悠真は一年A組の生徒達から質問を受けていた。

生徒A:「十二年前の首女中はどんな感じだったの?今と違う所はある?」

悠真:「プールが違うみたい。泳いだ事は、まだ一度も無いけど」

生徒B:「どこで誘拐されたの?」

悠真:「今は思い出したくはないから答えたくない」

生徒D:「監禁されてた時の食事はどうだったの?」

悠真:「1日おにぎり一個か二個だけの時が多かった」

生徒E:「え〜っ!たったそれだけ!?痩せるわ」

生徒F:「ダイエットし過ぎも良いところだわ」

生徒A:「でも太りすぎを気にするのなら、それを参考にするのも手かな?」

そして、放課後、部活動の時間になり生徒達は各々の部活動へと向かう。愛美、幸美、佳那子は水泳部へと向かう。悠真は校内を散歩すべく歩き出す。足取りは遅くて、ぎこちないが運動能力は回復しつつあるのだった。

(どこへ行ってみようかな?)

悠真が思案に暮れながら歩いていると菊池と大水が声をかけてきた。

菊池:「悠真、どこへ行くの?」

大水:「気になる部活動があるの?」

悠真:「そぉよね、グランドでも散歩してみようかと思うの」

大水:「私、陸上部の顧問をしているけど興味ある?」

悠真:「走るのは無理だから見るだけにしたい」

菊池:「泳ぐのも無理?」

悠真:「無理。溺れるかも知れないので見るだけにしたい」

菊池:「やっぱり当分は無理か」

三人はグランドへと歩き出す。そこへ数人の陸上部員らしき生徒が三人やって来て声をかける。

陸上部員A:「大水先生、入部希望者ですか?」

陸上部員B:「菊池先生も一緒で」

陸上部員C:「何か見かけないような気がするんですけど」

菊池:「彼女は今まで十二年間、誘拐事件で監禁生活を余儀なくされていたのよ。今日から学校生活再開で通い始めたのよ」

大水:「十二年前に首女中に入学したけどね」

陸上部員A、B、C:「え〜っ!?」

大水:「十二年の監禁生活、どんなのか想像出来る?」

陸上部員A:「出来ない」

陸上部員B:「その間は休学扱いだったんですね」

陸上部員C:「それじゃ、年齢は今、何歳で?」

菊池:「そんな質問は許さないわよ!聞くのはもってのほか、解ったわね!」

大水:「余計な事は考えないで、中等部一年生と同じ12歳だと思ってあげなさい!」

菊池と大水は現役の生徒達に対して悠真に年齢の事をたずねさせないようにした。それは年齢による差別意識、疎外意識、偏見意識を現役の生徒達に持たせない為であった。そういう意識を持ってしまうと、いじめによる孤立は避けられないからだった。三人の陸上部員は一人でも多く部員を獲得したいと思っていたのだろうか、がっかりした口調で練習を再開する。

陸上部員A:「はーい。練習に入ろう」

陸上部員B:「はーい」

陸上部員C:「はーい」

三人の陸上部員は練習に入るべくランニングを開始し走って行った。その後ろ姿を見ていた悠真が口を開いた。

悠真:「今ので私、何歳であるのか解らなくなった。12歳なのか24歳なのか」

菊池:「現役の生徒達と一緒に授業を受けている時は12歳でいて、私と咲と一緒にいる時は24歳で良いじゃない」

大水:「24歳でいるのが嫌なら12歳で押し通したらどう?一番いいのは状況に応じて12歳と言うなり24歳と言うなり判断すれば良いのだけど。場合によっては嘘も方便だから」

悠真:「そぉよね、12歳でいこうかな。それにしても陸上部、足早いなあ」

大水:「毎日、走り込んでいるからよ」

悠真:「監禁生活では考えられなかった。何か不思議だわ」

悠真はしばらくの間、茫然自失した表情で陸上部の部活動を見ていたが気分が変わった為か口を再び開いた。

「由利、咲、今度は体育館を覗きたい」

菊池と大水は悠真を連れて体育館へと歩き出す。体育館ではバスケ部、バレーボール部、チアーリーディング部が部活動をしていた。部活動を見学しているうちに悠真は喉の渇きを感じた。

「由利、咲、私喉乾いた」

菊池と大水は悠真を連れ食堂へと歩き出す。菊池は悠真にたずねた。

菊池:「悠真、何を飲みたい?言っておくけど酒、アルコール飲料の類いは勘弁してね、学校の中だから」

悠真:「解っているよ。アイスクリームかパフェが食べたい」

大水:「学校の食堂のメニューには無いよね」

菊池:「学校の外にある商店街に行かないと無さそうだわ」

大水:「パフェの出前やっている店は無いよね」

菊池:「今日帰りに店探して寄ろう、悠真、食欲が回復してきたみたい。予想よりも早く」

大水:「そぉよね、回復が思ったよりも早くなっているみたい」

悠真:「じゃあ帰宅時を楽しみにしているわ。今度は図書室かプールを覗きたい」

大水:「どちらを覗きたい?」

悠真:「そぉよね、じゃあ図書室」

菊池:「じゃあ、悠真、咲と二人で覗いて来たら。私は水泳部の様子を見に行ってそのついでに一泳ぎしてくるわ」

大水と悠真は図書室へ歩きだし、菊池はプールへと向かう。図書室に入ると悠真は本棚を見まわす。

悠真:「図書室、あまり変わってないかな」

大水:「見えない所で変わっているかもよ。最近はマンガやDVDやBlu-rayソフト、インターネットも見れるからね」

悠真:「しばらくは放課後ここでDVDやBlu-ray、インターネットを見ようかな」

大水:「それも良いかもね」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

プールでは水泳部員が競泳部門と飛び込み競技部門と分かれて練習に励んでいた。飛び込みプールでは友美が真美奈と、美幸が香織と、美千代が礼子と、愛美が幸美とペアを組んでシンクロ高飛込の練習に励んでいる。佳那子は洋美とペアを組んでいるが、時々よそ見で他の部員の水着姿を見る事が相変わらず多いのだった。そんな佳那子に洋美は、たまりかねて叱責する。

洋美:「佳那子!もう余所見ばっかり!どこ見ているの!?」

佳那子:「あっ、ごめんなさい。高等部の御姉ちゃんの水着姿も飛び込む光景もセクシーで見とれてしまいまして」

真美奈:「どうかしたの?洋美ちゃん」

洋美:「井之上先輩、佳那子ったら、また余所見ばっかしです」

真美奈:「佳那子ちゃん、あれほど言っているでしょ、余所見はダメと」

佳那子:「ごめんなさい、友美姉ちゃん、真美奈姉ちゃんだけでなく高等部の御姉ちゃんもセクシーで見とれてしまって」

高等部の部員A:「もう、そんなに見とれて」

高等部の部員B:「私、そんなにセクシー?」

高等部の部員C:「同性の女の子から言われるのも良いかもね」

高等部の部員D:「同性の女の子からセクシーと言われるとスタイルに自信がつきそう」

真美奈:「佳那子ちゃん!そんなに余所見が好きなら平手打ち食らわして良い?」

佳那子:「はい、良いです」

真美奈:「みんな、一旦集合して!佳那子ちゃんの頬っぺたに平手打ちを食らわしたい人、この指とまれ!」

その時、思いもよらない声が上がる。

「はーい、は私ダメかしら?」

その声の主は菊池だった。菊池は他の飛び込み競技部門の部員が着用しているのと同じ型の紺の競泳型のスクール水着だった。佳那子は驚きの表情をして菊池に向き直る。

佳那子:「きっ、菊池先生!いつの間に!どうしたのですか!?」

菊池:「たまたま偶然にね」

洋美:「菊池先生、佳那子よそ見ばっかりするんですよ。先生からも厳しく怒って下さいよ」

菊池:「解ったわよ。小湊さん、よそ見ばっかりしてたら怒られるわよ。平手打ちされても私は責任負わないよ。知らん顔の半兵衛、とぼけ顔の官兵衛を決め込むわよ」

佳那子:「ごめんなさい、上級生の御姉ちゃんの水着姿、飛び込む姿、とてもセクシーでたまらないんです」

菊池:「うふふふっ、そぉなの?目が点になっちゃって」

佳那子:「菊池先生のスクール水着姿、セクシーです。見とれてしまいそうです」

菊池:「そうなの!?久々に着て飛び込んで泳いでみたいと思ったとこなのよ」

佳那子:「菊池先生、このまま先生に見とれていたいですけど怒りますか?」

菊池:「小湊さん、もう見とれちゃって。今、着ている水着は私が高等部に在籍していた時に着ていたものよ。私と同じスクール水着を着ている小湊さんもセクシーで似合っているわよ」

佳那子:「菊池先生そう言われると私ますます菊池先生に見とれていたいです。菊池先生の飛び込み、見てみたいです」

菊池:「やだぁ、赤面しちゃって。私まで赤面しそうだわ。私の飛び込み見たい?それなら、さっきの話だけど」

佳那子:「私の頬に平手打ちの事を食らわしたい事ですよね?」

菊池:「そぉなのよ、といきたいけど、どうしようかしら」

佳那子:「私の頬に平手打ちしたいんですか?良いですよ。菊池先生は憎めないので、遠慮は無用ですよ」

菊池:「良いの?じゃあ御言葉に甘えて、そうさせてもらうわ。痛いけど我慢してね」

佳那子:「はい、菊池先生、お願いします」

菊池:「いくわよ」

菊池は佳那子の左頬に平手打ちを食らわした。

パーン!!

衝撃で佳那子は尻餅を着く。菊池は佳那子に駆け寄り声をかける。

菊池:「小湊さん、大丈夫?痛かった?」

佳那子:「大丈夫です。菊池先生の平手打ち、やさしさ百点満点です」

菊池:「そぉなの?何か照れちゃいそうだわ。じゃあ私の飛び込み披露するわ」

菊池は10㍍の飛び込み台に上がり飛び込んだ。菊池が飛び込みプールから上がると佳那子は感嘆の声を上げる。

佳那子:「菊池先生、凄い。他の人は解らないですけど私、菊池先生にだったら何発でも叩かれたいぐらいです」

洋美:「私は香織姉ちゃん、菊池先生だったら何発でもオッケーです」

美千代:「私は香織姉ちゃん、友美姉ちゃん、菊池先生なら我慢できます」

礼子:「私は友美姉ちゃん、菊池先生にだったらオッケーです」

香織:「洋美ちゃん、美千代ちゃん、私にだったら良いというの?私も菊池先生にだったらオッケーです」

高等部の部員A:「私は体罰は大嫌いです。でも菊池先生だったら叩かれても良いですよ」

高等部の部員B:「私も体罰は大嫌いです。でも菊池先生に叩かれるのなら話は別です。夢は菊池先生のような体育の教師だから」

高等部の部員C:「私も菊池先生が良いです。自分で自分を叩いても気持ちは引き締まらないと思う」

高等部の部員D:「私だって体罰は大嫌いです。でも菊池先生なら何発でも何万発でも叩かれたいぐらいです」

菊池:「ちょっと、私に叩かれても良いなんて、何て言えば良いのかしら?これじゃ私、体罰教師の烙印を押されてしまうじゃないの。あ〜あ、やだわ」

高等部の部員A:「菊池先生、もしかして平手打ちの体罰に対してトラウマを抱えていませんか?そうじゃないのなら、ごめんなさい」

菊池:「トラウマ?そう言えば中等部一年の時、私よく平手打ちの体罰、嫌と言うほどされてプールサイドで泣いていたわ。その時の思い出、払拭して忘れようと思うのだけど、いまだに気持ちが晴れないのよ。教師が生徒に弱音吐くなんて私自身がぶざまだわ、情けなくなりそう」

高等部の部員B:「菊池先生、気を落とさないで下さいよ」

高等部の部員C:「私達に平手打ちを食らわす事で気持ちを晴らしたら良いですよ」

高等部の部員D:「今の菊池先生、キュートでビューティーでセクシーです」

佳那子:「菊池先生、可愛くて美しくてセクシーです」

菊池:「そぉなの?それじゃあ私に平手打ちされたい人、集まってちょうだい」

菊池の元に部員達は集まる。その中には香織、洋美、美千代、礼子、佳那子がいて、競泳部門の部員もいる。菊池は集まって来た部員達、一人一人に平手打ちを食らわしていく。その度に乾いた音がプール内に響きわたった。

パーン!!パーン!!パーン!!パーン!!パーン!!パーン!!パーン!!パーン!!

愛美:「友美姉ちゃんも叩かれてきたら良いじゃん」

友美:「どうしてなのよ?予防接種じゃあるまいし」

幸美:「嫌なら幸美、愛美お姉ちゃんと一緒に叩かれてくる」

愛美は幸美と一緒に菊池の元へ寄り平手打ちを食らわしてもらう。

パーン!!パーン!!

一通り部員達に平手打ちを食らわし終えると菊池は部員達に、声をかける。

菊池:「みんな痛かった?だったら、ごめんね」

高等部の部員A:「大丈夫です。菊池先生こそ、右手、疲れてません?」

菊池:「そぉよね、これだけの人数となると一苦労だわ。この事、問題沙汰にならなきゃ良いのだけど」

佳那子:「私が思うには、平手打ちの場合、愛情と体罰は紙一重、じゃないかと思うんです」

菊池:「紙一重?」

他の部員も『紙一重』の言葉に疑問視する顔つきに変貌する。

佳那子:「教育現場の体罰問題は、望まない者から望まないモノ、と言うのが正しいかと思うんです」

菊池:「望まない者から望まないモノ・・・?」

佳那子:「平手打ちを望まない者に平手打ちを食らわすと体罰になると言う事でしょうか。逆に望む者にだったら愛情、やさしさ、と言うのだと」

菊池:「何か、愛情と体罰の違いについての論文を書きたくなりそうだわ」

友美:「やさしさ百点満点か、愛情百点満点との違いは何だろうね?ところで菊池先生、最近、やけに嬉しそうな顔をしてますけど何かあったのですか?」

香織:「彼氏が出来たんですか?」

美千代:「宝くじで大金当てたんですか?」

佳那子:「懸賞で高額賞品当てたんですか?」

菊池:「全部ハズレよ。十二年間、行方不明だった中等部一年時代の同級生が見つかり再開できたのよ。誘拐されたうえ、十二年間も監禁生活を強いられたのだから涙がでてたまらないのよ」

部員一堂:「え〜っ!十二年間も!?」

菊池:「想像出来る?」

真美奈:「出来ないです。その同級生は、今は、どうなったのでしょうか?」

菊池:「池澤先生の学級で学ぶ事になったのよ。今日から」

礼子:「愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃんのクラスですね」

愛美:「悠真さん、菊池先生の同級生なんだ」

幸美:「幸美もビックリ、嬉しいのも無理ないね」

菊池:「まだ運動能力が完全に回復してないので当分は体育の授業は見学なのよ」

高等部の部員A:「部活動はどうするのかなぁ?」

高等部の部員B:「今の状況じゃ体育系の部活はキツイかも」

高等部の部員C:「文科系にするのかな?」

菊池:「食欲が回復しつつあるみたいだから思ったよりも早く回復しそうだわ」

高等部の部員D:「よかったわ、何だか私まで涙が出そうだわ」

菊池:「さぁ、みんな練習を再開よ!気合いを入れて!」

☆☆☆☆☆☆☆☆

図書室で大水咲と一緒にインターネットを見ていた悠真はニュースを検索していた。

大水:「悠真、犯人見つかって逮捕されたみたいだわ」

悠真:「あっ私を誘拐して監禁していた男だわ」

大水:「これから取り調べが始まって初公判、論告求刑、判決へと進むわ」

悠真:「私は関わる気にはなれない。首女中、首女高での学校生活以外は考えたくないわ」

大水:「やっぱり監禁生活の事は思い出したくないのね」

悠真は椅子から立ち上がり背伸びする。咲も背伸びする。

大水:「悠真、校舎の屋上に上がってみない?」

悠真:「そぉよね、どんな景色なのか気になる」

咲と悠真は校内の屋上に上がった。屋上からはモノレールや公園、海が見える。西を見ると太陽が山吹色の光を放ち首女中と首女高の学園埠頭の周辺の海に反射させている。十二年間の監禁生活を強いられていた悠真にとっては新鮮な光景に映ったのかも知れない。景色を眺め続ける悠真に咲は声をかける。

大水:「悠真、景色どう?」

悠真:「素敵、夜になったら星空が綺麗かも。寮生活している生徒にとってはお馴染みかもね」

大水:「もう少ししたら部活動が終わる頃になるし由利と一緒に学校の近くのレストランでパフェを食べようよ」

悠真:「うん、南の海は太平洋なんだよね」

大水:「西と北西に相模湾、東と北東に東京湾が広がっているからね。南東に房総半島があるからね」

悠真:「ここで景色を眺めながらのパフェは格別かも知れないのにね」

☆☆☆☆☆☆☆☆

そして下校時、菊池と大水は悠真を連れ首女中の近くのショッピング街でパフェをメニューに出している店を探しながら歩いた。

菊池:「悠真と一緒にショッピング街を歩くのも十二年ぶり、再び歩けるとは思ってもいなかったわ」

悠真:「私だって、このショッピング街を歩く事が出来るようになるとは思っていなかった」

大水:「このショッピング街も、この十二年間で閉店した店、開店した店があったわ。数は少ないけど」

菊池:「そうかな?ねぇ、この店だったらパフェやアイスクリームがあるし、どう?」

悠真:「良いね」

大水:「じゃ入りましょ」

三人は店に入る。同時に『いらっしゃいませ』の声が店員からかかる。三人は、とあるテーブル席に座りパフェを注文した。

菊池:「懐かしいわ、中等部一年に戻った気分だわ」

大水:「由利、悠真と一緒に、お店に入ったのは悠真が誘拐される前だったよね」

悠真:「感無量だわ、本当に。咲、由利と一緒に食事出来るなんて信じられない気持ち。これで他の同級生と一緒に修学旅行に行けたら良いのになぁ」

菊池:「よく考えてみたら悠真、修学旅行にも行けてないのね、中等部の時と高等部の時、両方の」

大水:「私、悠真、由利と三人だけの修学旅行を考えても良いなぁと思うんだけど」

悠真:「由利、咲、修学旅行はどこへ行った?」

菊池:「中等部の時は三泊四日で奈良と京都の嵐山、高等部の時は四泊五日で広島の呉、長崎のハウステンボス、鳥取の鳥取砂丘だったわ」

大水:「奈良では東大寺の大仏、広島の呉では大和ミュージアムに行ったわ」

悠真:「そぉなの、大和ミュージアムって戦艦大和のミュージアムだね。何か修学旅行にも行きたい気にもなってきた。全部は無理でもハウステンボスと嵐山は行きたい」

菊池:「もうすぐゴールデンウィークだけど交通機関は混むし宿泊施設も予約は不可能に等しいわ」

悠真:「ゴールデンウィークが無理なら夏休みにでも行きたい」

大水:「そぉよね考えようよ、同級生に同行希望者を募ってみようかしら?」

菊池:「そぉよね、同級生に悠真が見っかった事を周知させなくてはね」

三人はパフェに舌鼓を感じながら会話を続けた。

☆☆☆☆☆☆☆

部活動の終了後、水泳部員達は帰宅の徒についていた。愛美は幸美と、洋美は香織、美千代と、友美は佳那子、高等部の部員数人と会話を楽しんでいる。

高等部の部員A:「小湊さん、痛かった?菊池先生の平手打ち?私は気持ち良かったけど」

佳那子:「痛さより、やさしさの方が強かったです」

高等部の部員B:「小湊さん、菊池先生、気に入ってるのね」

佳那子:「はい、菊池先生のみならず高等部の御姉ちゃん、みんな美しくてセクシーです」

高等部の部員C:「やだぁ、小湊さんったら、もう赤面しちゃうじゃないの。でも同性の可愛くて美しい女の子に言われるは嬉しいわ」

佳那子:「そう言われると私、メロメロになっちゃいそうです」

高等部の部員D:「小湊さんのスクール水着姿、セクシーでしたよ。菊池先生と同じぐらいに」

友美:「佳那子、高等部の先輩にも慕われるようになってきたわね。私も精進しなきゃダメかも」

一方、洋美と香織、美千代も会話を楽しんでいた。

香織:「洋美ちゃん、美千代ちゃん、私に叩かれるなら我慢できるみたいだけと本当なの?嘘なら嘘とハッキリ言ってよ。あいまいな返答は勘弁して欲しいのよ」

洋美:「香織姉ちゃん、この事に関しては私、嘘を言いません」

美千代:「私も同感ですよ、香織姉ちゃん」

香織:「よかったわ」

洋美:「私は本当、香織姉ちゃんの、お母さんが凄いと思うんです。女一人で香織姉ちゃんを育てているので、その手腕には敬服しています」

香織:「そぉなの?」

美千代:「私だって、香織姉ちゃんと共通する何かが有るような気がします。制服の色が赤というのがありますね」

香織:「私は美千代ちゃんと同じように赤が好きよ。制服のみならず体操服も赤がほとんどだわ。一番好きな色は赤、次が紺よ」

美千代:「香織姉ちゃんの体操服の下はどうなんでしょうか?私は体操服の下は赤ブルか紺ブル、スクール水着は赤か紺ですね」

香織:「それ、私も同じよ」

そして愛美と幸美は他の部員に解らないように悠斗とメールのやりとりに腐心していた。

☆☆☆☆☆☆☆☆

そして深夜、葵奈家では愛美と幸美が目を覚まし用便のためトイレに行っていた。幸美が愛美に話しかける。

幸美:「愛美お姉ちゃん、嫌な事を聞くかも知れないけど」

愛美:「なあに幸美、どうしたの?」

幸美:「体罰で平手打ちされるのは嫌よね?」

愛美:「勿論、嫌に決まっているじゃん」

幸美:「幸美だって嫌」

愛美:「だよね、友美姉ちゃんの平手打ち、メチャメチャ痛いわ。逆に菊池先生のは気持ち良い」

幸美:「洋美姉ちゃんのも痛い。でも、愛美お姉ちゃんのだったら幸美、我慢出来そうな気がするの。幸美も菊池先生の平手打ちは気持ち良いの」

愛美:「そおなんだ。ねぇ幸美、もし佳那子が真美奈姉ちゃんの家で見た夢が正夢になったら愛美、幸美に叩かれても我慢するつもりよ」

幸美:「ありがとう愛美お姉ちゃん。その時は仲良く叩き合おうね」

そこへ友美と洋美が声をかけた。

友美:「愛美、幸美、お前ら相変わらず夜中に話し合っているな」

洋美:「そんなに平手打ちされるのを望んでいるのか?早く寝ろ」

愛美と幸美は友美と洋美に促されベッドに戻り抱き合って寝た。

翌日の5月1日木曜日、友美は洋美と同じタイミングで目を覚ました。

洋美:「友美姉ちゃん、おはよう」

友美:「洋美、起きたか、ナイスタイミングだね。愛美と幸美は?」

洋美:「同じベッドで抱き合ってキスしながら寝ているわ。どんな夢を見てるかしら?」

友美:「まだ少し時間があるし昨日の事、少し話さない?着替えながらで」

洋美:「話すって何?友美姉ちゃん」

友美:「昨日、菊池先生に食らわしてもらった平手打ち、私の平手打ちと何か違いあった?」

洋美:「どうして?気にしてるの?」

二人の話し声で愛美と幸美が目を覚ました。

愛美:「ふぁ〜っ、あ〜眠い」

幸美:「愛美お姉ちゃんの口付け、菊池先生の平手打ち並に気持ち良い」

友美:「起きろ!愛美!幸美!」

洋美:「友美姉ちゃんの平手打ちよ!」

友美は毎朝の日課のつもりで愛美と幸美に平手打ちを食らわす。

パーン!!パーン!!

愛美:「うぇ〜ん!痛いよ〜」

幸美:「うぇ〜ん!菊池先生の方が気持ち良いのに〜」

友美:「黙れ!お前らの1日は、これで始まりだぞ!私の平手打ちで。わかったな!」

四姉妹は毎日のように着替えと朝食、歯磨きをして登校の準備を済ませ家を出る。そしてモノレールに乗車して香織、美千代、佳那子、高等部の部員達に会い挨拶をする。首女中と首女高の校門に差し掛かると菊池と大水が悠真の登校を待っていた。登校してくる生徒達は二人に挨拶していく。

「菊池先生、大水先生おはようございます」

「おはよう」二人は挨拶に答える。葵奈姉妹達も挨拶をして校舎内へ入っていく。それから少し遅れる形で悠真を乗せた車がやって来て校門の前で停車

した。運転しているのは父親で悠真を降ろすと去っていく。悠真はぎこちない足どりで菊池と大水に近寄って挨拶する。

悠真:「由利、咲、おはよう」

菊池:「おはよう悠真」

大水:「おはよう悠真、歩くのは、まだしんどい?」

悠真:「そぉね、まだまだ、だわ」

菊池:「学校生活再開して二日目だからかな?」

大水:「昨日のパフェ美味しかった?」

悠真:「美味しいかった。機会があればパフェのバイキングといきたいけど店があれば良いのになぁ」

菊池:「バイキング形式の店は遠くへ行かないとないかも。とにかく教室へ行こう」

悠真は菊池と大水に支えられながら一年A組へと向かう。教室の前の廊下で悠真は菊池、大水と別れ中に入って行った。それを見届けると菊池と大水は女性職員専用更衣室へと足を進め着替えを始める。それを見た他の教員は二人に声をかけた。

「菊池先生、大水先生、何に着替えるつもりですか?」

二人が着ようとしているのは現役の首女中と首女高の生徒が着用しているのと同じ制服であった。色と型は悠真に着用させたのと同じ青色系のブレザーと青色系のチェック柄のスカートである。菊池は教員に答えた。

「この学校の制服ですよ。十二年ぶりに学校生活を再開した同級生の為に学校の中で着ることにしたんです」

「十二年ぶりに学校生活を再開した同級生ですか、池澤先生の学級で在籍しているんですね。それにしても菊池先生と大水先生の制服姿、違和感はないですね。高等部の生徒と間違われそうですよ」

「そうですか?」

着替えを終えると菊池と大水は職員室で他の教員達と挨拶をしていく。

一方、悠真は教室に入った。すかさず一年A組の生徒達が悠真に声をかける。

生徒A:「悠真さん、おはよう。歩くのしんどい?」

悠真:「しんどい。体育の授業は当分の間、見学なのよ」

生徒A:「今日の一時間目は体育、二時間目は水泳の授業だけど、それも見学なのね」

生徒B:「監禁生活の影響、まだまだ残っているのかな?今日で二日目だし」

悠真:「まだまだ、だと思う」

生徒達は体育の授業に備え体操服に着替える。その光景は色とりどりで悠真は茫然自失しながら着替えずに制服姿のまま眺め続けるのであった。

(みんな自分自身の好みの制服や体操服を楽しんでいる。私も楽しみたい、もっともっと)

着替えが終わると一年A組の生徒達はグランドに出て授業開始を待つ。程なく体育の教師、浦木麻衣(うらき まい)がやって来て授業を開始する。浦木は菊池や大水、池澤、高畠のような首女中、首女高、首女大の出身ではなく今年度から首女中へと転任して来て、それまでは別の中高一貫の学校で体育教師をしていたのだった。浦木は集合の合図をかける。

「集合!」

一年A組の生徒達は集合し、悠真は日傘をさしながら、ぎこちない足どりで続く。悠真の事は校長と菊池、大水、池澤から聞かされていたので浦木は知っていて悠真に話しかける。

「牟田内さん、あまり長時間、直射日光を浴びないようにね。無理の無いようにね」

「は、はい」

悠真は返事をするが、フラフラとめまいを起こし倒れこんでしまう。一年A組の生徒達一同は叫ぶ。

「悠真さん!どうしたの?浦木先生!悠真さんが!」

浦木は保健室へ連絡すべく携帯を手に取った。やがて保健室から常駐の保健師が二人施し来て悠真を担架に乗せ保健室へと運んで行った。

また一方、中等部三年A組では制服姿の菊池がホームルームを開始していた。制服姿の菊池に友美と真美奈を始めとする生徒達は驚きの表情を露にする。

「菊池先生、どうしたのですか?その格好」

「私達と同じ制服ですよね・・・」

「菊池先生は首女中、首女高、首女大の出身なんですよね。何か首女中時代と首女高時代の菊池先生を見ているみたいです」

教壇に立っている菊池は青色系のブレザーで青色のリボンネクタイ、青色系のチェック柄のスカート、紺色の靴下と上履きで髪型は黒髪のショートヘアー、前髪は眉毛より一センチ上で切り揃えている。

「私の中等部時代の同級生が十二年ぶりに首女中に復学したのよ。今まで誘拐によって十二年の間、監禁生活を強いられ休学を余儀なくされたの。再会した時、私と一緒に首女中そして首女高に通いたいと言っていたのよ」

菊池の説明に生徒一同は驚きの表情を露にする。生徒の一人が口を再び開く。

「十二年間も監禁なんて信じられないです。だとしたら今の年齢は・・・」

菊池は説き伏せるような口調で言った。

「中等部一年A組で学ばせているから年齢は幾つであっても12歳だと思ってあげるのが良いと思うわよ」

またまた一方、洋美、美千代、礼子の中等部二年B組の学級では大水が制服姿でホームルームを進めていた。そこでも大水の制服姿に生徒達は驚きの表情であった。

「大水先生、どうして制服なんですか?」

生徒の問に大水は答える。

「私の中等部時代の同級生が十二年間、誘拐事件で監禁生活を余儀なくされて最近、学校生活を再開したのよ。池澤先生の学級でね」

「え〜っ、マジ?」

生徒達は驚きの声を上げる。更に大水は続ける。

「その為に首女中、首女高の出身教師、全員が首女校の制服を着用しようという事になったのよ」

生徒の一人が口を開いた。

「まるで首女中時代と首女高時代の大水先生を見ているみたいです。似合っています」

「そうなの?制服は私より菊池先生の方が似合っているわよ」

☆☆☆☆☆☆☆☆

そして二時間目、一年A組はプールにて水泳の授業を受けていた。悠真は保健室のベッドで水泳の授業をモニター画面で眺めた。学校が用意したビデオカメラで水泳の授業を撮影し保健室のモニター画面へワイヤレスで送信しているのだった。

(水泳の授業か、今日の放課後は由利と一緒に覗いてみようかしら?)

モニター画面を見ながら悠真は思案に暮れていた。現役の生徒達は水泳の授業で泳いだり、飛び込み台から飛び込んだりしている。十二年間の監禁生活による手痛いハンデを負う悠真にとっては悲しくて辛い光景に映るものがあるのだった。24歳の12歳であるのか、24歳の中等部一年生であるのか、そんな葛藤が悠真の心を悩ませていたからだ。運動技能が皆無に等しい今の状況では体育の授業に出る事は愚か見学さえもかなわない。そんな絶望感を感じていても、

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

『どんな事があっても由利と一緒に首女中と首女高に通いたい。

一緒に学校生活を楽しんで卒業したい』

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

と言う気持ちは監禁生活から解放された今でも変わる事はないのであった。

そして二時間目が終わり一年A組の生徒が教室へ戻ると悠真も生徒の手を借りて教室へ戻った。

生徒A:「悠真さん、大丈夫?」

生徒B:「まだまだ顔色は芳しくないようだけど」

悠真:「ありがとう、当分は体育の授業は保健室で受ける事になると思うわ」

生徒A:「仕方ないなぁ。そんなに首女中が好きなの?」

悠真:「そうよ。由利と一緒に首女中に通いたい、その思い一筋だったのよ。十二年間は」

生徒A:「由利って誰?」

生徒B:「誰って解らないの?菊池先生よ!」

生徒A:「そぅだったの?悠真さん、菊池先生と仲良しの同級生なんだ。と言う事は悠真さん、年齢は二十代中盤?」

生徒B:「ちょっと年齢の事は禁句よ!」

悠真:「お願いだから私の年齢は無しにして。悲しくなりそうだから。皆と同じ12歳にして欲しいの、お願い」

それから四時間目が終わりになると一年A組の教室に制服姿の菊池と大水が入ってきて悠真を昼食に誘う。

菊池:「悠真、一緒に食堂へ行こう」

大水:「今日は何を食べる?」

悠真:「そぉよね、ドライカレーの並盛」

三人は食堂で雑談を交えながら食事を楽しむ。その光景を眺める他の生徒達の反応と目付きは様々だった。それらを歯牙にかける事もなく三人は会話を

楽しんでいる。

悠真:「こうして制服姿の由利と咲と一緒に食堂で食事すると、同級生と再会出来そうな気がするわ」

菊池:「私の同級生にも知らせのメールを送っておいたわ。どれぐらい反応が来るのか楽しみだわ」

大水:「就職した者もいれば結婚した者もいるかも知れないけど、これを期に同級生の状況を確認するのも良いかも」

悠真:「早く他の同級生や先輩にも会いたいなぁ」

菊池:「会えると良いね。悠真の学校生活再開パーティーを開こうかしら?」

大水:「ゴールデンウィークの間に企画してみょうかしら?校長先生や教頭先生にも相談してみるわ」

悠真:「開くなら首女中の中だったら良いのになぁ」

その光景を愛美と幸美は眺め続けていた。

昼休みも終わりに近づき、悠真が菊池と大水に支えられて一年A組の教室へ戻ろうとした時、愛美と幸美が声をかけてきた。

愛美:「悠真さんは菊池先生、大水先生と一緒が楽しいみたいですね」

悠真:「うん、由利、咲、同級生と一緒に首女中に通うのが一番の悲願なのよ」

幸美:「今の悠真さん、幸せそう」

悠真:「これで私と由利、咲の同級生と一緒に通えたら良いのになぁ」

菊池:「愛美ちゃん、幸美ちゃん、部活終了後、洋美ちゃんと一緒に校長室に来てちょうだい」

愛美:「はーい」

幸美:「はーい」

大水:「私、次の授業の準備をしないといけないから、愛美ちゃん、幸美ちゃん、悪いけど悠真を連れて教室へ戻ってちょうだい」

菊池:「私も次の授業の準備があるから悠真をよろしくね」

愛美:「はーい。悠真さん、教室へ戻ろう」

幸美:「幸美達が支えてあげるから」

悠真:「ありがとう、何とか自分で立ってみるわ」

こうして菊池と大水は職員室へ戻り悠真は愛美と幸美に支えられ一年A組の教室へと歩きだす。

愛美:「悠真さん、頑張って走れるようになってね」

幸美:「飛び込んで泳げるようになったら、もっと良いのにね」

愛美:「それじゃ無い物ねだりじゃん」

こうして悠真は愛美と幸美に支えられ一年A組の教室へ戻った。

それから放課後、愛美と幸美は悠真に話しかけた。

愛美:「悠真さん、もし部活を考えるとしたら、どれを選ぶ?」

幸美:「体育系はダメたとしたら文科系?」

悠真:「今は考える気にはなりにくい。めまいを起こす事が多いから」

愛美:「迷うのなら今のうちだと思うよ。元気になれたらの事を今からゆっくり考えても良いと思うよ」

幸美:「運動能力が回復しきれてない今は小田原評定のままでも良いと思うよ」

愛美:「悠真さんは、これからまた校内を散歩ですか?」

悠真:「そぉよね、由利、咲と一緒に校内オリエンテーション」

幸美:「幸美達は、これから部活でプールへ行くのよ。それじゃ」

愛美と幸美は部活の為にプールへと走り向かう。それから二、三分後に菊池と大水が教室に入って来た。

菊池:「悠真、今日は何処を見て周りたい?」

悠真:「そぉよね、プールを見て周りたい」

菊池:「それじゃ私、水着に着替えてから向かうから、悠真、咲と一緒にプールに向かったら」

大水:「わかった。悠真、プールへ行こう」

菊池は教員用の更衣室へと走り、大水と悠真はプールへと歩きだす。程なくして三人の陸上部員にかち合う。

陸上部員A:「大水先生、今日は、制服姿ですね」

大水:「そぉなのよ、十二年ぶりに学校生活を再開した生徒の為にね」

陸上部員B:「その十二年ぶりに学校生活を再開した生徒とは?」

陸上部員C:「先生の側にいる人ですか?」

大水:「そぉなの、一応紹介しておくわ。牟田内悠真、悠真さんなのよ」

悠真:「牟田内悠真です。よろ、しく」

陸上部員A:「あの、悠真さん、十二年ぶりと言う事は・・・・」

悠真:「年齢の事?だったら聞かないで欲しいの」

陸上部員B:「そぉなんだ」

悠真:「聞きたいのなら中等部一年A組としか答えたくないの」

陸上部員C:「池澤先生のクラスなのね」

大水:「彼女は十二年間に及ぶ監禁生活の影響で運動機能が低下しているのよ。しばらくリハビリが必要なのよ。今の状況では泳ぐ事は愚か走ることもかなわないのよ」

陸上部員A:「それじゃあ、体育と水泳の授業は」

大水:「保健室のベッドでモニター画面を見ながらの授業なのよ」

陸上部員B:「その状況じゃ、陸上部員には不向きかしら?残念だわ」

大水:「悠真を陸上部に入部させたいと思っているの!?」

陸上部員C:「他の部に部員候補を取られたくないので」

首女中の一年生と首女高の一年生編入生(市立中学からの入学生)の人数は限られている。部員がいないと部の存続は不可能であるから全ての部が部員獲得に必死なのだった。

大水:「悠真は私、菊池先生と一緒に首女中に通いたいという想いで十二年間の監禁生活を凌いでいたのよ」

陸上部員A:「それじゃ、優秀な部員はどうやって・・・」

陸上部員B:「他の学校の陸上部の生徒を特待優生として引き抜いたうえで転校させるしかないわ」

陸上部員C:「でも、どうやって探してくるかが大変よ。周辺の市立中学を当たってみればどうかしら?」

大水:「特待優生とは入学費、授業料の全てを免除しなければならないのよ」

そこへ水着に着替えた菊池がやって来た。菊池は水着の上に白の無地のTシャツを来ている。

菊池:「あら、咲、悠真、まだプールに着いてなかったの?」

大水:「ええ、陸上部員としゃべってしまったので」

陸上部員A:「菊池先生、これからプールへ向かう所だったのですか?」

菊池:「ええ、そうなのよ。どうして?」

陸上部員B:「今の菊池先生の出で立ち、高等部の陸上部員に間違えてしまいそうです」

菊池:「そうかしら?水着の上に白のTシャツ着ている為かしら?」

陸上部員C:「そうですよ、水着が紺ブルに見えてしまうので」

大水:「これから悠真をプールで水泳部の見学をさせるので、練習頑張ってね」

三人の陸上部員を尻目に大水と菊池は悠真を連れてプールへと歩いて行った。その後ろ姿が見えなくなると陸上部員達は話を再開する。

陸上部員A:「あの十二年ぶりに学校生活を再開した悠真さんの足どり、ぎこちなかったね」

陸上部員B:「開けてがっかり玉手箱じゃなくて、期待してがっかり、みたいだわ。リハビリ中なのかな?」

陸上部員C:「だとしたら見守ってあげるのが一番としか言いようがないわ」

陸上部員A:「そおよ、無理矢理入部させて上、走らせたら死んでしまい兼ねないわ。ここだけの話だけど今の悠真さん、まるで玉手箱を開けた浦島太郎みたいな感じだったわ」

陸上部員B:「ちょっと、それは、いくらなんでも酷すぎるじゃん。泳ぐとなったら、なおさらよね」

陸上部員C:「いくら何でも『歩く玉手箱』と言うアダ名は不謹慎かしら?さぁ練習始めよう」

祈るような気持ちで三人の陸上部員は練習を始めるべく走り出す。

(悠真さん、リハビリ、頑張ってね、無理の無いように。私達の頑張り届いてくれたら良いのだけど)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

水泳部の見学の為プールに足を運んだ悠真と大水は見学室から水泳部の部活を見学する。菊池はプールサイドへ行き水泳の練習を監督する。裸足で水着の上に白のTシャツを着た菊池を見て水泳部員達は驚きの声を上げる。佳那子は目を点にして菊池に声をかけた。

佳那子:「菊池先生、今日は紺ブルの体操服ですか、それとも水着の上にTシャツですか?」

菊池:「水着の上にTシャツに決まっているじゃない」

洋美:「佳那子、菊池先生となると目が点になるわね」

菊池:「小湊さん、あれほど言っているのに解らないの!?ぼーっとしたらダメと言っているでしょ。でも、よく考えてみたら今の小湊さん、中等部一年の時の私と重なりそうな気がするわ。何故かしら?」

友美:「菊池先生の中等部一年時代の写真があれば見てみたいわ」

真美奈:「同感ですわ。似ていたりして」

菊池:「そうかしら?さぁてと、ひと飛び込みさせてもらうわ」

菊池は軽くストレッチして水着の上に着ている白のTシャツを脱いで水着になり飛込みプールの一番高い10㍍の飛込み台から飛び込んだ。部員達は歓声を上げる。大水と一緒にいる見学室の悠真は驚きの表情をしている。

(由利、上手に飛込み入水を決めるわ。十二年の差は、これなのかしら?私には飛び込んで泳ぐ事はおろか走る事もままならない)

菊池の飛込みを見ていた悠真に大水は声をかける。

大水:「悠真、どう?由利の飛込み」

悠真:「上手よ、十二年間の差を見せつけられたようだわ」

大水:「悠真、落ちんだらダメよ、頑張って克服しようよ」

悠真:「この学校の体育と水泳の授業に飛込み競技があるみたいね、いつ頃からかしら?」

大水:「去年からよ。水泳の授業に飛込み競技を入れたいと要望したのは由利なのよ」

悠真:「由利が言い出しっぺなのね」

飛込みプールで飛込みの練習に勤しんでいる葵奈姉妹も他の部員達も悠真の回復を願っているのだった。

愛美:「幸美、悠真さん運動能力回復してくれたら良いのにね」

幸美:「短時日では厳しすぎるわ」

洋美:「私達に出来る事は見守る事しかないのね」

友美:「菊池先生と大水先生の同級生なんだね」

真美奈:「と言う事は菊池先生と大水先生と同い年なのかしら?」

美幸:「そうだとしたら普通は就職しているか結婚していてもおかしくはないのだけど」

香織:「悠真さんの場合は、そういうわけにはいかないよね。菊池先生が12歳だと思ってあげなさい、と言うのも無理ないわ」

高等部の部員A:「運転免許の一つか二つは持っていてもおかしくないのにね」

高等部の部員B:「持っていたら私達にとっては役に立つかも知れないけどなぁ」

高等部の部員C:「監禁生活の中で免許取得は絶対無理よ。聞いても持ってないと言うよ、100%以上の確率でね」

高等部の部員D:「そおね、せっかく取ったとしても乗る車がなければ宝の持ち腐れだわ」

そして部活の終了後、洋美、愛美、幸美の三人は制服に着替えると菊池に言われたとおりに校長室へ足を運んだ。そこには警視庁の関係者が来ていたのだった。そこには校長先生、教頭先生、菊池、大水、悠真の姿があった。その時の菊池と大水は出勤してくる時の私服姿であった。洋美、愛美、幸美、三姉妹は警視庁から感謝状を手渡された。悠真の救出に貢献した事によるものである。同時に賞金も手渡された。悠真も改めて洋美、愛美、幸美が救出してくれた事を認識するのであった。悠真は三姉妹に例を述べた。

悠真:「洋美、愛美、幸美、救出ありがとう。あの時は御苦労様でした」

大水:「悠真、愛美ちゃんと幸美ちゃんと仲良くやっている?」

悠真:「うん、気を使ってもらっているよ」

洋美:「愛美、幸美、同じ学級だから気遣い怠りなく」

菊池:「洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん、悠真の救出に加担したもう一人の男性はどうしてる?」

洋美:「元気にしていると思うよ」

悠真:「その男性に会うことあるのなら、よろしくと伝えてね」

こうして、感謝状と賞金の受け取りを終えると三姉妹、菊池、大水、悠真は校門を出て帰宅の徒につこうとする。その時、友美、佳那子、香織、美千代を始めとする他の部員は帰宅した後だった。洋美、愛美、幸美は菊池、大水、悠真に挨拶をしてモノレールで帰宅して行った。菊池と悠真は大水が運転する軽自動車で帰宅の徒につく。その車内では大水がハンドルを握りながら口を開く。

大水:「学校の外に出たら私と由利の同い年だね、悠真」

悠真:「そうかしら?でも今は制服を着たままだから12歳同然のような気がするわ」

菊池:「もう悠真ったら。でも確かにそうかも知れないわ。12歳から二十歳までの楽しみを味わえてない為からかしら?」

悠真:「二十歳までの思い出作りは洋美、愛美、幸美に協力してもらうつもりでいるの」

菊池:「あの三姉妹には賞金が手に入ったから、それも手かもね」

悠真:「私、成人式には愛美と幸美と一緒に行くつもり。本当は由利、咲と一緒に行きたかったわ」

大水:「その為に愛美ちゃんと幸美ちゃんには、仲良くしてもらわないとね」

悠真:「学校生活再開パーティーは行えるかしら?」

菊池:「私と咲の同級生に来てもらわないと成り立ちそうにないし、ゴールデンウィークにやるには準備日数が少な過ぎるのではと校長先生、教頭先生は言ってたわ」

悠真:「ゴールデンウィークに首女中でやるのは無理か・・・・愛美と幸美に相談してみょうかしら?」

大水:「その方がまだ良いと思うわ。同じ学級だから」

車の中で三人は会話を楽しみ続けた。

(悠真が成人式に行くとしたら32歳の新成人と言う事になるのかしら?)

菊池はそう思わずにはいられなかった。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

モノレールを降りた洋美、愛美、幸美は改札を出て駅の近くのベンチに腰かけた。

幸美:「洋美姉ちゃん、愛美お姉ちゃん、賞金どれぐらいあるのか気にならない?」

愛美:「そぉよね気になるわ、見てみる?」

洋美:「どれぐらいあるのか、解らないけど友美姉ちゃんには勿論の事、家族には内緒よ。良いね?」

三人は通学カバンにしまっていた賞金の封筒を取り出し厚さを確める。

幸美:「それなりの厚さは感じるわ」

愛美:「どれぐらいかな、ん?かなりあるじゃん」

洋美:「落としたり失くしたりしないように!沢山あったとしても有頂天は禁物よ!」

洋美は愛美と幸美に注意を促す。その顔つきは上級生としての貫禄を思わせるものだった。三人は各々の封筒を開け紙幣を数え始めた。

幸美:「ごっ50万だわ」

愛美:「愛美もそうだわ」

洋美:「私も。ちゃんと失くさないようにしまうのよ。解った?」

幸美:「はーい」

愛美:「はーい。悠斗さんはどうかしら?」

洋美:「そぉね、愛美、かけて聞いてみて」

愛美は悠斗の携帯に電話をかけた。

愛美:「もしもし悠斗さん。愛美です。しばらくです」

悠斗:「こちらこそ、ご無沙汰しちゃったよ」

愛美:「悠斗さんは賞金入りましたか?」

悠斗:「今日、口座に入ってましたよ、50万。愛美ちゃん達はどうだった?」

愛美:「愛美、幸美、洋美姉ちゃんも今日、受け取りました。悠斗さんと同額です」

悠斗:「良かったね。ところで俺達が救出した女性の牟田内さん、今はどうなったのかな?犯人は捕まったみたいだけど」

愛美:「悠真さんの事ですよね、昨日から愛美と幸美の一年A組で学校生活再開して一緒に授業を受けていますよ」

悠斗:「そうか、本音は牟田内さん、自身の同級生と学校生活を楽しみたいと思っているんじゃないかな?」

愛美:「本音はそうみたい。でも悠真さんの同級生は皆、卒業したから愛美と幸美達が同級生に代わってあげて面倒みています」

悠斗:「そぉか、元気にしてるんだ」

愛美:「はい、でも運動能力は無いに等しい程に低下しているので体育の授業は保健室で見学です」

悠斗:「そぉなんだ、俺だって牟田内さんが運動出来る程に回復する事を祈っているよ。ところで話を変えて申し訳ないけどゴールデンウィークはどうやって過ごすつもり?」

愛美:「ああ連休ですね、幸美とは賞金でケーキバイキングかスイーツバイキングでも行こうかと思っているんですけど、洋美姉ちゃんと先生からは悠真さんの為に役立てる事を考えなさい、と言われたのよ。悠斗さんはどうするか予定はあるのですか?」

悠斗:「まだ決めてないけど駅前の商店街でも、ぶらぶらするか、学園埠頭モノレールに乗って旅でもしようかなと思っているんだ」

愛美:「学園埠頭モノレールは通学で毎日乗っているんですよ。それでしたら、また会いません?」

悠斗:「そうだね、実は見せてみたいモノがあるんだ。俺の卒園、卒業アルバムだけど」

愛美:「悠斗さんの幼稚園、小学校、中学校の卒園、卒業アルバムですよね、見てみたいです」

悠斗:「今度の土曜日の午前10時、初めて会った駅でどう?」

愛美:「洋美姉ちゃん、幸美と話し合った上で返事しますが、良いですか?」

悠斗:「解った、返事たのむよ」

愛美:「それじゃ、また。おやすみなさい」

愛美は悠斗との電話を終え洋美と幸美に向かいあう。

愛美:「洋美姉ちゃん、幸美、今度の土曜日なんだけど」

幸美:「愛美お姉ちゃん、悠斗さんと会う約束だね、決めない?」

洋美:「そおね、良いかも、で何時に?」

愛美:「午前10時に初めて会った駅でだけど」

洋美:「いいわ、悠斗さんにメールでオッケーと返事して」

愛美は悠斗に返事のメールを送信する。

幸美:「ねぇ洋美姉ちゃん、愛美お姉ちゃん、ちょっと、どこか寄らない?」

洋美:「時間的に遅いから今日は諦めて悠斗さんと会う土曜日にしたら」

愛美:「遅いとママや友美姉ちゃんがうるさいからね」

幸美:「そおね、友美姉ちゃんの平手打ち、痛いからねぇ」

愛美:「友美姉ちゃんのよりも菊池先生の方が気持ち良いのになぁ」

洋美:「仕方ないよ、今日は諦めて早く帰ろう。歩きながら話そうよ」

三人は自宅へと歩き始める。

洋美:「ねぇ愛美、幸美、嬉しくない事だけど私の平手打ちと友美姉ちゃんの平手打ち、菊池先生の平手打ち、どれが痛い?」

愛美:「どれも痛いけど、菊池先生のは痛さ以上に優しさがたっぷりこもっているような感じがする」

幸美:「幸美も愛美お姉ちゃんと同じよ」

洋美:「そぉなんだ。私も同感よ。友美姉ちゃんのよりも菊池先生の方が気持ち良くて快感よ。菊池先生はメチャメチャ怖くてメチャメチャ厳しいけど何故かしら憎めないのよね」

愛美:「ねぇ話変えて悪いけど菊池先生の同級生の悠真さん、初めて会ったのは悠斗さんと一緒に救出した時だったよね」

幸美:「そうだったよね、あの時は、何か臭いにおいがしてた。長い間、風呂に入れてもらえなかったのかな?」

洋美:「そうだとしたら、誘拐して監禁してた犯人、許せない!」

愛美:「同感、悠真さんを見てたら犯人に対して怒りを禁じ得ないわ」

幸美:「悠真さんの同級生と一緒に首女中に通いたいという夢と願い、かなえてあげないといけないわ」

洋美:「それには首女中と首女高の生徒会がトップに立って行動しなくてはならないわ」

愛美:「首女中と首女高出身の先生達には悠真さんの為に首女中と首女高の制服を着用してもらわないとね。菊池先生や大水先生のように」

幸美:「今の在校生に悠真さんの同級生、つとまれば良いのだけど・・・」

洋美:「愛美と幸美、佳那子が面倒みてあげないとダメじゃない?何よりも精神的な面で支えてあげなきゃ」

話しているうちに自宅に帰りつき、三人は自宅へ入る。

「ただいま」

「お帰り」

玄関に友美が立っていた。靴を脱いで廊下に上がったばかりだった。

「友美姉ちゃんも帰ったところなの?」

洋美がたずねると

「そおよ。小学校時代の同級生に会ってしゃべってたわ」

と答える。夕食と入浴を済ませ就寝中、いつもののように愛美と幸美は用便の為に目を覚ます。二人はベッドから出て部屋を出てトイレに向かって歩く。用便を済ませたあとに幸美が愛美の右手をつかんで話しかける。

幸美:「愛美お姉ちゃん」

愛美:「どうしたの?右手をつかんで」

幸美:「愛美お姉ちゃん、抱き合って話し合おうよ」

愛美:「うん、抱き合おう」

幸美:「愛美お姉ちゃん、悠真さんを見てたら、愛美お姉ちゃんと一緒にいられる事の有り難さが解る気がする」

愛美:「同感よ。愛美だって悠真さんを見てたら大好きな妹である幸美と一緒にいられる事の有り難さを考えさせられるよ。だって悠真さん、菊池先生、大水先生と十二年間、離れ離れだったから」

そこへ部屋から友美と洋美が出てきた。友美は愛美と幸美に声をかける。

友美:「愛美、幸美、早く寝ろ。起きれなかったら平手打ちだぞ」

愛美:「平手打ちだったら菊池先生の方が気持ち良い」

幸美:「幸美も同感」

友美:「そんなに菊池先生の平手打ちが好きなのか?」

愛美:「うん、好き」

幸美:「幸美も」

友美:「そぉなの?何と言えば良いのかしら」

洋美:「とにかく寝よう」

四姉妹は再び就寝する。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

三矢悠斗は幼稚園の卒園アルバムに目を通していた。救出した女性の同級生の名前がアルバムにあるのだった。悠斗が見ているページは悠斗が年長組の時の写真である。

(もしかして、この名前の女の子は?)

こないだの火曜日の祝日に実況見聞が行われた時、女性(悠真)の同級生と同じ名前が悠斗と同じ組の中にあったのだ。名前は『きくいけ ゆり』である。女性と同級生にも悠斗自身の名前は伝えている。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

翌日の5月2日金曜日の朝、葵奈姉妹の部屋では愛美と幸美が目を覚ました。愛美は幸美に声かけの挨拶をする。

「幸美、おはよう」

幸美も

「おはよう。愛美お姉ちゃん」

と挨拶を交わし、二人は口付けを交わし会う。

「幸美の口付け、気持ち良い」

「愛美お姉ちゃんの口付けも美味しくて気持ち良い。菊池先生の平手打ちと同じぐらいに」

「幸美、友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんが目を覚ますまでに着替えようよ」

「そおね、友美姉ちゃんの平手打ちが飛ぶ前にね」

愛美と幸美はパジャマを脱ぎ、体操服を着て、その上に制服に着用し始める。すると洋美が目を覚ました。

「愛美、幸美、今日は早く起きれたね」

「愛美、今日は友美姉ちゃんよりも早く起きれて良かった」

「幸美も起きれた」

三人の声に友美も、ようやく起き出した。

「ふぁあああ、洋美、愛美、幸美、今日はお前ら早く起きれたな」

四人は制服に着替え終えると一階の台所へ降り朝食を済ませ登校の準備をして家を出てモノレールの駅へと歩き出す。モノレールに乗ると美千代、香織、高等部の部員達、そして佳那子と会う。校門に着くと菊池と大水が悠真を待っていた。生徒達は挨拶をして校内へ入って行き、愛美と幸美、佳那子は菊池、大水と一緒に悠真を待つ。ほどなくして悠真を乗せた車がやって来て校門の近くに停車した。車から悠真が降り菊池と大水の元へ歩み寄る。友美、洋美、美千代達はやや離れた所で見守った。

大水:「悠真、おはよう」

菊池:「悠真、おはよう、今日も学校生活、楽しもうね」

愛美:「悠真さん、おはよう」

幸美:「悠真さん、おはよう。調子は?」

佳那子:「悠真さん、おはよう」

悠真:「おはよう、歩くのは、まだまだ、しんどい」

菊池:「運動療法は継続する必要はありそうだわ」

菊池、大水、愛美、幸美、佳那子は悠真を支えながら中等部一年A組へと歩く。一年A組の教室に差し掛かると菊池と大水は悠真を愛美、幸美、佳那子に託し職員専用の更衣室へ向かう。愛美、幸美、佳那子に支えられながら悠真は自身の机椅子に着席し息をつく。他の生徒も悠真に声をかける。

生徒A:「悠真さん、おはよう。歩くのはどうですか?」

悠真:「まだまだ、しんどい。数ヵ月はかかるかも」

生徒B:「運動能力、まだまだ回復しそうにないかも」

悠真:「当分の間、体育は保健室にて授業を受ける事になりそう」

生徒A:「何か、通信教育で体育の授業を受けている感じだわ。ねぇ悠真さん、もし運動機能が回復して体育会系の部活を考えるとしたら、どの部を選択する?私が所属している陸上部はどうですか?」

悠真:「ごめん、まだ走る事かなわないの」

生徒B:「じゃあ悠真さん、何か望んでいるものある?」

悠真:「愛美、幸美、皆と一緒に成人式に行きたい」

生徒B:「成人式?それだったら8年後だよね」

生徒A:「今、望んでいるのは何ですか?」

悠真:「同級生に会いたい。私の同級生に会いたい。同級生と一緒に首女中に通いたい。由利と咲だけじゃ物足りないのよ」

生徒A:「菊池先生と大水先生だけじゃ物足りないですか?辛いのは最もですけど私達では悠真さんの同級生はつとまりますか?」

悠真:「そおね・・・・この教室にいたら私の同級生に会えそうな気もする。会えるかな?」

生徒A:「会えると信じましょうよ、悠真さん」

その時チャイムが鳴り響き池澤が入って来て着席を促した。

「みんな、これからホームルームだから着席して!」

一年A組はホームルームを経て一時間目の授業に入る。四時間目が終了し昼休みになると悠真は大水と菊池を待っていた。

愛美:「悠真さん、お昼は大水先生と菊池先生と一緒に食堂よね?」

悠真:「そおよ。あなた達も一緒に昼にする?」

幸美:「そうさせてもらいます」

そこへ制服姿の大水と菊池が入って来て悠真を昼食に誘う。

大水:「悠真、一緒に昼、食べよう」

悠真は菊池、大水、愛美、幸美、佳那子、数人の生徒と一緒に食堂で昼食を共にする事にした。

菊池:「ねぇ悠真、今のクラスメイトと仲良くやってる?」

悠真:「ぼちぼちと言った所だわ。この先は、まだ・・・・」

大水:「まだ3日目だから一朝一夕には期待出来ないわ」

生徒A:「悠真さん、頑張って運動能力を復活させてね。出来たら陸上部覗いてくれたら有難いなあ」

生徒B:「出来たらバスケ部も見に来て欲しいけど」

佳那子:「あの、言いにくいけど水泳部飛込み競技部門は駄目ですか?」

菊池:「皆、部門獲得に必死なのね」

大水:「確かに部の生命線は部員数にあると言っても過言じゃないけど、大事なのは質より量ではなく、量より質だと思うよ」

愛美:「量より質、ですか?」

幸美:「沢山いるよりも上手な人の方が大事かな?」

悠真:「どちらの部活でも今の状況ではやれないわ」

菊池:「悠真のリハビリをサポート出来る部があれば良いのだけどね」

大水:「どの部が良いのかしら?」

生徒A:「悠真さん、心臓が小さいのかな?」

生徒B:「運動する人と、しない人では心臓の大きさに違いがあるのかな?」

こうして昼休み、悠真は昼食を楽しんだ。放課後、悠真は菊池と大水に会う。

悠真:「由利、咲、私、保健室に行きたいの」

菊池:「解ったわ」

大水と菊池は悠真を支え保健室へと歩いて行く。保健室にたどり着くと保健室に常駐の医師が悠真を診察する。大水は菊池と共に悠真を見守る。

保健室の医師:「どうやら疲れているみたいですよ」

大水:「そうですか」

保健室の医師:「運動療法は少しづつ。間違っても一気に増やしては駄目です。回復具合を見ながらが大事でしょう」

菊池:「悠真、運動能力が回復したらどうしたい?」

悠真:「そおよね、咲が顧問している陸上部か由利が顧問している水泳部を覗いてみたい。さすがに掛け持ちは無理があるけど」

菊池:「水泳部だったら水中ウォーキングはどうかしら?最近、フィットネスジムで取り入れられているケース多いみたいだし」

大水:「そおよね。明日からゴールデンウィークに入るから、その間に運動能力が復活できれば良いのだけどね」

悠真:「同級生からメールの反応はどうかしら?」

菊池:「残念だけど、まだ反応は・・・」

悠真:「そおよね・・・もう十二年前の同級生は諦めて、今の同級生に期待するしかないのね」

菊池は沈痛な想いを口調に露にした。悠真は悲嘆に暮れるのと同時に愛美、幸美、佳那子に新たな同級生として期待を模索する事に自分自身の考えを傾けるのだった。そんな悠真に大水は声をかける。

「無理して強がらなくても文化系でも良いじゃない?今の悠真には、それが良いかも知れない気がするわ」

「文化系ね、何が良いのかしら?」

「悠真に会う部活は、吹奏楽部の弦楽器部門、軽音楽部、天文部、美術部、演劇部、どれが良いかな?」

「出来たら色々、覗いてみたいわ」

「悠真、どれを覗きたい?」

「とりあえず天文部」

「じゃあ三人で覗いてみようか」

菊池と大水は保健室の医師に礼を言い悠真を連れてプラネタリウムドームへと歩く。プラネタリウムドームを見た悠真は感嘆の表情を露にする。

「へぇ、こんなのが出来ていたのね、十二年の間に」

プラネタリウムドームの中では十数人の天文部部員がプラネタリウムを観賞しようと準備をしている。菊池と大水、悠真の姿を見て天文部部員達は驚きの声を上げる。

天文部部員A:「あっ!菊池先生に大水先生、どうしたのですか?」

天文部部員B:「後にいる人、もしかして十二年間も監禁されてた人ですか!?」

大水:「そおなのよ、天文部を覗いてみようと言う事なのよ」

菊池:「彼女は十二年間に及ぶ監禁生活の影響で運動能力、精神状態が低迷しているのよ。体育と水泳の授業は保健室でモニター画面を見ながらの出席なのよ。プラネタリウムの観賞で気持ちと精神が回復してくれたら良いなあと思って来たのよ」

菊池の声で天文部部員達は驚きの表情を露にする。入学して間もないうちに誘拐され十二年間も監禁されていた悠真の事は噂で聞いていたが菊池の言葉で改めて驚かされたのだった。

天文部部員A:「十二年の間、監禁されてたのには驚きます」

天文部部員B:「その間はどうだったのですかね」

天文部部員C:「あの、お名前は何と言うのですか?」

悠真:「中等部一年A組、牟田内悠真、です」

天文部部員A:「牟田内さんですね」

天文部部員B:「入学して間もないうちに誘拐されたなんて辛かったですね」

天文部部員C:「入学した時の同級生は卒業してしまったんですね」

天文部部員D:「牟田内さん、寂しくないのかな?」

菊池:「今は一年A組の生徒達が仲良くしてあげてるわ」

大水:「今日は悠真に色んな文化系の部活を見せてみたいと言う事で天文部を覗いて見る事にしたのよ」

天文部部員A:「そおですか、ゆっくりプラネタリウムを観賞してください」

悠真は菊池、大水、天文部の部員達と観賞する事にした。プラネタリウムドーム内は暗くなり天井のドームの内壁に無数の星が映し出される。時折、流れ星が映りだす。その光景を見た時、悠真は願い事を願う顔つきに変貌して行った。

(由利と咲の元で勉強出来ますように。入学した時の同級生に会えますように。今の新しい同級生に仲良くしてもらえますように・・・)

脳裏に願い事を思い巡らせているうちに悠真は睡魔の世界へと誘われていく。睡魔の世界に行けば願い事はかなうようにと悠真は信じ込むようになっていった。一時間余りの上映が終わりドーム内に照明がともった時、悠真は死人のように寝ていた。天文部部員達が悠真に声をかける。

天文部部員A:「悠真さん」

天文部部員B:「牟田内さん」

天文部部員C:「悠真さん、起きて」

悠真は死人が生き返ったような仕草で目を覚まし起きる。

「ヴぁあああっ、よく寝てしまったわぁー!」

悠真の声で、天文部部員達は驚きの声を上げる。

天文部部員A:「キャアー!」

天文部部員B:「むっ、牟田内さん!」

天文部部員C:「ゆっ、悠真さん!」

天文部部員D:「びっくりするじゃん。まるでゾンビに心臓をわしづかみされたような気分だわ」

天文部部員E:「それじゃまるでバイオハザードの世界じゃん」

菊池:「もう、悠真、びっくりさせないでよ」

大水:「心臓が止まるかと思ったわ」

悠真:「もっと、睡魔の世界に居たかった。願い事かなえたかったのに〜」

菊池:「すっ、睡魔の世界って何なのよ?水泳の世界なら解るけど」

大水:「眠りの世界と言う事かしら」

天文部部員A:「悠真さんの願い事はなぁに?」

悠真:「由利、咲と一緒に首女中で勉強出来る事。入学した時の同級生に会う事。今の同級生に仲良くしてもらう事。この三つを流れ星を見た時に祈ったのよ」

天文部部員B:「もしかして悠真さん、菊池先生、大水先生と同級生ですか?だとしたら年齢は・・・・」

悠真:「その話は辛い、中等部一年でありたいから」

天文部部員C:「そおなんですか、願い事かなったら良いですね」

菊池:「私だって流れ星を見たときは悠真が帰って来ますように、と願い事を佳くしたよ。七夕の短冊にも悠真が帰って来ますように、と書いたものだったわ」

大水:「私も同感よ。こうして悠真が帰ってきたものだから、悠真にセラピーミュージックを聞かせて精神治療を考えたいものだわ。由利とやり方は違うかも知れないけど」

天文部部員D:「菊池先生は運動療法、大水先生は音楽で精神治療なんですね。悠真さんにはどちらが合うのでしょうか?」

悠真:「今は音楽で精神治療、それで良くなったら運動療法が良いなあと思うの」

菊池:「メンタルケアは大事だと思うわ。立ち直りたい、克服したいと言う想いを持つ事は大事だと思うのよ。何事でも」

天文部部員A:「想い、ですか?そういえば菊池先生は水泳部飛込み競技部門の顧問ですね。10㍍の高さの恐怖心を克服したいと言う想いは大事でしょうね」

菊池:「そおよね、どうして?」

天文部部員A:「体育の水泳の授業に飛込み競技があるので気になったんです」

菊池:「成る程、もし気が向いたら水泳部飛込み競技部門を覗きに来てね」

菊池、大水、天文部部員達と一緒に悠真は会話を楽しんだ。

☆☆☆☆☆☆☆☆

飛込みプールでは水泳部飛込み競技部門の部員達が練習に勤しんでいた。佳那子は浮かない表情をしている。そんな佳那子に洋美は問い詰める。

洋美:「佳那子!どうしたの?練習に身が入ってないみたいけど、どうしてなの?」

佳那子:「友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんの妹でいるのは、と思っているので」

洋美:「もしかして私と友美姉ちゃんの妹でいるのが嫌になったとでもいうの!?」

佳那子:「私、友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんの妹だったら、私、オバサンかしら?それが生理的に・・・・」

洋美:「それが気になるの?」

佳那子:「だって、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美、幸美には姪がいますよね」

洋美:「いるわよ。あと半年足らずで二人目の姪が産まれてくるからね」

佳那子:「それですから最近、私、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんよりも菊池先生に恋心を抱いているんです。オバサンになるのは生理的に辛くて嫌なんです」

洋美:「あははははっ成る程、笑いが止まらないわ。佳那子、菊池先生は私の担任の大水先生と一緒に悠真さんの世話に忙しいのよ。悠真さんには必ず立ち直ってもらいたいからね。私達の高飛込みで悠真さんを元気付けようよ」

佳那子:「そうですよね、でも出来る事なら私、菊池先生と二人きりの校内デートをしてみたいものです」

洋美:「それだったら菊池先生に告白したら良いじゃん。女同士の恋愛も女子校ならでの味があって良いと思うよ」

洋美と佳那子が話し合っている矢先にプールに菊池がスクール水着姿で現れてやってきた。

高等部部員A:「菊池先生、悠真さんはどうですか?」

菊池:「最近は文化系の部活を見学しているわ。今日は天文部を覗いて、その後、大水先生と一緒に校舎の屋上で景色を眺めているわ」

佳那子:「そうなんですか。悠真さんは首女中が好きなんですね」

洋美:「菊池先生、佳那子ったら」

菊池:「また、ボーット余所見してるの?」

洋美:「佳那子、菊池先生に恋心を抱いているんです」

菊池:「あら?そぉなの?小湊さん、練習終わったらプールに残って居なさい。解ったわね」

そして練習終了後、菊池は佳那子に話しかける。

菊池:「小湊さん、全く直そうとしないのね、いい加減しないと駄目よ」

佳那子:「菊池先生にメロメロなんです、私。恋の告白したいぐらいです」

菊池:「私に告白したいの?もしそうだとしたら同性の女子生徒に告白されるのは快感だわ」

佳那子:「は、はい。告白したいです。先生と二人きりで校内デート出来たら・・・」

菊池:「校内で!?だとしたら、どこで?」

佳那子:「プールか体育館の倉庫でどうかと。菊池先生のスクール水着姿に体操着姿、校外では絶対見れないと思うので」

菊池:「あははははっ、私のスクール水着姿に体操着姿?やだぁ小湊さんったら。でも今の小湊さんを見ていると何故かしら中一時代の私と重ねてしまう事が多いのよ。やっぱり」

佳那子:「そうなんですか?出来たら中等部時代の菊池先生、見てみたいです」

菊池:「私が中等部時代の髪型は今の小湊さんと同じだったわ。でも悠真が誘拐され行方不明になった後は今と同じショートヘアーにしたのよ」

佳那子:「私は、お下げ頭ですけど、菊池先生のお下げ頭、見てみたいです」

菊池:「そう?今はショートヘアーだけど伸ばして小湊さんと同じ、お下げ頭にしてみるわ、悠真が帰って来たから。ところで私って怖い?厳しい?」

佳那子:「やっぱり、そうなりますね、でも菊池先生は憎めないです。笑うところはお茶目でキュートですし、怒るところは何故かしらビューティー&セクシーで痺れて魅せられてしまいます。この感覚、病み付きになりそうで怖いです。私、菊池先生の中では溺れているじゃないかと」

菊池:「あははははっ。んもう、やだぁわ、小湊さん面白いわね。私の虜なのね、あなたといるとストレスが払拭されていきそうな気がするわ」

佳那子:「そうですか?菊池先生は魅力的な要素が多いです」

菊池:「そうなの?私のどれが一番魅力的なの?」

佳那子:「強いて言うとしたら、平手打ちでしょうか・・・あっ嫌な答えだったらごめんなさい」

菊池:「良いのよ、何か嬉しくなって来そう。あっ、これ以上話していると遅くなりそうだから、また話そうね小湊さん」

佳那子:「はい、菊池先生。また話したいです。私だって悠真さんの立直り出来る範囲内で考えていきたいと思っています」

佳那子は菊池との会話を終え更衣室で着替えを済ませる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

校舎の屋上で大水と一緒に悠真は南の海を眺めていた。眼下の先に見えるグランドでは陸上部員が走っている。

悠真:「南の海は大きくて広いなぁ」

大水:「悠真は海が広がる南しか見ないのね」

悠真:「山の方の北は見る気にはなれないわ」

大水:「監禁されていた場所の方向かしら?」

悠真:「そうなの。思い出したくないので」

大水:「悠真、ゴールデンウィークはどうするつもり?」

悠真:「まだ考えてないけど見てみたいモノ沢山あってどれを選んだら良いのか解らないの」

大水:「そおよね、水族館でのイルカショーか遊園地のジェットコースターとかだったらどうかしら?」

悠真:「遊園地が良いなあ、実は監禁生活の中でそれ思った事あったわ」

大水:「じゃあ明日の土曜日、由利と三人でどうかしら?今、由利、プールで水泳部を監督しているから帰りにでも話してみようよ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そして下校時、葵奈姉妹、佳那子、真美奈、美幸、美千代達は大水、菊池、悠真に別れを告げてモノレールに乗車する。佳那子が降り、葵奈姉妹はモノレールを下車して自宅へと歩き出す。程なく二人の女子中学生に会う。二人は友美の小学六年生の時の同級生で友美の姉、歩美が通っていた市立中学に通っている。二人は友美に話しかける。

同級生甲:「友美、久しぶり」

同級生乙:「いつも妹さん達と一緒に登下校しているのね」

友美:「そうよ、もう世話と面倒見が大変よ」

同級生甲:「ねぇ話す時間ある?」

友美:「少しならいいよ。洋美、愛美、幸美、お前らは先に帰れ」

友美は三人の妹に先に帰るように促し、同級生ふたりと最寄りの児童公園へ移動しベンチを見つけて座る。

同級生乙:「友美、 首女中の学校生活はどう?」

友美:「妹の愛美と幸美が入って来たよ」

同級生甲:「そおなんだ、妹は三人いるよね」

友美:「今年度から愛美と幸美は一年、洋美は二年、私は三年よ」

同級生乙:「同じ自宅部屋で三人の下級生と毎日、合宿生活しているみたい」

友美:「毎日、叩き起こすのが大変よ」

同級生甲:「寝起きが悪いとなおさらよね」

友美:「そおよ。ところで加代はどうしているのか解らない?」

友美は小学六年生の時のクラスメート七島加代(ななしま かよ)の事をたずねる。

同級生乙:「ああ、加代ね、最近、影が薄くなったみたいだわ」

同級生甲:「加代、男子からいじめられていたね」

友美:「そおよ、そういう経緯があったから私、気になるのよ。いじめていた男子と同じ市立榊台中学へ行ったものだから気掛かりなのよ」

同級生乙:「実は加代、四面楚歌に追い込まれているのよ、肉体的にも精神的にも」

友美:「ちょっと、それ、どういう事なのよ!?」

同級生甲:「登校しても保健室止まりで教室には一歩足りとも入れない有り様のよ」

保健室止まりとはただ事ではない。いじめが手のつけようがないほどエスカレートしては高校受験に支障をきたしかねないからだ。

友美:「ねぇ加代の事どうなってる?小学六年生の時に二つ年上のお兄ちゃんが自殺したのを聞いたわ」

同級生乙:「加代のお母さんは、それから一年足らずの内に失意のうちに死んだらしいの。病死か自殺かは解らないけど」

友美:「加代のお母さん、死んでいたの!?うっそぉ!」

同級生甲:「そうらしいのよ、葬式は行わずだったみたいだったから。ねぇ友美、もし明日約束事の予定ないのなら私達三人で加代の自宅覗いてみない?最近、学校にも姿を見せないから」

友美:「いいわ、覗こう。明日、何時にどこで待ち合わせる?」

同級生乙:「午前9時半から10時の間に私達が卒業した小学校の校門でどう?」

友美:「いいわ」

友美は二人の同級生と別れ自宅へと帰るべく歩き出す。

(加代のお母さん、亡くなられていたなんて信じられない。加代、父子家庭じゃん。お兄ちゃんとお母さん亡くなって)

翌日の5月3日祝日の土曜日、友美は卒業した小学校の校門で二人の同級生と落ち合い加代の自宅へと歩き出す。10数分ぼと歩くと加代の自宅があるかなり古めの長屋の住宅にたどり着く。友美は加代が住んでいる号室の扉をノックする。

「加代!加代!私、友美だけどいてる?返事して」

しかし返事は無い。同級生ふたりが交代交代で扉をノックしても応答は無かった。そこへ近隣の住人らしき中年の女性が三人の声を聞いて話しかけてきた。

中年女性:「七島さんとこの加代ちゃんだね?加代ちゃん、親戚の家々を転々しているらしいわ。聞くところによると」

友美:「えっ!ここには戻って来ないのですか!?」

中年女性:「残念だけど私に解らないの。仮に戻ってくるとしても忘れたころだからね。それどころか消費者金融の債権者らしき人物が来ることが度々あるわ」

同級生甲:「えっ!それって加代のお父さんが借金している事!?」

同級生乙:「返す事、出来なくなって加代を見捨てたのかしら?」

友美:「それじゃ安心して登下校出来そうにないわ。道理でメールが途絶えたのも無理がないわ」

同級生甲:「どうする?これから」

友美:「とりあえず適当に歩こう。その前に加代あての置き手紙を付けて置こう」

加代の号室の扉に加代あての手紙を張り付け友美と二人の同級生は近隣住人の中年女性と別れ歩き始めた。

(加代、何処にいるの?)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

洋美、愛美、幸美は友美と同じ頃に自宅を出た。目的は悠斗に会う事だが家族には小学校時代の同級生に会うと誤魔化しているのだった。約束の午前10時に待ち合わせの場所駅で悠斗と合流する。

洋美:「おはようございます悠斗さん」

愛美:「おはよう悠斗さん」

幸美:「おはよう悠斗さん。今日もバイキングに・・・」

洋美:「こらぁ!幸美!いい加減しなさい」

悠斗:「おはよう洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん。電話で話したかと思うけど今日は見せたいものがあって」

愛美:「悠斗さんの卒園&卒業アルバムですね」

悠斗:「そうなんだ、何処で見ようか迷うんだけど」

幸美:「バイキングのお店か、またレンタカー借りて車で出かけるのはどうですか?」

洋美:「こらぁ!いい加減にしろと言ってるのに解らないの!?」

悠斗:「気持ちは解らないし訳じゃないけどゴールデンウィークは混雑するからさ。レンタカーだって借りるのは厳しいかも知れないし初めて愛美、幸美と出会った時に入ったケーキバイキングの店はどう?あの時は洋美ちゃんはいてなかったよね」

洋美:「それにしよう、愛美と幸美、何を食べていたか気になるし」

四人は駅の近くのケーキバイキングの店に入る事にした。店内はゴールデンウィークの為なのか客は多かったが待ち時間はなく入る事が出来た。四人は90分で申し込みテーブル席に着く。早速愛美と幸美は好みのケーキを取り皿に次々と盛りテーブル席で頬張る。

洋美:「愛美、幸美、もう行儀悪いわね!恥ずかしいわ!」

悠斗:「愛美ちゃんと幸美ちゃんはケーキ、スイーツの類が好きなんだ」

洋美:「私はラーメン系、パスタ系が好きです。ケーキ、スイーツも好きですけど、愛美、幸美ほどではないですね」

入店して40分ぐらいで四人は満腹感を味わった。悠斗はリュックサックから持ってきた卒園アルバムを洋美、愛美、幸美に見せた。

愛美:「あっ、これもしかして菊池先生じゃない?」

幸美:「そうみたいだわ」

洋美:「そうだとしたら悠斗さん、菊池先生と同じ幼稚園の同じ組だったんじゃない?」

悠斗:「年長組で同じだったからね」

愛美:「ねぇ菊池先生と悠斗さんが写っている写真、スマホに撮っておこうよ」

洋美と愛美は自身のスマホで卒園アルバムの悠斗と菊池が写っている写真を写した。

洋美:「ありがとう悠斗さん、面白い写真だったわ」

愛美:「この事、菊池先生が知ったらどうなるのかなぁ?」

悠斗:「恥ずかしがったりして」

幸美:「そうかな?ところで小学校から上の卒業アルバムは持って来てますか?」

悠斗:「はい、ちょっと待って」

悠斗は卒園アルバムをリュックサックにしまい小学校、中学校、高校の卒業アルバムを取り出し三姉妹に見せた。最初に小学校の卒業アルバムから広げる。

愛美:「まずは小学校時代からみてみよう」

幸美:「そおだね」

洋美:「私達が通っていた学校とは違いほとんど無いみたいだわ」

悠斗:「洋美ちゃん達が通っていた小学校は市立小だったね。首女小ではなく」

洋美:「私達が通っている学校は中等部、高等部、大学部はあるけど初等部はないの。でも最近、初等部を併設するかどうかで話が立ち上がっている噂を耳にしたことあるわ」

悠斗:「そうなんだ、もしできたら共学か女の子だけの女子小にするか議論がわきそうだな。女の子だけとなったら、小中高一貫12年制の女子校と言う事になるよね」

やがて見終わると中学校の卒業アルバムを広げた。

幸美:「悠斗さんの中学時代はどうだったのかな?」

愛美:「部活はどうだったのかな?」

悠斗:「ソフトテニス部だったよ」

洋美:「そおなんですか」

幸美:「悠斗さんが通っていた中学校、普通の市立中学だったんだ」

愛美:「愛美達が通っているような中高一貫じゃないんだ」

洋美:「私達が首女中に行っていなかったら普通の市立中学に通っていたはずよね」

幸美:「悠斗さんの通っていた中学、男女共学だったんだ」

愛美:「制服は決まっていて何種類も無いんだね。愛美達の学校は色んな種類と色んな色の制服があって好きなものを選べるんだよ」

悠斗:「そうなんだ、どんな校風なのか気になりそうだなぁ」

洋美:「気になりますか?」

悠斗:「気になって見たくなりそうだよ」

愛美:「今度は高校の卒業アルバム見てみよう」

洋美、愛美、幸美は悠斗の高校の卒業アルバムを開く。

幸美:「悠斗さんの通っていた高校も男女共学だったんですね」

悠斗:「そうなんだ、でも恋愛は全く上手くいかなかったなぁ」

愛美:「こう見ていると制服を選べるのは首女中と首女高しかないみたいだわ」

四人が話し合っているうちに残り時間が10分を切った。洋美は悠斗に意見を言う。

「あと10分も無いので、そろそろ出ましょう。次はどうします?悠斗さん」

「そうだなモノレールに乗って終点駅まで旅するのは駄目?」

「良いですよ、首女中見てみましょう」

悠斗は持ってきたアルバムをリュックサックに収納し四人は店を出る準備に入る。勘定を済ませ店を出るとモノレールに乗った。四人を乗せたモノレールは首女中と首女高の最寄り駅へと出発した。時計は正午を指そうとしていた。

☆☆☆☆☆☆☆☆

加代の自宅である長屋を後にした友美と二人の同級生は歩きながら会話をしていた。気が付くとモノレールの駅前商店街に着いていた。

同級生甲:「あれ、モノレールの駅に来ちゃったわ」

同級生乙:「ほんとだ。友美、これに乗って通学してるの?」

友美:「そおよ、三人の妹と一緒に通学してるのよ」

同級生甲:「モノレールに乗っての通学、何か楽しそうなイメージがありそうだわ」

友美:「いっぺん首女中を見てみる?校内には入れないけど」

同級生乙:「外から見るだけでも良いよ。場所さえ解れば」

同級生甲:「来年は私達、高校受験だから志望校の選択を考えないといけないから」

三人はモノレールに乗って首女を見る事にした。モノレールの終点駅に到着すると三人は下車して改札口を通り首女中の校門に近づいた。校門は閉鎖されていて中には入る事が出来ない。友美は二人の同級生と共に学校の周辺を巡り説明する。

友美:「あの建物は室内プールで50㍍競泳プールと飛込みプール、今は閉じているけど夏場は屋根が開くのよ」

同級生甲:「へぇ〜そおなんだ」

同級生乙:「私達の中学校とは全然ちがうね。プラネタリウムみたいなのがあるけど」

友美:「そうよ、プラネタリウムよ」

一方、洋美、愛美、幸美、悠斗の四人もようやく首女中と首女高の最寄り駅に到着した。四人は改札を通り抜けた。

悠斗:「この近くに洋美ちゃん達が通っている首女中があるんだ」

洋美:「そうですよ。私達の学校見てみます?」

悠斗:「みてみよう」

四人は首女中へと歩き始める。

愛美:「悠斗さんは友達とは、どんな会話をするのですか?」

悠斗:「仕事の事、車の事が多いね」

幸美:「へぇ、そおなんですか」

悠斗:「でも、時たま、せい風俗に関する話題があるけど、うんざりだなぁ」

洋美:「そういうのって18禁の世界ですね」

悠斗:「そおなんだ。18禁となると性交がらみの事がほとんどだからね。そういうのは洋美ちゃん達は関わりたくはないよね。間違っても」

洋美:「そういうネタ、嫌がおうでも上級生や、お姉ちゃんから聞かされる事あります。解らないし時は教えてくれますけどね」

悠斗:「お姉ちゃんがいるんだね。何人姉妹なのかな?」

洋美:「私は、お姉ちゃんが二人、妹が愛美と幸美の二人、五人姉妹の三女です。あと小学五年生の弟が一人です」

悠斗:「六人姉弟なんだ。俺は一人っ子だよ」

洋美:「一番上の、お姉ちゃんが許嫁と同棲生活していて子どもがいるんです。私達にとっては姪なんです。あと半年足らずで二人目の姪が産まれる予定です」

悠斗:「それで性交、妊娠、出産に関して知識があるんだ」

洋美:「そういう事です。二番目のお姉ちゃんは私達と同じ首女中の三年生で名前は友美なんです。友美姉ちゃんは小学六年生の時の同級生と出かけていますけどね」

やがて首女中と首女高の校門が見えてきた。四人は会話をしながら校門へと歩いて行く。

愛美:「悠斗さんは誰かと性交出来たらなんて考えたりしませんか?」

悠斗:「きわどい質問だなあ、間違っても洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃんと、はマズイし・・・言うに言えないよ」

幸美:「あっ悠斗さんたら困惑顔の赤面顔しちゃって、本音は幸美達としたいんじゃありません?願いをかなえてくれたら」

悠斗:「願いって何だよ?」

幸美:「幸美を悠斗さんの妹にしてほしいんです」

愛美:「愛美も悠斗さんの妹になりたいんです」

悠斗:「と言う事は、俺、洋美と結婚しろと?」

洋美:「私も悠斗さんの妹になりたいの。結婚は嫌」

悠斗:「えっ、じゃあ、どうすれば」

幸美:「まずは悠斗さんの事を『ゆうお兄ちゃん』と呼ばせてほしいです。幸美を呼ぶ時は、ちゃん付けせずに幸美で良いので」

愛美:「愛美も同じ『ゆうお兄ちゃん』と呼ばせてほしい。ちゃん付けは無しでいいので」

洋美:「私だって『ゆうにい』と呼ばせてほしい。ちゃん付けは無しでいいので」

悠斗:「解ったよ、洋美、愛美、幸美、今日から俺の妹だよ。これで兄妹としてのつながりを持てたみたいだよ」

幸美:「わーい!ゆうお兄ちゃん、ありがとう」

愛美:「ゆうお兄ちゃん、ありがとう」

洋美:「ゆうにい、これから私達、あなたの妹よ」

欣喜雀躍した三姉妹だったが何かの殺気を感じた。誰かが見据えているような。どうしてと思いつつ振り向くと、四人の眼前に友美が閻魔顔で仁王立ちしているのだった。友美の後ろに同級生が二人ほどいる。

友美:「洋美、愛美、幸美、お前ら、何やっているんだ!!」

洋美:「とっ、友美姉ちゃん」

愛美:「友美姉ちゃん、来ていたの?」

幸美:「どうして、ここに?」

友美は洋美、愛美、幸美に平手打ちを食らわす。

パーン!パーン!パーン!

愛美と幸美は昏倒し泣きじゃくる。洋美は左手で左の頬を押さえ悠斗にしがみ付こうとする。そんな洋美をはねのけ友美は悠斗に食ってかかろうとするが二人の同級生に横槍をさされる。

同級生甲:「友美、駄目よ!」

同級生乙:「気持ちは解らない訳じゃないけど駄目よ」

友美:「どういう事なの!?正直に話してもらうわよ!」


☆☆☆☆☆☆第二組曲、求愛、終わり☆☆☆☆☆☆

to be continue第三組曲 追求












































































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