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13.確信犯の従者

 それからは何事もなくお茶会は進んでいった。



 そして話は、殿下の婚約者候補に残った理由の話になる。



「そういえば、エドワード殿下は何を基準にお決めになったのでしょうね?」



 そうシャーロットが言えば、オリアーナ様は眉を顰めた。



「シャーロット様、無粋ですわ。 ……まあ、私も気にならなくはないですけれど」

「オリアーナ様もそう思われますでしょう?」



(まあ、それは私も気になるといえばなるわね)



 そんなことを考えながら三杯目のアールグレイティーに手をつけていると、シャーロットはそうだ、と私の方を向いて言った。



「ジュリア様は殿下と幼馴染ですよね? 何か聞いていらっしゃらないですか?」

「え?」



 そう話が飛んできたから、私は少し息を吐いて言った。



「まさか、知らないわ。 殿下とは幼馴染といえど、そう言った話は絶対にしないわよ」



 そうでなかったから不公平でしょう、と私は付け加える。

 シャーロットは「まあ、そうですわよねえ……」とため息を吐いて言った。



「……何度も言うようですけれど、私達はそろそろ結婚しなければ、完全に行き遅れになりますわよね。

 まあ、一つ言えるのは、殿下の婚約者候補から外れた御令嬢の中には、既に御婚約者がいらっしゃる方が多いそうですわ。

 はあ、羨ましい」



 そう頰に手を当てて言うシャーロットに、エイミー様が同意する。



「そう、ですよね……。 私も、本当に思っている方と両想いになって、幸せな結婚をしたいです」



 そう言ったエイミー様の表情は少し悲しそうで。



(……エドのことを、思っているのかしら)



 でも、その割に何故悲しそうなのか。 私には分からなかったが、そんなエイミー様の言葉に二人は同意して頷いた。

 私も紅茶に映った自分の姿を見て思う。




(……私達がそう願っていても、幸せな結婚が出来るとは限らない)



 ここにいる御令嬢の方々は少なくとも、各家の名を背負ってこの場にいるのだ。

 例え私達が“幸せな結婚”を望んだとしても、早々上手くはいかない。

 本当にその後の結婚生活で仲睦まじく暮らした、なんて聞くのはこの国ではごく一握りだけ。



(……私は、どんな結婚をするんだろう)




 今はレオと恋人同士、ということになっているけれど……





「そういえば、レオン様とお付き合いなさっているジュリア様は、お二人で何処かお出掛けされたりするのですか?」

「へ?」




 思いがけない言葉に、思わず変な声で返答してしまう。 それに対して、身を乗り出すシャーロットと、何故かエイミー様までこの話題に食いついてきた。




「是非ご参考までに教えて下さいませ!」

「告白はどちらからなさったのですか?」

「え!? え、ええと……」



(そ、そんなにキラキラした目で見つめられても……!)



 そんな裏設定考えたことなかったわ!

 と、内心冷や汗で一杯になっていると、不意に誰かに腕を取られた。

 驚いて上を見上げれば、そこにいたのはレオだった。



「れ、レオ!」

「すみません、何故だかお困りのご様子でしたから、つい。

 で、何の話をされていたのですか?」



(あ、貴方が来てしまうと悪目立ちするでしょう……!)


 と違う意味で冷や汗をかきはじめた私は、キョロキョロと辺りを見回したが、皆話に夢中で気が付いていない。

 そのことにホッとしつつ、爽やかな笑みを浮かべてお嬢様方に聞く従者に、シャーロットとエイミー様は気恥ずかしそうに答える。



「その……、お二人がお付き合いされるまでの経緯を知りたかったもので」

「……知りたいですか?」

「「「!」」」



 少し雰囲気が変わるレオの姿に、私達は思わず息を飲む。

 すると、レオはスルッと私の髪を手に取り……、いつかされたようにその髪に口付けを落とす。

 完全にフリーズする私とお二人に対し、レオは人差し指を口に当てて言った。




「それは、お嬢様と私だけの秘密です」




 あまりのその妖艶な表情に、いつの間にか私達の話を聞いていたお嬢様方の数名が悲鳴をあげる。



(〜〜〜ちょ、ちょっとーー!!)



 私までこれまた違う意味で悲鳴をあげそうになったところで、レオがチラッと私を見て……、ニヤッと笑ったのを私がは見逃さなかった。




(……間違いなく確信犯ね!!)




 そうやって、いたいけな少女の心を鷲掴みにしてどうするの!

 しかもお相手は殿下の婚約者候補なのよ!!



 と内心ツッコミを入れたところで、レオは少しだけ満足そうに、「失礼致します」と礼をして行ってしまう。




(……いや、本当に貴方は何がしたいのよ)



 私を助けて来たようには思えないのだけど。

 と、その後ろ姿に向かって、何だか複雑な気持ちになる。





 そしてその後、シャーロットの話のネタの餌食に暫くされたことは言うまでもない。





 ☆




「〜〜〜ちょっと!」

「? 何ですか?」



 パーティーが終わりレオと合流した私は、レオを呼び止め、ひそひそ声で怒る。



「さっきのあれは何!? 今日は変な真似はしないでとあれほど言ったでしょう……!」

「私は、お嬢様をお守りするよう殿下に命令されておりますので」

「っ、貴方今堂々と開き直ったわね……!?」



 なんて私とレオの攻防戦が繰り広げられていると、不意に後ろから声をかけられる。



「ジュリア様」

「え?」



 クルッと振り返れば、そこにいたのはオリアーナ様だった。

 気が付けば、他の御令嬢の方々はもう先に帰ったようで、今この場にいるのは私と彼女、それから共にしている従者だけだった。

 そしてオリアーナ様は口を開く。



「お話したいことがあって。 少し、お時間を頂けるかしら?」

「私に?」

「えぇ」



 レオは横で私に目で訴えてくる。

 私は「大丈夫よ」とレオが少しだけ警戒したのが分かりそれを制すと、オリアーナ様に言った。



「ここでも良いかしら?」

「えぇ。 だけれど、出来れば二人だけでお話がしたいの。 レオン様、それから私の従者には少し離れた場所でお話出来るかしら?」

「……というわけだから、レオ。 少し下がっていてもらえる?」



 レオは渋々私の言葉に「畏まりました」と会釈して少し離れた場所に向かう。 それでも、刺客が来た時にいざ守れるように、出来る限り近居場所で立ち止まる。

 それにオリアーナ様の従者さん……、レオより少し年上だろうか、の方もレオの元へ行った。

 それを見て、オリアーナ様はクスッと笑う。



「嬉しそうで何よりだわ」

「え?」


 オリアーナ様の言葉に私は首を傾げれば、オリアーナ様はふふっと笑って言った。



「あら、もしかして知らないかしら?

 私の従者である彼は、貴女の従者……、レオン様と同じ学校に通った先輩後輩同士なのよ」

「! そうなのね」



 私の言葉にオリアーナ様は頷く。

 そして、ふっと笑みが消えたと思ったら、真剣な顔をして面と向かって問われる。






「貴女、レオン様と本当に恋仲なの?」



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