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11.波乱の茶会の幕開け

 そして、エイミー様のお茶会の日を迎えた。


 移動の馬車の中、私はレオと談笑する。



「それにしてもレオ、貴方凄いわね。

 全部目を通したけど、よくあれだけの情報をこの短期間で調べてくれたわ」

「お嬢様のお役に立てたようで何よりです。

 全て覚えられましたか?」

「えぇ、お陰様で。 ばっちりよ」




 私はふふっと微笑み、窓の外に目を向けた。




「……エドも心配していた通り、今日のお茶会で何が起こるかわからない。

 レオ、宜しくね」

「はい、お任せを」



 そう言ったレオは、もう一言付け加える。



「ジュリア様も、呉々も無茶な真似はされませんよう」

「んもう、それ耳タコよ! 何回言えば気がすむの!」

「元はと言えば貴女がいつも言うことを聞かないから悪いんです」

「……」




 それを言われたらぐうの音も出ないわよ。

 私は窓の外に目を向け、レオから顔を背けた。

 そして、レオが作成したエイミー様の情報の一部を思い出す。




 エイミー・シーラン様の家は私の家からは少し離れた場所に位置する。

 現当主はエイミー様のお父様ではなく、お父様の弟、つまり叔父に当たる方が当主だそうだ。

 それに、これは情報だけでなく噂にも聞いたことがあるが、その叔父様は短気で我儘し放題だという、評判が最悪なことでも裏では有名な話である。



(そう考えると、私の暗殺を企てる一派に加担しているかもしれないわね)



 エイミー様には悪いけれど、用心しないと。




「……シーラン侯爵、今日のお茶会にいらっしゃるかしら」

「……その可能性は十分にありますね。

 用心はするべきかと」

「えぇ。 元よりそのつもりよ」



(そのために一応、仕込みの護身用の剣も持って来たんだもの)



 ……ってこれでは本当にシーラン侯爵家が危ないみたいね。

 そう言う偏見は良くないわよね。



(……今日のお茶会には他の御令嬢方もいらっしゃるし……、外からの侵入者も流石に居ないわよね)




 ふぅっと息を吐き、深く腰掛ける。

 そんな私を、レオはじっと見ていたのだった。





 ☆




「皆様、ようこそ。 お忙しい中お集まり下さり有難うございます」





 そうエイミー様の高い声が、薔薇園の中に心地よく響く。


 シーラン侯爵邸に着き招待された場所は、エイミー様が一番好きな場所だという薔薇園だった。

 


(流石はシーラン侯爵のお家ね。 素敵だわ)



 そんなことを考えながら、エイミー様の御挨拶を皆で聞いていると、何人もの執事さんやメイドさん達が私達の周りに現れた。

 そして、エイミー様は微笑みながら言う。




「今日のお茶会には、エドワード殿下にも御協力頂いて警護して頂いていますので、何かありましたら遠慮なく仰って下さいね」




 その言葉に皆が頷き、それからエイミー様が席に着いたところで紅茶が運ばれてくる。




 今日の円形のテーブルに、3人掛けが二つ、4人掛けが一つ設けられている。

 私は4人掛けの席にエイミー様、オリアーナ様、そして私の友達のシャーロットと座っている。

 早速、口を開いたのはシャーロットだった。



「エイミー様、本日はお招き頂き有難うございます」

「いえいえ。

 婚約者候補に残った者同士、仲良くしていけたらと思い、この場を設けさせて頂きました」



 そう朗らかに笑うエイミー様に、他の席で聞いていた御令嬢の皆様から感嘆のため息が漏れる。




(本当に、エイミー様は素敵な方ね。 シーラン侯爵の評判は宜しくなくても、エイミー様の評判は高いのも頷けるわ)



「……あの、ジュリア様?」

「え? ……あ、あぁごめんなさい。 エイミー様が素敵なものでつい見惚れていたわ」



 そう私が言えば、エイミー様は顔を真っ赤にして「そ、そんな! ジュリア様の方が素敵です!」とぶんぶんと首を横に振る。

 その光景に、オリアーナ様もシャーロットもクスクスと笑う。

 私も笑いつつ、エイミー様に向けて言った。



「それに、この薔薇園も素敵ね。 ここでお茶を出来るなんて、とても嬉しいわ」



 そう私が言うと、エイミー様は一瞬悲しそうな顔をし……、でもそれはほんの一瞬の出来事で、エイミー様は一言、「有難うございます」と言った。



(……?)



 私はそれが少し気になったけれど、とりあえず出された紅茶を飲もうと口に含もうとしたら、「あ」とエイミー様が慌てたように言う。



「じゅ、ジュリア様。 そのカップ、ひびが入っておりますね……!」

「え? ……あぁ、本当ね。 少しだけのようだから気にしな」

「申し訳ございません……! すぐに新しいのを用意させますね!」



 そうエイミー様が言い、メイドさんを呼ぶ。

 私はされるがまま、新しい紅茶を口に含もうとしたら、不意に声をかけられる。



「お嬢様、何かありましたか?」

「……あら。 レオ」



 私は飲む手をやめ、話しかけて来たレオの方を見て答える。



「いえ、大したことではないから大丈夫よ」

「そうですか」



 そうレオが言い、レオは紅茶をじっと見た後、チラッとエイミー様を見る。

 エイミー様はレオを見てビクッと震えたように見えたけど、レオはすぐに笑顔を浮かべ会釈をした。



「邪魔をしてしまい申し訳ございません。

 失礼致します」



 その笑顔にまたもや他の御令嬢から感嘆の声が漏れる。



(……この笑顔に騙されちゃ駄目ですよー)



 なんて私は白い目を向け、レオの去っていく後ろ姿を見つめる。

 ……それにしても。



(レオ、紅茶を見ていたわね)



 レオはほんの一瞬で、毒があるかないかを見分けることが出来る。

 多分それを見分けに、今こうして突然私達に声をかけて来たのだろう。



(そして、何かを感じ取った)



 そうでなければ、レオは動いたりしない。

 無駄な動きが一切ないのも彼の特技である。




(……後で話を聞かなくてはね)



「……ジュリア様! やはり、レオン様とラブラブなんですね!」

「っ、はい?」



 突然のシャーロットの言葉に、私は動揺する。

 すると、シャーロットは「やっぱり!」ときゃーっと声を上げた。

 私は慌ててその口を封じる。



「しーっ、貴女声が大きいわ。 後、今の何処を見たらラブラブになるのよ?」

「だって! レオン様を先程から見ていたんですけど、ずっとジュリア様を見ていらっしゃるんですもの!」



(それが彼の仕事だからよ)



 なんて言うこともできず、私は「そ、そうかしら?」と惚けてレオを見れば、バチっと目が合う。

 私は咄嗟に目を逸らした。



(……っ、え、え、私どうしてドキドキしてきるのかしら……?)



「〜〜〜はぁー、素晴らしいわ。

 私も早く、私だけの王子様が現れないかしら……」



 なんてため息をついて言うシャーロットに、私は苦笑いして運ばれて来たケーキに口をつける。



(! 美味しい!)






 一瞬で私は、エイミー様のことやレオのことを忘れて、美味しいケーキに舌鼓を打つのだった。




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