剣と魔法の異世界へようこそ! ――神様っぽい存在にもあったしチートも貰って、よくある異世界転生かと思ってました
「遠山聡くんは死亡しました」
はい。知ってます。飛行機事故でまとめて三〇〇人超。
「が、人知の及ばぬ神様の事情で転生が叶います」
それも知ってます、僕が三〇八人目で最後の一人ですから。
「質問はありますか?」
いえ、特にありません。
「まぁ聞かれても君の質問には答えられません」
はい。二百何十人か前の人が聞いてましたし。
「では何か欲しい物とか力などで希望はありますか?」
いえ、とりあえず若死にしなければ良いです。
「君は長寿の予定でしたから、かなりのポイントがありますよ?」
そうなんですか?
「因みに君の寿命は肉体的には八十九歳ですが、その時点で冷凍睡眠に入り一〇〇年後に目覚めて若返りと不老化処置を受け、色々あって六〇〇年以上生きる予定でした。最低でも二〇〇〇ポイントはあります」
はぁ?
「歴代最大値ですね」
歴代って、人知の及ばぬ事情がそんなにあるんですか?
「その質問には答えられません」
だと思いました。
「それではポイントを割り振ってしまいましょう。これが端末です。わからない事があれば言って下さい」
はい。
と言っても三〇〇人超ですからね。
延々一週間近く悩み抜いた人も居たし、先に転生した友達のポイント消費に付き合ったり、よくわからないらしいおじいさんやおばあちゃんの手伝いなんかもしたので、チートやら才能やらの内容は熟知してます。
死んでからここに来て既に二ヶ月くらいこんな事をしているんです。
中には「お任せ」で転生した文字通りの勇者たちも居ましたが、二十人程超優柔不断な人たちが居た事で待たされ続けたのです。
まぁそれは良いです。
もうね、このポイントとか完全にキャラクターメイキングのノリなんですよ。
前世の記憶を保持出来たり、種族や性別はもちろん、生まれ変わってもまた同じ人に出会えるように複数の人が共同で利用する「運命の糸」なんてのまであります。
もちろんポイントが必要です。
まぁそれは良いです。
まぁそれは良いんですよ。
これまで最大値だった人でもせいぜい百数十ポイントでした。
それがなんと二〇〇〇ポイント超です。
転生を手伝った何人かのおじいちゃんおばあちゃんが運命の糸を使い、それ以外を僕に譲渡してくれたおかげで、さらにポイントが増えてます。
問題は運命の糸を使って無いので、先に転生した友達と同じ世界、同じ時代に生まれるのは少々難しいという事。
誰も僕に運命の糸を使ってくれなかったのです。
ポッチです。
傷心です。
対象者が居ないので使えません。
運命の糸は対象者の許可が必要なのです。
ポッチです。
寂しいです。
でも体感時間で何日も泣き暮らしたので諦めはついてます。
無数にある世界の無数の時代の何処かに、魔法がある事や魔物の危険が小さい事だけを条件にして、ランダムで転生します。
これだけで八十ポイントが飛びました。
まぁこんなのは選んだ所でどーなるものでもありませんけどね?
あ、因みにどう見てもラノベやゲームの世界そのままって所もありますよ?
実はそっちの方が必要ポイントは低いです。
かなりの人が選らんでました。
でもどれもこれも死亡フラグ満載ですよ?
僕は絶対嫌ですけどねぇ?
そんな訳でポイント振ります。
基本的な身体能力と潜在値はマックスです。
寿命もマックス。
脳力も上げます。
並列思考とかチートです。
容姿は世界平均。
魔法の才能もマックスです。
もちろん前世の記憶を引き継いで、運が良ければ「ナイセイ」とかにも対応出来るようにしたいです。
当然学問関連の才能も上げますし、剣術や体術なんかの才能、習熟のし易さなんかも上げます。
射撃だって凄いんです。
聖騎士や侍やアサシンや忍者にだってなれるでしょう。
軍隊率いたら横光孔明にだって負けません。
ただし転移ではなく転生なので、あくまでも才能ですから訓練しなければ無意味です。
転生したら頑張りたいと思います。
と、そんな訳でどんな世界でもチートになれるだけのポイントを割り振りました。
まだポイントが余ります。
せっかくなので支配者階級に生まれるようにしましょう。
ただ宮廷闘争とか趣味じゃないので、上の中の下くらいで抑えます。
説明によれば男爵とか子爵級です。
まだ少しポイントが余ります。
家族構成にも振ります
妹です。
断固妹が必要です。
他はランダムで良いです。
相性はバツグンです。
……見落としはありませんね?
では転生しましょう。
「良いですか?」
はい。
「では、良い人生を……」
……と、生まれ変わって最初に前世の記憶に気付いたのは三歳の時でした。
お母様の出産で妹が生まれる事を思い出したのです。
医師が四人と看護師十数名がお母様の部屋に入り、お父様とお兄様方、お姉様方が男と女のどっちが産まれるかを話していたのを聞いて、妹が産まれるんだと言い張ったのです。
もちろん産まれたのは妹でした。
それからは早かったです。
次々に前世の記憶を思い出し、二、三日寝込んでしまいましたけど。
で、です。
僕は生まれながらに子爵位を授かってました。
お世話してくれてるのが乳母とメイドだったので、貴族なんだろうなーとは思ってましたが、生まれながらに子爵位ってところで嫌な予感がしたものです。はい。
お父様は大公様でした。
大公国の大公です。
宮廷闘争必須の生まれです。
大金持ちもいいところです。
そんな訳で完全に思惑が外れ、若干十二歳で爵位だけでなく領地まで貰いました。
ご領主様でございます。
グランツェル大公国大公フェルディナント二世が三男、ヴランドル子爵が僕です。
名前はクラウス。
チートな僕の新しい人生がはじまった……のかな?
もちろん魔法があります。
定番のライトとかファイヤーボールとかもありますよ?
でもそんな物を使うくらいなら電気付けた方が早いし、プラズマライフルでもぶっ放す方が遥かに強力です。
転移魔法もありました。
数十万トン級の宇宙戦艦を最大三十数光年先に転移出来る程の魔法です。
ただし機械がその魔法を使います。
魔法を使う為には才能が必要ですが、前世のスマホくらいの機械と|霧状微細機械<ユーティリティ・フォグ>があれば、何も持たない普通の魔法使いが使える程度の事は誰でも出来るそうです。
肉体強化もナノマシンとサプリで自由自在でした。
遺伝子操作で寿命とか関係ありません。
中央では禁止されていますが、辺境では不老化処置が合法です。
辺境から辺境へと渡り歩けば寿命なんてありません。
電脳技術で記憶を保存したりフルサイボーグ化も可能だし、ある意味不老不死が実現しています。
色んな技能もヴァーチャル学習装置で上級者くらいには即座になれます。
僕が必死で割り振ったチートはチートではありませんでした。
どちくしょう。
あ、そうそう、どうやらこの世界の技術は、電力から重力、重力から魔力、魔力から重力、重力から電力の効果を基本に成立しているらしいです。
魔法の理論は前世のホログラフィック理論に近い感じでした。
魔法も原理さえ解明出来れば、機械に代行させる事が可能だった訳ですね。
もうね、この世界がチートですよ。
仕事とかバーチャルオフィスが基本だし、輸送その他はロボットが代行する。
レプリケーターだってあるんです。
潤沢なエネルギーと調整されたガスさえあれば、分子レベルから料理を合成するくらい朝飯前なのです。
まぁ、レプリケーターとガスだけで朝食を作る場合、一品毎にレプリケーター使って三日くらいかかる上に莫大なエネルギーが必要ですから、朝食くらい自分で作れよな! と。
自分で作るなら、薬液に漬けるだけで自己増殖する遺伝子操作された卵だの魚の切り身だのサーロインだのフィレだのが普通に売ってるし、薬液で増殖するパン生地を千切って調理器に入れたらパンが出来る。
薬液で増殖する研いだお米や味噌や醤油も売っている。
土魔法のかかった六十センチ水槽程の器具があれば、三食分程度の野菜や芋や穀物が一日で採れる。
水と塩と促成栽培される藻の一種がタダ同然で手に入り、餓死する者など殆ど居ません。
生活保護で借りれる個人用養殖キューブに、水と太陽と生ゴミや排泄物だけで件の藻を嫌というほど栽培出来るのです。
もうね、前世の記憶で「ナイセイ」チート乙! とか考えてたあの時の僕氏ね!
なにこの徒労感と絶望感は?
……あと僕自身の事で言えば、銀河帝国グランツェル大公国大公フェルディナント二世が三男、ヴランドル子爵が僕です。
ヴランドルは領地のヴランドル星系の事で、名前はクラウス。
ドイツ語っぽいけどドイツ語じゃありません。
色々入り混じってる感じです。
そうそう、剣術とか体術はかなり重要でした。
船の中や地上戦では、安価な某ゼッフェル粒子的気体爆薬が多用され、超高温になるエネルギー兵器が使えないのです。
当然エネルギー兵器ほど高温にはならない化学反応式の火器が使われたりもしますが、シールドとか結界とか呼ばれる防御魔法の一種である停滞場を使われると、全ての物質の運動を秒速数十メートル以下に制限出来るため、近接戦闘では単分子刃加工された弓矢やパイルバンカーや刀槍等が使われるという、超高度で野蛮な世界になっているのです。
因みに停滞場の中では電子の速度も制限されるため、パワードスーツの動力は化学反応式の高分子ポリマー繊維や内燃機関や蓄熱式蒸気機関だったりします。
スチーム・パンク万歳。
異種族も沢山いますよ?
エルフやドワーフ的な人類起源の種族や完全な異星生物のドラゴンとか竜とか、ナノマシン群体生物や精霊や妖精や魔物もいるそうです。
はい。
そんな訳で、改めまして。
剣と魔法の世界へようこそ。