STORY[Ⅰ]~起~''キズのせ''
「ここ、私の自殺する場所だから、盗らないで?」
裸足の彼女は着ているワンピースを夜風に靡かせていた。外を向いていた体はいつの間にかこちらを向き、何か言いたげな顔をした。
「綺麗ですよね、ここからの眺め、これを見て安らかに死を迎えたいですね...」
「無理よ。このビル40階よ?下に着く前に死んでるんじゃないかしら。きっと目もあいていられないし、人は20mくらいあれば死ねるもの、貴方なら40階からじゃなくても安らかな死を迎えられるわよ?」
彼女は苦笑した。
それから真面目な顔をして涙を流したのだった。
「じゃ私はどうすればいいのですかっっっ!!!」
久しぶりに誰かに怒鳴られた。
きっと、彼女も怒鳴るつもりはなかったのだろう。
思考停止状態なのに火に油を注いでしまった。
それでも、そんな事は私には答えられない。
「悪いけれど、知らないわ?私死ねないもの。」
「そう、ごめんなさい。って言っても私はきっと死ねちゃうから死ぬわ、ありがとうございます、死ぬ前に...えっと、名前、誰でしたっけ?」
流した涙を拭って言った。
「私、名前ないの。死ぬ前に私の名前決めてよ。」
いつの間にか彼女は、扉の前に立っている私の前まで寄ってきていた。
「かわった人。なら、
''キズのせ''さん!」
「はい、依頼はなんでしょうか?」
「依頼?名前を呼んだだけですよ?」
「貴方、死にたくないでしょ?」
「もちろん、それで生きていけるなら、死にたくはない。でも、もう生きれない。死ぬしか方法が見つからない。」
彼女は私の前で立ち竦んで言うのでした。再び涙を流して_。
「そう、貴方は死ねない人の気持ち考えた事もないでしょ?
そりゃ、勿論、普通の人は死ねちゃうから、死ねない人の事など考えた事もないでしょうね、それが普遍的だから。死にたくないなら生きていけるじゃない。方法なんて幾らでもある。生きる方法一緒に見つけましょう。必ずこの''キズのせ''が見つけて差し上げます。」
我ながら悪魔の囁きの様だと思ったが、私こそ彼女を救う言葉が見つからなかった。これが精一杯であった。
「嘘、、。
あの人もそう言った、信じれない。けど、''キズのせ''さん面白いから依頼する。私、櫻葉 柚です。この命お預けします。」
「その命キズのせが承りました。
ほら、いつまでも座ってないで、立って?寒くなってきたわ。」
冬の夜の寒さときたら、景色も楽しめないわ_________。
ここに来る15分前__。
「朔和くん、私とんでもないものを見てしまったよ。」
探偵事務所から双眼鏡を使って外を見ていた。
はじめは幻だと思った。と云うより思いたかった。
「どうしたんですか?ななしのさん、何が見えたんですか?」
名前のない探偵を''ななしの''と呼ぶのであった...。
この度は作品を読んで下さり、誠にありがとうございます。
この作品は連載型にしていきたいと思っているのでこれからもどうぞよろしくお願いします。