飲酒
酒を飲むと、目ばっかりがひどく熱くなる。いつもは空っぽの脳みそが急に重くなって、うなだれる。
酒を飲む前、メニューを眺めたり、店でカゴに缶をいくつか入れたり、つまみを用意しているときは、なんだかワクワクするのに、胃に収まってしまうとぼうっとするだけで楽しいことなんて何もない。いつもそうだってことと、実はそんなに酒が好きじゃないってことを、いつも飲み終わったころに思い出す。カラフルな液体に溶かされた微量の毒で脳を麻痺させても、嫌なことは忘れられないし、なくならない。アルコールは苦いし。今もまだ、オレンジジュースとかホットミルクの方が好きだし。
ギュッと喉が締まって、眼球から熱がボロボロ零れ落ちる。
本当は、アルコールがほしいんじゃない。額に当ててくれる冷たい手とか、飲み過ぎだよ、と心配する声とか、冬の冷えた布団の中で感じるべつの体温とか、本当は、そういうものがほしいのに。あいとか、そういうものが。
酒精に思考を溶かされた夢の中でそんな愛の幻覚ばかり見てしまう。