表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/50

42

投票時間より少し早く降りて行くと、みんな、投票の椅子へと座って待っていた。

と言っても美奈は来ていない。

美奈が時間ぎりぎりに来て椅子へと腰かけるのを見る健吾などの視線はまるで美奈を貫くような、それは鋭く強いものだった。

美奈が座ったのを見て、黙っていた賢治が重い口を開いた。

「…いろいろあって、オレも考えた。美奈ちゃんが真霊能者だと信じていたが、もしかしたらという気持ちも、光の話を聞いて湧いて来たんだ。だから、今はまだ確定はしない。だが、さっき光自身も言っていたのように、推測でしかない。真霊能の目から見ても、役職を匂わせた孝浩のことは、次の日対抗して来るかもしれないと警戒するだろうから、美奈ちゃんは間違ってはいないと思う。だが、念のためだ。今日は薫が占ってくれるというから、薫に任せよう。で、学は?どうする?」

学は、真剣な顔で、頷いた。

「オレは、やはり光を占う。」それを聞いた光が学をチラと見て、賢治は片方の眉を上げた。学は続けた。「光は頭がいい。さっきの美奈ちゃんのことにしても、上手く話を擦り換えられたような気がしてならないんだ。そう考えると、白いとか言われている健吾も光に乗せられやすいから、怪しい。光を占ったら、健吾の色も見えるような気がして来た。」

まだ、薫は学に話をつけていないようだ。

敦はそう思って光を見たが、光は、何も言わない。しかし、健吾が言った。

「オレが?どうしてオレが怪しいんだ。光の意見がもっともだと思ったからもっともだと言ったら、それが怪しいって言うのか。」

学は、容赦なく頷いた。

「占っていないヤツはみんな怪しいんだ。どんな繋がりかしっかり見て判断していく。健吾のことだって行動は白いかもしれないが、人狼がそんな風に演じてる可能性だってあるんだ。オレは共有以外は信じていない。自分で占って白が出たら、そいつも信じるけどな。」

自分も同じような考えなだけに、健吾は黙った。賢治は、それをメモに取りながら頷いた。

「分かった。じゃあ、今日の吊りの事だが、どうする?薫はどう思う?」

薫は、いつものようにゆっくりと首を傾げた。

「さあなあ。僕だって自分の黒が居たら吊対象にしてほしいって言うところだけど、まだ黒、見つけられてないからさあ。学はどう?学はそうは思ってないみたいだけど、僕は学が真占い師だと思ってるし、学のいいようにしてくれたらいいよ。僕が信じられるのは、今賢治と学と、白が出た留美ちゃんだけだからさあ。」

美奈が、眉を寄せるのが見えた。敦は、自分が占われたらどうするんだと思っているのだろうな、と思ってそれを見ていた。美奈は、正体が人狼にバレているなどと思いもしないのだろう。

しかし、学は美奈ではなく留美の方を見ていた。

「いや…オレは、すまないが薫が昨日呪殺していると思えないんだ。今も言ったように、自分で占わないと分からないという気持ちで居る。それで、狐はまだ、オレ目線じゃ一匹残っていて、それを何とかしたいと思ってるんだ。最初疑ってたのは美奈ちゃん、真理、貴子、留美、佳代子だった。だが佳代子は吊られたし真理は襲撃された。オレ目線占い騙りの美津子さんが呪殺で狐なのに、美奈ちゃんまで霊能で出て来るのは考えられないから美奈ちゃんは違う。佳代子が狐だったならとも思うが、そんな楽観的には考えられない。だから、オレが疑ってるのは、貴子と、留美だ。」

すると、縮こまっていた留美が、目の色を変えた。

「わ、私っ?!佳代子ばかりか、私までこじつけて吊ってしまうつもりで居るの?!さてはあなたが人狼なんでしょう、学!美津子さんが呪殺なんて嘘だわ!美津子さんの方が襲撃で死んだのよ!きっとそうよ!」

賢治が、困惑した表情になる。それはそうだろう、薫の白で、まだ薫の真の可能性があるのに、白を吊っている場合ではないからだ。

「学、それはないだろう。お前のグレーはまだ居るじゃないか、敦も、健吾も、光もだろう。」

学は、賢治を見て首を振った。

「狐だろう?光は占うから今日どっちか分かるし、敦はあまりにもあからさまに美奈ちゃんを庇ってたからあったとしても狼の方だと思うし、健吾はどっちかというと光寄りで今夜光の結果次第で明日判断がつく。そう考えたら、残るのは留美と貴子なんだよ。だったら、貴子でもいいけど。」

貴子が身を固くする。貴子が共有だろうということは人狼ゲームを齧った者になら容易に想像がつくので、恐らくは学にも分かっているだろうに。

敦はそれでも黙っていた。賢治は、貴子と目を合わせたが、貴子が、賢治が何かを言う前に口を開いた。

「わ、私は共有者よ!だから、疑うのはおかしい!」

「馬鹿、貴子!」

賢治は割り込んだが、しかしその言葉は皆に聞こえてしまっていた。貴子は、キッと賢治を見た。

「いつまで黙ってるつもり?噛まれるからって黙っていたけど、今言わないと縄が無駄になってしまうわ。あなたは自分が噛まれるのが嫌だって思っているのでしょうけど、私だって吊られたくないし、噛まれたくもないわ!自分だけ狩人の護衛が来る可能性を残して守ってもらうつもりだったんでしょうけど、ここまで減ったら私だって出るべきよ!」

やはり二人はまだバレていないと思っていたらしい。

確かに、二人出てしまったら狩人が迷って護衛が来ていない可能性がある。狼もどちらかを狙ってチャレンジして来るかもしれない。だが、この人数になると、貴子が噛まれる可能性がぐっと上がって来る。疑われて、吊られる可能性も。

だが、やはり村の大半は思っていたようで、特に驚く様子もなかった。

「だろうな。」光が、皆に代わって口を開いた。「分かるよ見てたら。」

賢治と貴子は、驚いたような顔をした。

「え…分かってたのか?」

賢治が言うのに、敦も困ったように回りを見ながら顔をしかめて頷いた。

「だってさ…お前の感じで分かる。疑われてた美津子さんの占いの指定に入れたり、なのに貴子にだけは言及しなかったり、気遣ってたりするしな。消去法で考えても、留美じゃないなら貴子だろうって感じ。留美は初日の投票対象になってるし、じゃあ貴子かって。」

二人は、困惑したように顔を見合わせている。光が、息をついた。

「じゃあ、まあ共有も出て来たことだし、ここで整理しよう。」と、視線をぐるりと一周させた。「まず、役職を除いた薫のグレー。オレ、敦、健吾。学のグレー、オレ、敦、健吾、留美。この中に、人狼が一人または二人、最悪狐が一人居る。オレが思うに、役職の中に人外が最低でも一人は混じっていると思っているが、どうだ。」

それには、敦が頷いた。

「そうだな。薫と学の二人が占い師だというのは、無理があると思うんだ。オレは自分の白を知っているが、今挙げられた占い師達の両方のグレーを見ると、光も健吾も白く見えるんだよな。とはいえ、学がこの二人が繋がってるって言うし、もしかしてこの二人が、とも思うが…。」

それには、光が首を振った。

「どうやったら健吾とオレが繋がるのかこじつけてるようにしか思えないが、そう考えるとおかしいぞ。お前が言うようにオレ達が人狼だったら、狐が占い師に居ることになる。そうなると、占い師に狐が二人ということになるぞ?美津子さんは呪殺なんだろう?おかしくないか。」と、学を見た。「どうなんだ、学?薫が偽だとしたら、狐か?」

学は、それには顔をしかめた。

「…分からない。美奈ちゃんのことも信用していないが、美津子さんが狐だった以上、初日からあの突き放し方は異常だ。だから、狐ではないと思う。だったら薫がとなるが、オレとしては騙りだったとしたら薫は狂人か人狼じゃないかと思う。留美は適当に打った白か、それとも囲ったのかだろうと。真だったら、もうオレ目線狐は居ないから美奈ちゃんが真か狂人じゃないかなと。で、人狼は光と健吾。」

光は、ため息をついて首を振った。

「少なくともオレは違うな。とは言っても今日占ってもらうんだから明日信じてもらえたらいい。で、今日の吊りだが」と、賢治と貴子を代わる代わる見つめた。「どうするんだ?共有の指定投票か?」

賢治は、下を向いて、自分のノートを見つめた。美奈と学を信じるなら人狼はあと二人、狐も一人残っている可能性がある。薫も信じるなら人狼二人…。

「…楽観的にはなれない。」賢治は、薫を見た。「薫、信じてないわけではないが、孝浩が真霊能者だった可能性を考えると、まだ薫は信じられていない。今日はグレランにするが、留美も含めたグレランだ。つまり、敦、健吾、光、留美。今日の投票先を見て明日からは役職にも手を入れて行く。真占い師でも真霊能でも、しっかり考えて投票してくれ。」

つまり、今日の投票で明日からの吊り先を決めるということだ。村に不利になるような投票をしていないか、それで知ろうとしている。

「光は、占い指定なのにか?」

敦が言うのに、賢治は何度も首を振った。

「分からないからな。吊られたら、学には他を占ってもらう。とにかく、今日はその四人からだ。」

敦は、チラと美奈を見た。

何か、真剣に考えているようだ。

だが、美奈が留美に投票するだろうことは、敦には分かっていた。

今指定された四人の内、敦は美奈の味方のような発言をしているしこれといった理由もないので入れないだろう。健吾は、この四人なら票が集まりづらそうだ。その上、明日以降生き残った健吾になぜ投票したのかと詰められる可能性が高い。光はその身を案じているふりをしていたし不自然な位置。ならば留美が一番入れやすいのだ。

今日も、鉛色のギロチンが窓の外を音を立てて落ちて行く音を聞きながら、敦は番号を確認した。

投票10分前のその儀式の最中、敦はもう、襲撃のことを考えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ