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獣は密かにヒトを喰む  作者:
美奈
15/50

15

1(光)→10(佳代子)

2(美奈)→10(佳代子)

3(学)→12(留美)

4(賢治)→10(佳代子)

6(美津子)→2(美奈)

8(利典)→6(美津子)

9(貴子)→10(佳代子)

10(佳代子)→12(留美)

11(真理)→10(佳代子)

12(留美)→10(佳代子)

13(薫)→10(佳代子)

14(孝浩)→10(佳代子)

15(敦)→10(佳代子)

16(健吾)→10(佳代子)


実際には、番号だけが画面に並んだ状態だった。

そして、その横には、ひと際大きな数字が、「10」と表示されていて、皆がそれを呆然と見上げていると、無機質な女声が言った。

『№10が追放されます。』

「なんで?!なんで私なのよ!」

佳代子の声も同時に叫び、その瞬間、部屋の照明が消えて、真っ暗になった。

「きゃー!!」

美奈は、思わず叫んだ。真っ暗…シャッターが閉じているせいで、全く何も見えない。テレビ画面も、その瞬間消えていた。

「なんだ、停電か?!」

誰かの声が言っている。そんな中、どこかからガシャンという大きな金属が移動するような音と、機械が動いているようなモーターのような音が聴こえて来た。

「なに?!なに?!」暗闇から、佳代子の声が聴こえる。「え…きゃああああああ!!」

「佳代子?!」

賢治の声が聴こえる。だが、佳代子の悲鳴は下の方向へと遠ざかって行き、まるでスイッチが切れるように途切れた。

「どうしたのよ?!何事なのよ!」

美津子の声がする。

「動くな!何が起こってるのか分からないんだ、危ないぞ!」

光の声が鋭く言う。美奈は、じっとただ体を固くして椅子に座っていた。すると、また急にパっと照明が復活し、テレビ画面も、あの投票結果のままで復活して何事もなかったかのように表示した。

『№10は、追放されました。夜時間に備えてください。』

女声が無表情な声で言い、美奈はハッとして佳代子の座っていた10番の椅子の方を見た。

そこには、佳代子の姿どころか、椅子すらなかった。

まるで、始めからそこには無かったかのように、きれいさっぱり消えていたのだ。

「きゃあああ!」

隣りの、貴子が声を上げた。反対側の隣の真理も、顔色が土のようで今にも倒れそうな風情だ。

あまりのことに、美奈も声を失って口を手で押さえて絶句して震えていると、利典が皆と同じように青い顔をしながらも、立ち上がって10の椅子があった場所へと行き、床を調べた。

「…切れ込みがあるな。きっと、椅子ごと下へ持って行かれたんだろう。」

賢治が、震える声で、それでもしっかりしようとしているのか大き目の声で言った。

「それは…つまり、地下室があるってことか?そこに、このゲームを主催した奴らが居て、吊った連中はそこで閉じ込められてるって…?」

利典は、賢治を見て小さく首を振った。

「分からん。オレだって、想像するしかないんだ。だが状況から、声は下へ向かってるようだったし、機械が動くような音もした。オレ達が座ってる、この椅子に仕掛けがあって連れて行かれたって考える方が妥当だろう。」

美津子が、少し顔色を戻して、言った。

「じゃあ…吊られても、どこかに閉じ込められてるだけなのね?地下室かどっかに、ゲームが終わるまで置いとかれるだけなんだわ。」

美奈は、それを想像した。確かに、そうかもしれない。だったら、吊られるということは、それほど怖いことではないのかもしれない。むしろ、襲撃とか、呪殺の方が、もしかして梨奈や典子のような事になる可能性があるということなのかもしれない。

しかし、まるで美奈のそんな考えが聴こえていたかのように、光が美津子の方を見て首を振った。

「どうなってるのかなんか分からないぞ。吊られた方がいいとか考えて安易に吊られようなんて思わないことだ。村人なら生き残ることを考えてくれ。負け陣営になったら、どうなるのかも分からないんだぞ。ああもあっさり、典子と梨奈を殺した相手だ。今頃佳代子だってどうなってるのか…。」

美津子は、押し黙った。美奈も、身震いした。光の言う通りだ。典子や梨奈は、自分がどうなったのか分かる暇もないほど一瞬で死んだ。だが、吊られると少なくとも佳代子のように未知の闇へと引きずり込まれて行く恐怖と戦わなければならない。そして、あちらでさらなる恐怖に怯えるのかもしれない…。

賢治が、なんとか自分を落ち着かせてから、言った。

「そう…光の、言う通りだ。何が起こるか分からないんだから、村人は絶対に勝つことを考えないと。負け陣営になったら、生き残ってたってどうなるのか分からないんだから。」

賢治の言葉は、他の者達の心にも浸透したようだ。皆が息を飲んで、静かに頷いたからだ。

美奈は、ドキドキと拍動する胸を押さえながら、これから自分がどうなってしまうのだろうと、改めて考えた。狐という立場で、生き残るのは難しい。同陣営の美津子は、完全に美奈を切っている。今の投票でも、他が佳代子に入れる中たった一人美奈に入れていた。そうなると、美津子と徹底的に戦って、全員の判断を狂わせるしかない。そのためには、美津子を破綻させて、呪殺で狐だと証明させて、対抗している美奈の疑惑を完全に払拭させるしかないのだ。

美奈は、それが出来るかどうか案じて、更に胸が痛いほどドキドキしたが、それでもやるしかないのもまた分かっていた。美津子を呪殺させ、自分は生き残る。恐らく美津子が、同じように美奈をスケープゴートに使おうと思っているように…。

光が、パンと机を叩いて立ち上がった。

「さあ、じゃあこれで終わりだ。ここから逃げることも出来ない以上、ゲームを終わらせるしかない。10時には部屋に入ってなきゃならないんだろう。みんな、キッチンから好きなものを持って、それぞれの部屋へ戻ろう。今日の話し合いのことも、しっかり考え直して明日からの議論に備えてくれ。明日には、霊能だって出て来るだろう。占い結果も出て来る。明日からが本番だ。自分が村人なら、疑われて縄を無駄にしないように、頑張ってくれ。」

それを聞いた皆は、重い体を持ち上げて立ち上がった。賢治は、自分のノートを開いて、光を見た。

「オレは投票結果をメモってから行くよ。共有者同士で話し合いもしたいしすぐに部屋に戻る。」

ぞろぞろと足取りも重くキッチンの方へと向かう皆の中、光は立ち止まって賢治を振り返った。

「ああ。今夜は何も起こらなければいいが…狩人には頑張ってもらうよりないな。」

賢治はそれを聞いて、聞きたくなかったことらしく、一気に暗い顔になって息をついた。

「そうだな。襲撃がどんなものなのか、知らない方がいいなんてことになりたくないな。」

美奈はそれを、背中で聞いた。そう、村人には今夜、襲撃があるのだ。狩人は共有者辺りを守るのではないだろうか。しかし狩人自身と、素村は守られることはない。恐らく今日は、狼も数を減らしにかかるだろうから、守られていないだろう所を狙って来るだろう。今日COしていない者達の中で村人達は、今夜自分が襲撃されるのではと恐れていなくてはならないのだ。

美奈は、自分が妖狐だという事実を改めて思った。そういう村人の気持ちを考えて、そのように行動しなければならない。自分は噛まれることはないが、その事実を知られてはならない…。

心の中でそう思いながら、こちらを向いて自分を待ってくれているらしい貴子と真理の所へと、足を進めたのだった。

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