第9話 デーン村の戦い
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森を抜けたすぐのところに、岩場の影になっている場所を見つけた。
風も防げ、野営地としては良さそうだった。
まず皆で分担して、枯れ枝を拾ってきて、火を起こす。火打ち石を使うこともなく、テクラの魔法で簡単に焚き火が完成した。
その周りに手頃な大きさの石を拾ってきてイスがわりに座り、ひと段落である。
弓使いのディルクが料理係らしく、先ほど退治した野犬の肉をサイコロ状に切って、鍋にかけた。
ご馳走してくれるというので、買っておいた根菜を少し提供する。
これらも鍋に入り、塩で味付けして完成である。野犬の肉は、赤身が多く、少し筋があったが、それなりに食べれる味であった。
固いパンをかじりながら、一緒に鍋をつついた。
「初めての仕事はどうだい?野犬の襲撃にも落ち着いて対処していたよ。怪我人が出ることもなく本当に助かった」
リーダーのホルガーが話しかけてくる。
「前に住んでいたところでも野犬はたまに出ることがあったので。たまたま剣を振ったところに相手が飛び込んできてくれて、助かりました」
そう答える。
「いや、駆け出しのカッパーの冒険者にしては上出来だぜ。このまま小鬼族退治の依頼が完了したら、正式加入でいいんじゃないか?なぁ、ホルガー」
そう言って、ヴォルフラムは俺の背中をバシンと叩いてきた。
「ああ、そうだな。十分な実力だ」
ホルガーは答える。
「なかなかの剣捌きだったが、どこで習ったんだ?弓はどうだ?」
ディルクが聞いてくる。
「我流ですよ。ただ振り回しているだけです。ただ、狩りに出たときには、狼相手にすることもよくあるので、多少慣れているとは思います」
「弓は残念ながら、才能無いみたいで、狩りでは食べていけそうもないので、剣で生きていくことを決意したというわけです」
そう答える。
我ながら、よくスラスラと出まかせができるものだと、逆に感心してしまうが、信頼を得るための必要なウソと割り切ることにした。
「私も賛成よ。ミライとなら上手くやっていけそうな気がするわ」
テクラが同意する。
その答えに対し、ヴォルフラムが微妙な表情を浮かべた。恐らくテクラに好意を寄せているのだろう。仲間としては歓迎するが、恋敵とはなって欲しくないということなのであろう。
こちらにはそんな気は全くないのだが、男女の関係は面倒なので、注意することにする。
さて、テントなどは無いので、火を囲むように横になり、一晩を明かすことになる。
順番に火の番と周囲の警戒をする。
遠くで野犬や狼の声も聞こえるだけに、気は抜けなかった。
一応、半径100m位の周囲を空間感知で警戒してはいたが、その晩は特に近く魔物や獣の反応もなく、無事に夜を越すことができた。
長い夜が明け、朝日が昇る。
朝はパンをかじり、水分を取ったのみで、出発した。すでに半分の道のりは超えているので、夕方には到着するであろうとのことであった。
2日目は何事もなく、デーンの村に到着した。
夕焼けになる前に到着したので、15:00頃であろうか。
村に到着すると、村長の出迎えがあった。60歳を回ったくらいの細身の老人であった。
20人に満たない村で、麦や野菜を作って生活しているようであった。
家畜の牛や鶏の姿もあった。
「よくぞ、遠いところをお越しくださいました。村長のアロイスと申します」
「本日は、ささやかながら食事を用意させていただきました。ゆっくりされて、明日の魔物退治、なにとぞよろしくお願いします」
と、村長の家に招かれた。
決して豪華ではないが、ウサギの肉を炙ったものや、野菜を炒めた料理をいただいた。
薄いワインもジョッキに注がれて出てきた。
食事をしながら、状況を聞いた。
「小鬼族の群れが、この森の奥に住み着いたようで。夜に村に降りてきて、大事な家畜をさらっていくのですじゃ」
「村の若い者で対抗しようとしたのですが、クワや鎌では、対抗のしようもなく、困り果てておったところで‥」
「見てのとおり、裕福な村ではござりませぬが、村人全員の蓄えを集めて、魔物退治を依頼させてもらいました。なにとぞよろしくお願いいたします」
そう言って深々と頭を下げる。
料理を用意してくれた女性数人と、村の有力者なのであろう数名の男性陣も、一緒に深々とお辞儀された。
本当に困っているのであろう。
喜んでもらえるのであれば、頑張る甲斐があるというものだ。
その晩は、夜遅くまでささやかな宴会が続いた。
その中で、男たちにこの辺りのことについて教えてもらった。
この村は、ヒルシュフェルト伯爵という貴族の領地になるそうだ。この村よりさらに2日ほど西に行ったところにあるレンズブルクいう街があり、そこに屋敷があるらしい。ヒルシュフェルト伯爵は現ファルムス国王の甥に当たるとのこと。
ヒルシュフェルト伯爵領は、西側にあるキルシュ公国との国境に面しており、国境警備を担っているそうだった。砦が数箇所にあり、頻繁に小競り合いもあるらしい。
この村からも3人徴兵されているとのことで、さらに少し大きな戦の前には、臨時の税徴収もあるようだ。かなり負担になっているらしい。
それでも、領民に対し、過度な税や労働を強いることもなく、評判は良くはないが、悪くもないようだった。
同じ王国内でも、南の方にあるヴィントガッセン男爵の領地は、もっと高い税で、生きていくのもやっととの噂らしい。
村の生活は主に農業で成りたっていた。
麦畑があり、秋に収穫する。
それでもその半分は税として、納めなければならないらしい。
残りの一部を商人に売って現金を得て、必要なものを買うそうだ。
残ったものでパンなどを作り、少しずつ食べるという。
牛や山羊、鶏などを飼っており、乳や卵を得ている。
定期的に森に狩りに入り、ウサギや鹿などを捕まえて、食料にしているとのことであった。
これでもマシな方らしいが、決して裕福な暮らしをしているとは言えないように思えた。
そんなこと話を聞きながら、思わぬところで、この辺りの情勢について聞くことができて有意義な時間となった。
隣では、村長含め、皆、いい感じに出来上がっていた。顔を真っ赤にして、まぶたが閉じかかっている。
俺はどれほど飲んでも酔うことはなかった。
前世ではビール一杯で真っ赤になっていたので、お酒に強い人に多少の憧れもあったのだが、全く酔えないのもどうかと思う。
毒耐性でも効いているのであろうか?謎である。
宴もたけなわということで、お開きになり、村長の家の客間に寝ることになった。
客間と言っても、何もない部屋に雑魚寝するだけではあったが、野宿よりは遥かに快適であった。
ヴォルフラムが、大きなイビキをかいて、腹をかきながら気持ち良さそうに爆睡してる。
窓の外には星空が広がっていた。
3割ほど月が欠けていたが、明るい夜だった。
特にすることもないので、上半身を起こし、片膝を立てて、夜空を眺めていた。
それから1時間ほどが経過しただろうか。
月に雲がかかり、あたりが暗くなったのと同じくらいに、俺の空間探知に反応があった。
森のある方角からである。
数はおよそ30。小鬼族で間違いないだろう。
「おい、ホルガー。起きろ!!」
小声で、ヴォルフラムの横に寝ていたホルガーを揺さぶり、起こそうとしたが、「うーん」と寝返りをうっただけであった。
酔いつぶれて、起きる気配がない。
他の3人も同様であった。
(ったく‥)
舌打ちをしながら、剣を片手にそっと玄関を出た。防具は脱いだままだ。
鶏が「コー、コー」と怯えたように低い声を出している。夜目が効かないので、動くことができずにただただ怯えて小さくなっている。
牛や山羊も、身の危険を感じ、騒ぎ出す。
すでに何匹かの小鬼族達が村の中に入ってきていた。鶏を抱き抱えている。
身長は130cm位。こげ茶色の肌で額には一本の小さな角が生えている。
暗闇で目が紅く光っているのが、魔物らしかった。
「転移」
俺は、一瞬のうちに小鬼族達のすぐ後ろに転移し、剣で首をはねた。
続けざまに、隣の2体も切り捨てる。
悲鳴をあげることもできずに、3体が崩れ落ちた。
目標を別の集団に向け、その目の前に走って移動する。
家畜が騒いでいることに目を覚ました村人の1人が、恐怖の表情を浮かべ、恐る恐る窓から顔を出した。
「家の中でジッとしてろ!!」
大声で怒鳴りつける。
30mの距離を一瞬にして詰め、集団の中の剣を持っている小鬼族の腕を一閃し、肩から股にかけて剣を振りおろす。
左右に真っ二つに別れる胴体は、ゆっくりと崩れ落ちる。
それが地面に落ちるよりも早く、隣の1体は胴から首が無くなっていた。
「グガッ‥」
恐怖の声をあげる小鬼族達。
そんなことはお構いなく、俺は1体の心臓を一突きし、もう1体は、胴体を横に一閃した。
俺の感じる、ゆっくりとした時間の流れる中で、拳大の石が空中を飛んで近づいてくる。
投石機によるものだ。
集団の後方に、タオルのような長細い布に石つぶてを入れ、頭上でグルグルと回している小鬼族が二体見えた。
勢いがついたところで、持っている片端を離すと、石が飛んでいく仕組みだ。
「転移」
50mの距離を一瞬にして詰め、2体を切り捨てた。
ここまで9体倒すのに、数十秒。
とはいえ、まだ20体以上残っている。
逃げられると再度襲ってくる可能性もあるので、全滅させておく方が、後顧の憂いが無いように思えた。
後で探すのも面倒だ。
そのまま、鬼神のような速度で、1体、また1体と小鬼族を葬り去る。
すでに逃げ腰になっているので、逃げ出す前に仕留めていく。
追加で10体ほど倒したところで、小鬼族の集団の中で、最も大柄な一匹が剣を振りおろしてきた。といっても160cmくらいだろうか。
この集団のリーダーなのであろうが、特に脅威を感じることはなかった。
振りおろしてくる剣を落ち着いて払い、返す刀で胴体を跳ね飛ばす。
上半身が、下半身から離れ地面に落ちた。
残りを全滅させるのも、さほどの労力は必要なかった。完全に戦意を喪失し、逃げ足だっているところを、機械的に1体ずつ倒していく。
結果、5分とかからず、30匹の小鬼族の集団は全滅する結果となったのであった。