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第8話 出発

翌日、市場が開いた時間に、街へ繰り出した。

買うものは3つ。

動きやすい軽装の防具と、保存の効く食料と調味料、道具袋。


すべて俺にとって不要なものではあるのだが、普通の冒険者には必要なものだ。

怪しまれないためにも、最低限の装備は必要だった。


ちなみに昨日、酒場にいた時点で、ほとんどの会話を聞いており、ある程度の情報は入手済みだ。

そのあたりはイグニ先生が抜かりなく、調査してくれていた。本当に優秀である。


さて、ギルドを出て、少し西側に歩いた広場に市場はあった。

歩きながら目ぼしいものを探す。


駆け出しのカッパーの冒険者であるから、なるべく質素で軽い装備が良いだろう。

どのみち、攻撃が当たることも無いだろうし、当たっても怪我をすることも無いのだから。


テントに机を置き、品物を並べただけの露天を歩きながら、良さげな革製の胸当てを見つけた。

試着させてもらうと、ピッタリとフィットした。

軽く、色艶も良い。固定するベルトもしっかりと縫い付けられていた。

隣には、手首から肘までを覆う革製の小手と、すね当てもあり、こちらもフィットした。

良さそうである。

全部で6金貨ソリドゥスとのことだったが、5金貨と6銀貨デナリウスまでまけてくれた。


次に荷物袋だ。

麻製の袋で、巾着のように紐を引っ張ると口が締まるタイプのものにした。

たすき掛けに肩にかけることができるようになっている。容量的には30〜40リットル位の大きさだろうか。

ついでに、薄手の毛布、細めのロープ、木製のお椀にスプーンを買って、道具袋に放り込んだ。

あとは革製の腰袋を買った。小銭や細々としたものを身につけておく為のものだ。

全部で1金貨ソリドゥスでお釣りがきた。


最後に食料だ。

食べなくても生きていけるのだが、不自然なので、最低限は持っていくことにした。

日持ちのしそうな固めのパンに、羊の胃で作られた水筒、塩漬けの肉を少しと、ゴボウやニンジンのような根菜を数本買った。あとは小さな鉄鍋だ。これでスープが作れる。

調味料に塩を買ったが、どうせ食べるのであれば、味にはこだわりたかった。最低限、塩味があれば誤魔化せるだろう。

これらも道具袋に放り込む。


歩いていると、フード付きの外套マントルが目に入った。薄茶色の地味なもので、多少の雨であれば凌いでくれそうだった。


これで、一気に見た目が旅人っぽくなり、冒険者として違和感なくなったように思えた。

この外套マントルは思っていたより安く、4銀貨デナリウスで買うことができた。


さて、これで、見た目に過不足なく、冒険者らしい出で立ちが完成したわけで、本日の成果に満足して、ギルドに戻った。


夜はギルドの酒場で、ホルガー達と食事した。

彼らは冒険者となって、8年になるらしい。メンバーも入れ替わり立ち代わりだったそうだが、今のメンバーになって3年目とのことだった。


「ホルガーさんが盾役で、攻撃を引き受ける役割なのですか?」


パーティの戦い方について聞いてみた。


「そう、俺が盾となり、攻撃を受けた隙に、ヴォルフラムが横から飛び出して、斧で一撃を食らわすのさ」


「ディルクは弓で援護をする。魔物の中にも投石器スリングを扱う者もいてな。弓でもないと、近くまでが一苦労だからな」

ヴォルフラムが言う。


「あら、私も忘れてもらっては困るわ」

と、テクラ。


「ああ、テクラは優秀な魔法使いさ。彼女の回復魔法のおかげで、命拾いしたことが何度もあったさ。感謝してるよ」

と、ディルク。


どうやら、盾持ちのホルガーが前線で敵の引きつけ役を担い、ヴォルフラムが近接で、ディルクが弓での遠距離で攻撃し、テクラが回復と稀に攻撃魔法をかけるといった役割らしい。


「ああ、いいパーティだと思うよ。でも、ヴォルフラムだけでは、近接戦闘の攻撃力が足りなくてね。もう1人、近接戦闘のできる人間を探していたってわけさ」


最近、もう少し上のレベルの依頼に挑戦しているらしく、攻撃の枚数が少し足りなく感じていたようだった。


「君には期待しているんだ。上手く馴染んでくれるといいのだがね」


期待していると言われ、悪い気はしなかったが、あまり目立ち過ぎないように、こなそうと考えていた。


次の日は朝早く出発するということで、早めに解散して、宿に戻ることにしたのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌日、朝早くにギルド前に集合したメンバーは、王都の西門より、依頼を受けたデーンという小さな村に向かって歩き出した。


道中、野宿で一泊し、2日目の夕方には村に到着する予定となっていた。

そして、その村を拠点に、村の家畜を襲う小鬼族ゴブリンを退治するというのが、今回の依頼内容だった。


小鬼族ゴブリン一匹退治するにつき、1金貨ソリドゥス。上限は決まっており、20金貨ソリドゥスまでしか出せないとのことであった。何匹いるかわからないが、10匹で合計10金貨ソリドゥス。20匹で20金貨ソリドゥスとなる。


また、依頼とは別に、魔物を退治した証拠をギルドに持っていくことで、魔物のランクに応じて、ギルドから報奨金が出るようだった。

治安維持を目的として、国や教会からの補助金から賄われるらしい。

こちらは上限なしなので、今回のようなケースでは二重取り可能のようである。

道中で遭遇し、討伐した魔物も対象となる。


小鬼族ゴブリン一匹につき、3銀貨デナリウス程度のようだ。

何も無いよりいいだろうという程度だったが、少しは足しになるのであろう。


今回、俺の取り分が少ないとはいえ、通常5人パーティで均等分けしたとして、1人2.5〜5金貨ソリドゥスしか手に入らない計算だ。

往復の時間と魔物退治にかかる時間を入れて、5-6日かかる命がけの仕事をして得る対価としては、少ないと思う。

冒険者稼業も楽ではないようだ。


天気も良く、太陽の日差しが暖かかった。


途中まで旅は順調だったのだが、平地を抜け、森の中に差し掛かったとき、俺の空間探知魔法が野犬の群れを捉えた。

少しすると、右手の木々の影から10匹ほどの野犬の群れが襲いかかってくる。特に知らせなかったのだが、さすがに熟練したパーティらしく、落ち着いて対処し、問題なく退けることができた。


俺は、ホルガーとヴォルフラムの後ろの方にいたのだが、2人の攻撃をかいくぐって、テクラに襲いかかってきた野犬を1匹仕留めて見せた。

そのまま、近くまで襲いかかってきた2匹を、流れるような剣さばきで、切り捨てる。


今の俺は、意識を集中すると、時間がゆっくりに感じるようになる。最大で約100倍。つまり1秒間に起きることを、100秒ー約1分40秒まで引き伸ばして感じることができることになる。


野犬が地面から飛びかかってきて、首元に到着するまで、約0.5秒。これが50秒かけてゆっくり飛びかかってくるように見えるわけだ。


身体は通常の人間の10倍位の速さまでしか動かせないが、空中に浮かんでいる野犬を剣で切り捨てるくらいは造作もないことだった。


あまり目立ち過ぎるのもまずいが、信頼を得るためにも、これ位の実力は見せておこうと考えていた。


「助かったわ。ありがとう」


テクラが礼を言う。少し上目遣いになっているのが気になったが、気づかないフリをする。


「どういたしまして。大丈夫ですか?」


声をかけ、尻もちをついた状態から手を引っ張り立ち上がらせると、ホルガーの元に向かった。


ディルクが野犬の耳を切り、袋に詰めている。

これも報奨金をもらえるらしい。1匹あたり、1-2銀貨デナリウスというところらしい。


特に被害は無かったようで、作業のあとすぐに出発した。


森を抜けた辺りで、夕日が落ちてきた為、火を起こし、野営することにしたのであった。

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