第62話 はじめての国家運営
今週は仕事が忙しくて更新が滞ってました。
スミマセン。。。
戴冠式が終わり、1ヶ月が経った。
その間に騎士団の再編成が終わり、騎士達はそれぞれの赴任地へ移動した。
西はレンズブルク、南はシュターデンを拠点とし、その周辺都市や砦にそれぞれ赴任していったのである。
また、今はまだ王国騎士団の鎧と、各貴族の騎士団の鎧が混じりあい、バラバラの状態であるので、王国騎士団の鎧をベースに作り直し、各騎士団の色を塗り、王国の紋章を入れることで統一するように改修中である。
全て終わるのに半年以上かかるようなので、順番に実施させているような状態であった。
貴族達から没収した財宝により国庫の資金は潤沢であった。
各騎士団の実務については、あらかじめ副団長達に任せていた。
将軍職に任命したバハムートとリヴァイアサンの二人は、そういう面倒なことに興味がないことはわかっていたので、任せても放り出すことは想定済みである。なので、自由に動けるような環境だけは作っておいた。
尋常ではない強さに始めは畏れられていたようであったが、二人とも不思議な魅力を備えている為に、しだいに騎士達や街の人たちに懐かれるようになっていると聞いている。
一応、暴走しないようにパニガーレとエストレヤを側近として置いているわけだが、今のところは問題を起こさずやっていてくれているらしい。
騎士達の訓練に将軍自ら指導しているのだが、団員達は毎日ボロボロになるまで打ちのめされているということだけは聞いている。
まぁ、こういうのも高いレベルの訓練をやっていれば、それに順応し、慣れてくるのが人間なので、多少の脱落も止むなしと考えている。それにより全体の底上げがされるのであれば問題ない。
厳し過ぎて過半数に辞められてしまっても困るので、そのあたりの見極めは副団長に任せている。
一応、脱落組にも、商人などの裕福な人物の護衛や屋敷などの警護の仕事も斡旋しているので、野盗になるなどということもないようにケアはさせている。
次に、国務長官のアロイジウス・ベックマンに指示し、各都市に役所を置かせ、周辺の町や村を維持、管理する役割を持たせた。
国からの指示を各地の町長、村長に伝えるとともに、彼らが困っている事案を吸い上げる仕組みを作らせたのである。
都市長には、有力ギルドの長の中から面接で決めさせた。こちらも任期2年である。
その他、農地に対する税率の制定を発表した。
ニコラウス・フォクト農務省長官とヴォルフ・ヴィーラント財務省長官に調べさせたところ、従来は各領地ごとに税率が決まっており、およそ4割〜6割の税が徴収されていた。
それに加え、臨時の税や、街道や設備の利用料などで、実質5割〜酷いところでは8割近い税が徴収されていたのである。
8割近く税を徴収されていた領地では、飢えが日常となり、雑草や植物の根などを食べている状態であった。食いぶちを減らすために老人は山に置き去りにされ、子供も早くに奉公に出されたりしていた。
これについてはすぐに対応させ、当面の食料を支給し、他の地域と同等まで改善させた。
合わせて、国内全ての農地について、税収を4割5分に統一し、臨時の税を取ることは禁止したのである。それでも十分収支はプラスになる計算であったので、どれだけ無駄や贅沢が偏っていたのかを考えさせられたのであった。
これに合わせて、新規で農地を開拓した場合にはその農地で取れた作物に対し10年間税率を2割まで減税するという優遇措置と、亜麻や木綿の栽培促進の為に生産量に対し補助金を支給するという施策を発表した。
そして、それによる製紙技術や、亜麻布や木綿織物の生産の計画も進めているのである。これらは特産物として育てていく予定だ。
そろそろ収穫の秋を迎えるとともに、冬穀の小麦やライ麦を植える時期でもある。
税率が下がり、優遇措置も発表され、農民達の暮らしは変りつつあった。ようやく希望をもって働いていくことができるようになったのである。
平行して、ウルリヒ・ピュークナー資源省長官に命じた鉱山の調査も進んでおり、ガラスの少量生産は可能であることがわかった。
当面、城や教会などの高価な需要向けとしてガラスの生産を行うことで特産品として育てていくことも方針として決まった。
量産化の検討もさせているが、こちらはもうしばらくかかりそうとのことであった。
合わせてすでに生産している鉱山については、待遇を改善させ、安全性の確保に努めるように指示している。
この国の資源は豊富なようで、金、銀、銅、鉄、鉛、錫、水晶などの鉱山があることがわかっている。
利用されずに捨てられている鉱物も混ざっているだろう。改善の機会は山のようにある。
また、ホルスト・トゥンダー教育省長官には、デーン村の開発についても人材と資源を投入し、急ピッチで宿舎や兵舎、研究施設、学校を作る計画を進めさせている。
一年後には人口3000人程度の学園都市が建設される予定である。
そこでは、農法の研究、採掘・精錬技術の研究、法律の研究、魔法の研究など、様々な分野での研究開発をさせる予定である。
王都にある各ギルドに命じて、研究開発や、教育育成の対象者を絞り込ませている。
基礎を教えながら、その学生達を使い、研究開発をさせるというところか。理系の大学で行われているのと同じ手法である。面白そうな研究には国や各ギルドから補助金が出て、それを軍資金に研究を行う。
開発した手法はギルドに還元し、育った生徒はそのまま研究開発の道に進むか、ギルドに戻り実務で稼ぐかを選ぶことが出来るようにする。そうすることで技術や人が回っていくという寸法である。
また子供達に初歩の読み書きや計算をして教える先生を育てる為の学科も準備させている。
いずれ大きな都市から学校を作り、子供達に教える先生の育成を目的としている。
小さな村でも、週に1回とか、移動教室のように学べる場所を作りたいと考えていた。
これは、国が全額補助を出すことで調整させている。いきなりは難しいが、国力を高め、収支状況を見ながら投資していくように指示している。
アーデルベルト・ボイムラー司法省長官に命じた法律の制定だか、ひとまず刑法7か条として交付された。
1. 殺人罪
2. 暴行・傷害罪
3. 強盗・窃盗罪
4. 詐欺罪
5. 脅迫罪
6. 強姦・痴漢罪
7. 国家・社会反利益罪
1〜6はそのまま読んで字のごとくである。
7は範囲が広く、国家反乱や公務執行妨害、薬物売買、貨幣偽造、賄賂、偽証など、多岐に及ぶ。
国家や社会に対し不利益な行動を取った時に適用される罪である。
それぞれの罰則の中で、いくつかの例を出し、罰金から死刑までの目安がつけられている。
これを元に裁かれるのである。
弁護士や検察などはないので、基本的には本人の言い分と目撃者の証言、証拠状況から裁判官が判断する。
このあたりも、しだいに改善の余地が出てくるであろうが、法治国家であるというスタートラインを準備したのであった。
他にもまだまだやることが山積みではあるが、次々と政策が立案され、実行に移り出して来ている。おおよその目論見通り、国家運営は軌道に乗り始めていた。
そして、ようやくカールスタッド王国との首脳会談の日取りが決まったのであった。




