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第5話 魔法の授業(2)

俺たちは、洞窟の外に出た。

そこは、高い崖に囲まれた広い空間で、地面も洞窟と同じような岩肌がむき出しになっている場所である。

ここであれば、多少暴れても大丈夫であろう。


先ほどの雷撃サンダーボルトの魔法で初級と言っていたが、中級や上級の魔法はどんな威力になるのか、想像するのが怖かった。


「さて、色々と確認してみようぞ。まずは竜の咆哮ドラゴンブレスじゃ。我は黒竜の性質を受け継いでおるから、風や雨、雷といった魔法と相性が良い。先ほどと同じように、口から雷を纏った嵐を起こすようなイメージで、叫んでみせよ」


(口から嵐‥ね。イメージできんわ)


そう思いながらも、言われたようにやってみる。


「グワァァァ」


大きく開いた口の前に魔法陣が浮かび上がり、そこから円錐状に広がる竜巻が放たれる。

雷を纏い、猛烈な勢いで回転する風は、あらゆる物を切り裂き、破壊し、粉々にする威力を持っており、高さ10mくらい隆起していた岩山が、一瞬の内に砕け散り、吹き飛んだ。


(アハハハハ‥なかば予想はしていたが、どんだけだよ、まったく)

驚くのを通り越して呆れてしまい、乾いた笑いがこぼれ出る。


「ふむ」


一方のイグニは満足そうにしている。


「やはり、我らはすでに中位のドラゴンにまで進化しているようじゃ」


そう言って、ドラゴンの進化について話をしてくれた。


「竜種は、おおよそ2000年の寿命を生きるのじゃ。卵から生まれ、100年位で成竜の大きさになる。これが下位竜レッサードラゴンじゃ」


「我ら竜種にはあらかじめ遺伝子の中に様々な能力や知識が組み込まれておる。年齢とともに、霊子エーテル量が増大していき、新たに覚えることなく、使える魔法や知識が増えていく」


「500年を超えると、中位竜ドラゴンとなることができる。この時にようやく竜の咆哮ドラゴンブレスを使えるようになるのじゃが、これが下位竜レッサードラゴン中位竜ドラゴンを隔てる大きな特徴となるのじゃ」


「我はまだ生まれてから200年足らず。中位竜ドラゴンに進化するまで、あと300年はかかるものと思っておったが、面白いことが起きるものよの、ワッハッハー」


イグニが頭の中で、豪快に笑う。機嫌が良さそうだ。


「ちなみに、上位竜アークドラゴンや、古代竜エンシェントドラゴンになるにはどれくらいの年月が必要なんだ?」


「ふむ、上位竜アークドラゴンになるには、通常1500年以上かかるとされている。アークドラゴンに進化出来ず、一生を終える竜種も少なくない」


古代竜エンシェントドラゴンになることができたのは、4頭だけじゃ。炎帝ファフニール、冥王ニーズヘッグ、毒蛇ヨルムンガンド、そして人喰ギーブル」


「5000年は生きているというが、別次元の話じゃ。存在していることだけは確かじゃが、見たものはおらんよ」


(ふーん、そういうものか。ま、雲の上の存在であるだろうことはわかった。上位竜アークドラゴンへの進化にしても、あと1000年以上の先の話のようだし、あまり考える必要もないだろう。

魔法について聞いた本来の目的は別にあるのだ)


「ふーん。ま、なんとなくは分かったよ。じゃあ本題に入りたい」


「色々な魔法があるとは思うが、人化の魔法というのは存在しているのか?存在しているとすれば使えるか?」


俺はこの世界のことがよく分かっていない。

人間の街に行って、自分の目でこの世界のことを見てみたいと思っていた。

しかし竜の姿のままで街に降りることはできない。どういう結果になるか想像に難くないからだ。


そこで人化の魔法だ。人化できれば自由に旅することができる。

このまま洞窟にこもったまま、1000年以上を過ごすなど、絶対無理だ。3日で暇を持て余していたのだ。元人間だった俺の感覚では耐えられない。断言できる。


「可能じゃ」


(ヨッシャー!!)

イグニの返事に、心の中で力強くガッツポーズした。


「マジか。じゃあ、チョットやってみようぜ」


善は急げである。


イグニのサポートの元、足元に浮かびあがった魔法陣の上で、人間に変身するイメージを浮かべながら、息を吐く。

男でも女でも、老人でも子供でも、イメージ通りに変身できるらしい。動物や魔物にもなれるそうだ。


まずは20歳位の成年男性に変化させる。

みるみるうちに体積が減り、人間の体に変わっていった。馴れ親しんだ形である。違和感はなかった。裸というのもアレなので、服もイメージする。白い綿のシャツと麻のパンツを纏う。


「イグニ。自分の姿を映す、鏡のようなものは作れるか?」


体は見えるが、顔が見えないので、気になった。


洞窟の前に行って、手をすっと前に差し出し、水を生み出した。そして、地面にできた水たまりを、引っ張り上げるように板状に浮かべる。水創造クリエイトウォーター水操作コントロールウォーターを順番にかけたのだ。


洞窟の暗闇と、手前側の外の明るさの対比により、板状に浮かべている水面に、鏡のように自分の姿が映る。


そこには長身で細身の美男子が映っていた。

髪は黒髪でやや短め。目の色も黒であったが、純日本人ではなく、白人とのハーフのような雰囲気があった。下手なモデルや俳優より格好いい。


(おいおい、マジかよ。ムカつくほどイケメンじゃねぇか)


試しに女性の容姿にもなってみた。


きめ細かい、透き通るような肌に、うっすらと紅く色づく唇。髪は同じく黒髪で肩のあたりまでであったが、フンワリと緩やかなウェーブがかかっており、癒し系の雰囲気を醸し出している。

何より、笑顔が可愛いかった。


(やべ、どんだけ美人だよ)


思わず見とれてしまい、いつまで見てても飽きることがないように思えた。


(あかんあかん、目立ちすぎる)


やはり、男の方がしっくりくる。ということで、男性の姿に戻って、納得した。


さて、人間に変身することはできた。


さて、これで旅をすることが可能となった。

寝ぐらに転がっていた金貨や剣を軍資金に装備を整えよう。


ただし慌てる必要はない。

人間に変身した状態で出来ること、できないことを確認しておく必要があった。


それから旅に出るまでの1週間。イグニと俺は能力の確認をすませ、十分すぎるほどの準備をして、寝ぐらである洞窟を出て、王都エルドバールを目指し旅立つのであった。

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