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第4話 魔法の授業(1)

「イグニ。お前って魔法使えるんだっけ?」


「うむ。もちろんじゃ。ちょうど良い機会だから、魔法について説明してやろう」


「ああ、よろしく頼む」


俺の何気ない質問から、その授業は始まった。


「まず、この世界に存在する力について説明しよう」

「この世界には、三つの勢力が存在しておる。一つは神々の眷属である天使や、創造物である人間や動物など。もう一つは魔王の眷属である悪魔や、創造物である魔物。最後に、竜王の眷属である我々竜種や、その創造物である精霊や、妖精じゃ。」


ふむふむ。


「魂を持つ者達は皆、生命エネルギーを持っておる。これを霊子エーテルと呼ぶ」


「天使や人間が持つ生きる力は正の性質を、悪魔や魔物が持つ生きる力は負の性質を、竜や精霊が持つ生きる力は中立の性質を持つ」


「それぞれ性質は異なるため、自分にあった形に変換しないと使えないのじゃが、エネルギーとしては等価なのじゃ」


霊子エーテルは活動することで消費される。それ故に、定期的にエネルギーを摂取し、失った霊子エーテルを補給する必要がある。人間や魔物などは、食事を摂ることでそれぞれの生命エネルギーに変換して摂取するが、より高位にいる天使や悪魔、竜、精霊は、大気中に存在する霊素マナと呼ばれる粒子を生命エネルギーに変換して体内に取り込むことで摂取している。ここまでは良いか?」


「オッケー、大丈夫だ」


なるほど。今まで、それで何も食べてなくても腹も減らず問題なく過ごせていたわけだ。


「魔法とはこれらの力を消費して起こす現象なのだが、その手法は大きく二つに分けられる。一つは体内の霊子エーテルを消費して発生させる方法。もう一つは大気中に存在している霊素マナを直接消費して発生させる方法じゃ」


「前者は体内の生命力の大きさに依存し、後者は周囲の大気中に存在する霊素マナの大きさに依存する。こちらは周囲一帯の大気中の霊素マナを消費し、消滅させるからな。霊素マナを摂取できなくなった精霊や植物などに影響を及ぼし、大規模な自然破壊をおこなうため、多くが禁呪とされておる。魔法と区別するために呪法とも呼ばれておる」


「当然、起こそうという現象の大きさにより、消費されるエネルギー量は多くなる。わかるか?」


ある程度は理解できた。ここでいうところの霊子エーテルとはMPみたいなものと考えればよいと思う。

大気中の霊素マナという粒子を体内に霊子エーテルという生命エネルギーとして取り込み、身体を動かすエネルギーとして使用すると同時に、魔法を使う際のエネルギーにもなるということであろう。


でも生命エネルギーと言ってるからには、HPはどういう扱いなのだろうか?

疑問をぶつけてみた。


「一つ質問してもいいか? 生命エネルギーというからには、力を使い切ったら死んでしまうということでいいのか? 怪我や病気になってしまった場合も生命力は減ってしまうということか?」


「ほう、いい質問じゃ。答えよう」


「まず一つ目の質問じゃが、この霊子エーテルを使えば使うほど、肉体が重たく感じる。生きて活動するエネルギーが失われるわけだから当然じゃ。そして限界まで使い切った時、肉体を動かすことができなくなる。ただし死ぬということとは別じゃ。死ぬということは、肉体から魂が離れ、戻れなくなること。エネルギーを使い切っただけであれば、エネルギーを摂取することで再び動けるようになる」


「二つ目の質問じゃが、怪我や病気で肉体が傷つくと、その部位が動かなくなる。エネルギーがあっても動かす対象が壊れていれば、動かすことができない道理じゃ。壊れた手足を動かすことはできないし、臓器が壊れれば生命力を運動エネルギーに変換することができなくなり、つまりは肉体を動かすことができないようになるじゃろう」


「魂の入れ物である肉体が壊れ、ある一線を超えてしまうと、割れたコップから水がこぼれおちるように魂が流れ出てしまうのじゃ。魂が肉体から離れてしまい、戻れなくなった時点で、死んだということになるのじゃ。」


「なるほど、良くわかった。じゃあ具体的に、霊子エーテルを使って、魔法を起こすのはどうするんだ?」


「うむ。では実際にやってみせよう」


そういうと、一瞬、空中に光り輝く魔法陣が浮かび上がり、そして、そこから轟音とともに雷が発生し、10mほど先の地面に落雷し、爆発した。


「今のが、電撃サンダーボルトという、初級の攻撃魔法じゃ」


(‥これで初級なのか?)


正直な感想である。

目の前で雷が落ちて爆発したのだ。

チョットした天災ものではないか。


「今、生命エネルギーを消費して、小型の雷を発生させたわけじゃが、自然界で雷が発生する原理は知っておるか?」


(おっと、急に科学の授業みたくなってきた)


「んー、確か、雲の中で発生した静電気が、地面に向かって放電するんだっけか?」


昔、勉強した記憶をたどりながら、答える。


(自分の名前も思い出せないのに、なぜかこういう知識は覚えてるのな…)

不思議だ。


「その通り、正解じゃ。雲の中の雹や霰がこすれあい静電気が発生する。これが溜まり、大気中の絶縁耐力を超えると地表に向かって放電するのじゃ」


「この世界のニンゲンでは、正確に答えられるものはほとんどおらんじゃろうに。別の世界からきただけのことはある。知的レベルは低くないようじゃの。理解が早くて助かる」


(確かに中世の時代レベルではこんな知識持ってる人間はいないだろう。逆にドラゴンといえどもこの世界の生物が知ってることに驚くわ)


「今見せた魔法では、霊子エーテルを静電気に変換し、放電先が対象の範囲になるよう誘導する術式を組んだのじゃ」


「魔法が発動する前に、魔法陣は見えたか?」


「ああ、見えた」


「あの魔法陣が術式じゃ。どういう現象を発生させたいのかが描かれておる。これを空中に魔法陣をイメージして転写し、そこに霊子エーテルを流し、エネルギーを充填することで、発動するのじゃ」


なるほど。なんとなくわかったが、考えていたよりかなり難易度が高そうだ。

俺にできるのか不安になってきた。というか、できる気がしない。


「うーん、折角説明してもらったのに、簡単にできそうもないということはわかった。空中に魔法陣を転写するって、普通できなくないか?人間の魔法使いもそんなことできるのか?」


「ふむ、そういえば、ニンゲンで空間転写をおこなったものをみたことはないのぅ。魔法を使うものは大抵呪文の詠唱で魔法陣を組み立てるか、あらかじめ羊の皮や宝石などに、術式を組んでおいて、それを発動させているようじゃの。

空間転写のほうが、簡単で素早く発動させられるのにのぉ。」


(いやいや、それ、人間には魔方陣の空間転写なんてできないってことでしょ。だから、わざわざ長い時間はかけて呪文唱えて、魔法陣を組み立てているのではないでしょうか?)


思わずツッコミをいれてしまうところだった。


「あと、霊子エーテルを流し込むって、言うほど簡単じゃないよな?とても簡単にできるとは思えないぞ‥」


「うむ、慣れてしまえば造作もないことじゃ。実際にやってみたほうが早いのぅ」


というと、目の前に魔法陣が浮かびあがった。


「雲の中で静電気が溜まり、耐えきれなくなって放電するイメージをしながら、この魔法陣に向かって、トリガーとして、フッと息を吹きかけてみよ。あとは我がサポートしよう」


(んー、全くできる気がしないのだが‥)


戸惑いを覚えながら、言われた通りにイメージしながら、フッと息を吹いてみる。すると、身体の中を何かが流れる感覚があり、タバコの煙のような白いモヤが口から魔法陣に吸い込まれる。すると鮮烈な光とともに、先ほどの何倍もの規模の雷が発生し、地面に飛ぶと同時に、雷が落ちた先の地面が砕け散り、半径5m程度の穴があいたのだった。


「‥‥‥」


あまりの衝撃に言葉を失った。

イグニの多大なサポートはあったのだろうが、自分の力で魔法が発動したことに驚き、さらにその威力に驚いてしまった。


(さっきと別物じゃね?)


これにはイグニも驚いたらしい。


「ふむ‥ミライ。おぬしには天賦の才があるやもしれん。今、おぬしはこの術式にて許容できる上限まで霊子エーテルを充填し、この魔法のもつ最大の威力でまで増幅させて発動したのじゃ。これはけっして簡単なことではないのだが‥」


イグニは不思議そうにそう言いながら、補足説明をしてくれた。


「術式に充填する霊子エーテルは最低量に足りなければ発動しないのだが、上限まで充填すれば魔法の威力や効果を増幅できるような仕組みになっておる」


霊子エーテルを充填するときに対内から流し込める量というのが、体内にある霊子エーテルの絶対量によって決まるのじゃ。体内に保有できる霊子エーテルの最大値が少なければ、一度に流し込める量は少なくなる」


「また、霊子エーテルを流し込む量は、熟練度を高めることによってコントロールが可能じゃ。威力を抑えて発動させることもできるようになるじゃろう」


要するに、MPの最大値が高いと、一度に使える魔法の威力を上げることができるということのようだ。魔法の威力を調整するのは、経験しだいということか。


「しかし、今の肉体の霊子エーテルの保有量は、以前の我の保有量と比較して軽く10倍以上になっているようじゃ。これは中位のドラゴンと同等レベルじゃ。どうなっておるのだ、まったく」


「よし、試しにもう少し高位の魔法を使ってみようかの。ここでは威力が大きすぎて、寝床が壊れてしまう恐れがあるからのぅ。外に出て試してみよう」


そう言って、イグニは俺に、洞窟の外にまで出るように促したのであった。











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