表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/70

第37話 黒竜 vs.青竜

翌朝、朝日が昇ると同時に俺とバハムートは出発した。


島の中央にそびえる山に向かって、一直線に飛ぶ。

飛竜ワイバーンの住処を探し、山の上空を旋回すると、イグニがすぐに三匹の飛竜ワイバーンの姿を見つけた。


飛竜ワイバーンは竜の亜種である。下位竜レッサードラゴンの下位の格ではあるが、確かに竜である。

同じ眷属であっても、蜥蜴族リザードマンとは格が違う。


ドラゴンとは、翼の部分が大きく異なる。

ドラゴンが四つ足で背中に翼が生えているのに対し、飛竜ワイバーンは前足と翼が合体している。翼の先に手が付いており、独立した翼は無い。

あとは、ドラゴンに比べて小柄なこと。成体で体長が5-6mとなる。下位竜で8-10mになるので、やや小さい。

また、ドラゴンと大きく異なるところは、飛竜ワイバーンは進化しないということである。飛竜ワイバーン飛竜ワイバーンのまま進化せずに一生を終える。

寿命も200-300年と、竜に比べると圧倒的に短い。


知能は竜だけあって割と高く、稀にではあるが、魔法を使う個体もいる。

グスタフのように、部下として竜に従っている個体も多い。

この3体も、青竜に従って、住処を守っている可能性が高いのだ。


飛竜ワイバーンの住処は山の中腹あたりにある、崖の上の少し広くなった場所にあった。

その近くまで降りていく。


(おい、飛竜ワイバーン達よ。ここの青竜はお前達の主人か?)

念話を飛ばす。


ミライとバハムートの姿に気づいた飛竜ワイバーン達は、一斉に攻撃的な視線を向け、空中に飛び立ち、俺たちと対峙する。


(貴様達は何者だ?青竜様の身を狙っているのであれば容赦はしない)

オスの飛竜ワイバーンの一体が、警告する。

どうやら1体はオス、2体がメスの飛竜ワイバーンのようであった。


「バハム、赤竜に戻っていいぞ。雲があるから、アイツらからは見えないから」

山の中腹より下は厚い雲がかかっており、ガスがかかって、ほとんど何も見えないであろう。


「わかった」

バハムートは変身を解き、久しぶりに竜の姿に戻った。

「グハハハ。やはり元の身体は良いぜ」

燃えるような真っ赤な色の鱗を持った竜が現れる。


合わせて、俺も黒竜の姿に戻る。

赤竜バハムートよりも一回り大きい、漆黒の鱗を持つ竜の姿があった。


飛竜ワイバーンよ、見ての通りだ。青竜に用件がある。こちらから行っても良いのだが、奴を呼んで来れないか?黒竜と赤竜が来たと言えば分かると思うが)


(‥わかりました。少しお待ちを)


一瞬迷いを見せたが、どう考えても敵わないと悟り、1体が離れた。

どうやら銀山の洞窟以外にも入り口があるらしい。崖の割れ目のようなところから、山の中に飛んで行く。


(お前達は元々この島にいた個体だったのか?)


待っている間の世間話である。


(そうです。青竜様がここに棲み着いてから、この場所を守る任務を遂行しております)

(へぇー、俺の部下にも飛竜ワイバーンが1体いるんだが、お前達も一緒に来ないか?)

と誘ってみる。


(いえ、すでに青竜様にお仕えしております。勿体ないお言葉ですが、主人を裏切ることはできません)

どうやら真面目な性格のようだ。好感が持てる。


(そうだな、悪かった。だが、もし青竜が俺たちと共にここを出て行くとしたらどうだ?)

(はい、その時は青竜様に同行いたします)


(そうか、わかった。あとは青竜に聞いてみよう)

(はい)


短い会話が終わってしまう。


「‥‥」


気まずい空気が流れる。

ドラゴン2体と飛竜ワイバーン2体が、空中で対峙したまま、無言で向かい合っている。

なかなかシュールな光景のように思えた。


その状況に助け舟を出すかのように、先ほどの飛竜ワイバーンが青竜を連れて飛んで来た。


(黒竜と赤竜か、久しいな。何をしに来たか?)

青竜が問いかけてくる。


体の大きさは赤竜バハムートと同じ位。

海のような光の加減でキラキラと光る明るい青色の鱗であった。


(青竜よ、俺と力比べをしないか?身体がなまってるだろ?)


(何を言うかと思ったら、力比べだと?私に勝った試しなど無いではないか)


(昔はそうだったかもしれないけど、今は違うぜ。それとも、負けるのが怖いか?)


(恐れ知らずにも程がある。警告はしたぞ、もう泣いて謝っても許さぬ!)


「グゥワァァァー!!!」


怒りを露わにして、青竜が吼える。


空気が震え、大地にまで伝わる。


雲の上で繰り広げられる竜同士の決闘。


人の目から見ると、神話の世界にも近しい光景である。それをもう1体のドラゴンと、3体の飛竜ワイバーンが見守る。


先に動いたのは青竜である。上昇し、上を取る。

空中戦において、圧倒的に上の方が有利である。

しかし、あえてそれを許す。


青竜は上空から急降下し、強烈な爪による一撃を放つ。

しかし、それは呆気なく弾かれる。

爪の一撃は、俺の張った物理結界により、無効化され、その衝撃で青竜が弾け飛ぶ。


逆にそれを追いかけ、こちらの爪の一撃を叩きつける。爪は腹部に命中し、青竜は地上に向けて吹き飛ぶ。


かろうじて、地上に激突する前に、浮かび上がることができたが、大きなダメージを負ったようである。


間髪入れずに、青竜に対し、咆哮ブレスを放つ。大きく開けた口の前に魔法陣が現れ、雷を帯びた円錐状の竜巻が青竜に向かい襲いかかる。

猛烈な勢いで回転し、吹き荒れる風に、発生した真空の刃が、青竜を切り刻む。

全身を覆う硬い鱗を易々と切り裂き、おびただしい量の血が飛び散った。

さらに追い討ちをかけるように、雷が全身を痺れさせ、感電させる。

肉が焼ける匂いがたちこめる。


「グヤァァァァァァ!」

苦痛の叫びを上げる青竜。


飛ぶ力を失い、地上に落ちる青竜。

地面が割れたかのようなものすごい音が響き、大地が揺れる。


飛竜達が駆けつけようとするが、バハムートがそれを制する。


勝負あった。

人間の姿に戻ってから、ゆっくりと青竜の元に降り立つ。


気を失っている青竜に治癒魔法をかける。

傷は回復したが、気を失ったままだ。

人化の魔法をかけてから、抱き抱えた。


そのまま、空中に浮かび上がる。


(大丈夫だ。気絶しているだけだ)

殺気だっている飛竜ワイバーン達をなだめてから、青竜の寝ぐらに案内してもらった。


崖の割れ目から中に入っていくと、大きな空間が広がっている場所があり、そこが寝ぐらだということだった。

ドラゴンの寝床らしく、金貨、銀貨が山になっている。それだけの兵士や冒険者が来たということだろう。


空間から毛布を取り出し、その上に青竜を寝せる。

人間の姿の青竜は、身長170cm位の背の高い20代前半の女性であった。

ミライの女性バージョンとは異なり、大人びた美しい容姿であった。

パリコレに出ている超一流のモデルのような、隙のない雰囲気を醸し出している。

気を失って寝ている姿も、堂々としていた。

長い髪は、頭皮に近い部分が白に近い薄い青で、毛先に向かうに従いグラデーションがかり段々と濃い青になっている。


バハムートは人間の姿に戻っていた。


広い空間とはいえ、さすがに飛竜ワイバーン3体が入るには狭いので、彼らも人化させる。


皆、10代後半の姿になっていた。

オスの方は草食系の真面目そうな男性。メガネが似合いそうだ。

メスの1体は金と茶が混じったようなミディアムヘアで、海外のアーティストのような可愛らしい女性、もう1体は茶髪のショートヘアで元気で活発な女性の姿であった。


人の姿に慣れない様子ではあったが、それよりも青竜のことが心配だったようだ。

3人共、心配そうに見つめている。


しばらくして、青竜がゆっくりと目を開けた。

状況が飲み込めず、ボーッとしている。


(青竜様‥)

ほっと安堵の声を上げる飛竜ワイバーン達。


(目が覚めたか。手加減したつもりだったのだが、少しやり過ぎたかも知れない。すまない‥)

と謝る。


(そうか、私は負けたのだな?)

横になり、天井を見たまま答える青竜。


(そうだ、俺が勝った。中位竜ドラゴンに進化してるからな。昔の俺とは違うと言っただろ?)


中位竜ドラゴンか、かなうはずもないな。私はどうしたら良い?)


(俺と一緒に来い)


(‥‥わかった。一緒に行こう)


少しの沈黙を経て、覚悟したように青竜は頷いた。


(青竜、お前も名前をつけてもらえ)

と、横からバハムートが言う。


(名前?上位竜アークドラゴンでもないのにか?)


(ああ、そうだ。人間の姿で動き回るのに、名前が無いと不便だからな‥)


(そういうものなのか?わかった、頼むとしよう)


(だってよ、ミライ)

バハムートがこちらに仕事を投げてくる。


(ああ、わかったよ)

と言いつつ、青竜の名前は考えていた。


(赤竜がバハムート=ベヒモスだからな、青竜の名はそれに対をなす竜、リヴァイアサンだ。人間名では略してレビィでいいだろう)


(リヴァイアサン‥だな。わかった)


(ついでにお前たちも名前をつけてもらえよ。一緒についてくるんだろ?)

とバハムートが飛竜ワイバーンに対し提案する。


(は、はい‥)

話の流れについて行けてない飛竜ワイバーン達。


(んー、じゃあ、オスのお前はパニガーレで。メスの髪が長いほうがエストレヤ、短い方がベスパ)

と、名前をつけてやる。


(わかりました。我ら3名、青竜リヴァイアサン様と共に、黒竜ミライ様に従いましょう)

と頭を下げる。


(ああ、よろしく頼む)


(良かったなぁ、これで全て丸く収まった。何か忘れてる気もするけどなぁ、ハハハ)


やべっ、バハムートの一言で思い出した。

騎士3人がどうなってるか。。。


(ちょっとこのままもう少し休んでいてくれ。アイツらを連れてくるから)

そう言い残して、洞窟の入り口の方に飛ぶ。


そして、洞窟の入り口に、雨でずぶ濡れになって震えながら待っている騎士3人の姿を見つけたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ