表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/70

第33話 三人の騎士

ミライとバハムートが王との謁見を終え、部屋を退出した後、国王は3人の騎士の名を呼んだ。


「騎士セレスティノ・カラスキージョ、ファビオ・カノ、イルデフォンソ・ベルリオス。前へ出よ」

先ほど、ミライに対し、不満を露わにした騎士2人と、もう1人の騎士が玉座の前に出る。


この国で騎士爵を名乗れる者達は200名程になる。通常は国境の警備や、各地の自領土の治安のために任に就いているものがほとんどであるが、この場に居合わせた20名ほどの者達は、国王直轄の軍を率いるエリート達である。


その中でも、国王に呼ばれた3名は若手騎士の中で、将来有望株と見られている者達であった。


騎士セレスティノ・カラスキージョ

細身の線の細い男である。年齢は20代前半。鮮やかな金色の髪を持ち、容姿も整った綺麗な顔をしている。

剣の腕は確かで、通常よりも細身の剣を扱い、攻撃力よりも素早さと技術を重視した戦い方をする。

名門の血筋で、正義感も強く、人望も厚い。


騎士ファビオ・カノ

同じく20代前半。身体は小さく、160cmを少し超えた位しかない。

明るい茶色の髪が、クシャクシャと癖のついた頭をしている。

剣はオーソドックスな幅広剣ブロードソードを使う。

しかし、彼の得意なのは、個人戦闘ではなく、集団戦闘である。

類い稀な知恵者で、戦術眼に優れている。

回復魔法も使いこなす為、少人数での任務ではもっぱら後衛役としてこなす。


騎士イルデフォンソ・ベルリオス

20代後半で3人の中では最年長になる。この国王直轄の騎士団の中でも最も大柄な男である。身長は190cmほどある。バハムートといい勝負である。

体格も良く、大型の武器を好む。

あまり深く考えるタイプではないが、頑丈で、力強く、攻撃力重視のタイプである。


三者三様だが、違うタイプだからこそ、バランスの良いパーティとなる。


「勅命を下す。3名で先ほどの冒険者と協力し、クラクスヴィーク島に棲む竜を退治せよ。あの銀山はこの国に取って、非常に重要な産業となる」

「必ず銀山を取り戻し、この国の未来の為に力を尽くせ!」


「はっ。勅命、受け承りました」

「お任せください。必ずや、吉報をお持ちいたします」

「微力ながら、全力を尽くしましょう」

一礼をする。


「うむ、期待しておる。行け!」

「はっ!!!」


3人の騎士達も部屋を退出する。

扉を潜り、外に出ると、途端に苦々しい顔になる。


「まさか、竜退治を命じられるとは‥‥」

「僕らの実力で竜を退治するのは、ちょっと厳しいだろうな」

「国王陛下の勅命とはいえ、今回ばかりは逃げ出したい気分だよ‥」

大鬼族オーガ退治ぐらいであれば、臆することはないが、竜となると‥」

「まったくだ‥」

3人とも、表情が暗い。


「なぜ僕たちなんだ?出しゃばって抗議したからか?しかし、聖剣を褒美に欲しいなどと言われ、無視などできなかった」

と、セレスティノ。


「そうだよ。他の皆は、なぜ黙っていたんだ?騎士なら当然の抗議だと思うけどな」

とファビオ。


「そうだよな?僕は間違っていなかった。なのに竜退治に行けとは‥」

「あのような非常識で自分のことしか考えていない冒険者など頼りたくはないのだが‥」

セレスティノが、珍しくイラついている。


「しかし、僕たちだけでは任務を完了させるのは難しいよ。クラーケンを倒したのが実力であるなら、それに期待するしかないよね」

とファビオ。


「うむ」

イルデフォンソが、どちらの言い分もわかるとでも言うように、短く頷いた。


「わかっているさ。そんなことはわかっている。しかし、騎士としての誇りがそれを許すことはできない‥僕にもっと実力があったなら‥」

悔しそうに唇を噛む。


「僕も同じ気持ちさ」

ファビオが同意する。


「私も同じだ。しかし国家の為、何を優先させるのか、騎士として答えは出ているはずだ」

「長年の悲願であった竜退治と銀山の奪還を成し遂げるための、チャンスと考え、あの冒険者達を利用してやるつもりで任務を果たそうではないか」

と、イルデフォンソが2人を諭す。


「‥ああ、そうだな。君の言うとおりだよ、イルデフォンソ」

とセレスティノが同意した。


「冒険者達の下に付くのではなく、冒険者達を指揮して使ってやるつもりで任務に望もう」

一応、気持ちの整理はついたようである。


そうして3人は別れ、戦いに備え準備を始めたのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


話は少し遡る。

兵士に連れられ、ミライとバハムが馬車で王城へ向かっている最中のことである。


(イグニ、面倒ごとに巻き込まれそうな予感しかしないのだけれど)

(そうじゃな、我もそう考える)


(話の流れから考えると、国王は銀山を取り戻したい。でも今まで誰も竜に勝てるものがいなかったので、諦めていた‥そんなときにクラーケンを退治したという冒険者が現れ、そいつらなら竜退治をもやってのけるかもしれないと考えた。そんなところか?)

(冒険者なら、失敗したとしても痛くもかゆくもない。褒美だって、少しの報酬か爵位でもチラつかせて、上手く使ってやろうというところか。まぁ、そんなところだろ‥)

国王とはいえ、自国の利益の為に、使えるものは上手く使ってやろうと考えるのは、ある意味人間らしいと思う。


そうであれば、なおさら、こちらとしても、それなりの報酬を受け取る権利があるはずだ。

であれば、どういったものを要求すれば釣り合うか‥。


(イグニ、この国の国宝って、なんだ?)

(そうじゃの、色々とあるとは思うが、有名なところでは聖剣エストレージャスがあるぞ)


(聖剣?あるのか、この世界にも?)

その響きに興奮を覚える。


(ある。聖剣とは神装具じゃよ。本来は天使が装備することで、絶大な力を発揮するものじゃが、稀に人間に与えられることがあるようじゃ)

(時代により魔の勢力が拡大した時に、天界からは自由に地上に干渉できない天使が、神託という形で英雄と呼ばれる人間に聖剣などを貸し与え、地上のバランスを取ることがある。この剣もそんな一本なのであろう)


(ほぅ。神装具って、こないだ俺が右手を喰われた魔装具の天使版っていうわけか?)

(そうじゃ。神装はプラス霊子エーテルの塊であり触媒じゃ。魔を滅ぼす力と意思を持つ)


(人間は天使の眷属みたいなものだったよな。基本正霊荷型の生き物だから、聖剣を扱っても大丈夫なのか?俺たちの世界の聖剣って、岩に差さってたりして、剣が認めたものしか抜けないなんて伝説だったぞ?)

(うむ、普通の人間には扱えないじゃろうな。何しろ膨大な正霊荷の霊子エーテルエネルギーの塊じゃ。天使から霊子エーテルをコントロールできる特別な力を与えられなければ無理であろう。それを神託と呼んでおるのじゃよ)


(ちなみに俺達みたいに、中立型の竜の場合はどうなるんだ?また持った手を喰われたりしないよな?)

(うむ。天使、悪魔、竜はそれぞれが、それぞれを傷つけることができる存在。天使と悪魔は互いを敵とみなし、長い戦いをしているがな。竜はそのバランスを取っている。光も闇もこの世の中には必要な存在じゃからな)

(それ故に、悪魔も天使も竜を自分の陣営に引き込もうとする。魔装具が我らを魔に堕とそうとしてきたもそういった理由があるからじゃ。当然神装具も同じじゃよ。膨大なエネルギーで天使に近い存在にしようとするじゃろう。その時に火傷を負うような痛みを感じるはずじゃ)


マジか。こないだの魔装具を身につけたときは本当に死ぬかと思ったほどだった。


(それは却下で‥)

と言いかけたとき、

(しかし、幸運なことに、すでに魔装具を手に入れている。(-1)+(+1)の答えはわかるか?)

とイグニが遮る。


(いや0だろ?ん?マジか?)

気づいてしまった。

イグニがクックッと笑っている。


(そうじゃよ。魔装具と神装具を合体させることにより、竜装具とすることができる。竜装具とはその名の通り、竜の能力を飛躍的に増強させる装備じゃ)


(できるのか?)

(無論じゃ)

さすが、イグニ先生。優秀過ぎるっていうもんじゃないだろう。


(この状況、上手く利用するが良いぞ。あとは任せる。お主の好きなようにしたら良い‥)

(ああ、相手の出方次第だけどな)


と、事前に相談していたが故の、交渉であった。

宿に歩いて戻りながら、とりあえず、破談にならず、上手くいって良かったと胸を撫でおろす。


あとは、青竜の退治か。

恐らく倒すことはさほど難しくはない。

ただ、同族はなるべく殺したくはないので、上手く仲間になってくれるかが心配なのと、何人か同行させると言っていた騎士をどう騙すかを考えなくてはならない。


あと、一日ある。ゆっくり考えよう。

考えを巡らせながら、急展開を見せた、波乱の一日が終わったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ