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第31話 祝勝会

船員ギルドに着いた時には、宴会は始まっていた。ギルドの1Fは酒場になっている。

冒険者ギルドもそうだったが、皆が集うスペースとしての役割があるのであろう。


すでに相当量のワインを飲んだのか、かなり酒が回っている者もいる。


中心にいたのは、カルメロはじめ、クラーケン退治を共にした乗組員たちだった。


仲間達からせびられ、クラーケンを倒したときの状況を、まるで自分のことのように得意げに披露している。


長年、恐怖の対象であり続けた魔物が、どれほど凶悪で、危険な存在であったか。

そして、それをどれだけ強力な力で打ち破ったかを、ジェスチャーを交え、多少ドラマチックに盛りつけながら、臨場感たっぷりに話している。


それを、まるで英雄譚でも聞いているように、感嘆の声を上げる船乗り達。


いい反応だ。話している方も、さぞ気持ちが良いだろう。


俺とバハムートが、ギルドの入り口を潜ると、全員の視線がこちらを向いた。


「おっ‥遅くなって‥すまなかった‥」

皆の視線に、少し怯む。

実際に無意識に2歩ほど後退りしてしまったほどだった。


芸能人というのは、いつも、こういった視線に晒されているのだろうか?

自分はちょっと慣れそうにない。

そんなことを考える。

もしかしたら、そんなことを考えられるだけ余裕があったのかもしれない。


「おーっ、主役のお出ましだ〜」

「ミライさん、遅いっすよー」

「バハムートさん、ヤッベー、本物だよ」

あっという間に、囲まれてしまった。


「みんな! このお二方がクラーケンを退治してくれた、ミライさんとバハムートさんだ。2人に乾杯するぞー」

カルメロが、ジョッキを片手に、盛り上がる。

「乾杯ーっ!!」


その後、すぐに囲まれる。

「ミライさん、本当にありがとうございます」

「いや、俺も見たかったっすよ。こんな凄ぇ話、聞いたことないですって」


「じゃあ、俺が話してやるよ」

と、カルメロ。


「それで、クラーケンの足が船に巻きつこうとしてるのをよ、バハムートさんが、大剣で一刀両断よ。牛の胴体ほどもある太さなのに、スパッと真っ二つだぜぇ」

「そしたらよー、ミライさんが、手をあげたら光輝く槍が20本も30本も現れてよー、クラーケンが串刺しよ。それは凄い光景だったぜー。あんなスゲー魔法、見たことないっつうの‥。ねぇ、ミライさん」


こんな調子である。

これは夕飯を食べる暇も与えてもらえないかもしれない。


バハムートは、案外乗り気で、船乗り達と楽しくやっているようだ。

「いいかぁ。俺の刀で斬れないものはない。この刀はなぁ、特注なんだ。重すぎて俺しか扱えないけどなぁ、ガハハ」

と、すこぶる機嫌が良い。


まぁ、こういうのもいいだろう。

デーン村の連中とはまたちょっと違う雰囲気を楽しんだのである。


さて、クラーケン退治の話で盛り上がってもいたが、他にも色々な噂話を聞くことができた。


まずは、クラクスヴイーク島に棲む竜のことだ。

島の大きさは直径10kmほどある円形の島らしい。

中央には高い山がそびえ、その麓にある洞窟に棲んでいるらしいとのこと。

この洞窟というのが、銀の採掘場で、竜が住み着いてから、採掘を停止せざるを得ない状況が続いているらしい。

そのため、島には魔物が住み着くようになり、今は危険な島だそうた。

稀に、島から竜が飛立ったところを見かけることもあるようで、青い色の竜との噂だった。


他にも、どこかわからないが、海の底に神殿があり、神の宝具が祀られているとか、呪われた海賊船が彷徨っている海域があり、入ったが最後、海賊の幽霊に襲われ、沈没させられるという噂があるとか、いかにもありがちな噂話を聞いた。


現実的なところでは、今の船は最大でも2週間程度の航海しかできないようだ。

もっと大きな船で、食料や水などを多く積めるように慣れば、もっと遠くに航海することができるかもしれないとのこと。


大航海時代はもう少し先なのであろう。

船の技術が発展すれば、別の大陸から様々な珍しいものを集めてくるようになるかもしれない。


現状、リスボア王国への航海が、最も遠い旅になっているらしい。

リスボア王国では、良質の羊毛が手に入るようで、毛織物を買い付けてくると、こちらで高級品として高く売れるとのことだった。

また、金も採れるそうで、王国の資金源となっているとのこと。


逆にこちらからは、チーズや、オリーブ、ワインなんかを買い付け、向こうで売るそうだ。


このリスボア王国との間の航海で、最大の障害であったクラーケンを退治してくれたという状況だからこそ、これほど喜ばれているのであろう。


そんな感じで、その日は、夜遅くまで楽しんだ。

いくら飲んでも、まったく酔わない俺は問題ないが、彼らは二日酔いで大変な目にあっているだろう。


長い夜が終わり、宿へと戻ったのであった。

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